8 : 王式、得るは王の座
『騎士のソニア 【8 : 王式、得るは王の座】』
ーガヤガヤ!!!ー
「起きてー!」
扉の外からポゼの声が聞こえる。窓からは賑やか街の音が。
「…。もうそんな時間か。今行く。」
ーーーーー
宿から出て見えた景色は、街の雰囲気が変化しているものだった。
国全土の大祭りだ。
「おお…!」
「人が多いのも王式があったからなのかもね。」
「街の感じも、そうなのかも!見て回ろうよ!」
「まだ時間はあるから。それに間に合うように、城の近くに着けばいいよ。」
ーーーーー
街に並ぶ店舗に入っていく。また次と。
新鮮な体験をした3人は、きりをつけて城へと向かった。
ーガヤガヤ!!!ー
人の固まりの中にソニア達も混ざっていく。ソニア達を囲むようにまた人が。
「…。」
(使用人)「風花様。ご準備を。」
「はい。」
「もう少しかな?」
ーゴゴゴゴゴ!!!ー
風を駆ける音が聞こえる。知っている音だ。
(人)「化身様だ!!!」
ーワァァァ!!!ー
国民の歓喜。いよいよ始まる。
ーファサァァ…ー
高級着物にしか見えない普段着を着ていた風花とは違う。
分厚い装束に身を包んだ風花の姿が見える。
「見て、風花も。」
「皆様。私が今日より、父と母の後継ぎとして、この国を導く王になりま
す。」
ーサアアアアンン!!!ー
風花がつけていた三刀の一つ、最上の輝きだろう。抜刀。
「我が名は、嵐咲風花。私の覚悟はこの刀身のように輝き、如何なる困難が降り注ごうとも、数多の暗雲を斬り裂いてみせましょう。風葉亭に、烈風を。」
ーワアアアアアアアア!!!!!!!!ー
国民の歓声が響いていく。風花の覚悟は音圧を感じるほどに広がった。
「…。」
ーヂュミミミ!!!ー
波動が溢れる。少量だが、何かを伝えるように。
「どうしたの?」
「見えるか?」
「何が?」
ソニアが指す方向を見た。見たことはないが、近いものなら聞いている。
「あんな赤い雲ってできるのか?」
ーゴゴゴ!!!バチバチ!!!ー
その雲は異様な速さで迫っていた。そう思う頃には既に、頭上にある。
視界が赤く広がり、民の歓声ではなく赤雷の鳴りが響く。
「落ちるぞ!避けろ…!!!」
(エンク&エンタ)「…!まずい!!!」
ーゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!ー
赤雷が目を閉ざさせ。その音が、地面から足へ。空から肉体に流れてくる。
「…!」
「前が見えないよ!!!」
「周りも混乱してる…!離れられそうにないよ!」
「みなさん!!!」
風花の声が聞こえる。
「お逃げください。私が行きます。」
ーファァァ…ー
煙の向こうに何かが見える。風花はそれを見たようで。
それに気付いた人達が、その場を離れていく。
ービョオオオオ!!!ー
煙が晴れた。全員が気付いた。残った者は4人だ。
「エンクとエンタが…。」
「もはや嵐だ…。」
(嵐円龍:エンク&エンタ)「ギャオオオ!!!!!」
ーバチ!ビョオオオ!!!ー
嵐に雷が混ざる。
「風花!」
「私もやります…!」
ーサアアアン!ー
「どうかお力添えを…!!!」
ーーーーー
ービョオオオ!!!ー
エンクとエンタの烈風が吹く。
「づ…!わぁぁぁl!!」
「ポゼ!!!」
「ポゼが飛んでった…!」
足をついているのがやっと。台風の中心にいるような。
「退いてください…!死なせるわけにはいきません…。」
「…。」
相手の攻撃を回避するのが精一杯であった二人にとって、風花に託すこと。
彼女の邪魔にならないことが、晴天を呼ぶ最善だ。
「ヤバくなったら連れ出すからな!」
「グオオオオ!!!!!」
赤雷に当たった二体に、理性はないようで。
嵐に巻き込まれている物が身体に当たっている。落雷の傷も目でわかる。
一撃は、届く距離にある。
< ー「嵐咲流:神渡し」ー >
一刀の刃に風を纏わせる。だが今の状況、刃には嵐が纏い雷がついている。
「エンク、エンタ。私の攻撃が、あなた達にどれほど届くのか。…失礼します。」
ースッ…。バチバチ!!!ズザン!!!!!ー
風花は手加減が出来なかった。それほど全力でなければ、化身は止められず。自分の手で殺してしまうことが脳裏によぎった。
ただ風花は、止めたい思いを。生きてほしいという願いを。風と雷へとのせ、神へと渡した。
ーーーーー
「ハァ…。」
風花の装束は切れ切れになっている。
ービカアアア!!!ー
「晴れた…。やったのか…。」
ースタッ…。スタッ…。ー
(黒鎧の男)「…幸運だ。」
(皆)「…!!!」
「お前…!」
(風花)「…?」
ービィィィ!!!ー
風花の反応が遅れていた。"動けていたら、動けていたのかもしれない…"。
「赤雷で倒すこと目的だったが、倒せず暴走してしまうとは。だが、止めてくれたな。」
ースッ…ー
「風の化身。借りていくぞ。」
ーグサッ!!!ー
黒鎧の男は、エンクの胸を貫いた。周囲の時は止まっており…
「杖は置いていく。」
ードク!ドク!ー
男はエンクの心臓を、機械の中に入れた。
男が去っていくと、時は動き始めた。
だが"胸にある杖は、エンクの生を止めていた"。




