17:君達の夢
『魔女のアリス【17:君達の夢】』
ー魔女の屋敷ー
あの日から数日。
ーチュン…!チュン…!ー
(ソニア)「よし…。」
(鳥)「ピヨ。」
魔法で作られた鳥。
手紙を持たせ、その姿を見送る。
「じゃあ、頼んだぞ。」
ーバサァ…!ー
鳥は羽ばたき、海に向かって飛んだ行った。
目的地は、地平線の果て。
表大陸。
「さて…。」
ーーーーー
瘴気が晴れ、魔物の脅威が去った。
そのため、村に戻ったコールとラペット。
(コール)「来たか。」
門外で、ラペットを待っていた。
「うん。コールは荷物持った?」
「あぁ。必要な物は持った。じゃあ行くか!」
「魔女の屋敷って、行ったことも見たこともないんだよね。どんな所なのかな?」
ー魔女の屋敷ー
(コール)「おお…。」
「うわっ…!でか…!」
塀で囲まれ、門が鎮座し、巨大な屋敷がそびえ立つ。
あの日旅立った場所。
ーギギギ…!!!ー
勝手に門が開き始めた。
(人形)「お待ちしておりました。」
「初めまして!私がラペットで、こっちがコール。」
「はい。お聞きしております。ですがアリス様はまだ、ぐったりしておられます。肝心のソニア様は、セレスティア様の元に向かい、まだ帰ってきていません。なので空き部屋をご案内します。どうぞついてきてください。」
「悪いな。高待遇させて。」
「構いませんよ。あなた達は、"裏大陸の英雄"ですから。それに、アリス様の友人でもいらっしゃる。私としては、とても嬉しいのです。アリス様に友人と言える人が、できたのが。」
ー鋼鉄工場:クルサン(跡地)ー
竜王との戦闘後、魔物達はクルサンへと集められた。
簡易拠点が作られ、拘束された魔物達を収容している。
隅から順調に、クルサン復興も始まっている。
竜王はというと、クルサンの地下に掘られた竜王専用の檻。
ータッ…。タッ…。ー
薄暗い地下。
階段を降りていく。
セレスティアと竜王には、聞きたいことがある。
「ここであってるか?」
(人)「はい、ソニア様。どうぞ、この先に。」
ーガガガ!!!ー
頑丈な扉を開けた先には、椅子に座りティーを嗜むセレスティア。
そして檻に入っている竜王。
(大魔女:セレスティア)「あら。来たのね。」
(竜王:グラント)「波動の騎士。これを見てどう思う?」
竜王は、ソニアを見てそう言った。
「鎖はないんだな。」
「そう。いつでも抜け出せる。なのに奴は、ずっとこれだ。」
「あなたはもう、人を殺せないわ。かつての魔法使い達を知っているなら、そう思えるでしょう?」
(ソニア)「滅ぼされるべき種族ってやつか?」
「クラマドの名は知っているか?宇宙を呪った、悪の神を。」
「あぁ。詳しいことは知らないけど。」
「クラマドは神殺しのため、様々なものを創成した。"魔物"、"魔法使い"。"八体の悪の使徒"。そして"魔法"という、理を無視する力。クラマドは悪の心をもつ存在を創った。」
「そうだったのか…。それで残ったのは、セレスティアとアリスだけだよな。」
「そうね。かつて起きた戦いによって、一族は滅んだ。でも私は、それでいいと思っているわ。だって命を滅ぼそうとしているのよ?」
「でも二人は、優しく育ったんだな。」
「…彼のおかげよ。まだ生まれたての私を、生かしてくれた。魔法使い達を滅ぼした神。"海神:アリオネ・クオリ"。」
「"左大陸"にはアリオネの伝説がある。彼は相打ちにより戦死したが、"海の眷属"は今も生きているだろう。」
竜王とセレスティアから語られた、新たな情報。
「それでそれで?檻から出る気になった?」
「…。裏大陸にいる彼らの命令は、必ず解こう。だが全ての魔物達が、私と同じ考えではない。他の大陸にいる者達は残念ながら、私から離れた者達だ。」
「そう。それじゃあ、出る気はあるのね。」
ーサッ…!ー
セレスティアは空気を払った。
ーゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!ー
地面が上がっている。
ージュオオオ…。ー
檻や地下の石壁と床も、土に形を変えていく。
ーダン!!!ー
地下が消え、ソニア達は地上に出ている。
「凄いな…。あれ全部魔法だったのか?外にいた人も?」
「そうよ。」
「分かるだろう?数多くの魔法使いが生きていたら、どうなっていたか。」
ースタッ。スタッ。ー
セレスティアが歩いていく。ソニア達はその背を追いかけていく。
「セレスティア。彼らと共に、ソーンがやった罪の後始末をさせてほしい。」
「直すつもり?」
「あぁ。」
竜王は、広大なクルサンの土地を見た。
「人がここに住んでいた。それが跡形なく消えた。…。いくつの場所を、奪ってきたのだろうか…。」
「なら救っていけばいいわ。あなた達が奪ったものは二度と戻らないけれど、私達みたいな寿命を貫通した存在なら、救ったものの方が多くなることができるはずよ。」
「もし、救ったものの方が多くなった時、私が昔を忘れていたら…」
「そうはならないわ。あなたは惰性や義務感で、人助けをしないでしょう?
本当は、人を助けたかったはずよ。」
また竜王に流れる、過去の記憶。
地面に転がった人々。
時には、まだ息をしている者がいた。
ー"助けて…"ー
そう言われる度、竜王は心を殺し、人を殺していた。
「あぁ。助けたい人しか、いなかったよ。殺したい命は、一つもなかった…。」
セレスティアの歩みが止まった。
魔物達を収容した、簡易拠点だ。
「セレスティア。一つ、聞いてもいいか?」
「なに?」
「"なぜ、助けようとする"?」
命を殺すために生まれた魔法使い。
だがセレスティアは、創造主の意図から反した生き方をしている。
「私を育ててくれた人がいたわ。…魔法使い。当時の裏大陸や世界では、忌み嫌われる存在。それでもあの人は、私を拾って育ててくれた。その人が、ある本をくれたわ。よく、読んでももらった。"あらゆる生物が、幸せに暮らす話"。憧れたのよ。そういう世界に。だから竜王。生まれを気にする必要はないのよ。人が、命が、私に環境をくれた。私はそんな世界が好き。だから私は…。」
ーバッ…!!!!!ー
セレスティアは大きく両手を広げた。
「"可能性"をあげるわ。」
簡易拠点も形を変え、土に変わっていく。
「命令を解く。」
ーグオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!ー
竜王の心にある、どよんだ黒い靄がようやく、心の中から消えていった。
それは生まれて初めて話せた、本音だった。
長い長い、夜の終わり。
「では私も、彼らと共に復興に向かう。」
「グラント。いつか、叶えましょう。」
ーバサァ…!!!ー
竜王は羽ばたき、魔物達と共に移動していった。
「長い話を聞かせたわね。」
「いや、割り込む気なんて起きなかった。いい話だったよ。」
「あなたも話したいことがあるでしょう?今の彼らは動き疲れるまで、動き続けるわ。だから私と話しましょうか。」
ーーーーー
アリス達と建てた、英雄達の慰霊碑へと移動した。
「それで、聞きたいことは?」
「"魔人"の体を、つくり変えることは出来るか?不確かな、歪な命を。」
「…。人を創ったり、傷を治すことは出来るけど、書き換えを行ったことはないわ。やろうと思えばできるかもしれないけど、誰かの手が加えられている。それが神となれば、安全に書き換えられるとは言えないわ。」
「そうか…。じゃあ眷属にやったように、寿命を超えるとかは?」
「蘇生やそういったものも、人相手に何とかやれる程度よ。研究していると思うんだけれど、なぜか"命に関わる理だけとても厳重"なのよ。」
「やっぱ簡単に、命を動かせるわけじゃないんだな。」
「やはり神の力、あるいはそれと同等の力が必要だと思うわ。竜王なら、知っているかもね。」
魔人を救う手立ては、セレスティアにも出来ないことらしい。
それほどまでに神は強大であり、命に関する理も、
何かの意思を感じるほどに強力なのだという。
ー数日後ー
竜王が屋敷近く、海岸を眺められる丘にいると、セレスティアから聞いた。
「ここは人目がない。それに、海や風を感じられるいい場所だ。」
「竜王。」
「セレスティアから聞いている。魔人を助けたいそうだな。…"方法ならばある"。」
「…!どんな!?」
「だがあくまで可能性だ。仮に書き換えができなくても、何かは出来るはずだ。聞こう。今でも表大陸上空に、"あれ"はあるか?」
「上空…。晴天の日に薄っすら見えるあれか?」
「あるのだな。であれば、"ファンファーレ"へ行け。」
「行くって…。どんな場所だ?何をすればいい?」
「"神域:ファンファーレ"。かつて、"善の神:ガラハハ"が住んでいた場所。そこにあるとされる"神器:クラウン"を手に入れるんだ。」
「神器?」
「神が器となる物に、力を入れた代物だ。それを武器とし自らの得物としたり、誰かに力を分けるため使う。」
「でもどう行くかだな…。ポゼに飛んでもらうか?てか、竜王が連れてってくれるのか?」
「私は無理だ。」
「あぁ、そうか…。でも上空だろ?アリスかセレスティアが飛ばしてくれるか?」
「いやその必要はない。」
竜王は海を見た。
その地平線の先は、表大陸。
「何を見てるんだ?」
「"水の化身"なら、神域まで運べる。」
「手紙がもう渡ったのか…。よく分かったな。全然見えないのに。」
「感じたのだ。きっと向こうも同じだろう。」
「まあ、送り迎えがちゃんと出来るなら俺はいいけど。あとは何もないか?」
「"神の力"に耐えられるかどうかだな。"まぁ、君なら大丈夫"だと思うが。」
「ほんとかそれ?魔人よりヤバくないか?」
「あとは…。まぁ、戦闘にはならないだろう。」
「誰かがいるのか?」
「居るはずだが、君なら話し合いでどうにかなる。私が知っていることはこのくらいだ。すまないな、確証がなくて。」
「いや十分だ。方法があるだけでいい。それじゃあ俺は行くよ。」
遂に得た手がかり。
神域:ファンファーレ。
神が住んでいた地へと向かうのだ。
「ソニア。」
竜王が振り返り、こちらを見ていた。
「一つ、忠告しておこう。"波動が目覚めたのは、クラマドの復活が近いから"だと、私は思う。現に、死んだはずのソーンは復活したのだからな。」
「…。でも俺は大丈夫だと思うよ。タイダルが言ってたこと、今なら分かるんだ。俺達には情がある。それがあれば、負けることはない。」
「そうだな。」
裏大陸の旅も終わった。
また新たな絆を結べた。
今までの絆も、これからの絆も、きっと強固なものになり、
神へと届くだろう。
ー次の日ー
ーチュン…!チュン…!ー
昨日と同じように、丘から海岸を眺める。
(竜王:グラント)「いいのか?」
(大魔女:セレスティア)「私は大丈夫。あの子達に任せるわ。」
ーーーーー
ーザァー…。ザァー…。ー
キラキラと波打つ波に立ち、上を見上げる。
(ソニア)「ぼっち。新しい仲間だ。」
(水の化身:タイダルぼっち)「ぼぉー。」
(コール)「おー…。これが化身か…。」
(ラペット)「この子に乗るの?」
「安心しろ。強いし、速い。安定性もあるんだよ。」
ータッ…!タッ…!ー
海岸に向かって、走って来る足音が聞こえる。
(アリス)「ハァ…。ハァ…。」
(黒野助)「アリス様。魔法でよかったのでは?」
「体力を鍛えるためでもあるのよ…。」
(アヤ)「間に合ったからいいけどね。」
(二キャット)「忘れ物はないかーい!」
二キャットは包帯で身を包み立っていた。
「大丈夫だぞ!!!お互いに傷が出来たな!」
「まさか、腕を治さないだなんてね。」
(黒野助)「英雄となった旅の、証らしいですよ。」
(タレン)「機会があれば、また来るといい。裏大陸にも"大陸列車"を作るつもりだ。」
(ソニア)「そうか!今度は剣を置いて来るよ。」
(ルーサット)「その時には、以前の裏大陸に近付ける。」
(ファーマン)「戦士として、君達を尊敬する。よく戦ってくれた。」
ルーサットとファーマンも、包帯で包んでいるが無事のようだ。
「じゃあぼっち。そろそろ行くか。」
ーザアアア…!ー
ぼっちは背を向け、表大陸へと方向を移していく。
「ぼっち、頭に登るぞ。落ちないから、そのまま進んでくれ。」
ーサッ…。ー
段々と遠くなっていく、みんなの姿。
「スッ…。アリス!!!頑張れよ!!!」
「…!」
動けることなく支配の時を進めていた、あの日々。
けれど変わった。
二人で門の外を超えた、あの日から。
「えぇ!!!いつかまた会いましょう!!!その時は私、大魔女になっててみせるわ!!!」
「俺達は一足先に、夢を叶えるぞ!!!」
遠くなっていく。
声も、姿も。
伝えたいことは、まだ多いのに。
「あなた達のおかげよ!!!ありがとう…!!!またね!!!」
一番伝えたい言葉。
届いただろうか。
(セレスティア)「ありがとう。」
セレスティア達も、ソニア達の旅立ちを見守っていた。
「…グラント。下を見なさい。」
「竜王!私の相手をしなさい!ここにいるから!」
「だそうだ。」
「行っていいわよ。あなたとあの子は、互いに成長出来るもの。」
(竜王:アリス・グラント)「そうか。」
ーバッ…!!!ー
丘から飛び降り、アリスの元へ向かう。
「(クラマド。君と再び会うならば、私は君の敵になる。けれど自分だけでは、敵わないことくらい知っている。だから彼らと共に、戦うのだ。我々の道は、君の場所にない。…場所を知った。自分の場所を。)」
ー『魔女のアリス【Fin】』ー
ータイダル・オーシャンー
(タイダル・オーティス)「帰ったか。裏大陸の英雄。まさか、人員も増えるとは。それで、上に行くんだな。」
「そうだ。俺達は上に行く。」
「鋼鉄騎士や、アルメンカルの騎士もよかったけど、こんな話があるんだ。ついて行くぞ。」
「私も!」
「元気なのはいいことだ。」
「それで、どうやって行くかなんだけど…。」
「…?"奴"に任せよう。"吹っ飛んでいける"。」
「ぼっちが?」
「あぁ。」
次なる目的地、神域:ファンファーレ。
上空に位置する、かつてガラハハという神が住んでいた場所。
そんな高い場所に、ぼっちで行けるらしい。
「では、一週間後に向かうとしよう。」
「休みってこと?」
(タイダル)「それもあるが、"俺も行く"。」
(ソニア)「…!」
一週間後、ファンファーレへと向かう。
ーつづく…。ー
こんばんは、深緑です。
これで魔女のアリスも終わりとなります。
ですが次回作までの間に起こる話として、まだ数話ほど投稿します。
次回作は今までの集大成として、展開していきます。




