6:百鬼の夜
こんばんは、深緑です。
本文では自然に出しにくい裏設定的なものを、あとがきにて書いてみました。
これからもあるかと思います。
『魔女のアリス【6:百鬼の夜】』
死者の墓:ソウルトーンで会った眷属、黒野助。
本名はかつての友人と同じ、嵐咲のものだった。
人々の安否を確認すべく歩みを進める中、黒野助は自身の過去を語り始める。
「昔の風葉亭には、"妖怪"という存在がいた。村の外にはよく。…時が経てば人に化け、村の中にも。」
「そういえば、"像"があったな。」
風葉亭、森の中。
静かな場所に、その者を模した像を見た。
「"オキツネ"様かな?…村には妖怪達の災いが、降り続けたんだよ。そんな時、オキツネ様は現れた。その日から妖怪の姿は、少なくなっていったんだ。村人の中には、神の使いと言う者もいたから、彼を像として残した。今も残っているようで、よかったよ。…鬼が裏大陸にいる理由も、私が眷属になった事も、話しておこうか。」
何代かの時を戻った、ある日の夜…。
ー風葉村(過去)ー
ーリンリン…!!!ー
秋。
虫がよく鳴く、満月の夜。
ーザッ…。ザッ…。ー
平坦に整地された、土の道を歩く。
(黒野助)「おや、まだ起きているのかい?」
(子供)「なんだか怖くて眠れないの…。」
「そうかい?今日はいい夜だが…。」
静かな夜。
既に妖怪達の影響は出ているが、そんな影響は忘れられる夜である。
ーザッ…。ー
土を踏みしめる音が、一度だけ聞こえた。
(人)「それもそうだね。でもね、村長。よく聞いてごらん…。」
整った衣服を着た、若い男はそう言う。
ーファサアアア…。ー
どこか身震いをさせるような風。
「風が吹いている。大きな雲がやってくる。…気をつけなさい。」
ーザッ…。ザッ…。ー
男は静かに、その場を去っていった。
「待ってくれ…!あなたは…。あなたは大丈夫か!村人ではないようだが!村にいてもいいが…」
「村長…。」
子供は、黒野助の衣服を握った。
ーザッ…!ザッ…!ー
街灯などはない時代。
暗い闇から、大きな足音が複数聞こえる。
「…家の中にいなさい。誰が来ても、朝まで開けてはいけないよ。」
「大丈夫…?」
子供は震えながらも、黒野助を心配した。
「私が?ッフ…。大丈夫さ。さぁ、眠ればすぐに朝だよ。」
ーザッ…。ザッ…。ー
小さい足音は、黒野助から離れていった。
ーザッ!ザッ!ー
闇からの足音は、次第に強まっている。
「来る…。」
(鬼)「グオオオオオオオオ!!!!!」
巨体の存在が、複数現れた。
ーーーーー
ードスン…!!!ー
鉄棒が次々と振り下ろされる。
「狙いは単調。動きが速いわけではない…。」
ーザン…!シュ…!ザン…!ー
黒野助は素早い身のこなしで鬼の攻撃を避け、鬼達を斬った。
ーバシャ…!ー
刀についた血を払う。
「最近、大きい影を見たと言っていた者がいた…。これらだろうか?」
ードスン…!!!ー
他とは違う、異様な存在を後ろに感じる。
(死鬼)「ハァァァ…。最近、味の違う酒が出てきたのだ。」
後ろを振り返る。
漆黒の肌、赤く光る不気味な目。禍々しくうねる二対の角。
他の鬼より大きい肉体、それと同等の刀。
臆さず黒野助は、鬼の目を見る。
「そうか…。最近朝になったら、酒がなくなっていると、言っていた者がいるんだ。不思議に思った彼は、夜起きていたという。そして見た。大きな影を。」
「…なるほど。理解したぞ。血を流し死んでいるこいつらが、あの酒を持ってきていたのだな。」
「去るか?」
恐怖はない。
だが前にいる存在と村で戦うのは、望ましいことではない。
「…いいだろう。我は"死鬼"。我らは鬼。武を重んじ、互いで互いを高めあう。そうして力を磨いている。いい夜には作った酒を飲み、宴を開くのだ。」
ードスン…!ドスン…!ー
鬼は門へと歩き出した。
「来い。今日は宴。我らでつくるのだ。血で彩る最高の戦いを。…死者とは敗者。お前が死んだとき、この土俵を貰うとしよう。」
「私が勝てば?」
「残りを好きにするといい。殺すも生かすも、生きる者の権利だ。」
死鬼に導かれ、鬼の棲む深い森へ入っていく…。
ーーーーー
(鬼)「グオオオオオオオオ!!!!!」
鬼が囲む、戦いの場。
木々をなぎ倒し作ったのだろう。
「覚悟はいいか?」
「あぁ…。」
両者、両端へ移動し、構える。
戦いが始まる。
辺りは静寂に包まれ…。
ードン!!!ー
死鬼は瞬時に、黒野助へ近付いた。
巨大な刀を振りかざす。
ーザオン!!!ー
場外の木々が切り落とされた。
「…!場外まで届くとは、無茶苦茶だな…。」
ーザオン!ザオン!ー
距離は既に縮まっている。
死鬼は刀を振り続ける。
「力は強い。だが正確さがない…!」
ーダッ…!ザン…!ー
黒野助は死鬼の足を斬り、そのまま裏を取る。
「ッグ…!人間は小さいな…。やって見るか…。」
ーバッ…!ザッ…!ー
死鬼は振り返った。
構えが変わっている。
突きの構えだ。
ーグサン…!!!ー
死鬼はすぐさま放った。
刀は深く刺さっている。
(黒野助)「…!危険だ…!お前は村にとって特に!!!」
黒野助は避けた。
その僅か先に、死鬼の刀は刺さっている。
「惜しいな…。」
黒野助は刺さった刀を土台に、死鬼に近寄る。
ーザザザ!!!ー
死鬼の頭部から刀を刺し、下へ降りた。
「グオオオオオオオオ…!!!」
ーボタボタ…!!!ー
死鬼は血を流し、咆哮を上げた。
ーフラッ…。ー
死鬼は倒れる。
「…!まだだ…!」
ーバッ…!ドン!!!ー
残りの力を振り絞り、黒野助を吹き飛ばした。
ーバタ!!!ー
両者はその場に倒れた。
その光景を鬼達は、静かに見守る。
ーフオオ…。ー
どれほど時間が経ったのだろう。
死鬼も黒野助も動かない。
「動かないぞ…。」
「あのお方が死んだら、俺達はどうなる?」
「権利…。」
ードス…!ドス…!ー
死鬼という灯台を失った鬼達。
死鬼が残した言葉を胸に、鬼達は歩き出した。
その方向は、村の方。
ーボタッ…!!!ー
「いか、なくては…。」
黒野助は血を流し、立った。
だが骨が折れているのだろうか。
満足に歩けず、既に鬼の姿は見えない。
ーーーーー
ービカァ…!!!ー
眩しい光が、目に当たる。
(黒野助)「私は…。」
ースッ…。ー
身を起こし、周りを見る。
そこには鬼達が倒れていた。
「私がやったのか…?記憶が曖昧だ…。」
(???)「あら、起きたのね。」
後ろから声が聞こえる。
「あなたは…。」
(大魔女:セレスティア・ミシュタール)「あなた、私が来た時には死んでいたのよ。」
「死んだ…?ではなぜ、今生きている?」
「命に関する研究を、最近していたの。その流用で蘇生したわ。」
(子)「村長…!」
ーバフッ…!ー
あの時の子供が、黒野助を抱きしめた。
「無事だったか…?」
「村長が戦ってたから…。」
「私は命を貰ったのか…。」
「あなたは守ったのよ。だから与えたわ。」
一度死んだ黒野助。
だがセレスティアに生を貰い、再び目覚めることができた。
ー死者の墓:ソウルトーンー
(ソニア)「そこからは?」
「今後を託せるようになるまで、村で過ごしたよ。セレスティア様の目的を聞き、鬼達の魂と共にここへ来た。幼い子供のような夢。いつか叶えたいそうだ。"魂をも復元したいと"。それがきっと、あの方の理想郷を実現させるのだろう。」
(アリス)「"全ての生物が、幸せに暮らす王国"…。」
「だからこそ、私は墓守りとしての役目を果たさなくては。人を助け、怒る魂達を鎮める。」
ーゴオオオオ!!!ー
森に響く咆哮。
(アリス)「今のは…。」
「二人共!魔物の声だ!」
「早く行こう!他の魂達が目覚めてしまえば、取り返しのつかないことになる…!」
===「琥珀の卵」===
セレスティアが命に関する研究の末、創成した卵。
その後アリスが産まれることになる。




