5:激牙!海底の矛盾
『狩人のディポラティア【5:激牙!海底の矛盾】』
早朝の海中。まだ弱々しい朝日の光が立ち込めている。
「…行けるか?」
―コクッ…。―
静かに頷いた。朝が早いからというのもあるのだろうが、
未知の地にて未知の敵と戦うとは、緊張を呼ぶものなのだ。
「今日はこれに乗って行く。」
昨日、ムゲンカイへと降りたカプセル状のものではなかった。
頑丈に作られているとすぐ分かる、巨大潜水艦と出会った。
(オメガ)「…参考にしたい装甲ですね。」
(ハザキ)「高いのか?」
「いや、支給品だ。…様々な効果が得られるとして、でかく作られている。」
獣から身を守るため。深海へと降りるため。獣を運ぶため。
様々な観点から、支給品である潜水艦は巨大になった。
「よし。全員乗ったな。」
―ギュオン…!!!―
起動し、推力が生まれる。
四方に貼られている、高強度のクリスタルにより視野はいい。
電力も最光だ。
(ルナ)「見て、サン。」
「ガラスじゃないのか?」
(ブラックソード)「光量がすごいな。」
間近で見たのなら、二度と世界を見れはしないだろう。
「右大陸は獣の素材を使い、技術を発展させてきた。もちろん、この潜水艦に内蔵された機能もまた。」
噂で語られる幻の特異個体。
"輝竜:コモドクリスタル"。"彩魚:ピカノコ"。
幸運に見舞われた狩人がこの二頭を狩猟し、海中技術向上に貢献したそうだ。
そしてその狩人は誰かと、また新たな噂が広まるのは、
きっといつまでも変わらないのだろう。噂が終われば、また噂が広まるのだ。
(ミア)「どう探すの?」
「血だ。奴は血を流していた。特異個体ということもあり、他の獣からは襲われはしないだろうが…。その道には獣がいるはず。…では行こう。」
ディポラティアの操縦の元、潜水艦が発進した。
ーーーーー
圧倒的光量をもってしても、なかなか照らせない位置までやってきた。
「あれは…。」
正面。素人でも分かる、血の滲んだ水が見える。
(サン)「血が残っている…。」
「あそこに洞窟があるな。…血がなかなか混ざらず消えない。血の濃さとは強者の証だ。洞窟入り口につける。…俺が先頭で進むぞ。」
―ガシュン…!!!―
少し長い海旅の末、特異個体カメザメの巣へと辿り着いた。
ーーーーー
―ジャパ…。ピシャ…。―
薄暗く、水が広がる洞窟を進んでいく。
「…暗いな。何かやれるか?」
「私がやりましょう。」
―ギュオン…!!!―
オメガのツインアイがいつもより光を増し、道を赤く照らす。
「…止まれ。」
(カメザメ)「…グググ!!!」
カメザメは寝ていないのか、
白い息を激しく吹き出しながら固まった状態でいた。
「…。食いはしたが、寝ることはなかったようだな。全員構えろ。…視界が定かでない場所は陣形が重要だ。」
(皆)「…!!!」
一呼吸し、岩裏からカメザメの前へと出る。
「ギシャァァァァァア…!!!!!」
「やるぞ…!」
ーーーーー
―ザバァァ…!!!シュン…!!!―
この洞窟は、水が引かれている。その水を、カメザメは利用している。
―ブォン…!!!ブォン…!!!―
中央。円形の陣形を組んだディポラティア達だが、
それを回るようカメザメは腹を使い、高速で滑っている。
(サン)「何をすれば…。」
「ミア。俺たちの後ろに来い。」
(ルナ)「何をするの?」
―サァァァ…!!!―
「奴はタイミングを見ている。こうなった時、相手の行動を待つ方がいい。奴が攻めてくる時、怯まず攻撃しろ。…昨日の傷は残っている。そこを完全に開き、息の根を止める。」
―ザァァァ…!!!―
カメザメの速度はさらに上がった。
「さぁ、集中しろ!終わるのは一瞬だ!!!どちらもな…!」
―ザァァァ…!バッ…!ドヒュン…!!!―
「ギシャァァァァァア…!!!!!」
―グググ…!!!―
カメザメが向かってくる寸前、ディポラティアは瞬時に肉体を変化させた。
ーダン…!!!ー
カメザメを受け止める。爪を食い込ませ、首裏を噛み抑える。
―ギュイン…!ザン…!スザン…!―
総攻撃を仕掛けた。
「ギャオオオン…!!!」
カメザメは極限の痛覚により、激しく暴れ回った。
―ガコン…!!!ダダダダ…!!!―
あの時のように肌を展開し、鱗を乱射し始めた。
(皆)「…!!!」
「ッチ…!甲羅が硬い…。肌にも通りにくい。」
―シュウウウ…。―
このままでは周囲が、危険だと判断したディポラティア。
形態を人に戻し、昨日つけた頭部を狙う。
―スタッ…。スザン…。―
「仕上げだ。」
―グサ…!!!!!ブシャァァァ…!!!―
激しく開いた傷から、多量の血が吹き出した。そして…。
「キャオオオオン…。」
―ドスン…。―
ーーーーー
カメザメを狩猟したディポラティア達。少し狭い空洞へと移動した。
―バチバチ…!―
静かな洞窟に火の音が加わる。
「便利だな。」
「はい。」
「じゃあ、俺は奴を喰らう。」
(ミア)「全部食べるの?」
「変化を感じるまではな。…言っていなかったが、残りは"管理組織"へと渡す。…やってほしいことがあるからな。更なる残りは、奴らが好きにするだろう。」
(ハザキ)「あれも取れそうだぞ。」
空洞の中、焚き火より離れた位置にサン達はいた。
ややでかい水溜まり程度の大きさの穴が、海中へと続いている。
そこから泳ぐ小さな海獣達が見えるのだ。
(サン)「やってみよう。」
―スッ…!ザン…!!!ー
槍を構え、標的を狙う。
(ブラックソード)「朝食とするか。…ラティア。海の獣は食べれるか?」
「"ハリナユタ"はやめておけ。特異個体さえ避ける猛毒だ。」
ひと仕事終えたあと、皆は食事をした。
動いたあとの食事は、とても美味く感じるものだった。




