表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎士のソニア  作者: 深緑蒼水


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/27

7 : 化身が棲む山

『騎士のソニア 【7 : 化身が棲む山】』


ーファサァァァ。ー

いつもとは違う、少し冷たい風を肌で感じる。


「おはようございます。待ちましたか?」


昨日ソニア達は、風花と共に、山へ向かうことを同意した。

風花が言う"彼ら"とは"風の化身"である。

ソニアにとって、神の創造物と言われる化身に対し、聞きたいことがある。


「いや、さっき来たばっかだ。」

「そうですか…。では行きましょう。早朝は人が少ないですから、少しゆっくり行けますよ。」


和傘をもつ風花を真ん中に、歩くソニア達だが、風花の足取りは早く。

一番前に出て歩いていた。

街を早足で歩くのは、風花にとって日常なのだろう。

だが、昨日よりその一歩は早く出ているように見える。


「化身は山にいるの?」

「はい。たまに降りてくることはありますが。」

「でかい龍なんだろ?」

「そうですよ。山から見守る、神たる使いの龍なのですよ。」


ー天空山ー

名の通り、雲を越える頂をもつ山である。

円を描くように登り、雲へと近づいていく。


ーザッ!ザッ!ー

「ハァ…。きついね…。」

「平気なのか…?」

「少しきついですよ。昔はよく登っていましたから…。ほら、もう少しですよ。」


少しきついと言うが、凛としている風花に引っ張られるように、足を運んでいく。いよいよ雲へ入る時。

雲の中はよく見えず、落ちないように前に進んでいった。雲を抜けたとき…


ーフォォォ…!!!ー

空気が変わった。神風が吹いている…。円描くように駆ける、番の龍が…。


ーズズ!!!ー

(風の化身:風円龍エンク&エンタ)「…風花か。」


(エンタ)「人の子もいるぞ。」

エンタが見定めるように、横目で近付いてきた。

(エンク)「珍しいな。山を登り会いに来るとは。」

「はい。知り合った友人を連れてきました。天空山から見える景色は、珍しいものですから。」

「…そうか。風花、本音を話すといい。遥か昔の時代で生まれた我々だ。人の隠すことなど容易く分かる。」


風花は言いづらそうにしている。


「俺からいいか?」

「君が?…待て。いや、話していい。」

「父と俺に、発現した力を知りたいんだ。」


ソニアは蒼い光を、"波動"を出して見せた。

エンクとエンタは波動を見ている。

何か絶妙な雰囲気が漂い、エンクが話始める。


「"波動"…。」

「知ってるのか…?この力は一体…。」

「力の源は、そこまで重要ではない。…"絆を紡ぐのだ"。波動とは、"生命を繋ぐ力"。だからそう名付けられた。」

(エンタ)「人の子。力が発現したということは、必要だから目覚めたのだ。」


その場にいた全員が、それ以上話すことはなかった。

次にバトンを渡すように、風花とエンクを残し、ソニア達は少し山を下りた。


「…君は?」

「予想していませんでした。話したいことがあると言っていましたが…。

私の悩みが、軽く見えてしまいますね。不安なのです。私が王になること。知っていますよね?」

「知っているとも。見ているからな。」

「未熟な私が、王になるのが…。」


人は成長し見た目が変わり、強くなっても変わらないことがある。

エンクが見て、風花の弱さは変わっていなかった。


「風花。君には武の力がある。それは王に相応しいものだ。だが力の強さが王の器であれば、私でもいい。だが人はそれを望んでいない。私に幼い記憶はない。生まれた時からこうなのだ。だから、人の考えを理解することは難しい。

私にも不安を感じることがある。いつか訪れる別れや、予言を乗り越えることは、とても難儀なことなのだよ。」

「…。時が止まることはないのでしょうね…。」

「あぁ、時は止まらない。もう止まることはなくなってしまった。だからこそ、不安の激流の中、成長の糧を見つけるのだ。」


風花はただ、大丈夫とだけ言われたかったのかもしれない。

だがエンクの言葉が、不安を抱える、一人の少女の背中を支えているのは、答えだろうか。


ーーーーー

すっかり夕日が沈む時間になっていた。

風花の話が終わったあと、エンクの背に乗り一瞬にして下山した。

背から感じた夕日の風は、答えを聞いたあとの悩みを払ってくれるものだった。

「今日はありがとうございました。」

「いや、俺の方だ。力を知るきっかけを得れた。」

「それならよかったです。…あの、実は…。明日、"王式"がありまして…」

「王式?」

「私が次の王になります。父が歳になりますから…。それで、来てくれませんか?近くでなくとも、見ていてほしいのです。」

「見に行くよ。いいでしょ?」

「あぁ、旅を急ぐ必要はない。」

「…ありがとうございます。」


今日も見えなくなる夕日を背に、それぞれの帰路に着く。

明日はどうか、晴れますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ