2:神域の進行者
『神々のファンファーレ【2:神域の進行者】』
タイダルぼっちの手に包まれ爆速で、神域:ファンファーレへと向かうソニア達。
―神域:ファンファーレ―
―スッ…。ドン!!!―
丁度、ファンファーレの地に届いた。
(ラペット)「ハァ…。ハァ…。」
既にラペットの体力は切れかけている。
(コール)「ここが…?」
―フオオオオオ…。―
コールは下を覗いてみた。
「凄いな…。オーシャンが点だぞ…。」
あんなに広かったオーシャンが、指先で摘めるほど小さく見えた。
「なぁ、ファンファーレって…。」
ほぼ影としてしか見えなかった、神域:ファンファーレ。
天空の城は、ただの都市伝説ではなかった。
今地として踏んでおり、形を成し、目の前に存在している。
「あぁ。かなりデカイな。大陸の半分くらいのデカさはある。」
地上では摘めた存在だが、今や立場は逆になった。
「ぼっち。地上のクレーターを消しておけよ。」
―グッ!―
拳を丸め、親指を立てたぼっち。
何の躊躇もなく、ファンファーレから飛び降りた。
「うわ…。躊躇とかないんだ…。」
「あの程度で化身は傷付かない。強引だが、早く安全な行き方だったろ?」
ラペットはここまで来た光景や感覚を思い返した。
そして一つの考えをしてしまった。
嫌なことほど消えないものである。
行きがあるのなら、帰りもあると。
―ヂュミミミ!!!―
未知の地かつ神聖な場所であるが、常識外れの出来事があったため油断していた。
「何か感じたな?あの扉の向こうか。」
ソニア達は一斉に、何かの気配を感じた。
それは、大扉の向こうからの威圧感。
(コール)「ぼっちの衝撃で勘違いさせたか…?」
―スッ…。グッ!―
タイダルが大扉を開こうとしたが、ビクともしない。
「ダメだな。鍵があるというより、固定されているような感覚だ。」
「ひとまず、みんなで押してみようよ。だいぶ頑丈そうな扉だし。」
四人が一列に並び、一斉に力を込める。
「アー!ザス!お前達の力も必要だぞ!!!」
―グググググ!!!!!―
鉄製の扉を難なく破壊できるアー。
それ以上の力をもつザス。
全員の全力を込めても、大扉はビクともしなかった。
「んー。水圧で破壊するか。」
―ザン!ギュイイイイイイイン!!!!!―
剣を扉に向け、水を剣先に凝縮し始めたタイダル。
本当に破壊する気のようだ。
「待てタイダル!俺達、波動を使ってない。それを試して、他にも何個かやろう。それでも無理な時の最終手段が、タイダルの力だ。」
水を操れるタイダル。
凝縮した水圧は強力で、実際に大扉を破壊できるだろう。
だがそれでは、会話ができなくなる可能性がある。
「それもそうだな。」
―ヂュミミミ!!!―
三人は波動を纏い、再び扉を押す。
―ギュイイイイイイイン!!!―
手応えがあったのだろう。
大扉は波動を吸収し、黄金の光を発し、開き出した。
(コール)「波動を吸収したのか?」
「何より開いたね。」
「タイダル?」
扉が開き、三人は先に進んでいる。
だがタイダルは剣を持ったまま、長い橋の先を見ていた。
「よく聞いてみろ。」
タイダルは三人の先頭に立ち、剣を構えた。
―ダッ!ダッ!ダッ!―
綺麗に重なった、規律のある音が響く。
「音?なんだこれ?」
「あれ見て。何か来てるよ。ていうか多い…?」
「大勢、あの身なり…。軍隊か!!!」
―ダッ!バッ!!!―
橋の先より進行してきた軍隊が歩みを止めた。
基本的に全員が重装備のようだ。
(???)「人よ。"君達を、待っていた"。」
隊列の先頭に立つ者が、そう言った。
重鎧に身を包み、三メートル程の身長に同程度の大槍と大盾を構える姿は、
人間ではないことを思い知らされる。
(ソニア)「"待っていた"とは…?」
(軍隊:チャリオット)「私は"チャリオット"。"善の神:ガラハハの子"である。我ら"神子"は、君達に"試練"を与える。」
(ソニア)「試練?」
「"クラウン"を、取りに来たのだろう?」
―ドン!―
チャリオットと名乗る者は槍で地面を鳴らした。
―バッ!!!―
軍隊は展開し、戦闘態勢に入った。
「試練を乗り越え、クラウンを手にせよ。」
―ダダダ!!!―
進軍を開始する隊員達。
「百人はいるよ!!!」
(コール)「全然話し合いで終わらなかったな!」
(ソニア)「話し合いの結果がこれってわけだろ!」
(タイダル)「安心しろ。超えていくぞ。俺達で。」
「軍隊、進行せよ。」
―――――
ーギュイイイイイイイン!!!ー
タイダルは剣先に水を凝縮し始めた。
(チャリオット)「彼らは橋から落ちても死にはしないが、耐えられる我々しか残らないな。」
(???)「…。」
(???)「…。」
チャリオットの隣で待機する二人の影。右翼、左翼といったところだろう。
―グッ…!ダン!!!―
チャリオットは踏み込み、飛んで来ている。
隊列の先頭へと降り立ち、大盾を構えた。
―シュイイイン!!!―
黄金の光が展開された。
―バシャアアア!!!―
大波が押し寄せるが、チャリオットの盾を貫けず左右から溢れていく。
「意味がないな。いいか、水を止める!そうすれば相手が雪崩れ込んでくる!正面から戦うしかない!!!」
―パシャ!―
水の流れを止めた。
流れ切るまで、相手の姿があまり見えない。
―カチャ…。ダン!!!―
鈍い音が響いた。
(チェックマン)「当たるだろう。」
大口径の弾は発射され、水を貫通した。
―キン!!!―
割れた弾頭が、足元に転がる。
「遅い弾だな。俺の水はもっと速いぞ。」
(チェックマン)「…!」
タイダルへの射撃は、予測で発射した。
実際当たる軌道で飛んでいたが、タイダルの反応が速すぎた。
そしてタイダルの姿を捉えた時、既に指は下がっていた。
―ビュン!!!―
肩に命中した、水の弾。
極限まで薄め速くした水は、岩だろうと貫ける。
―ジワァァァ…。―
肩が熱く痛む。
(チェックマン)「驚いた…。だがもっと速い者がいたら、防げるか?」
―バッ!!!―
いなかったはずの双剣使いが、真横にいる。
(オーヴァス)「…ッフ!!!」
―ダン!!!―
首の手前、二本の剣に止められた。
「双剣使い。速いのはそいつらもだ。」
(ソニア&コール)「…!!!」
「さて、水を止められるのなら意味は無い。俺は向かう。」
―ダッ…。ダッ!!!―
タイダルは一人で軍隊へと向かっていく。
「ちょっと!本当に一人で行くの!?」
ラペットはタイダルの後を追い走っていく。
「(下手に盾で守っても、邪魔になるかな…。あの弾から守るだけで…)」
「ソニア!あんたも行け!!!こいつの速さ、俺以上じゃない!"人間"か?お前…!」
「任せる!」
ソニアも走り出し、二人の後を追う。
(オーヴァス)「逃がさん!」
オーヴァスは走り去るソニアを追おうと、コールを無視した。
ーギン!!!―
剣が激しくぶつかった。
「どこ、行くんだよ。お前の前には俺達がいるんだぜ。」
―グググ!!!バサァァァ!!!―
ザスが憑いたことで脚力が増し、翼を出すことかできるようになった。
(オーヴァス)「なるほど。悪魔憑きか。お前が一つ、秘密を出したというのなら教えてやろう。"私は人間だ"。案外多くいるぞ。ガラハハ神により助けられた人間は。私はその子孫だ。」
―ザン!ザン!―
大振りな攻撃が多い隊員達。
タイダルは最小限の動きで、隊員達を無力化していっている。
「ラペット!」
盾で耐えていたラペット。
複数を引き付けていたところ、ソニアが無力化した。
「ありがとう…!」
「ラペット。一番最後尾にいるあいつをやれるか?」
「肩を抑えてる人?」
「あぁ。相手の邪魔をするかもっていうのは、何も気にしなくていい。実際俺達なら避けられるかもしれないけど、助けたっていうのは事実だ。任せたぞ。」
「うん…!!!」
「(タイダル。久しぶりに見たけど、やっぱり強いな。でもあれを一人でやるのは、楽じゃないだろ!)」
―ザン!ザン!ザン!―
次々と、隊員を薙ぎ倒していくタイダル。
(チャリオット)「そろそろ私も動く。やはり彼らでは止められないな。」
(タイダル)「動くか。」
―バシャアアア!!!―
タイダルは水の波紋を広げ、残りの隊員達を吹き飛ばした。
(チャリオット)「君は強いな。一瞬にして、隊員達を倒すとは。」
チャリオットは重くずっしりとした歩みでタイダルへと向かう。
―ダン!!!―
重装備とは思えない速度で加速し、タイダルとぶつかり合う。
大槍に体格のいいチャリオットに攻撃されてしまえば、
剣はへし折れてしまうだろう。
だがタイダルは、水を鋭く凝縮し剣に纏わせている。
ならば大槍は斬れるが、チャリオットは大槍にも黄金の光を纏わせている。
その結果互いの得物が触れられない間を破壊しようとする、
強い衝撃が広がっている。
「タイダル!!!」
―バッ!ヂュミミミ!!!―
ソニアはチャリオットからの攻撃を自身に移そうと大胆に飛び、
必要以上の波動を剣に溜め込んだ。
(チャリオット)「盾でガードするだけだが…」
―バン!!!―
ソニアを狙う、銃声。
(チェックマン)「チェックメイ…」
―バッ!ガガガ…!!!―
ソニアに重なるように飛び、大盾を構えるラペット。
弾は盾に食い込んだが勢いは止まらず、進み続ける。
「なら…!!!返してあげる!!!チェックメイトだよ!!!」
―バン!!!―
撃ち返した弾はより速い勢いで、チェックマンの銃を吹き飛ばした。
(チェックマン)「弾も言葉も返されたわけか…。」
弾を吹き飛ばしたラペット。
そのまま、チャリオットが構えた盾に攻撃する。
―ガン!!!―
「うっ!硬すぎ…!!!」
雷に打たれたような衝撃が手から流れる。
「(微力ながらも盾がズレた…。溜め込まれた波動をくらう。強い衝撃だが一撃ならば耐えられる。まだ勝機は…)」
―ビュオオオオン!!!―
音速のような速度で、オーヴァスが飛んできた。
―ダン!!!―
オーヴァスはチャリオットの腹部に激突し、
チャリオットに痛みはなかったが衝撃で怯んだ。
(オーヴァス)「奴が来ます…。凶暴な悪魔が…。」
(チャリオット)「…!!!二人だけではない…!三人!!!」
―カラン!ダン!!!シュイイイン!!!―
大槍を手放し、大盾を展開した。
(チャリオット)「来い…!私は守護者だ!!!」
―ブオン!!!―
空を切る音が遠くで一瞬、聞こえた。
「力を入れすぎだあぁぁぁ!!!」
(ザス)「加減は要らねえ!!!」
―ザン!!!!!―
ザスに振り回されているコール、ソニア、タイダルの攻撃が、
チャリオットの大盾に命中した。
―ズザン!!!!!―
黄金の光は払われ、大盾は割れた。
そしてその衝撃はチャリオットの鎧へと向かった。
―バリン!!!―
(チャリオット)「ッグ…!」
―カラン!カラン!―
膝を着いた。そして前方の鎧が崩壊したようだ。
(チャリオット)「なるほど…。」
―スッ…。―
チャリオットは少し痛みを堪えながら立った。
「耐えるのまじか!!!」
「悪魔憑き。剣を下ろしたまえ。殺し合いをする訳ではないのだから。」
「あなた…。」
ラペットはチャリオットを見上げた。
胴体部の鎧は砕け、顔部分の鎧も割れている。
その影響で、半分は顔を見れた。
黄金に靡く長い髪に、白く神々しい肌。
(チャリオット)「あぁ。私は女だ。常に鎧を着ているせいで、知らない者も多いが。」
「びっくりしたや。声も低かったから。屈強な人なのかなって思ってた。」
「声がこもってしまってな。どうしてもそう思われてしまう。」
(ソニア)「これで試練は終わりか?」
「私の試練はな。ここから先、神子達が待っている。全ての試練を乗り越え、"本当の神子"へ会いに行け。彼がクラウンを持っている。」
―スタッ。スタッ。―
チャリオットは倒れた隊員達の元へ向かいだした。
(タイダル)「チャリオット。隊員達は全員無事だ。急所は避け、致命傷にならないようにした。」
―カチャ…。―
倒れた隊員達を起こし、状態を確認する。
「そうだな。確かにそうらしい。君はあれで、加減していたのか?」
「お前相手には全力だった。イカれた耐久値だな。」
「私はそれが取り柄だからね。」
ソニア達は橋を渡り、先へ待つ神子達の元へと向かった。
「なるほど。恥ずかしさを堪え演技をしたが、確かに。"運命から授かった神託通りだ"。」
チャリオットより告げられた、クラウンへの試練。
それは神子達を倒し、試練を乗り越えることである。
まずはチャリオットを撃破。第一試練突破だ。
ーーー「神子」ーーー
神の子供を意味する言葉。
チャリオットは善の神:ガラハハの子供と名乗ったが、純血の子供というわけではないようだ。




