11:狂いの神父
『神々のファンファーレ【11:狂いの神父】』
―狂乱のヴァンぺード―
特別な装飾がなされた、残り三つの扉。その一つをソニア達は開けた。
―ファサァ…。チュン…!チュン…!―
扉を開けると春風が流れ、小鳥の囀りが聞こえる。
鳥と風、靡く草の音。それらは平和の象徴。
(コール)「俺の故郷に似てるな。」
(ラペット)「平和な田舎村って感じだね。」
扉の外見とは異なり、良い質素感のある空間だ。
―スタッ…。スタッ…。―
小人程で見える位置に、歩く人の姿が見えた。
(ソニア)「人だな。」
(コール)「ていうか神域には人がいるのか?最初に戦ったあいつは、多分人間だったぞ。」
神域:ファンファーレ。雲を超えた場所に存在する神の地。
食料など生活品もあることから、生活するのに苦労はしない。
あげるとしたら、地上へ行くには不便すぎることだろうか。
(タイダル)「ここを創った者は、物好きな奴だったんだろう。」
話しながら進む人を見ていた。
すると、高い丘にある教会へと入っていった。
(タイダル)「あそこに行ってみよう。」
―丘上の教会―
道中、敵対存在が今まではいたが、今回は一体も現れなかった。
(皆)「…。」
教会の前に立ち、人が出てくるのをしばらく待っていた。
だが一向に来る気配がないため、扉の前まで移動した。
―ガッ…。―
扉に手をかける。
(???)「客人か。入っていいぞ。」
移動する時、扉に手をかけた時。微かに音はなっていただろう。
だが聞こえるだろうか?空間が静かだから、聞こえたのだろうか。
中では人と話しているというのに。
―ギギギギギ…!!!―
教会の扉を開け中へと入るソニア達。
―スタッ…。スタッ…。―
さっきの人とすれ違う形で中に入った。
(人)「あの…!」
呼びかけられた。
(ソニア)「何か?」
その人は少し緊張した仕草と表情で、ソニア達を見ている。
(人)「失礼します。"波動の騎士様"。」
そう言い、来た道を戻って行った。
その言葉は、ソニア達三人に向けられたものであった。
(コール)「俺ら何で慕われてんのさ?初めて会ったよな?」
(ラペット)「さぁ?もしかしたら私達の人助けが伝播して、実質あの人を助けたことがあるとか。」
(タイダル)「それならあの人は大聖人だな。さて、そろそろ本題へと入りたいところか?」
黄金色のステンドグラス。日光が入り込み、教会を照らす。
それは黄金の光。黄金を浴びる、黒い神装なローブを羽織った男。
(???)「急かしているようだったか?まぁいいか。私から話すことはない。君達はあるか?」
(ソニア)「"波動の騎士様"って、何で呼ばれた?」
ローブの男は暫しの沈黙の後、口を開いた。
(???)「確かに、自分の正体を知ることは重要だ。ただ私が話さなくとも、自然に知れるだろう。」
―スッ…。ギュイーン!―
ローブの男は手を伸ばした。
するとどこからか、本の着いた杖が男の手にやってきた。
(ソニア)「何だ今の…。"魔法"…?」
男の力は、魔法のように感じた。
アリスやセレスティア。眷属達と同じような感覚を。
(???)「"育ての親"は物好きなのだが、"生みの親"は特殊でな。」
―ダン!パラパラ!!!―
男がその杖を着くと、ページが勝手に開き出した。
(神父:レダリオン)「"魔法"自体は、好きなのだがな。」
―――――
本のページが勝手に開いていく。
とあるページで動きが止まると、そのページは輝き始めた。
―シュイイイン!!!―
(コール)「おい!あの本光るぞ!」
(ラペット)「それ今関係ないでしょ!」
(タイダル)「ソニア。魔法の注意すべき点は?」
レダリオンの魔法発動を待つソニア達。だかそれは危険になりうる。
(ソニア)「何が来るか分からないことだ。どんなことだって起こる。」
レダリオンはソニアを見た。
(レダリオン)「ならばどうする?」
本の光は上限に達したのだろう。最光の状態で輝いている。
―ヂュミミミ!!!―
ソニア達は蒼電の波動を纏い、戦闘に入る。
(ソニア)「発動する隙を作らない!」
言葉を発する前、既にソニアはレダリオンの前にいた。
―ガキン!!!―
剣を思いっきり振り下ろしたが、弾かれた。顔の部分にヒビが入る。
その時レダリオンの周りに、透明な障壁が一瞬見えた。
―ドオン!!!―
ソニアは吹っ飛んだ。床かと思ったが、それは天井だった。
―ドサッ!―
(ソニア)「ッグ…!」
天井から落ちた。
(ラペット)「ソニア!!!」
―バッ!!!―
タイダル達はソニアを囲むように移動し、レダリオンの動きを待つ。
(レダリオン)「君を殺すつもりで蹴り上げたのだが、まだまだ動けるようだな。」
(ソニア)「骨が痛む…。昔の俺だったら、粉砕されてたよ…!」
(レダリオン)「狙いは良い。だが残念だったな。魔法発動は一ページ限定ではない。私の体力が持てば、複数発動も…。」
―ズオン!ズオン!―
教会内に無数の球体が現れた。
本の輝きが消えている。ページにある魔法を発動したようだ。
―バババババ!!!―
無数の球体全てが、光線を乱射し始めた。
(皆)「ッグ…!」
光線は四人全員に命中した。
無数の光線がある以上、教会内で歩みを止めることはできない。
(レダリオン)「教会が壊れないようにした。思う存分暴れたまえ。」
―ドドドドド!!!―
無数の光線を、何とか潜り抜けていく。
(タイダル)「強力な魔法だな。」
まだ余裕なタイダルだが、一生耐えられるわけではない。
それを確信にするものがある。
(ソニア)「タイダル…!」
―ポタ…。ポタ…。―
(タイダル)「まだ余裕だ。ただ、長くは続かない。」
ソニアは初めて見た。タイダルが少量でも血を流している姿を。
―バシャアアアン!!!―
タイダルが水の波紋を広げた。
―シュウウウン…。―
全ての球体は、形を縮め消えていった。
(レダリオン)「やはり、バレてしまえば弱いものだな。」
(タイダル)「あれだけ撃ってるんだ。防御は弱いだろ。」
(レダリオン)「それを完璧にしているのが神だ。未だ私は、それらにはなれないが。」
―パラパラ!!!―
再びページが動いていく。
―ビタン!!!―
あるページで勢いよく止まった。
(レダリオン)「少し、自分語りをさせてもらう。」
―ブオオオオオオ!!!!!―
ページが光った瞬間、台風のような強風が吹き始めた。
(コール)「なんだこの突風…!!!」
(ラペット)「ううう…!!!吹き飛ぶ…!!!」
何とか体制を保ち、飛ばないように耐える。
(レダリオン)「これはある魔法の影響だ。付き物だろう?変身前の演出は。」
(ソニア)「それで、自分語りは…!」
(レダリオン)「偶像を作れる魔法があるのだが、どんなに強く育てた者も、君達に放ったあの魔法で消えてしまう。だから大抵、私の戦いは短いのだ。だが!!!君達はあれを超えて見せた。いつか望んでいたのだ。出し惜しみなく戦える、至高の相手を…。」
―ギュイーン!!!―
光が増していく事に、風が収まっていく。
(ラペット)「どこまで光る気…!」
レダリオンが見えないほど、光は強まっている。
(レダリオン)「つまり何が言いたいのかというと…。とても楽しみだということだ!!!!!」
―ファアアアアアアアアアン!!!!!―
教会が光に呑まれる。
もはやレダリオンの空間を呑み込むのではと言わんばかりに、
教会の外にも漏れていく。
(レダリオン)「不思議と覚えている、幼子の記憶…。"かつてのあなた"を模倣する!!!研究し続けた魔法の全て!」
―グググ!!!バキバキ!!!―
光の中。音しか聞こえないが、レダリオンは何かに変身したようだ。
―バッ!!!―
光と風が止み、レダリオンの姿が霞んで見える。
次第に姿はハッキリと見えるようになった。
―『大妖怪:オキツネ』―
(レダリオン)「グァァァァ…。これが"模倣の魔法"だ。まだまだ、魔法はあるぞ!!!」
―パラパラ!!!―
ページが進み止まる。
―ギュオーン…。―
開いた本の上に、円状の入口が現れた。
"大妖怪:オキツネ"となったレダリオンは、その入口に腕を突っ込む。
―ズズズズ!!!―
一本取り出し、片方の腕を入れ、二本目を取り出した。
―ズザン!!!―
二本の大剣を構える。オキツネの巨大な体にも引けを取らない程の大きさ。
(レダリオン)「ただの大剣ではない!"大曲剣"!!!」
―ズザ!ガキン!ズザ!ガキン!―
"大曲剣"。
そうレダリオンが呼んだ大剣は、ソニア達に向かって伸びた。
ただ伸びたのではなく、曲がりながら。
―ダン!!!ザン!!!―
四人の攻撃で、二本の大曲剣を防いだ。
(レダリオン)「杖よ、私に追従しろ。魔法の発動を任せる。」
―スッ…。ドオン!!!―
レダリオンは大曲剣を教会の壁に叩きつけ、破壊した。
(コール)「は!?まじか!」
(ラペット)「性格変わりすぎじゃない!?ウキウキすぎるんだけど!」
(タイダル)「ここからは四人の力が必要だ。正真正銘、神へと近い者達。」
―ザン!ザン!―
地面に大曲剣を突き刺し構える。
(レダリオン)「グオオオオオオ!!!!!試練はまだ終わらない!狂えるほどの戦闘を!!!"ボヘミアン・ラプソディー"を!!!」
自由で狂えるほどの曲を、魔法で奏でよう。
―――――
―ズザ!ガキン!ズザ!ガキン!―
大曲剣が進み曲がっていく。
(コール)「規則性はないが、避けるのはそこまで難しくないぞ!!!」
(ラペット)「このまま攻め込む!!!」
(レダリオン)「魔法の可能性を舐めているな!」
―バシャアアア!!!―
大量の泡が本から溢れ出した。
地面がコーティングされたようにツルツルになってしまった。
レダリオンに向かって走っていた二人は、その場で勢いよく転んだ。
それは、大曲剣で仕留められる隙。
―ザバァァァ!!!ヂュミミミ!!!―
タイダルが泡を流し、ソニアが転んだ二人の前に立つ。
―ズザ!ガキン!ズザ!ガキン!―
大曲剣が転んだ二人を仕留めにやってくる。
―ズッッッサ…。―
突然、一本の大曲剣が遅くなった。
ービュンビュン!!!ー
片方の大曲剣は、加速してやってくる。
―ギン!ギン!ギン!―
動きの遅い大曲剣が気になるが、片方をいなすことに集中しなくてはいけない。
(ソニア)「速い…!!!いつ来るか気にしていたらキリがない!!!なら…!」
―ドヒュン!!!!!―
遅く進んでいた大曲剣は、異次元の速度で放たれた。
(レダリオン)「速度を蓄えた。蓄えの魔法だ。」
―ヂュミミミ!!!バチバチ!!!サッ…!―
ソニアは最低限の身のこなしで回避した。
―バッ!!!―
ソニアが避けたその一瞬、大曲剣は伸びきっていた。
様々な魔法を巧みに扱うレダリオン。隙ができることはほとんどない。
その一瞬の隙を、四人は待っていた。
(レダリオン)「ッフ…。引き時も重要か…。」
―ザン!ヂュミミミ!!!バチバチ!!!ズオオオオオオ!!!―
三人の波動が流れ込み、噴出する水の勢い。全てがレダリオンに命中した。
―ドオン…!!!ズズズズ…!!!―
レダリオンは丘の端まで吹っ飛んだ。
―シュウウウ…。―
模倣が解けていく。
(レダリオン)「ッグ…。ハァ…。試したいことはまだまだあったが、飛ばしすぎるとダメになるな…。」
(ソニア)「悔しいのか?満足そうだったけどな。」
(レダリオン)「…あの回避、偶然や予測で避けられるものではなかった。君の速さでもな。もしや、"思考を読み取ったか"?」
(ソニア)「いや、そこまで考えてなかった。考えてもキリがないから、吹っ切れたんだよ。」
(レダリオン)「…そうか。だがあの時、確かにそう感じたぞ。君ならば、"波動の極地"へと至れるかもしれないな。」
(コール)「"精神も特化し始めた"のか?俺の立場がないぞ。」
(ザス)「使わない力は強まらない。俺らを使う以上、あまり期待するな。」
戦闘後の会話を終え、後ろを振り返った。
―ボコォォォ…。―
草が禿げ真っ平らになった丘上。そこに教会はない。
(コール)「これ、どうするんだ?」
(レダリオン)「言っただろう、魔法は好きだと。」
これで試練は残り二つ。いよいよ神器:クラウン、最後の試練が近い。
彼ら魔人との約束もまた。
―――――
教会を建て直しているレダリオン。
ソニア達との戦い、その記憶を辿っていた。
(レダリオン)「教会を建て直したら、魔法を考えよう。次々にアイデアが湧き出てくる。そういえば彼の名前、"ソニア"だったか。"ソニア"、"ソニア"…。あぁ、なるほど。"君の"。であれば"あの二人"は?そうだな。まずは、名が分かる魔法でも考えて見るとしよう。」
レダリオンはその日、昔を思い出した。
ーーー「魔法」ーーー
悪の神:クラマドが生み出した力。
魔法とは理を無視するものであり、狂気にも祝福にもなりえる力。




