23:灼熱の竜騎士:サン
『騎士のソニア【23:灼熱の竜騎士:サン】』
ヘリヌスから願いを託されたソニア達。館の中に入り、目的の部屋へと急ぐ。
―ドン…!!!バキ…!!!―
(ポゼ)「でかい音…!絶対戦ってるよ!」
(ソニア)「ここを右だ!」
―バッ!―
大きな館の中、波動とヘリヌスの言葉を頼りに進んでいく。
「寝室、あそこか。サンとルナ。両方見えるぞ…。」
(ヤチェリー)「あれが寝室?ドアデカすぎでしょ。」
―ブォォォォ!!!―
(風花)「サンの火です…!」
サンが放った火。それは館へと火をつけた。
(皆)「…!」
「行くぞみんな!もう時間はない!!」
サンとルナが戦っている姿が見える。更に足を急がせる。
館に火がついた。もう時間はない。
―――――
―スタッ…!バキ…!ミシ…!―
ルナの寝室へとついたソニア達。
サンが吹き飛ばしたであろう巨大な扉の上に立ち、木の軋む音を鳴らす。
(魂吸族:ルナ)「来ないで…。」
(アメガミ)「ー…バキバリ!!!ー」
(スズナリ)「ーチリチ…!!!ー」
(サン)「お前がそれを言うのか…。」
「二人とも止まれ…!そこまでだ…!」
ソニア達は二人の間に入り、ソニアは強く声をかけた。
サンとルナ。ルナにつく幽霊のような二体も止まる。
「お前か…。」
―ブォォォォ…!!!―
サンは火を纏わせた。
(ルナ)「ハァ…!ハァ…。」
ルナは過剰に呼吸をしており、手足が震えている。
(ソニア)「後ろ、やばそうか?」
「ルナはパニック状態だ。トラウマを刺激された結果だろう。」
「…じゃあ、後ろは任せた。俺はサンを止める。」
(ヤチェリー)「任せたよ。」
「信頼か。互いが後ろを任せ合う関係性。」
「お前にだって、あるだろ。」
サンは不思議に思った。ソニアの変化に。
「…聞いたのか。ッフ…。同情か?必要ない。そんなもの。」
「お前には帰る場所があるはずだ!」
「帰る場所など…。全員の命を吹き返し、俺が死ぬ…!それでいい!!!」
「“家族はまだ生きてるんだろ“!!!」
「…!」
兄ディポラティア。妹ケイジーノ。生死不明。
右大陸にいるであろうという推測のみ。
だが、サンに残った最後の家族。
「希望を捨てたのか?絶望が連続に起こって。」
ロワでの戦いの時、サンに迷いなどなかった。
だが今、自身の死を迷いはじめた。
「…だがな、同じくらい大事なのだ。自身の命をかけてでも、ロワの人々は助けたい…!!!」
純粋たるサンの真っ直ぐな思い。
―ジュアアアア!!!―
サンの火はより強く燃え上がり…。
迷いは消えた。生きる。そして人々を助ける。サンの確信的目標だ。
「なら止める…。ルナを殺さないで解放させる方法がある!」
“ソニアはひっそりと見ていた“。
魂吸族が吸った魂の性質についてのページを。真夜中に読んだ物語の次に。
サンとルナ。交わってしまった二人の過去。
自身とそれを照らし合わせ解放させる。ソニアの確信的目標だ。
(ソニア&サン)「…行くぞ!!!」―
――――
(サン)「…!!!」
―ズザズザ…!―
烈火烈風の斬撃を飛ばすサン。だが、その肉体はもう限界に近いが故…。
「(動きが遅い…。サンの身がもたないのか…!)」
―バッ…!ヂュミミミ…!!!―
波動を纏い、瞬時に近付く。
―ザン…!―
「ッグ…!」
サンは反撃が遅れた。だが耐えていたはずだった…。
―フラッ…。―
(サン)「体が動かない…。ここまでなのか…。」
―バタッ…。―
ロワで戦ったサン。その時の強さは感じなかった。
だがソニアは可能性を警戒し、しばらくサンを見つめた。
「…動かないか。ルナの方が終わってない。…行くか。」
サンを倒したソニア。ルナと戦う仲間の元に急ぐ。
ーーー\ー
ーズザン…!ー
膝をつき、槍を地面に刺す…。
(サン)「待て…。」
(ソニア)「…!」
「ハァ…!ハァ…!」
―ドクン…!ドクン…!―
サンに流れる竜の血は、温度を上げ駆け巡る。心臓はより大きく鼓動し…。
「その体もう…!」
サンの付近が揺らめいている。
「限界、か…。だがロワのため、俺の鼓動が止まる事は無い…!」
―サァァァ…。―
サンが放つ風が消えた…。
―ジュアアアアアアア…!!!!!―
ソニアが波動を纏うように、サンは赫く光る熱を帯びた。
(灼熱の竜騎士:サン)「…ハァ!!!…俺が主人公だ!!!」
―――――
―ブォォォォ…!!!―
強烈な灼熱がソニアを襲う。
「ッグ…!熱すぎだろ…!」
―サッ!―
先程までの動きではなく、俊敏にサンは動く。
―ギギギギ…!!!―
剣と槍。互いを押し合う鍔迫り合い。
(ソニア)「もう、俺は倒れないぞ!!!」
ロワでは膝をつき、サンへと逃げられたソニア。
絶対に倒れない意識を元に、強く力む。
―ダン…!―
(サン)「ッグ…!」
サンを押し返した。死なない程度、気絶する寸前を狙う。
―グググ…!!!―
(ソニア)「…!」
―ギギギギ…!!!―
サンは倒れる前に力を入れ、前かがみへ。ソニアに体重をかけ槍を当てた。
サンが纏う灼熱と、手から槍。剣へと伝わる熱が、更にソニアを襲う。
ロワの時より酷い状況だ。
(ソニア)「ッグ…!!!ほんとに死ぬぞ…!」
―ジュウウウウウウ…!!!―
(サン)「…!」
その言葉を聞いてもなお、サンの力は収まらない。
「いや…。聞こえてないのか…!」
サンは灼熱を纏っているが、その力はもはや制御できていない。
高温はサンの肉体すら襲っている。耐えればソニアは生き残る。
だが、サンを生かすにはそれを突破し止めなくてはならない。
(ソニア)「ッ…。くそ…。俺も意識が…。」
ソニアもまた、熱により意識が危うい状態になる。
視界が揺れる。更に揺れる。
もうぼんやりとしか、景色が見えない。力も入らない。
サンは死に、自分も死ぬ…。
―フラッ…。―
(ソニア)「…」
―"ソニア。守る意味を探すんだ"。―
亡き父の言葉。いつも言っていた言葉。
(ソニア)「…!!!」
―ヂュミミミ…!!!!!―
一度力が抜け、確実に倒れるしかなかった状況。
蒼く燃えるような波動を、今まで以上。全身に纏わせる。
サンドラに当てた波動の斬撃。あの時より強い波動をサンへと当てる。
(ソニア)「…!大丈夫だ。死なないと直感で感じる!!!」
―ギギギ…!ヂュミミミ…!!!!!―
ソニアの放つ波動は、サンの槍をつたりサンの肉体へと流れていく。
(サン)「…!ハァ…。ハァ…。ロワの火は、消えない…」
―バタ…!シュウウウウウウ…。―
サンは力の限界が訪れその場に倒れた。
肉体の限界により、死ぬはずだ。だが…。
―ポワポワ…!―
サンの肉体に、薄く優しく波動が光っている。
「ッ…。やっぱり大丈夫だ。死んでない…。今度こそ…。少し、そこにいてくれよ。」
サンを回復したであろう波動。更なる力を発揮したソニアは、今度こそサンを止めた。
(サン)「待て…。」
(ソニア)「…!」
「警戒するな…。正直、全身に力が入らない…。死にはしないだろうが、
意識が消えかかっている…。その前に、聞いておきたい…。
お前にも、誰かを守る意味があるのか…?」
「昔は応えられなかった。でも今は、確かにある思い。
俺も、もう迷わない。」
―スタッ…。スタッ…。―
「…ソニア。お前はきっと、"全てを守る"のだな…。」
亡き父が言っていた守る意味。
それを見つけたソニアが迷うことはない。
だからもう、あなたの声は聞こえない。




