7:死へと誘う
『魔女のアリス【7:死へと誘う】』
広い草原に出たアリス達。
魔物の軍勢が、押し寄せてきている。
ーダッ…!ダッ…!ー
(魔物)「グオオオオオオオオ!!!!!」
(黒野助)「あの時より、数は少ないが…!」
「構わない!呪い殺されるのは御免だろ!」
ーダダダ!!!ー
魔物達の歩みは止まらない。
草原を越え森に入れば墓は荒らされ、眠る魂達が怒るだろう。
ーグッ…!バッ…!!!ー
「二人共…!助太刀願う…!」
黒野助を先頭に、魔物の軍へと突き進む。
ーヂュミミミ…!!!ー
「…!」
ソニアは波動を纏い、その時気付いた。
ードスン…!ドスン…!ー
森の方から、憤怒の思いが近付いていることに。
「二人共…!!!横に逸れろ!森から来るぞ…。」
ードゴン…!!!ー
木々を巻き込み、現れた。
地面を割り、アリス達の頭上を飛んでいく。
(???)「ハァァァ…!!!」
ーズオオオオン…!!!ー
その一振りで魔物の先兵達は、地面に転がった。
(???)「グアアアアアア!!!!」
耳を劈く怒号。
魔物達は一歩、更に一歩と後退していく。
(???)「ハァァァ…!!!」
ーギョオン!ー
こちらを見た。
曇りの中輝く、赤い光。
(死鬼)「我の、眠りを妨げるか…?お前達もまた…!!!」
ーザザザザ…!!!ー
巨大な刀で土草を斬る。
理性のタガが、外れてしまっている。
(アリス)「あれが…!あの鬼より、ずっとデカいわ…。」
「黒野助。あの時の鬼に攻撃は出来たが、俺達でも倒せるか?」
「言わば、動く死体だ。機能しないほどにバラバラにしなければ、切断しても手足は動く。最悪別の肉体に、移動することもありえる。だが、私の魔法ならば…。」
ーグッ!!!ー
死鬼は足を曲げた。
「出来れば生かしたい!!!無理ならば、私が殺す…。だから少しの間、協力してほしい!!!」
ーーーーー
ードン!!!ー
死鬼は勢いよく飛び、ソニアと黒野助の前へ立った。
ーブオン!!!ギギギ…!!!ー
黒野助とソニアで、死鬼の刀を抑える。
(黒野助)「合図で移動しよう!!!このままでは、武器が折れてしまう!」
「私が命中させるわ!そこで避けて!」
ーギュイーン…!ドオオオオオオ!!!ー
「ッグウ…!!!」
放った光線は、死鬼の顔に命中し続ける。
ーバッ…!ザン…!!!ー
ソニア達は別の方向に避け、降りた死鬼の両手を斬り落とす。
ースッ…。グサッ!!!ー
ソニアは斬った両手に乗り、剣を突き刺し、串刺しにした。
「黒野助!やれ…!!!」
ーシュイイイン…!ー
アリスの光線は止まり、死鬼は後ろに傾いた。
「ッヌウ…!」
ーザッ…!!!ー
黒野助は瞬時に死鬼の前に立ち、構える。
「助太刀、感謝する。」
===「嵐咲流:天送り・亡者斬り」===
―スッ…!ズオオオオオオオオオオ…!!!―
「グオオオオオオオオ…!!!!!」
死鬼は叫び怒りの闇が、肉体から抜けている。
そして…。
ーフアアアン…!!!ー
辺りには数秒間、光が広がった。
ー???ー
(死鬼)「ここは…。」
辺りは暗く。
自分の体が、光の粒になっている。
(黒野助)「魂の空間だ。夢のような場所と、言うべきか。」
魂の魔法を放ち、死鬼と意識が繋がった空間。
「…"黒野助"。お前の名前は、初めてか。…膨大な時、暗闇の中で、思っていた事があるのだ。勝てなかった理由は、何だったのかと。黒野助よ、"なぜ、恨まない"?」
「…。そういったものは、もっていない。」
「我はお前を殺した。鬼達は、お前の土俵を襲った。恨めばいい。それは力になる。」
「そうだな、怒りは力になる。だから私は、あの後鬼達を倒せたのだろう。だが、誰も死んでなどいない。人も物も、壊れてなどいなかった。それに私が一度、死んだだけだ。恨みの理由は、見当たらない。」
「なるほど、理解した…。お前はきっと、"強く優しい"のだな。」
暗かった場所は、気付かない間に彩られていた。
(死鬼)「"私"は、死者だ。言える言葉はない。だが、ありがとう…。怒るまま死んでいくはずだった魂は、解放された。君の刃は、この森を浄化する。それはきっと、魂までも…。」
ーサアアア!!!ー
視界が眩しくなっていく。
「何かあれば、また目覚めよう。その時は、友として。我らの墓守りよ…。」
ーファアアア!!!ー
光が視界を包んだ。
「死鬼…。君達の過去は知らないが、これだけは言える。"過去も今も、未来を
つくる原料"なんだ。」
意識の世界は崩壊していった。
ーーーーー
「森を、魂を浄化したのは、きっと君の心だ…。その果てにこそ、武の極地がある…。」
ーバタッ…!!!ー
「黒野助!」
魂が疲弊した黒野助は、その場で倒れた。
ソニアとアリスが、駆け寄る。
「ッ…。」
薄く目を開けた。
死鬼の体や刀は、その場から消えていた。
ー数日後ー
ービカァ…!!!ー
崩壊した家の中。
木漏れ日が目に当たる。
(黒野助)「どれほど、時間が経ったのだろう…?」
ーザワザワ…!ザワザワ…!ー
森が賑わっているようだ。
「人の声…。アリス様や、ソニアの声ではない。まさか…!」
黒野助は外に出た。
「…!」
そこには墓を洗い、草木を整え、花を集める者達がいた。
(墓守り)「黒野助様!!!」
「生きていたか!」
ーザッ…!ザッ…!ー
(ソニア)「お、アリス。」
「…!行きましょう、ソニア!…おーい!」
戻ってきたアリス達が合流する。
「二人共…!これは、何があったのですか?」
「黒野助を抱えて、森に戻ったんだよ。そしたらさ…」
(アリス)「何があったと思う?…彼らがいたのよ。」
(墓守り)「魂が、我々を助けてくれていました。ですが大きい音がし始めたのち、魂は消えてしまって。そこから時間が経ち、音がしなくなったものですから、試しに出ていったのです。」
「生きていてよかったよ。…死者は、いないね?」
「はい。怪我はありましたが、全員無事です。」
墓守り達、彼らの家族も生きていた。
魂達は目覚め、彼らを守り助けていたようだ。
ーーーーー
その日の夜。
崩壊した開放感ある家で火を起こし、星を見る。
「アリス様達は、次の場所へと進みますか?」
「そのつもり。」
銀河衛星:ギャラクシア。死者の墓:ソウルトーン。
二つの地から魔物を退け、瘴気を晴らした。
だがまだ、解放すべき地はある。
「裏大陸解放の旅。私も、ついて行きたいのです。」
ーーーーー
次の日。
ーピカァ…!ー
朝日が草原を、照らしている。
「ソニア。私も、旅に同行する。」
「ついてくるんだな。頼もしい奴が増えた。」
「でも、いいの?あなたがここを離れて…。」
「はい。ずっとは心配ですが、離れられる理由が出来ました。」
ーヂュミミミ…。ー
(ソニア)「…。」
少し遠くに見える、ソウルトーン。
多くの視線を、ソニアは感じた気がした。
「そう…。でも、あなたが自身気に言うなら、信じるわ。」
ースタッ…。スタッ…。ー
アリスとソニアは、草原を進んで行く。
歩く前に、後ろを振り向いた。
「しばしの別れだ。魂達よ、君達を信じている。」
ーザッ…!ー
黒野助も一歩を踏み出し、次の地へと進んでいく。
ー死者の墓:ソウルトーンー
これは少し先の出来事。
アリス達が離れた、ある日の夜。
(墓守り)「不気味な夜だな…。」
墓守り達は、森の高台から墓を見ていた。
(魔物)「グオオオオオオオオ!!!」
魔物達の声が、夜の森に響いていく。
「黒野助様は、自身の身を守ればいいと言っていたが…。」
ーダダダ!!!ー
魔物達の足音が近付いてくる。
ーピカアアアア!!!!!ー
「…墓が光って!?」
ソウルトーンの全ての墓は、光を発した。
ーグググ…!バッ…!バッ…!ー
そして地で眠る者達が、目覚め始める。
(死鬼)「奴の魂は、望んでいた。だから、加減はしてやる。」
ーウオオオオオオオオ!!!ー
目覚めた者達は、目を光らせる。
(死鬼)「向かいたくば訪れよ。…私は、死鬼。武の極地を求める者。
そして、"死へと誘う、百鬼の王"よ。」
(鬼)「ウオオオオオオ!!!!!」




