2:旅立ち
『騎士のソニア 【2:旅立ち】』
ーー水の国:タイダル・オーシャンーー
鳥のさえずりが聞こえる。
もうあの日から、"六年が経った"。
朝起きて窓を開ければ、空の光が、広場の噴水を光らせている。
(ソニア)「…。」
机に置いた、手紙を見る。
ー"強くなりたい"。ー
それだけを残して、消えた幼馴染。
(ソニア)「ヤチェがいなくなって、随分経つ。俺も行こう…。行ってきます。」
ヤチェリーの手紙も。家族写真も。
帰る場所として、家に残しておく。
ーータイダル・オーシャン(城内)ーー
城内の床や壁は、常に光沢があって、行動が少し遅くなる。
(タイダル・オーティス)「行くのか?」
ソニアは装備を整えており、多少の物を持っている。
数日外で過ごしても、死ぬことはない。
(ソニア)「色んなものを、見に行くよ。父がもってた、"波動"の力を知ってみたい。」
父ソフィーナがもっていた、"蒼く輝く力"。
子であるソニアにも、その力は発現した。
力の性質にあった名として、"波動"と呼ぶと、タイダルは言っていた。
(ソニア)「ヤチェの行方だって、"あの日"のことも…。」
旅への動機は、十分ある。
(タイダル)「行ってくるといい。俺は帰りを、待ってるぞ。」
(ソニア)「行ってくる。」
別れではない以上、こんなものでいい。
だが重要なことを、言い忘れていた。
(ソニア)「あ、"夢"も叶えるぞ。」
振り返ったソニアを見ていると、タイダルは、少し昔を思い出した。
(タイダル)「そうか?なら尚更、帰りが楽しみだな。」
水の香りをのせた風は、ソニアの旅路に吹いている。
さらばオーシャン。しばしの別れだ。
(ソニア)「さて、どんな風に進んでいこうか…。そうだ、国を回っていこう。最初は…。」
<"土砂の国:マリア">
ーーーーー
土砂の国へとオーシャンから向かうには、いくつかの方法がある。
ソニアは洞窟を、通る近道を選んだ。
オーシャンから出て、広大な草原を、一人で進む。
ードオオオオンン!!!ー
突然だった。耳を鳴らす爆音が、草原に響いた。
(ソニア)「…!今の、"竜の里"の方か?下手に近づかない方が、いいって聞くが…。」
林の中にある、竜が住む場所。
けれど騎士を目指す旅において、人助けをしないで、何をするか。
ーー竜の里ーー
ーブオオオオオ!!!ー
高い壁の上に見える、巨大な炎。
(ソニア)「火!中で何が…。門か…。ッフ…!!!」
そこそこのガタイのソニアが、全力で門を開けようとしたが、びくともしない。
この門は、人を通さない。"竜と竜人"の里だと誇示する、鉄壁の門なのだ。
ードゴン!!!ー
門に何かが、勢いよく当たった。扉がへこみ、確実に壊れる。
潰される前に避けられたのは、"波動"のおかげなのかもしれない。
(ソニア)「竜…!おい!この傷は…。」
竜の体は、傷だらけで。至る所から、血が滲み出ている。
(竜)「人間か…。」
竜は少し眠そうな目で、ソニアを見る。
ーブオン!!!ー
その時何かが、勢いよく飛んできた。
ーガシ!ー
ソニアはそれを、掴んだ。
(ソニア)「小竜か…?」
掴めるくらいの、大きさ。
(???)「づぅ…。いて…。」
ソニアは獲物を持つかのように、首を掴んで持っている。
(ソニア)「何が起きてる?」
(???)「…!人…!?君も、襲いに来たの!?」
何が起きているのか聞いたら、小竜は暴れ始めた。
(ソニア)「俺は一人だ。旅中の、ただの人間だ。」
(???)「とりあえず戻らないと!」
(ソニア)「…!待てよ!」
手に持った小竜は、ソニアを振りほどき、行ってしまった。
(竜)「人の子…。あの子を、守ってやってくれ…。まだ幼くも、君と同じ、正義溢れる子なのだ…。」
竜の目が。その言葉が、ソニアに向く。
ーソニア。守る意味を、探すんだ。ー
未だ残る、父との記憶。
(竜)「頼む…。」
ソニアにとって、迷いはなかった。
父と同じ背中が、竜からは感じられたのだろうか。
(ソニア)「名前は!」
(???)「…!?」
小竜と並走して、里の中へと向かう。
(小竜:ポゼ)「"ポゼ"!」
(ソニア)「俺はソニアだ!行くぞ!!!」
ーーーーー
(暴走竜)「ギャオオオ!!!」
里の中では、巨大な竜が暴れていた。
門にぶつかった竜より、数倍は巨大だ。
(ソニア)「あいつか…!子供…?」
(ポゼ)「油断しないで!みんなそれで、やられてる!」
暴走竜の上に、少女が乗っている。
(ミア)「私を守って…。」
(サドラ)「グウウ!」
どこからか、多数の狼が現れた。
(ソニア)「狼か…!」
正面には、巨大な竜。周りには既に、ソニア達を囲む、多数の狼。
(ミア)「みんな、行くよ…。」
少女の声でサドラ達は、姿勢を低く構える。
(ポゼ)「今、助けるから!」
暴れた竜を鎮めるため、里を救うため。
旅最初の、戦いだ。
ーーーーー
(サドラ)「グオオ!!!」
サドラ達が狩りの連携が如く、一斉に飛び出した。
ーザン!スッ!ズサ!ー
タイダルとの訓練で積んだ身のこなしで、サドラ達を斬っていく。
(ソニア)「数が多い…!ポゼ!」
すばしっこいサドラ達を、身に近付けないのは困難だ。
腕に噛みついたサドラを振りほどき、ポゼを呼ぶ。
(ポゼ)「任せてよ!」
ーギュイーン!フオオ!ー
小竜の火力でも、十分なタイミングを稼げた。
サドラ達は後退し、竜への道が出来る。
ースッ!ヂュミミミ!!!ー
暴走竜へと、ソニアが踏み込む。父があの日やったように、蒼を纏い。
(ミア)「無駄だよ。」
少女は知らない。"この光が、もつ力"を。
(ソニア)「そうか?」
ーザン!ー
傷は浅い。
(暴走竜)「グオオオ…。」
ードゴオン!!!ー
だが竜は、倒れた。
(ミア)「なんで…。」
少女は竜から降り、緊張した様子で、徐々に下がっていく。
(ソニア)「さぁな。"色んな力"が、これにはあるんだ。」
下がっていく少女へと、向かう。
このまま逃がすわけには、いかない。
(ソニア)「速いな…。」
人には追えない、速度だった。
サドラ達が加速し、ミアを連れて行った。
竜なら追えたかもしれないが、それを言える状況ではない。
(ポゼ)「ごめんよ。あんまり、抑えられなかった…。」
その少女は戸惑いながらも生き残ったサドラに連れられ、里から去っていった。
ーーーーー
(ソニア)「少しいいか?」
(竜)「君か。」
騒動が収まり、あの竜に会いに行った。
(ソニア)「あの子は、何だったんだ?」
(竜)「分からないな。人との関わりは少ない。恨みを買うような覚えもない。だからまったく分からないのだ。だが幻術のような、"赤い霧"のようなものを使っていた。それと"血を採られた"と、言っている者たちがいたな。」
(ソニア)「幻術使いで、血を採る…?」
記憶を辿るも、そんなものを聞いたことは、微塵もない。
(竜)「人の子。里を助けてくれたこと、感謝している。」
騒動後、やけに視線を感じる。
不安と希望が混じる、不完全な目線達が。
(竜)「君を、警戒しているな…。」
(ソニア)「それもそうか。そろそろ、出ていくよ。」
人が入り騒動を起こした以上、仕方のないこと。
ソニアは割り切って、壊れた門へと向かう。
(竜)「君は…。」
(ソニア)「…?」
謎に、呼び止められる。
(竜)「世界を歩んでいるのか?」
(ソニア)「まぁ…。」
(竜)「なら、あの子を連れていってはくれないか?外の世界に、憧れをもっているんだ。」
ーーーーー
門を潜り抜け、里を後にする。
(ソニア)「…。」
ーバサ!バサ!ー
それでも近付いてくる、羽音。
(ポゼ)「ソニア!聞いたよ!もう、行くんだね…。僕も…。…。」
遠慮、願望、また遠慮。
(ソニア)「来いよ。」
ソニアは振り返り、少ししおらしくなった、ポゼに言う。
(ソニア)「強くなるんだろ?」
遠慮は、吹き飛んだ。
(ポゼ)「…!なるよ、強く!君みたいな人の翼に、僕はなりたいんだ!!!」
少し寄り道をしたソニア。
その前と比べ羽音がする、少し賑やかな隣が増えた。なら行こう。
<"土砂の国:マリア">




