15:魔天の王
『魔女のアリス【15:魔天の王】』
起き上がり、意識を取り戻したファーマン。
突如現れた竜王に対抗すべく、一人で実戦場へと向かった。
ファーマンが生やした氷の円柱により、竜王との距離は近い。
(竜王:グラント)「…!!!」
―ゴオオオオオオオオオオオオ!!!!!―
轟音の音を放ち、高温の蒼炎が放たれた。
(ファーマン)「…!!!」
―バキバキバキバキバキバキ!!!!!―
自身も凍り付くほどの勢いで、氷の塊をつくったファーマン。
(黒野助)「…!爆発するぞ!!!」
―ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!―
目も耳も奪われるほどの衝撃が、アルメンカル上空で起きた。
(ソニア)「どう、なった…。」
ぼんやりとした視界で、キンとなる耳で、
ファーマンと竜王の姿を確認しに行く。
―ジュウウウウウ…!!!!!―
高温を放ち、倒れているファーマン。
続けて上空を見る。瘴気が晴れており、竜王の姿が見えない。
「消えたのか…?とりあえず、ファーマンを…!!!」
―数時間後―
―パチパチ…。―
すっかり辺りも暗くなり、砦内にて火をつけ、
ファーマンの目覚めを待つ一同。
(ソニア)「あの姿は、竜王でいいのか?」
「光を通さない漆黒の鱗。高温の蒼い炎。きっと、あれが竜王よ。」
(コール)「いよいよ竜狩りか。男のロマンだが、早くもデカすぎる壁だぞ。」
(アヤ)「あれって本体なの?大魔女が封印していたら、動けないはずだよね?」
大魔女セレスティアが竜王と封印し合っていたからこそ、
竜王は現れずここまで進むことができた。
(ファーマン)「あれは、本体ではない…。」
(皆)「…!」
「無事だったのね…。」
「迷惑をかけました。」
(ラペット)「体、凄い傷だよね…。」
「私は諸刃の剣だ。身を焼き凍らせなければいけない。だから損傷は治っても、体の傷は増えていく。」
(黒野助)「本体ではないと言っていたが…」
「爆発の中、竜王が巻き込まれたのを見た。だが血を出すどころか、声すら発していない。そして確信は、意識が切れる寸前。奴の体が…。いや、術が崩壊していった。あれは召喚された幻影にすぎない。」
「…きっと、お母様の封印は破れたわ。竜王が封印を破り、互いが互いを封印し合う泥試合を終わらせた。そうして、乗っ取った。でなければ、あんなことはできない…。実際に、きっかけはあった。魔物が魔法を使えたり、あの使徒の言葉だって…。もしかしたらお母様は、敵になるかもしれないわね…。」
(ファーマン)「アリス様。無事だと信じましょう。操られていても、私が無事だったように生きていると。」
(ソニア)「竜王が復活したとして、残された時間はないよな。」
(黒野助)「これから起こることはあの日と同じ、魔物の進軍。だがこちらは絶望的。多くの戦士を失い、メルセデスをも…。それに、セレスティア様の力は借りられない。」
「待て。メルセデスが…?」
ファーマンは一瞬処理が追い付かず、固まっていた。
「あぁ。クルサンは、滅んでいたよ…。」
「そうか…。」
「あれはどうしようもないと思うぞ…。相性が悪すぎた。」
「そんな者がいたのか…。でも君達がここに居るなら、そいつの心配はいらないのだろう?」
「えぇ。あれはもう消えたわ。」
「なら竜王率いる進軍のため、動かなくては。」
(ソニア)「もう動けるのか?」
「傷を負うのには慣れている。君も騎士ならば、分かるだろう?…どうした?」
(ソニア)「いや…」
(コール)「…違う!ソニア!確定だ!!!」
(ラペット)「鳴ってる…。」
三人がそういう中、他の四人はまだ気付いていなかった。
だがそれは、すぐに訪れる。
―オオオオオオオオ…!!!―
晴れたはずの瘴気が、再び立ち込めた。
しかもそれは、裏大陸全土へと広がっていく。
より濃く、厳重に。
―ドドドドドドトドドドドドドド!!!!!―
地鳴りのような足音。
「もう来ると言うの...!」
魔物の進軍が、僅か数時間で開始した。
―魔物の森:竜ノ巣―
―オオオ…。―
黒く重苦しい瘴気が立ち込める、森の最深部。
―バサァァァ…!!!―
祝福の目覚め。
翼を広げ、硬くなった体を慣らす。
(竜王:グラント)「動くのはいつぶりか…。」
(大魔女:セレスティア)「その道へ、行くべきではないわ…。」
「いいや。見ているがいい、大魔女よ。」
「あなたは知ってるはず…。主の存在が、そこまで強固なのかしら…?私は、崇めていないけれどね…。」
―オオオ…!!!―
竜王は翼を動かし、微かに意識が残っているセレスティアに向かって、
瘴気を浴びせた。
「もう、その話は終わっただろう。私は、"クラマド"について行く。」
―ドス…!ドス…!―
屈強な足で地面を噛み締め、森を出るため一歩を進めていく。
―シュイイイイイイン!!!―
竜王の背後から、爆発したかのような光が発生した。
「何を…」
―バキン…!バキン…!―
「光の鎖…。何の真似だ。」
その眩い光より、鎖が飛び出た。
それは竜王の体に巻き付き、地面に刺さった。
「悪あがきよ…。」
「なぜ。」
「あなたも、悪あがきが好きみたいだから…。少しでも、ここで止めるわ…。気が変わることを、祈って…」
―バタッ…!―
セレスティアは瘴気に呑まれ、意識を失った。
―ガン!ガン!―
全身に力を入れ動いてみるが、鎖を破壊できる気がしない。
効果切れを待ち、倒れたセレスティアを見る。
セレスティアと話した理想郷の話を、今一度整理する。
「…。貴様の理想郷は、"過去の犠牲を教訓に、未来を守るもの"。クラマドの理想郷は、"世界の再創生"。宇宙に存在するあらゆる生命を狩り尽くす、"悪の道"。神々も星々も、例外なく。そしてその果てにあるのは、理想郷だ。新しく創る、新世界。死んだ者は生き返る、幸福の世界…。」
―それは本当に、"その子自身"なのかしら?あなたは耐えられるの?
死んだ子が生き返って、自分と話す光景を。―
「…!」
竜王の脳内に、セレスティアとの会話が流れる。
「なら死んだ者は、報われないではないか。彼らは何のために生まれ、戦い、死んでいったのだ…。」
―グオオオオオオオオ!!!!!―
森から出た、魔物達の合図だ。
「迷っている…。判断を決めなくては。でなければソーンを倒した、あの者達に勝てない。」
―ブオオオオオオオオ!!!!!―
竜王は上空に向かって、蒼炎の炎を放つ。
異常事態であるが、進軍続行の合図を。
「行け…。戦え!!!その果てに、理想郷はあるのだと…!!!我が友人達。健闘を祈る…。」
―氷結の砦城:アルメンカル―
―ゴゴゴゴゴゴ!!!!!―
次第に強まる、魔物達の足音。
アリス達は砦の上へと登り、森を見ている。
―ギュイン!!!―
アリスは魔法を展開した。
「みんな!ここに入って!まずい気しかしないわ!!!」
(コール)「おい!あれ見ろ!」
(魔物の大軍)「グオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
(ファーマン)「戦力を蓄えていたな…。アリス様!!!行ってください!他全員もだ!ここは私が…」
(ソニア)「いや、俺も残る。」
「悪いが私もだ。」
「私も残るよ。あの数、誰かが押さてなきゃ。」
「悪いなアリス。やっぱ俺も残るぞ。」
(ラペット)「私も!」
「じゃあ、私だって…」
(ファーマン)「呼んでもらえますか?瞬間移動をし、瞬時に連れてこられるのは、あなただけだ。頼みます。彼ら眷属を連れて、竜王の元へ行きましょう!」
―グググ…!―
杖に力を入れ、覚悟を決める。
「…。すぐ戻るわ!!!あと、みんな…。」
(ファーマン)「理想実現ですね。ですが無理だと判断した場合は、殺します。今の私は、裏大陸の人々が大切ですから。」
―シュン!!!―
アリスは光に包まれ、姿を消した。
(ファーマン)「私が先陣を斬る。力の出し惜しみなどしていられないし、敵味方関係なく巻き込んでしまう。では…」
(ソニア)「…!ファーマン待て!」
ファーマンが身を乗り出した時…。
ーダダダダダダダダダ!!!!!ー
弾丸の雨が、先頭の魔物達へと命中した。
―バキバキバキ!!!―
命中した魔物達は、次第に凍結していった。
(黒野助)「進行が止まったぞ…。」
(ファーマン)「氷の弾丸…。あれは…。」
―ダダダ!!!―
砦を登り、こちらに走ってくる数名の者達。
―バッ!―
ソニア達の前に止まり、ファーマンに向かって敬礼をとった。
(アルメンカルの騎士)「報告します!我々アルメンカルの騎士、全員生存!小隊規模に別れ森にて、魔物の軍勢を可能な限り防いでいました!!!そして今!木の裏、上より氷弾の射撃を行いました!」
(ファーマン)「生きていたか…。」
「ファーマン様!指示はありますか!」
「…魔物を先へと行かせないため、氷の壁を平行につくる!!!彼らと協力し、時間を稼いでほしい!!!…皆!アリス様にあぁは言ったが、主の願いは叶えたい!少しの間、命を張ってくれ!!!」
(皆)「…!!!」
ソニア達は、砦から身を乗り出す。
「作戦目標!魔物の軍勢を食い止めろ!!!殺害は避け、理想の実現を叶えるのだ!!!」
―バッ…!バキバキバキ!!!―
ソニア達アルメンカルの騎士達は、魔物軍勢へと向かい走っていく。
ファーマンは氷の壁を平行に、裏大陸の端まで届かせる。
「二度も我が砦を、突破出来ると思うな…!ここは鋼鉄の壁!裏大陸の盾だ…!!!」
ーーー「竜王:グラント」ーーー
悪の神:クラマドが創成した、使徒の一体。
漆黒の鱗で体を纏い、蒼炎の業火で障害を燃やし尽くす。
その焦土を、魔物達が駆けていく。




