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騎士のソニア  作者: 深緑蒼水


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17/27

17:火の一族

『騎士のソニア 【17:火の一族】』


―数日後―


―チュンママァァァ!!!―


爆音で鳴く鳥類が、朝を知らせる。


(ソニア)「ッ…。」

(リットリオ)「起きたか。」

「…。どうなった…?」


目を覚ましたソニア。ソニアとリットリオは、宿の中にいた。


―シャッ!!!―

窓のカーテンを開けて、先に起きていたリットリオが言う。


「奴らは逃げたそうだ。」

「街が…。」

「奴らの目的だが、情報整理の末、達成はされたようだ。だがそれも極小。

ほとんど失敗と言っていいらしい。」

「他のみんなは?」

「生きている。カリデュピスは修理に時間がかかるそうだが、無事だと言っていた。」

「そうか、よかった。」

「怪我が治ったあと、来てほしいとゼノが言っていた。今は治せ。俺もそうだが、全員酷くやられている。」

「…。骨、折れてるレベルだよな。」

「あぁ。」

「案外大丈夫なんだが…。」

「それはあいつの…」


ーーーーー


(ポゼ)「ゼノ。」

「ハハッ…!まずは一人か?やったな。」

「うん。」

「身体には慣れたか?力はどうだ?」


王宮の庭に現れたポゼ。3階にいるゼノと目を合わせてポゼは話す。


「慣れたかな。ただ、なんでこうなったかはよく分からなくて…。」


小竜であったポゼだが、今やその面影はなく。成人とまではいかないが、

身体は巨大かつ強靭になった。


「火だ。火は人体に影響をもたらす。トスの火が、お前の中で巡った。

あの時間、サンドラという巨狼へと攻撃するまでの間に。本来時間をかけ、

可能性を秘めた者がなるものだが…。その竜の進化を“覚醒”と呼ぶ。」

「覚醒…。これって、無限なんだよね?」

「お前の身体に異常がなければ。何しろトスの火は、急激にお前の身体を進化させたんだ。トスが抜けた今、加速して進化するようなことはない。

だから今無事なら大丈夫だ。…素質がある。ポゼ。お前にはな。」

「僕に?」

「あぁ。カリデュピスだが、時間が遅ければ死んでいた…。火が消える前、

修復に入れたのは、お前の力あってだ。そこで一つ、提案だ。」

「…?」

「特に力が強くなるわけではない。名を得る気はないか?“冥火竜:ポゼ”。」

「名前…。」


―火の祭壇―


ルボトス王宮の裏山。今のポゼでも、余裕で入れる大きな岩があった。


―ギギギギギギ…!!!―


正確に言うならばそれは岩でもあるが、巨大な扉であった。

暗く広がる岩の道。天井は高く、奥行は長い。横幅は広い。

岩の柱に立てかけられた火が、小さく揺れている。


「ここは…」

「祭壇だ。」

「火は消えないの?」

「トスの火だ。奴が死んだ時、ここにある火も消える。」


ポゼは辺りを見渡した。薄くだが、壁に掘られている絵が見えた。


「ねぇ。壁に絵があるの?」

「よく見えたな。そうだ。絵がある。俺が生まれるより遥か昔から、この祭壇はあると思う。ルボトスに残っている書籍から読み解くならば、"初代炎王の時代"。」

「…それって何年前?」

「さぁな。」


―ボォ!!!―


祭壇の前へとついた。その両脇にある火は強く燃えている。

正面の絵を見れるように。

赤茶色の岩壁には、神々しく描かれた男の姿があった。


「世界には"神"と呼ばれる存在がいたそうだ。」

「この世界に?」

「あぁ。俺の妄想だが、"この世界の外"にもいるのではないかと思う。」

「…?」

「俺が今から話すことは、先代の炎王から聞いた話だ。…この壁に描かれた存在は、"始炎神:グラン"と言い、語り継がれている。グランは宇宙へ行き、星になった。そして、宇宙を照らす火の星が生まれたという。朝と昼が訪れるのは、その影響だ。そしてグランが星になった後、朝と昼が生まれたように、"火が生まれた"。それはグランを祖とした力。そして火に惹かれ、火を宿した者を"火の一族"と呼ぶ。火の一族はそれぞれが、祖たるグランの名を証として刻んでいる。」

「ゼノにもあるの?」

(炎王:ゼノ・グランオー)「"グランオー"だ。グランの名をつけるというのは、そういったファン文化だと思ってくれればいい。興味があるならつけてみろ。火を扱う者は、そう呼ばれる価値がある。」

「…やってみたい。興味があるよ。自分は変わったんだっていう、証拠として。刻んでおきたい。」

「そうか。ならば、何と名乗る?」


炎王ゼノが語るは、"神"と呼ばれる存在であった。

ポゼが特に惹かれのは、名をつけるという行為。

やはり何かに惹かれる者は、火を宿す運命にあるのだろう。


ーーーーー


―ブォォォォ!!!―


石へと刻んだ名を、強く燃える火の中に落とした。


(冥火竜:ポゼ・グランク)「…。」

「いい名だ。もしかしたらお前と、同じ名をもつ者がいるかもしれん。それほど一族は多いということだ。」

「それでも構わないよ。」

「…成長したな。これでお前も火の一族だ。例え血が繋がっていなくとも、

 一族はグランの名で結ばれている。誇るがいい。グランの名を。」


"グランク"と名付けたその名前を刻み、祭壇をあとにする。

祭壇に入る前と比べ、何やら重さを感じる。

だがその重さはプレッシャーでなく、勇気の重さだと感じた。


―数日後―


宿を出たソニア達。初めて会ったかのように思える友と再開した。


(ポゼ)「やぁ、みんな。」

(ソニア)「すごいな、ポゼ…!飛べるんじゃないか?」

「急にでかくなって不便じゃない?」

「それなんだけどね…」


―ボオン!!!―


ポゼの身を火が包んだ…。その中から現れたのは見知った友の姿であった。


「小さくはなれるんだ。一応ね。ただ、またあの大きさになるために、

 火を加速させなくちゃだから、体力を使うんだけど…。」

「遅くて構わん。身へくるダメージを考えておけ。遅く加速させれば害はないと、ゼノが言っていただろう?」

「なら、また建物に入れますね。」

「そうだね。でもこれが許されるのは、普通に成長する時間までらしいけど。」

「雑談は終わりだ。ゼノへ会いに行くぞ。」


ー王宮ー


「来たか。元気そうでなによりだ。…お前達の力を借りたい。」

(リットリオ)「見つけたか?」

「リットリオから聞いた、"ブラック・ロワ"という名。」

(リットリオ)「ネオに依頼をバラまいたのは、確実にあいつらだ。」

「言葉を聞けるほど傷が治ってないが、厳重に捕縛したサンドラ。

学者達に毛を調べさせた。結論は…。奴らは"ブラック・ロワ"にいる。」

(皆)「…!!!」

「そこで、俺も行きたいところ何だが、あの大狼が暴れては困る。

 だからお前達に頼みたい。」

(ソニア)「俺たちでやれるか?」

「"タイダル"王へと連絡をしておいた。返事もきている。ロワへ行くには、

海を渡っていくべきだ。そしてロワへと一番近い場所が、オーシャンだ。」

(ヤチェリー)「行く。」

(ポゼ)「僕は忘れない。」

(リットリオ)「代償の罪は軽くない。」

(風花)「返してほしいものがあります。」

(ソニア)「行かない理由がない。」

(炎王:ゼノ)「なら、行ってこい!お前達ならば成せる!必ずな!

出会えて良かったぞ…!!!」


ゼノへと別れを告げ、ルボトスを離れるソニア達。

火をゆっくりと加速させ、姿を変化させる。翼を広げ、背に乗ろう。

行こう。故郷たるオーシャンへ。

   <“水の国:タイダル:オーシャン”>


―ブラック・ロワ―


―ドックン!!!ドックン!!!―


(黒鎧の男)「…!!!」


鎧を脱いでいる男は、ベットで目を覚ました。


(オメガ)「おはようございます。最終調整、終わりました。」

「身が軽い…。だが…。ッグ…!!!」


―ボタッ!!!―


男が吐いた血は、混ざった色となっていた。

竜の血を身体へと流した。その力は火を生む力になる。

神の心臓を移すには、膨大なエネルギーが必要だ。神の雷をエネルギーへと変換させる。

そして最後の一つ…。


(ブラックソード)「大丈夫か?」

「ハァ…。あぁ…。先は長くない…。早く行かなくては…。」

(ハザキ)「待て。」


―スッ…。―


最上たる黒槍を、ハザキが渡した。


「…。」

(ハザキ)「槍だけだ。作れたのは。」

「オメガから聞いた…。サンドラは逃げてれなかったそうだな…。」

(ブラックソード)「あぁ。ミアが部屋から出てこない。」

「…ミアへ会いに行く。それが終わったら、俺は行く。次などない。

 "自らの命を懸けた、挑戦"だ。」

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