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騎士のソニア  作者: 深緑蒼水


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24/27

24:魂の解放

『騎士のソニア 【24:魂の解放】』


(アメガミ)「…!」

(スズナリ)「…!」


―ズサン…!ドン…!―


霊体のような二体は、ルナの感情に呼応するように激しく暴れている。


(ソニア)「終わったぞ…!」

(リットリオ)「手をかせ。奴ら、何やっても効かないようだ。」

「実体がないのだと思います。」

「魂ってことか…。俺の力なら、やれるかもしれない。」


サンを倒したソニア。状態が不安定なルナを止めるため戦闘に入る。

力が抜け座り込んだルナもまた…。


―スッ…。―

ルナは大鎌を手に持った。


(ルナ)「あなた達も、みんなを殺すの…?」


―――――


(アメガミ)「…!」

(リットリオ)「…!」


―ドォォォ…!!!―


闇で巨大な斧を抑えるリットリオ。

抑えが外れてしまえば、巨大な斧が振りかざされる。


「ソニア…!ルナを狙うしかない!」

「あぁ!」


(スズナリ)「…!」

(風花&ヤチェリー)「…!」


―ギギギギ…!!!―


先行するソニアからルナを守るため、近付くスズナリだが。


「どうかお願いします!」

「任せろ!」


サンとの戦いで、波動は更に進化していた。

ソニアはその力の効果を、直感的に感じ取りサンへと放った。


「(波動。相手の肉体、命に影響を出せるはずだ…。)」


―ヂュミミミ…!!!―

剣に波動を纏わせ、ルナを狙う。


(ルナ)「…!」


ルナの過去は刺激されていた。今もまだされ続けている。

その刺激が限界を超えたのなら…。


―ギュアァァァァァァァァン…!!!―


(ソニア)「…!吸収か!?」


ルナは白紫の光を浴びはじめた。


(ポゼ)「…。」

ポゼは戦いの全体を見通しており…。


「…これは!」


―バサッ!―


ソニアの元へ急ぐ。

ルナは魂からくるであろう力を、大鎌へと集中させている。

ロワの人々。その魂による力の集中。


(ソニア)「いや違う…!」

(ポゼ)「ソニア…!」


―ドスッ!

ポゼはソニアに激突し、攻撃範囲から出るようにそのまま二人は倒れ込んだ。


―ギュミミ…!ザォォォォォォォォ…!!!―

―ゴゴゴゴゴ…!!!バキバキ…!!!―


(皆)「…!」


その斬撃から、全員生き残っている。だが館の半分は崩壊し、切れている。

ルナが放った光波によって。


(ルナ)「ハァ…。ハァ…。」


ルナの精神は極限に達している。が、あの威力。疲労している。


(ソニア)「…。」


―カラン…。スタッ…。スタッ…。―

ソニアは剣を置き、慎重にルナへと近付いていく。


―ヂュミミミ…。―

波動を手に纏わせ…。


―スッ…。ピタ…。―

膝をついているルナの手に重ねた。波動は優しく、ルナの体へと流れていく。


―ポワポワ…。―


(ルナ)「ごめんなさい…。みんなが死んで、怖かった…。

    生き残るため、対抗する力を得るために、ロワへ行ったの…。」


懺悔するかのように語るルナ。魂吸族は魂を吸い食料とする。

また、力にもするのだ。


―スッ…。スタッ…。―


(リットリオ)「お前…。限界だろうに…。」

(サン)「…ッグ!」


サンは力を振り絞りルナ達の元へ少しだけ近付いた。


「ダメだな…。進めそうにない…。せめて、言わなくては…。

 お前が、何かから恐怖を感じるというのなら、ロワは守るだろう。

 あそこは、そういう場所だった…。偏見も差別もない…。だから頼む…。

 “普通に生きていた”だけなんだ…。俺達は望む。魂の解放を…。」

(ルナ)「…。…!」


―バタ…!!!ビチャア…。―

サンは倒れた。血を吐きながら…。


(皆)「…!!!」


―――――


館の外へと出たソニア達。

館の火はヘリヌスの風起こしで消し、森林火災とはならずに済んだ。


「…。大丈夫でしょうか。」

「ポゼ達を待つしかない。リットリオが言ってたろ?

 ネオは表大陸において技術が一番高いって。医者を信じよう。

 サンも、エンクも救うってな。」


―バサバサ…!!!―


(ヤチェリー)「…!どうだったの?」


あの後冥火竜へと変化し、サンとリットリオを乗せ、ネオへと飛んだポゼ。


(リットリオ)「サンは生きている。エンクの心臓も、鼓動があるようだ。

       厳重に保管し、早急に向かうと言っていた。」

(風花)「フッ…。」


風花の迷いもまた、この場で晴れたことだろう。


(ヘリヌス)「フム。まずはありがとう。この言葉は、先に伝えなければならない。…ルナよ。君はどうだ?」

「解放、するよ。」

(リットリオ)「この二体はどうなるんだ?ずっと気になっていたんだが。」

「別に大丈夫。その子達は、私の故郷で作ったものだから。

魂も、人のものではないよ。」


アメガミとスズナリ。

今はもう言葉を発しないが、ルナに従っているということは、

生前の魂と仲が良かったのだろう。


(ポゼ)「本当にいいの?生きていくために必要なことでしょ?

死んじゃう、よね…?」

「それもそうだけど…。やっぱり、人が傷付くのは嫌だから。

この考えが、もっと早く出せたらよかったね…。」

「…。その考え、俺もあるよ。」


自身の考えが膨大になり、処理できず、周りが見えなくなってしまうこと。


「ほんと?」

「俺と…。」

「私。」

「…なんだけど、タイダルって奴に救われたんだ。友達だけど、実質親みたいなものだな。あいつには本当に感謝してる。村がなくなった俺達は、あの後荒んでた。それを正してくれたのは、タイダルなんだ。」

(ルナ)「それが、あなた達の…。」

(ヘリヌス)「オーティスか。」


ソニアとヤチェリーは、ヘリヌスに聞こうとした。"タイダルの正体"とは。

出会った時から見た目が変わらず、様々な事を知り尽くしているタイダル。

だけれどもやめた。

タイダルが何者であっても、二人にとっては友であり親だから。


(ソニア)「解放、もうするか?」

「うん。もったいぶらずに、もうやろう。」

(ポゼ)「…。魂を吸うの、人じゃなきゃダメなの?」


ルナが吸った魂を解放する。それは空腹状態になり飢餓になるということ。

死が近くに訪れる。


「…でも、人以外にいないよ。動物は魔物に殺されていったらしいから、もうほとんどいないし。魔物の魂は好きじゃない…。あれは吸っちゃダメ…。悪意で満ちてるから。」


悪へと堕ち、力を得たいのなら吸ってもよい。

が、ルナにとってそれは死そのもの。

わざわざ恐怖へ向かう方が、ルナにとっては死よりも怖いことなのだ。


「ルナよ。サン。あるいは私の友人に聞いてみよう。彼は言ったのだろう。

彼のような人物は覚悟がある。守ると言ったのなら、助けてくれるはずだ。」

「ありがとう、ヘリヌス。…じゃあ、みんな。やるよ。」


―シュワァァァァァァァァァァ…!!!―


入る時は朝だった森。今や晴天の夜。

光り輝くロワの魂達は、ルナの胸元より元の場所へと羽ばたいていく。


―ポワポワ…。―

戻っていった魂達。だがひとつ、動かないものがある。


(皆)「…?」

「戻らないの…?」


ルナは不思議そうに語りかける。


―ポワポワ…。シュウウ…。―

その魂は、ロワへと戻ろうとせず、ルナの胸元に入っていった。


(ヘリヌス)「戻らない魂…。」

(ソニア)「どうしてだ?」

(ルナ)「…?」


ルナは分からなかった。

その声はいつも、数多くある魂達の声と、重なって聞こえていたから。

だが今、一つの魂は語りかける。


(???)「ここで、私はいいよ。もう、戻る場所はないから。ここで、あの子の姿を見させて。」

「…。あなたがいいのなら…。みんな。しばらくの間は大丈夫。」


その魂はルナの元へと入った。

その者の寿命が、どれほどあるのかは分からないが、

それが切れるまでは生きていける。


「そうか。…よかったな。」


魂の質が分かるルナ。ミアから話を聞いていたソニア達。

何となくだが、残った魂が誰かは分かる気がした。

晴天の夜を背に歩いていく魂たちを見送る…。


―グオオオオオオオオオ!!!!!―


空気を破壊する咆哮が、森に響いた。

その場にいた何人かは、記憶に染み込んでいる声。


(ソニア)「今の…。」

「…"魔人"だ。最近、よく声が聞こえるようになった。

きっと、次世代が産まれてきていたのだろう。」

(ソニア)「…ヘリヌス。俺は行きたいよ。」


魔人。その危険性は知っている。魔人の声は、かなり近くから聞こえた。

力を失った今のルナが、相手を出来るとは思えない。


「…前提として、戦闘は避けるんだ。私から落ちた機械の一部を持っていきなさい。何かあれば破壊するんだ。その合図で、森を破壊する。」

「望んではないだろ?そうならないよう頑張るさ。」

「…気をつけて。」

(ソニア)「行くか?」

(皆)「…。」


全員は静かに同意した。すでにここは魔の森。

何処から見られていてもおかしくない。


「無事戻る。」

「待っている。」


―スタッ…。スタッ…。―

ヘリヌスとルナは、消えていく姿に、思いを宿しながら見送る。


「魔人…。人と魔物を歪に合わせた、戦いのための特攻種。気をつけよ。

それは、“悪の意志”の塊だ。」


霧がかりの森。その奥に進んでいく…。

              <“魔境”>

こんばんは、深緑です。

評価などもらえて、とても嬉しく思います。

今後伸びていくかは分かりませんが、あのような感覚は、忘れずに生きていきたいですね。

いい経験を、すでにさせてもらいました。

さて、騎士のソニア。完結までもう少しになります。

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