2:旅立ち
『騎士のソニア 【2:旅立ち】』
―6年後―
―水の国:タイダル・オーシャン―
―チュン!チュン!―
さえずりが聞こえる。空の光が、広場の噴水を光らせる。
(ソニア)「…。」
―スッ。―
机に置いた、手紙を見る。
ー"強くなりたい"。ヤチェリー。ー
消えた幼馴染。彼女から来た、短いながらの手紙。
(ソニア)「ヤチェがいなくなって、随分経つ。俺も行こう。…行ってきます。」
ヤチェリーの手紙も。家族写真も。帰る場所として、家に残しておく。
―王宮―
(タイダル・オーティス)「行くのか?」
(ソニア)「色んなものを見に行くよ。父がもってた、"波動"の力を知ってみたい。」
父ソフィーナがもっていた、"蒼く輝く力"。
子であるソニアにも、その力は発現した。
力の性質にあった名として、"波動"と呼ぶとタイダルは言っていた。
(ソニア)「ヤチェの行方だって、"あの日"のことも…。」
旅への動機は十分ある。
(タイダル)「行ってくるといい。俺は帰りを待ってるぞ。」
(ソニア)「行ってくる。」
―スッ…。―
国を去る前、重要なことを言い忘れていた。
(ソニア)「あ、"夢"も叶えるぞ。」
(タイダル)「そうか?なら尚更、帰りが楽しみだな。」
ーーーーー
―ファサアアア!!!―
水の香りをのせた風は、ソニアの旅路に吹いている。
さらばオーシャン。しばしの別れだ。
(ソニア)「さて、どんな風に進んでいこうか…。そうだ、国を回っていこう。最初は…。」
<"土砂の国:マリア">
ーーーーー
土砂の国へとオーシャンから向かうには、いくつかの方法がある。
ソニアは洞窟を通る近道を選んだ。
―ドオオオオンン!!!―
爆音が、辺りの草原に響いた。
(ソニア)「…!今の、"竜の里"の方か?下手に近づかない方がいいって聞くが…。」
―竜の里―
騎士を目指す旅において、人助けをしないで何をするか。
―ブオオオオオ!!!―
高い壁の上に見える、巨大な炎。
(ソニア)「火!中で何が…。門の前。ッフ!!!」
そこそこのガタイのソニアが全力で門を開けようとしたが、びくともしない。この門は人を通さない。"竜と竜人"の里だと誇示する、鉄壁の門なのだ。
―ドゴン!!!―
門に何かが勢いよく当たった。
潰される前によけられたのは、"波動"のおかげなのかもしれない。
(ソニア)「…竜!おい!この傷は…」
(竜)「人間か…。」
―ブオン!!!―
また何かが勢いよく飛んできた。
―ガシ!―
ソニアはそれを掴んだ。
(ソニア)「…小竜か?」
(???)「づぅ…。いて…。」
獲物を持つかのように、持っている。
(ソニア)「何が起きてる?」
(???)「…!人…!?君も襲いに来たの!?」
(ソニア)「俺は一人だ。旅中の、ただの人間だ。」
(???)「とりあえず戻らないと!」
(ソニア)「…!待てよ!」
手に持った小竜は、ソニアを振りほどき行ってしまった。
(竜)「人の子…。あの子を守ってやってくれ…。まだ幼くも、君と同じ、正義溢れる子なのだ…。」
(ソニア)「…。」
―ソニア。守る意味を探すんだ。―
未だ残る、父との記憶。
(竜)「頼む…。」
―バッ!―
ソニアにとって、迷いはなかった。
父と同じ背中が、竜からは感じられたのだろうか。
(ソニア)「名前は!」
(???)「…!?」
小竜と並走して、里の中へと向かう。
(小竜:ポゼ)「"ポゼ"…!」
(ソニア)「俺はソニアだ…!行くぞ!!!」
―――――
(暴走竜)「ギャオオオ!!!」
里の中では、巨大な竜が暴れていた。
(ソニア)「あいつか…!…子供?」
(ポゼ)「油断しないで!みんなそれでやられてる!」
暴走竜の上には、少女が乗っている。
(ミア)「私を守って…。」
―サッ!―
どこからか、多数の狼が現れた。
(サドラ)「グウウ!」
(ソニア)「狼か…!」
(ミア)「みんな、行くよ…。」
(ポゼ)「今、助けるから!」
暴れた竜を鎮めるため、里を救うため。旅最初の戦いだ。
―――――
(サドラ)「グオオ!!!」
サドラ達が狩りの連携が如く、ソニアに襲いかかる。
―ザン!スッ!ズサ!―
タイダルとの訓練で積んだ身のこなしで、サドラ達を斬っていく。
(ソニア)「数が多い…!ポゼ!」
すばしっこいサドラ達を、身に近づけないのは困難だ。
腕に噛みついたサドラを振りほどき、ポゼを呼ぶ。
(ポゼ)「任せてよ!」
―ギュイーン!フオオ!―
小竜の火力でも、十分なタイミングを稼げた。
サドラ達は後退し、竜への道ができた。
―スッ!ヂュミミミ!!!―
暴走竜へと、ソニアが踏み込む。父があの日やったように、蒼を纏い…。
(ミア)「無駄だよ。」
少女は知らない。"この光がもつ力"を。
(ソニア)「そうか?」
―ザン!―
傷は浅い。
(暴走竜)「グオオオ…。」
ーバタッ!ー
だが竜は倒れた。
(ミア)「なんで…。」
少女は竜から降り、緊張した様子で徐々に下がっていく。
(ソニア)「さぁな。色んな力が、これにはあるんだ。」
―ババッ!!!―
人には追えない速度だった。
竜なら追えたかもしれないが、それを言える状況ではない。
(ソニア)「速いな。」
(ポゼ)「ごめんよ。あんまり抑えられなかった…。」
その少女は戸惑いながらも生き残ったサドラに連れられ、里から去っていった。
―――――
(ソニア)「少しいいか?」
(竜)「君か。」
騒動が収まり、あの竜に会いに行った。
(ソニア)「あの子は何だったんだ?」
(竜)「分からないな。人との関わりは少ない。恨みを買うような覚えもない。だからまったく分からないのだ。だが、幻術のような"赤い霧"のようなものを使っていた。それと、"血を採られた"と言っている者たちがいたな。」
(ソニア)「幻術使いで、血を採る…?」
(竜)「人の子。里を助けてくれたこと、感謝している。」
騒動後、視線を感じる。不安と希望が混じる、不完全な目線達が。
(竜)「…君を警戒しているな。」
(ソニア)「それもそうか。そろそろ出ていくよ。」
人が入り騒動を起こした以上、仕方ないことだ。
(竜)「君は…」
(ソニア)「…?」
(竜)「世界を歩んでいるのか?」
(ソニア)「まぁ…。」
(竜)「なら、あの子を連れていってはくれないか?外の世界に憧れをもっているんだ。」
―――――
―スタッ。スタッ。―
門を潜り抜け、里を後にする。
(ソニア)「…。」
―バサ!バサ!―
近付いてくる羽音。
(ポゼ)「ソニア!聞いたよ!もう、行くんだね。…。僕も…。…。」
遠慮、願望、また遠慮。
(ソニア)「来いよ。」
(ポゼ)「…。」
(ソニア)「強くなるんだろ?」
遠慮は吹き飛んだ。
(ポゼ)「…!なるよ、強く!君みたいな人の翼に、僕はなりたいんだ!!!」
少し寄り道をしたソニア。
その前と比べ羽音がする、少し賑やかな隣が増えた。行こう。
<"土砂の国:マリア">
"2026/01/23"読みやすくなるよう変更を加えました。流れの改変は行っていません。




