5 : 流砂
『騎士のソニア 【5 : 流砂】』
ーザアアア!!!ー
砂の城が崩れた轟音は、静止していたマリアを動かす、土砂のように響いた。その音を聞いた、国民たちにも伝播していく。
(人)「こっちだ!!!」
(人)「"ゴーレム"はいないのか!!!」
(ゴーレム)「任せろ。」
砂の山の周りに、人が集まる。状況を理解し、伝えた人々のおかげで…
「無事か!!!」
「そのはずだ。喋れるか?砂を飲み込むのは危険だが…。」
「あぁ…。ありがとう…。ヤチェ。」
「ヅゴホ!」
「大丈夫か?」
(ポゼ)「うん…。ソニア達も大丈夫そうで…。」
「…。これは…!」
ーザワ!ザワ!ー
もう一人のゴーレムが、砂の中から見つけ出した人を、全員が見た。
それは国民にとって喜びであったか。
あるいは、魂を乗っ取られた、優しき王に対しての哀しみであったか。
思う感情は、人それぞれあるはずだ。
「ディアノス王!!!」
「どうなるかな…。」
「…何かあったんだろう。あの男の言葉を聞いたら、ディアノス王が私欲のため、杖を取りに行った訳じゃないように思えるな…。」
ー数日後ー
「来たよ。」
時が止まっていたマリアにも、"情報紙"がまた届くようになった。
ーここ近年での、土砂の国:マリアの噂。タイダル王、ディアノス王との対談後、砂が活性化していた影響であったと報告。結果は噂通りであった。現在、砂の活性化は収まっている。ー
「真相には触れられてないな。」
「でも、ディアノス王は戻ってきてるよね。」
「タイダルが協力して、戻せるものは戻していくらしいけど。」
「まぁ、マリアに真実が伝わってるのは、いいことだと思うが。」
「本当のことを知ってるのは、私たちと、ディアノス王だけ。いや、本当に全てを知ってるのはタイダルだけなんだろうけど。」
ーーーーー
事の真相は、ディアノス自身が語った。
(ディアノス)「…。事の真相を、話していく。全て、私の責任だ。"時の秘宝"たる噂を聞きつけ、そのような力があれば、国を良い方向へと導ける。そう思ったのだが、現実は厳しいものだった。タイダル王や、"風葉亭の次期王"。
"火の王"や、"雷鳴たる名の家系"のような強さは、私にはなかった。
身を知った…。本当に、貴重な時間を奪ってしまった。すまないと、思っている。」
ソニア達も、国民も、それを隅で見るタイダルも。
誰も言葉を発さず、ディアノスを見ていた。
正直、ディアノスは辞退してもよかったのだろう。
だが、衝撃である真実を伝えられた時、国民はこう言った。
「なら!あなたが動かすんだ!!!それが、王の責任だろう!」
誰も責任を取れないとき、人は誰かに投げるのだ。
それはディアノスにも
言えること。だがディアノスは。
「もう一度チャンスがあるならば…!」
ーーーーー
「見事だった。」
「あなたのように、本当はなりたいが…。」
「僕はいいと思うけど。ディアノス王には、期待を背負って、決断をする力があると思うんだ。」
「それが王の器なんでしょ。特殊な力は必要ない。」
「…。励ましをもらえるとは。君たちにも、迷惑をかけた。特に若い時間というものは…。」
「正直、あなたを止めようとはしたけど、俺達にその力はなかった。止めたのは、"あの男"だ。」
「存在が分からない相手に盗まれるとは、厄介だな。」
「あの杖は何だ?」
「特別な武器だ。人があれらを扱えることはない。本質を引き出せるのは、"もっと上だ"。」
ーブラック・ロワー
(黒鎧の男)「…。載ってはいないか。」
(???)「見つかっていなければいいですね。」
「それは難しいな。あの場にいた全員を生かし、逃げるにはあれしかなかった。存在は知られた、ここからは早さだ。」
「次の準備は出来ているようです。」
「あぁ。少ししたら出る。お前も準備しておけ。"移動都市"からの目的に、俺は関われない。」
ーーーーー
「…。行こう。マリアでは足止めをくらってたから。だから行く。私、まだ強くなってない。」
「そうか。」
「じゃあ、次は…。」
<“風の国:風葉亭”>




