14:氷結の砦城:アルメンカル
『魔女のアリス【14:氷結の砦城:アルメンカル】』
―ヒョオオオオオオ…!!!―
瘴気に覆われた、暗く冷たい夜。
氷と雪が、烈風の如く吹いている。
(コール)「寒すぎるな…。」
「低温よ。気をつけて。」
杖に消えぬ炎を灯し、皆でそれを囲むように、アルメンカルへと進んでいく。
―フオオオオ…。―
そびえ立つ、石垣の大門。
「着いたわ。アルメンカル…。」
―氷結の砦城:アルメンカル―
(アヤ)「扉が凍ってるよ。雪もどかしてないんじゃない?」
やはり誰も、生きてはいないのだろうか?
(ソニア)「この環境じゃ、人も魔物も生きていけないな…。」
「それがここ、アルメンカルだ。いかなる敵も通さない、絶対の壁。」
「門の氷をなくしましょう。門が開けば、中の状態も分かるわ。」
―――――
「全然、荒れてないわね…。」
「整備はされてなさそうだけど、そもそも門は綺麗だったぞ。」
アルメンカル。
竜王が現れた森に、最も近い場所。
壮大な戦場を想像していたが、整備されていないだけで、
建物は綺麗な形で残っている。
「ひとまず砦に入りましょう。中に入れば、何か分かるかもしれないわ。」
―ギギギ…!!!―
砦の中に入り、探索するアリス達。
砦の右側を探索する、ソニアと黒野助。
「砦と言っても、ここで騎士達を育成しているのか…。」
「アルメンカルは砦城。つまり、屈強な騎士を育成する場でもある。この環境に加え、唯一二つの魔法を使う、ファーマンの指導。それらが合わさった結果が、アルメンカルの騎士達だ。」
「やっぱり、強いのか?」
「あぁ。彼が生きていたら、なんと心強いことか。」
「そっちはどうだった?」
「物置部屋だった。ただ食料や部品など、あまり残っていなかったな。」
「…。散らかってたか?」
「いや。明確かつ丁寧に持っていったのだろう。」
二人が見つけたのは、訓練室と物置部屋であった。
―――――
砦の奥を探索する、アリスとアヤ。
―ギギギ…!―
「ここは、ファーマンの部屋かしら?」
「漁ってみよう。何かあるかもしれないし。」
ファーマンの一室を見つけた二人。
何かしらの手がかりがあるのではと、部屋を探索した。
(アリス)「…?紙に何か書いてある…。」
―ファーマン様へ。我々は食料や武器を少量持ち、小隊規模に別れ、
森にて迎撃できる魔物を迎え撃ちます。必ず生きてお会いしましょう。―
「何か見つけた?」
「アルメンカルの騎士が書いたものよ。」
「眷属を見捨てた...?」
「いや、彼らがそんなことをすると思えないわ。誰よりも、ファーマンを尊敬している子達だもの。」
「じゃあ、指示したってこと?」
「だと思うわ。それくらい、魔物が多く来た。だけどなぜ、ここまで損害がないのか…。相打ちで全てを倒した、なんて言わないでよね…。ファーマン…。」
二人が見つけたのは、ファーマンの一室。
そしてそこにあった、アルメンカルの騎士が書き置いた手紙であった。
―――――
砦を探索する、コールとラペット。
「何かあった?」
「いや、風呂場や寝室とかの生活部屋だけだ。これは…。」
「兵器だよ。撃った痕跡があった。」
「じゃあ、戦ってはいたんだな。」
少ない情報であったが、アルメンカルの騎士達が、
魔物達と戦っていた証拠は見つけた。
―――――
それぞれが探索で得たことを話し合った。
「騎士達は、ここから離れているわ。生きているか、分からないけれど…。」
「ひとまず、ファーマンを探してみよう。砦の内側は、まだ見てないよな。」
外に巨大な塀があり、内側にある砦。
さらなる内側には、広い実戦場が存在する。
アルメンカルは、精密に作られた四角状の砦城である。
「微かだが感じるんだ。気のせいかと思ったけど、だんだん大きくなってきた。何かがいるぞ…。」
―――――
―ギギギ…!!!―
中心の実戦場へと続く、内開きの大扉を開ける。
―フオオオオ…!!!―
「ッ…!酷い吹雪ね…!」
砦内に入った時よりも、強風の吹雪が吹き荒れている。
「おい!何も見えないぞ…!」
(ラペット)「私が先頭で行こうよ!」
「大盾で?分かった。俺も押そう。」
「コールは後ろから着いてきて!」
「私の闇で進もう。黒野助は?」
「私はそのまま行く。高く聳え立つ山々に囲まれた故郷で、冬を乗り切りっていた。」
―ザッ…!ザッ…!―
降り積もった雪に足跡をつけ、強風の吹雪の中に入っていく。
「昔の風葉亭は、そんなに寒かったのか?」
「風の龍がいない時は、雪がよく降っていた。私は見たことはないが、
今は見えるそうだな。」
「いない時期なんてのが、あったのか…。」
「ソニア…。お前は寒くないのか…?」
「波動を纏い力を流せば、寒くはない。」
―フオオオオ…。―
(アリス)「吹雪が止み始めてる…?」
全員がその場で足を止め、辺りを見渡した。
すると吹雪は止んでいった。
―バキ…!パキ…!―
「おい!誰かいるぞ…!」
コールは実戦場の中央を指さした。
凍っている人間が、氷を破り立ち上がっていく。
体に乗っていた雪も落ち…。
「アリス様…。」
「”眷属、ファーマン”だわ…。」
アリス達はファーマンを見ていた。
けれど動く気配がない。
「もしかして、限界なのかしら…。」
アリスは一歩足を前に出したが、ふと波動をもつ三人を見た。
ソニアは鋭い目付きでファーマンを見ており、
コールとラペットも何かを感じているのか、警戒している。
「アリス様…。私がそうだったように、魔法をかけられているのではないでしょうか…。」
「有り得るわね…。」
―ジュウウウウ…!!!―
突如ファーマンは、火を纏い始めた。
次第に火の温度は広がり始め、凍りついた実戦場の雪と氷を溶かしていく。
「って…。わっ!!!」
ラペットが驚いて転んだ。
(アヤ)「大丈夫?」
「何やってんだラペット!今はそれどこじゃ…」
「いや、コール。みんな。回りを見るんだ…。」
(皆)「…!」
雪が積もり、凍っていたから気付かなかった。
だが雪は溶け、氷が出始めた今、
バラバラに斬り分けられた魔物達の死体が、現れた。
―ザン!!!―
ファーマンは背に背負う、二本の直剣を抜いた。
剣に氷を纏わせ、火を走らせる。
(氷炎のファーマン)「…。」
「みんな構えなさい!ファーマンを救うわよ!!!」
ファーマンは魔物の魔法により、思考が上書きされていた。
彼の体からは、黒い瘴気が溢れている。
―――――
ファーマンは剣を構え、放った。
―ボオオオ!!!パキバキ!!!―
斬撃の軌道に沿って、炎と氷が走った。
(ソニア)「みんな無事か!」
(アヤ)「なんとかね…。」
アヤの腕が少し焦げており、自身に障壁を展開していなければ、
アリスは危うかっただろう。
―サッ…!―
再びファーマンは剣を構えた。
すぐには撃たず、警戒している。
「アヤ!アリスをファーマンまで飛ばせるか?」
「闇でってこと?いつやるのさ?」
「俺達でファーマンに近付く。のんびりやってたら…」
―バキバキバキ!!!―
ファーマンは、両方の剣に氷を纏わせ放った。
「分かっただろ!のんびりしてる暇はない!勝負は一瞬で決める!」
ースッ…!ー
再び構えに入り…。
―バキバキバキ!!!―
一瞬にして、氷結の剣ができた。
―バッ…!!!―
ソニア達は一斉に、ファーマンへと向かう。
(黒野助)「ファーマンは一瞬で勝負を決められる…。これで行くとしよう!」
―バキバキバキ!!!―
「誰かがたどり着けばいいんだろ!やってやるぜ…!」
「氷に弱いのがバレたのかな…!」
―バキバキバキ!!!ー
「だろうな!たどり着けばいいとは言ったが、凍らされるなよ!」
ファーマンは連発して、剣を振り出した。
四方で言うならば、一方半ほどは氷塊で塞がれた。
(コール)「連発し始めたぞ…!」
―バキパキ…!―
(ソニア)「氷が弱くなった…!燃費は悪いらしいな!」
―バッ…!!!―
ファーマンとの距離はかなり縮まった。
四人が攻撃を当てられるまで、残り数メートルほど。
「アヤ!準備しろ…!!!」
また距離が縮まり、次の一歩で決まる距離。
―シュウウウ…!―
(黒野助)「氷が"解けた"…?」
一方半を塞いでいた氷が、一瞬にして消え去った。
―ジュオオオオオオオオオオオ!!!―
ファーマンを中心とし、炎が一斉に広がった。
―バッ!!!―
「おい!」
(黒野助)「ラペットは!」
「ここだよ!」
三人は速く反応し、炎から逃れていた。
(コール)「ソニアは…!」
「いや、よく見なさい…。」
アリスは炎の中を凝視していた。
―バッ!!!―
ファーマンの裏。
蒼を纏う、男の姿。
(ファーマン)「…!」
(ソニア)「ッフ…!!!」
ソニアの反応は誰よりも速く、ファーマンの懐まで進んでいた。
―ダン!!!―
ファーマンの反応も速かったが、二本の剣を手から離すことはできた。
「来い!アリス!!!」
―バオオオ!!!―
アヤの闇がファーマンの足元まで広がり…。
―バッ!―
現れたアリスは、ファーマンの肩を掴んだ。
「今、魔法を解くわ!!!」
―フアアア…!!!―
魔物の魔法からの影響である瘴気は消え、炎も弱まり消えた。
―バタッ…。―
ファーマンはその場で倒れ、意識を失った。
(コール)「やったのか…?」
倒れたファーマンへと近付くソニア。
「どうだ?」
「戻ったと思うわ。しばらく意識は戻らないかもだけど…。」
―ズサン…!!!―
突如ファーマンは、氷を纏わせた手刀でアリスを斬ろうとした。
―ギギギ!!!―
「アリス離れろ!」
残り数十センチという所で、ソニアの剣が手刀を防いだ。
「どういうこと…?魔法は解いたはず…。」
―バッ!スッ…!―
ファーマンは瞬時に動き、二本の剣を回収した。
「まだいたのか…。この砦から先へは、行かせない…!」
―ボオオオ!!!フオオオ!!!ー
ファーマンは膝を着き、剣を刺し、氷と炎を纏った。
(アヤ)「アリス、離れよう。私たちは分が悪い。」
「そうね…。みんな、意識は戻っているはずよ…。ただ…」
「えぇ。全身全霊で、戦っていたのでしょう。ですからまだ、状況を理解できていない。」
「でもフラフラだ。」
(ソニア)「コール、油断はするな。ファーマンはこうなっても、ずっと戦っていたんだろう…。」
「全てを斬り裂く、剣でなくては…。」
―ジュオオオ!!!フオオオオ!!!―
炎と氷がより強まった。
ファーマンは覚悟を決めている。
「全身全霊で、ファーマンを止めるぞ!!!」
―――――
―ダッ!―
ファーマンは全体を見れる位置にいた。
ソニア達は四方を囲むように、それぞれが走り出した。
―ダッ!ダッ!―
(ソニア)「氷も炎も撃たないのか...?」
ファーマンは向かってくる四人を待つかのように、ただ構えて待っていた。
「あまり力は残っていないと見える!」
―バキバキ!!!―
黒野助とファーマンが、最初に接敵した。
「剣が凍らない…。やはり…!ファーマンは手負いだ!」
コールとラペットが挟み込むように、ファーマンと接敵する。
―シュッ!ザン!―
ファーマンはコールの背後に回り斬ろうしたが、
間一髪コールの反応が間に合った。
「速すぎだろ…!間に合わなかったら焼き斬られてたぞ…!」
―ジュアアア!!!―
ラペットは盾を構えるが、ファーマンの炎剣は盾に熱を蓄えていく。
「ッグ…!熱い…!!!」
―ダン!!!―
ラペットの力が弱まった瞬間。
ファーマンは氷の岩を生成し、弾として飛ばした。
―ヂュミミミミ!!!ズオオオオ!!!―
波動を纏ったソニアと魂を震わせる黒野助が、その隙を狙いに現れる。
―ダン!ギン!シュッ!ズサ!―
一手、二手と速度を上げ、二人は相手の隙を狙い攻撃する。
傍から見たその光景は、まさに人を超えた戦いである。
―ズサ!ザン!―
二手、ファーマンにかすり傷を当てた二人。
―フラッ…。―
ファーマンの耐性が、再び崩れる…。
(黒野助)「どうだ…。」
「まだ…!」
―ドオオオオオ!!!―
氷と炎が急激に溢れ、小爆発が起きた。
(黒野助)「ッグ…!」
近くにいた二人を巻き込むには、十分な範囲だった。
黒野助は壁に激突した。ソニアも爆発に巻き込まれた。
―シュウウウウウ…。―
(ソニア)「ッグ!煙が邪魔が込めすぎて、視界が使い物にならない…!ファーマン…。身体が強力なだけじゃない。視野の広さや予測が、上手すぎる…。」
―バッ…!―
ファーマンは剣を払い、煙を払った。
ラペットは、氷の岩が邪魔をしており動けない。
コールと黒野助はまだ動ける。
―グッ…!―
言葉は要らず。
互いの目を見て三人それぞれの場所から、ファーマンへと向かう。
―ガガガガガガガ!!!―
コールと黒野助を阻む、氷の絶壁が現れた。
「おい、まじかよ…。」
「瀕死のはずだがこれほどまでに、君の思いは強いのか…!」
ファーマンが選んだのは、ソニアとの一騎打ち。
「あの中で一番強い魔物だと、判断した…!」
―ギギギ!!!―
「向こうの状況が見えない…!波動を…!」
―ダン!ダン!―
「二人の察知に回してられない…!頼む、生きててくれよ…!」
―ジュオオオオオオオオ!!!―
ファーマンは自身の身を焼くほどの炎を放ち始めた。
「命を失っても、お前はここで止める…!!!」
「ッグ…!」
ソニアの思考は、時が止まったように流れた。
後ろに下がり、砦の壁を登るか?
もはや勝つ手段はないのか?
氷の壁に向かうか?
答えが出せないまま、ファーマンは二歩前に歩いている。
「いや…」
ファーマンが次の一歩を踏み出す瞬間…。
―ヂュミミミミミミミミ!!!!!―
波動を全力で、全身に纏う。
「このまま斬る!!!」
「…!?」
―ダン!―
ファーマンは剣を構えたが、光のような速度で現れたソニアの剣は、
ファーマンを氷の壁へと吹き飛ばした。
―バキン!シュウウウ…。―
ファーマンの起こした魔法全てが、解けていく。
「色んな火を、見てきたんだ。だから、熱には慣れてる。」
ソニアは、意識を失ったファーマンに話しかけた。
「あんたも生きてくれ。アリス!ファーマンを頼む!!!」
―バッ!―
「えぇ!!!」
(コール)「黒野助も、見てもらうんだな。」
「そうだな…。」
「頭守らなかったら、やばかったかも…。」
―シュイイイン!!!―
砦内で見ていたアリスは走り出し、ファーマンを治癒した。
「俺が運ぼう。」
ソニアはファーマンを抱え、皆で砦内に戻っていく。
―ザッ…!ザッ…!ザッ…!―
(ソニア)「…?」
ソニアはふと、上を見た。
「どうしたソニアー!早く来いよ!寒いだろ!」
「あぁ!影響を無くなせば、瘴気は勝手に消えてたよな…。」
空はまだ暗く、瘴気は未だ消えていなかった。
―ゴゴゴ…!!!バチ…!バチ…!―
空は唸りを上げ、黒雷が降り注いだ。
「…!?」
―シュッ!サッ!―
ソニアはファーマンを抱えながら黒雷を避け、砦内へと着いた。
(ラペット)「あれなに…?」
全員が空を見た。黒雷の中より、出でる者。
(竜王:グラント)「…!」
―ギュイイイイイイン…!!!!!―
蒼の炎が、竜王の口から溢れ出る。
「あれが竜王か!?あいつ撃つ気だぞ!」
「ソニア、離れましょう!逃げなきゃ燃え死ぬわ!」
「いや、動きを止めないと、炎からは逃げられないだろ…。」
―ブオオオオオオオオオオオオ!!!―
溢れ出た蒼炎が、落下してくる。
放たれたれば正しく、地を焼く業火であろう。
(ソニア)「これは予想より…!」
(黒野助)「アルメンカルごと吹き飛ぶぞ…!」
(ファーマン)「下がれ…。」
(皆)「…!!!」
―フオオオオオオオオオ!!!!!―
「爆発を起こして、吹き飛ばす…。」
「待ちなさい!ファーマン!!!そこまで回復出来ていないわよ!!!」
「構いません…。十分、回復しました…。」
―バッ!―
ファーマンは実戦場へと走り、氷の円柱を作った。
「ハァ…。距離が近くなったな…。竜王…!!!」




