3:土砂の国:マリア
『騎士のソニア 【3:土砂の国:マリア】』
ーークラガリ洞窟ーー
視界は見づらく、出口の光は、まだまだ見えない。
洞窟を進むと、微量の水滴が、頭にどんどん乗ってくる。
ーボオオ!!!ー
少し先も大して見えない洞窟では、ポゼが照らす火が頼りだ。
多少の水で、弱まる気配はない。
(ポゼ)「どこに行くの?」
(ソニア)「"土砂の国 : マリア”。知ってるか?"ここしばらくの間、マリアの情報が全くないんだ"。」
(ポゼ)「どうして?」
(ソニア)「噂では砂が活性化して、移動が出来ないんじゃないかって、言われてる。お、見てみろ。」
足を滑らせれば水浸しになる道を、飛びながら進んだ。
無茶な進み方をしたが、そのおかげか、早くも出口の光が見えた。
(ポゼ)「あ!もう火はいらないね!」
洞窟の外。光へと、向かっていく。
ービカアアアア!!!ー
少しぶりの明かりで、目が奪われた。
奪われた目を取り戻すと、灼熱の光が、大地を照らしている。
ーサアアアア…。ー
渦巻く砂が、あちこちに。足をとられそうだ。
(ソニア)「砂が渦巻いているのか…。」
洞窟から出た高台から、砂の地を、慎重に観察する。
(ポゼ)「砂嵐も凄いね。」
所々に発生している砂嵐が、見てとれる。
ポゼが巻き込まれたら、飛んでいってしまいそうだ。
(ソニア)「活性化は本当なのか。どう進むか…。」
砂嵐に巻き込まれたら、危険だ。
地上の砂も、安全ではないかもしれない。
(ポゼ)「飛んだら行けるかも。」
(ソニア)「やれるか?」
(ポゼ)「"マリア"はあれだよね?が、頑張れば…。」
そこそこの高さ、そこそこの距離。
行けるようで行けなそうな距離。
(ソニア)「信じるぞ。」
ポゼは足の爪で、ソニアの肩を掴む。
肩にある軽装の鎧が、爪が食い込むのを、止めてくれている。
力を入れても、問題ない。
ーググ!ー
力を入れ、マリアを目指し、高台から飛び出した。
(ポゼ)「…!!!」
ポゼは全身に力を入れ、翼を高速で動かす。
この高度を保てれば、足をつけず、砂で出来た城へと辿り着く。
(ソニア)「あと半分くらいだ!」
意外にもいい位置まで、やって来た。
高度もそれほど、下がっていない。
(ポゼ)「づぐ…!!!もう、無理…。」
ポゼの力が、全身から抜ける。
ポゼは溶けるように、落ちていく。
肩鎧のへこみを見れば、懸命に挑んだ姿勢が分かる。
死ぬ高さではないが、砂に埋まった後、這い上がれるかどうか。
ーゴオオオオ!!!ザアアア!!!ー
落ちるはずであった場所から、何かが盛り上がる。
(ソニア)「"土の化身" …。」
(土の化身:ゴールド・ハウス・ジャイアント)「…!!!」
見上げても全貌が見えないほどの、圧倒的大きさ。
(ポゼ)「本当にいたんだ…。」
砂から出てきたそれは、"化身"と呼ばれ、"この星"に存在する。
四十~五十メートルはある化身はまさしく、超巨人と言える迫力である。
見上げても全く、頭など見えない。
ードスン!ドスン!ー
土の化身の手に、不時着したソニア達。
その歩みはどこかに、進んでいる。
(ソニア)「ポゼ、見ろ。運んでくれてるぞ。」
残り半分だった目的地が、どんどんと、短くなっていく。
ーー土砂の国:マリアーー
(ソニア)「ありがとう。」
(土の化身:ゴールド・ハウス・ジャイアント)「ゴオオオオ…。」
地揺れる咆哮を響かせ、土の化身は、砂へと帰っていった。
(ポゼ)「何で助けてくれたんだろう?」
(ソニア)「特にないのかもな。化身が"神の創造物" なら、尚更。」
化身が神の創造物だと言われているのは、常識である。
(ポゼ)「砂の門?」
国を守る、頑丈な門。砂だと侮ってはいけない。
(ソニア)「今度は開けられるといいが。」
…。驚くほどに、砂の門は動かなかった。
音さえ発することなく、何も起こらなかったのだ。
(ポゼ)「ここなら行けるかも。」
(ソニア)「そうしよう。今度は頼むぞ。」
門を二度開けられなかったソニア。二度、目的地へと飛ぶポゼ。
また全身に力を入れ、翼を高速で動かす。
(ポゼ)「…!行けた!!!」
華麗な着地で、新たな国へと踏み入った。
(ソニア)「靴に砂が入るな。」
靴を脱ぎ、靴内の砂を、取り出すソニア。
(ポゼ)「…。ソニア…。」
(ソニア)「…?」
ポゼが何か、不思議そうにしている。
(ポゼ)「上見て。"雲が、動いてないよ"。門が開かなかったのは、動かなかったんじゃなくて、"止まってる"からじゃないの?」
ポゼの言う通り、確かに雲を見続けても、動いていなかった。
ただそれだけで、原因を決めつけるのは危うい。ソニアは付近を凝視した。
すると不可解な光景が、点在している。
空にいる鳥は止まり、少し大きな虫も完全に、"止まって"いる。
(ソニア)「どうなってるんだ…。」
マリアの情報不足。それは活性化だけが、原因ではないようだ。
ーザッ。ザッ。ー
砂を踏みしめる音が、近付いてくる。
(???)「なんで、ここにいるの。」
昔に離れた関係がある。
姿は成長しても一度結んだ絆が、そう簡単に消えることはない。
久しぶりにあったその人は…。
(ソニア)「ヤチェ…。」
(ヤチェリー)「久しぶり。元気してた?」
ーーーーー
前を歩くヤチェリーに、ただ黙ってついて行く。
言いたいことは、沢山あったはずなのに。
突然それが来ると、言葉が詰まってしまった。
(ヤチェリー)「ここ。」
所々ヒビの入っている、土製の家。
ーギギィ…。ー
ヤチェリーが扉を開け、一緒に入っていく。
(ヤチェリー)「適当に座って。」
絶望的に住めないような場所ではないが、年頃の女子が住むような、環境ではない。
少し汚らしいが、頑丈なつくりではあるのだろう。
座ったはいいものの、気まずい雰囲気が続く。
(ヤチェリー)「ペットでも買ったの?」
(ポゼ)「ペットじゃないよ!」
ヤチェリーが、そんな雰囲気を破壊した。
(ソニア)「いや、友達だ。」
(ヤチェリー)「そうなんだ。よくマリアに来れたね。」
(ソニア)「若干遠回りしたが、悪くなかった。…。」
言える。
(ソニア)「何で、急にいなくなった?」
(ヤチェリー)「手紙、読んだでしょ?あれが全て。自分の弱さで、毎日を生きていくのが辛くなった。危なかったら、タイダルが止めるよ。それがなかったから外に出た。見れば分かるでしょ?実際、危ないことないし、生きてるよ。」
変わらない。
強さでもあり弱い部分が、今もある。
(ソニア)「本当に、強くなってるか?」
(ヤチェリー)「…。」
当たっている時、ヤチェリーは、黙る癖がある。
(ソニア)「邪魔が入ったんだろ?丁度お前がいなくなってから、少し経ったくらいで、マリアの噂が出始めた。」
(ヤチェリー)「もういいよ。分かってるから。話すよ。気になるでしょ?それにこのままじゃ、"二度と出られないよ"。」
ーーーーー
ヤチェリーは自分がマリアに来た後に、起きた出来事について話し始めた。
なるべく簡潔に。分かりやすく。
早くここから出たいと、思わせるような話し方で。
(ソニア)「王が死んだ?」
(ヤチェリー)「前にね。でもすぐに後継者は、現れたよ。名前は"ディアノス"。国は混乱に陥っていたけど、上手く軌道を修正した。でもある日、ディアノスが騎士隊を連れて、どこかに行ったんだ。そして帰って来た時、こうなった。"マリアの時間は止まって、砂漠の時間は加速し始めた"。」
(ポゼ)「ディアノスは、何をしに行ったんだろう?」
(ヤチェリー)「さぁ。でも、"杖を持ってた"。行く時にはなかったはず。」
(ソニア)「根源はその杖か。」
前国王が死に、後継者として王となった、"ディアノス"。
彼はある日、騎士隊を連れてどこかに行き、"杖"を持ち帰った。
(ポゼ)「二度と出られないのは、嫌だよね。」
(ヤチェリー)「私も賛成。」
出られないのなら、旅も人生も終わりだ。
(ソニア)「人はいるのか?」
(ヤチェリー)「いるよ。元気な人は、少ないけど。」
停止した空間では、元気よくいられないだろう。
(ソニア)「そうか。なら、俺たちで行こう。ディアノスに会いに行く。最悪の場合も、考えておこう。」
旅が終わる危機以前に、命の危機。
時が止まった国で、そう長い期間は、生き残れない。




