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カインドラ  作者: 深緑蒼水
騎士のソニア

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2/82

2:旅立ち

『騎士のソニア 【2:旅立ち】』


―6年後―


―水の国:タイダル・オーシャン―

―チュン!チュン!―

さえずりが聞こえる。空の光が、広場の噴水を光らせる。


(ソニア)「…。」


―スッ。―

机に置いた、手紙を見る。


ー"強くなりたい"。ヤチェリー。ー


消えた幼馴染。彼女から来た、短いながらの手紙。


(ソニア)「ヤチェがいなくなって、随分経つ。俺も行こう。…行ってきます。」


ヤチェリーの手紙も。家族写真も。帰る場所として、家に残しておく。


―王宮―

(タイダル・オーティス)「行くのか?」

(ソニア)「色んなものを見に行くよ。父がもってた、"波動"の力を知ってみたい。」


父ソフィーナがもっていた、"蒼く輝く力"。

子であるソニアにも、その力は発現した。

力の性質にあった名として、"波動"と呼ぶとタイダルは言っていた。


(ソニア)「ヤチェの行方だって、"あの日"のことも…。」


旅への動機は十分ある。


(タイダル)「行ってくるといい。俺は帰りを待ってるぞ。」

(ソニア)「行ってくる。」


―スッ…。―

国を去る前、重要なことを言い忘れていた。


(ソニア)「あ、"夢"も叶えるぞ。」

(タイダル)「そうか?なら尚更、帰りが楽しみだな。」

ーーーーー

―ファサアアア!!!―

水の香りをのせた風は、ソニアの旅路に吹いている。

さらばオーシャン。しばしの別れだ。


(ソニア)「さて、どんな風に進んでいこうか…。そうだ、国を回っていこう。最初は…。」 

<"土砂の国:マリア">

ーーーーー

土砂の国へとオーシャンから向かうには、いくつかの方法がある。

ソニアは洞窟を通る近道を選んだ。


―ドオオオオンン!!!―

爆音が、辺りの草原に響いた。


(ソニア)「…!今の、"竜の里"の方か?下手に近づかない方がいいって聞くが…。」


―竜の里―

騎士を目指す旅において、人助けをしないで何をするか。


―ブオオオオオ!!!―

高い壁の上に見える、巨大な炎。


(ソニア)「火!中で何が…。門の前。ッフ!!!」


そこそこのガタイのソニアが全力で門を開けようとしたが、びくともしない。この門は人を通さない。"竜と竜人"の里だと誇示する、鉄壁の門なのだ。


―ドゴン!!!―

門に何かが勢いよく当たった。

潰される前によけられたのは、"波動"のおかげなのかもしれない。


(ソニア)「…竜!おい!この傷は…」

(竜)「人間か…。」


―ブオン!!!―

また何かが勢いよく飛んできた。


―ガシ!― 

ソニアはそれを掴んだ。


(ソニア)「…小竜か?」

(???)「づぅ…。いて…。」


獲物を持つかのように、持っている。


(ソニア)「何が起きてる?」

(???)「…!人…!?君も襲いに来たの!?」

(ソニア)「俺は一人だ。旅中の、ただの人間だ。」

(???)「とりあえず戻らないと!」

(ソニア)「…!待てよ!」


手に持った小竜は、ソニアを振りほどき行ってしまった。


(竜)「人の子…。あの子を守ってやってくれ…。まだ幼くも、君と同じ、正義溢れる子なのだ…。」

(ソニア)「…。」


―ソニア。守る意味を探すんだ。―

未だ残る、父との記憶。


(竜)「頼む…。」


―バッ!―

ソニアにとって、迷いはなかった。

父と同じ背中が、竜からは感じられたのだろうか。


(ソニア)「名前は!」

(???)「…!?」


小竜と並走して、里の中へと向かう。


(小竜:ポゼ)「"ポゼ"…!」

(ソニア)「俺はソニアだ…!行くぞ!!!」

―――――

(暴走竜)「ギャオオオ!!!」


里の中では、巨大な竜が暴れていた。


(ソニア)「あいつか…!…子供?」

(ポゼ)「油断しないで!みんなそれでやられてる!」


暴走竜の上には、少女が乗っている。


(ミア)「私を守って…。」


―サッ!―

どこからか、多数の狼が現れた。


(サドラ)「グウウ!」

(ソニア)「狼か…!」

(ミア)「みんな、行くよ…。」

(ポゼ)「今、助けるから!」


暴れた竜を鎮めるため、里を救うため。旅最初の戦いだ。

―――――

(サドラ)「グオオ!!!」


サドラ達が狩りの連携が如く、ソニアに襲いかかる。


―ザン!スッ!ズサ!―

タイダルとの訓練で積んだ身のこなしで、サドラ達を斬っていく。


(ソニア)「数が多い…!ポゼ!」


すばしっこいサドラ達を、身に近づけないのは困難だ。

腕に噛みついたサドラを振りほどき、ポゼを呼ぶ。


(ポゼ)「任せてよ!」


―ギュイーン!フオオ!―

小竜の火力でも、十分なタイミングを稼げた。

サドラ達は後退し、竜への道ができた。


―スッ!ヂュミミミ!!!―

暴走竜へと、ソニアが踏み込む。父があの日やったように、蒼を纏い…。


(ミア)「無駄だよ。」


少女は知らない。"この光がもつ力"を。


(ソニア)「そうか?」


―ザン!―

傷は浅い。


(暴走竜)「グオオオ…。」


ーバタッ!ー

だが竜は倒れた。


(ミア)「なんで…。」


少女は竜から降り、緊張した様子で徐々に下がっていく。


(ソニア)「さぁな。色んな力が、これにはあるんだ。」


―ババッ!!!―

人には追えない速度だった。

竜なら追えたかもしれないが、それを言える状況ではない。


(ソニア)「速いな。」

(ポゼ)「ごめんよ。あんまり抑えられなかった…。」


その少女は戸惑いながらも生き残ったサドラに連れられ、里から去っていった。

―――――

(ソニア)「少しいいか?」

(竜)「君か。」


騒動が収まり、あの竜に会いに行った。


(ソニア)「あの子は何だったんだ?」

(竜)「分からないな。人との関わりは少ない。恨みを買うような覚えもない。だからまったく分からないのだ。だが、幻術のような"赤い霧"のようなものを使っていた。それと、"血を採られた"と言っている者たちがいたな。」

(ソニア)「幻術使いで、血を採る…?」

(竜)「人の子。里を助けてくれたこと、感謝している。」


騒動後、視線を感じる。不安と希望が混じる、不完全な目線達が。


(竜)「…君を警戒しているな。」

(ソニア)「それもそうか。そろそろ出ていくよ。」


人が入り騒動を起こした以上、仕方ないことだ。


(竜)「君は…」

(ソニア)「…?」

(竜)「世界を歩んでいるのか?」

(ソニア)「まぁ…。」

(竜)「なら、あの子を連れていってはくれないか?外の世界に憧れをもっているんだ。」

―――――

―スタッ。スタッ。―

門を潜り抜け、里を後にする。


(ソニア)「…。」


―バサ!バサ!―

近付いてくる羽音。


(ポゼ)「ソニア!聞いたよ!もう、行くんだね。…。僕も…。…。」


遠慮、願望、また遠慮。


(ソニア)「来いよ。」

(ポゼ)「…。」

(ソニア)「強くなるんだろ?」


遠慮は吹き飛んだ。


(ポゼ)「…!なるよ、強く!君みたいな人の翼に、僕はなりたいんだ!!!」


少し寄り道をしたソニア。

その前と比べ羽音がする、少し賑やかな隣が増えた。行こう。


<"土砂の国:マリア">

"2026/01/23"読みやすくなるよう変更を加えました。流れの改変は行っていません。

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