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騎士のソニア  作者: 深緑蒼水


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23/27

23:灼熱の竜騎士:サン

『騎士のソニア【23:灼熱の竜騎士:サン】』


ヘリヌスから願いを託されたソニア達。館の中に入り、目的の部屋へと急ぐ。


―ドン…!!!バキ…!!!―


(ポゼ)「でかい音…!絶対戦ってるよ!」

(ソニア)「ここを右だ!」


―バッ!―


大きな館の中、波動とヘリヌスの言葉を頼りに進んでいく。


「寝室、あそこか。サンとルナ。両方見えるぞ…。」

(ヤチェリー)「あれが寝室?ドアデカすぎでしょ。」


―ブォォォォ!!!―


(風花)「サンの火です…!」


サンが放った火。それは館へと火をつけた。


(皆)「…!」

「行くぞみんな!もう時間はない!!」


サンとルナが戦っている姿が見える。更に足を急がせる。

館に火がついた。もう時間はない。


―――――


―スタッ…!バキ…!ミシ…!―


ルナの寝室へとついたソニア達。

サンが吹き飛ばしたであろう巨大な扉の上に立ち、木の軋む音を鳴らす。


(魂吸族:ルナ)「来ないで…。」

(アメガミ)「ー…バキバリ!!!ー」

(スズナリ)「ーチリチ…!!!ー」

(サン)「お前がそれを言うのか…。」

「二人とも止まれ…!そこまでだ…!」


ソニア達は二人の間に入り、ソニアは強く声をかけた。

サンとルナ。ルナにつく幽霊のような二体も止まる。


「お前か…。」


―ブォォォォ…!!!―

サンは火を纏わせた。


(ルナ)「ハァ…!ハァ…。」

ルナは過剰に呼吸をしており、手足が震えている。


(ソニア)「後ろ、やばそうか?」

「ルナはパニック状態だ。トラウマを刺激された結果だろう。」

「…じゃあ、後ろは任せた。俺はサンを止める。」

(ヤチェリー)「任せたよ。」

「信頼か。互いが後ろを任せ合う関係性。」

「お前にだって、あるだろ。」


サンは不思議に思った。ソニアの変化に。


「…聞いたのか。ッフ…。同情か?必要ない。そんなもの。」

「お前には帰る場所があるはずだ!」

「帰る場所など…。全員の命を吹き返し、俺が死ぬ…!それでいい!!!」

「“家族はまだ生きてるんだろ“!!!」

「…!」


兄ディポラティア。妹ケイジーノ。生死不明。

右大陸にいるであろうという推測のみ。

だが、サンに残った最後の家族。


「希望を捨てたのか?絶望が連続に起こって。」


ロワでの戦いの時、サンに迷いなどなかった。

だが今、自身の死を迷いはじめた。


「…だがな、同じくらい大事なのだ。自身の命をかけてでも、ロワの人々は助けたい…!!!」


純粋たるサンの真っ直ぐな思い。


―ジュアアアア!!!―

サンの火はより強く燃え上がり…。

迷いは消えた。生きる。そして人々を助ける。サンの確信的目標だ。


「なら止める…。ルナを殺さないで解放させる方法がある!」


“ソニアはひっそりと見ていた“。

魂吸族が吸った魂の性質についてのページを。真夜中に読んだ物語の次に。

サンとルナ。交わってしまった二人の過去。

自身とそれを照らし合わせ解放させる。ソニアの確信的目標だ。


(ソニア&サン)「…行くぞ!!!」―


――――


(サン)「…!!!」


―ズザズザ…!―

烈火烈風の斬撃を飛ばすサン。だが、その肉体はもう限界に近いが故…。


「(動きが遅い…。サンの身がもたないのか…!)」


―バッ…!ヂュミミミ…!!!―

波動を纏い、瞬時に近付く。


―ザン…!―

「ッグ…!」


サンは反撃が遅れた。だが耐えていたはずだった…。

―フラッ…。―


(サン)「体が動かない…。ここまでなのか…。」

―バタッ…。―


ロワで戦ったサン。その時の強さは感じなかった。

だがソニアは可能性を警戒し、しばらくサンを見つめた。

「…動かないか。ルナの方が終わってない。…行くか。」

サンを倒したソニア。ルナと戦う仲間の元に急ぐ。


ーーー\ー


ーズザン…!ー

膝をつき、槍を地面に刺す…。


(サン)「待て…。」

(ソニア)「…!」

「ハァ…!ハァ…!」


―ドクン…!ドクン…!―

サンに流れる竜の血は、温度を上げ駆け巡る。心臓はより大きく鼓動し…。


「その体もう…!」


サンの付近が揺らめいている。


「限界、か…。だがロワのため、俺の鼓動が止まる事は無い…!」


―サァァァ…。―

サンが放つ風が消えた…。


―ジュアアアアアアア…!!!!!―

ソニアが波動を纏うように、サンは赫く光る熱を帯びた。


(灼熱の竜騎士:サン)「…ハァ!!!…俺が主人公だ!!!」


―――――


―ブォォォォ…!!!―

強烈な灼熱がソニアを襲う。


「ッグ…!熱すぎだろ…!」


―サッ!―

先程までの動きではなく、俊敏にサンは動く。


―ギギギギ…!!!―

剣と槍。互いを押し合う鍔迫り合い。


(ソニア)「もう、俺は倒れないぞ!!!」

ロワでは膝をつき、サンへと逃げられたソニア。

絶対に倒れない意識を元に、強く力む。


―ダン…!―

(サン)「ッグ…!」


サンを押し返した。死なない程度、気絶する寸前を狙う。

―グググ…!!!―


(ソニア)「…!」

―ギギギギ…!!!―


サンは倒れる前に力を入れ、前かがみへ。ソニアに体重をかけ槍を当てた。

サンが纏う灼熱と、手から槍。剣へと伝わる熱が、更にソニアを襲う。

ロワの時より酷い状況だ。


(ソニア)「ッグ…!!!ほんとに死ぬぞ…!」


―ジュウウウウウウ…!!!―


(サン)「…!」


その言葉を聞いてもなお、サンの力は収まらない。


「いや…。聞こえてないのか…!」


サンは灼熱を纏っているが、その力はもはや制御できていない。

高温はサンの肉体すら襲っている。耐えればソニアは生き残る。

だが、サンを生かすにはそれを突破し止めなくてはならない。


(ソニア)「ッ…。くそ…。俺も意識が…。」


ソニアもまた、熱により意識が危うい状態になる。

視界が揺れる。更に揺れる。

もうぼんやりとしか、景色が見えない。力も入らない。

サンは死に、自分も死ぬ…。


―フラッ…。―

(ソニア)「…」


―"ソニア。守る意味を探すんだ"。―


亡き父の言葉。いつも言っていた言葉。


(ソニア)「…!!!」


―ヂュミミミ…!!!!!―


一度力が抜け、確実に倒れるしかなかった状況。

蒼く燃えるような波動を、今まで以上。全身に纏わせる。

サンドラに当てた波動の斬撃。あの時より強い波動をサンへと当てる。


(ソニア)「…!大丈夫だ。死なないと直感で感じる!!!」


―ギギギ…!ヂュミミミ…!!!!!―


ソニアの放つ波動は、サンの槍をつたりサンの肉体へと流れていく。


(サン)「…!ハァ…。ハァ…。ロワの火は、消えない…」


―バタ…!シュウウウウウウ…。―


サンは力の限界が訪れその場に倒れた。

肉体の限界により、死ぬはずだ。だが…。


―ポワポワ…!―


サンの肉体に、薄く優しく波動が光っている。


「ッ…。やっぱり大丈夫だ。死んでない…。今度こそ…。少し、そこにいてくれよ。」


サンを回復したであろう波動。更なる力を発揮したソニアは、今度こそサンを止めた。


(サン)「待て…。」

(ソニア)「…!」

「警戒するな…。正直、全身に力が入らない…。死にはしないだろうが、

 意識が消えかかっている…。その前に、聞いておきたい…。

 お前にも、誰かを守る意味があるのか…?」

「昔は応えられなかった。でも今は、確かにある思い。

 俺も、もう迷わない。」


―スタッ…。スタッ…。―


「…ソニア。お前はきっと、"全てを守る"のだな…。」

亡き父が言っていた守る意味。

それを見つけたソニアが迷うことはない。

だからもう、あなたの声は聞こえない。

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