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騎士のソニア  作者: 深緑蒼水


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16/27

16:燃える命

『騎士のソニア 【16:燃える命】』


天思に言葉を書いた。自信ある言葉だ。


「リットリオ。書けたのか?」

「あぁ。本人からの言葉を書いた。」


―ワヤワヤ…。―


人の輪。それぞれの思いを手に持ち、王の言葉、化身の火を待つ。


(ゼノ)「今夜、冥火祭が終わる。亡き者との過去。時には思いを馳せてほしい。

今年もまた天へ火を送り、終わりとしよう…。」

(火の化身:トス)「…!!!」


ゼノの言葉に共鳴し、トスは冥火を拡散させた。


―ボッ…!ボッ…!―


天思へ続々に火が灯される。皆へと与えた小さな火。

それは死者への言葉を運び、天空たる"天ノ地"へと向かうのだ。


「この光景、あと何度見られるだろうか…。」


人々は皆、静かに天へと登りゆく光景を見た。


―サッ…!―


(戦士)「炎王様。」

「どうした?」

「祭事中失礼します。単刀直入に申します。"見回りの戦士達と、連絡がつかなくなりました"。」

「…来るというのか。我が地にも。」

(リットリオ)「ゼノが何かしてるぞ。」

(ソニア)「…。」


耳を澄ます。極限まで集中する…。


―ヂュミミミ…!!!―


“波動“が身体に走る。


(ヤチェリー)「どうしたの?」

「来るぞ…。ネオの時より強い感覚だ…!!!」


―ドオオオオオンンン!!!!!―

静かな空気に轟音が響く。辺りは瞬時に、混沌へと染まってしまった。


―ウオオオオオン!!!!!―

獣の声が次に響いた。大きな声量で。


―バッ…!!!―

瞬時に移動する獣の姿が見える…。


(サドラ)「…!!!」

「こいつら、あの時の…。」

(ポゼ)「ソニア…!」


ーググググ…!!!ー


体格が巨大で人型の大狼がそこにいた。あの少女もまた、彼の背に乗って。


(ミア)「やろう、"サンドラ"。これが最後の仕事。」

(ハザキ)「また会えたな。」

(グァンザ)「―ギュオン!!!―」

(リットリオ)「あいつら…!」

「皆を下がらせよ。敵襲だ。」

「ハッ…!!!」

(ブラックソード)「さぁ、行くぞ。」


ーーーーー


広場へと現れた刺客達。顔を知っている者がいる中、新しく見る者がいる。

黒鎧を纏うが剣を持っている。別人だ。


「トス…!!!」


ゼノは大剣を掲げ、化身を呼んだ。トスは大剣へと宿り…

―ドオオオオオ!!!!!―


「お前達、下がれ…!!!」


ゼノは巨大な火の斬撃で、辺りを攻撃した。敵の姿が見えないが…。


(ソニア)「俺らもやる!!!」

(皆)「…!」

「…。皆を守れ。」


―バッ!!!―


ソニア達は広場から離れ、周囲に逃げた人々を探しに行く。


「何をしに来た。お前達の行動の先が見えん。」

(ブラックソード)「話す必要などないが、戦闘に入る前の対話といこう。

…全ては我々が、過去の災厄から解き放たれるため。

そこをどけ、冥火を取りに来た。」

「トス。」


―ブオオオオオオオ!!!!!―

先程より火力を高めた斬撃。


―バシュン!!!―

(オメガ)「私達があなたの相手をします。」

(ハザキ)「衰えたその身で、我々三人に勝てるか?」

(ブラックソード)「ミア。奴らを追え。あれは可能性だ。止めなくてはいけない。」


ーダン!!!ー

サンドラは強く地面を蹴り、ソニア達が逃げた方向へと走った。

二足から四足へと変化して。


「俺から火を取る気か。…来い!!!」


ーーーーー


ーザン!ブォン!ドォォ!!!ー

ソニア達は走りながら人を探す。国を走り回るサドラ達を狩りつつ。


(ヤチェリー)「これ何体いるの?」

「多くの数が放たれていると思います。」

(ソニア)「飛び出したはいいものの…。ゼノは全部やれると思うか?」

「信じろ。奴は王だ。あの歳になってもなお、玉座に座っている。」

「…?」


違和感。走っている自分達を、つける者がいる。


「みんな。」

(皆)「…。」


足を止めた。中央広場から離れた広場に出た。走ってきた後ろを見る。


―ドン!ドン!ドオン…!!!―


四足から二足へと戻す…。


(サンドラ)「逃がさんぞ…。」


サドラ達の親玉であるサンドラ。高い知能と強靭な肉体をもつ。


(ソニア)「お前達が何をしたいか知らないが、ここで終わらせる…。」

「サンドラ。」

「気をつけて。仲、いいみたい。」

「ヒーローの出番だ。」

「王たるもの、民を守らなくては。」

「私もやるからね。」


ーグッ…!!!ー

互いが肉体に力を入れる。脳の感覚を高める。

「グオオオオオオオオオオ!!!!!」


ーーーーー


ーゴゴゴ!!!スッ…!ー

戦士の報告を受けた王の手腕である二人。戦士とメイドを国中へ向かわせ、ゼノがいる場所へと向かう。

(ハルドピサラ)「凄まじいな…。」

(カリデュピス)「ハルド、急ぎますよ。ゼノが全てを背負っているようですから。昔のような戦い方が今、出来るわけがないのです…。」


―ドオン…!!!―


ゴーレムであるハルドには地中の音が聞こえた。

轟音で強い音。ゼノの音は軽く余裕がある。だがそうではない、危険な音が…


「カリデュピス。ゼノは大丈夫だ。それより、行かなくてはならない場所がある。君はどうする?」

「…。」


ーーーーー


「グオオオオオ!!!」


咆哮で、自分より俊敏に動くソニア達を怯ませる。


―ガアン…!ドオン!!!―


剣で爪を受けた。だが遅く、身を構える時間などなかった。

ソニアは勢いよく家の石壁へとぶつかった。


サンドラの選んだ行動。それは、ただ暴れること。

それで勝てる相手だ。獣は獲物を一人仕留め、次を探す…


(ポゼ)「…ソニア!!!」

(リットリオ)「ポゼ!!!前を見ろ!!!」


ポゼはソニアの方。後ろを見てしまった。

そのような隙を、獣が逃すはずがない。

他の三人は、信じた。受け身をとったはずだ。死ぬ威力ではないはずだと。


「ッグ…!」


サンドラの手と爪が目の前にある。

ポゼは全力の火力で、ブレスを放った…!!!


―パシュン…。―


サンドラの分厚い皮膚と毛にとって、

小竜の火力など濡れた毛すら乾かせないのだ。


「っあ…。」

「竜よ。…哀れな命だ。」

「動いてください!!!」

(ヤチェリー)「ポゼ…!!!」

「ッチ!!!」


ポゼは動けなくなった。自分の全力が、届く以前の問題だと知って。

三人は動いた。


―スッ…!!!ザン!ザン!―

風花は足下へと入り込み、最上たる刃で斬る。


「ッグ…!」


―ドン!!!ドン!!!―

サンドラは風花を掴もうとしたが、速さが足りない。

「サンドラ、落ち着いて!」


―ドオオオオオ!!!―

方法を変えようと思ったサンドラに、リットリオの闇が襲う。

顔へと直撃した闇が、サンドラの動きを鈍く、思考を鈍化させる。

「ッグ…!!!これは…!」


「ッ…!!!」

ヤチェリーは高く跳躍し、土砂の国:マリアで会った職人から貰ったガントレットで、サンドラの顔を殴り飛ばした。腕に伝わる感覚的に、攻撃は通っていないだろうと思ったが、怯ませることは出来た。


「ッヌ…!!!」

サンドラは後ろへ倒れる前に踏み止まった。その時…


―ドン!!!―

足を強く地面に叩きつけた。下にいた風花はよろめいてしまった。ヤチェリーは空中にいる。


「…まずい。」

「力が弱い。殴るとはこうやるのだ…!!!」


―ヂュミミミ…!!!!!ズォォン!!!!!―

「ッグガ!!!!!」


石煙が舞うその中から、蒼く輝く斬撃が、サンドラの胸へと大きな傷をつけた。


―ドスン!!!―


(ハルドピサラ)「無事か?」

サンドラが倒れたタイミングで、二人が来た。

(カリデュピス)「…!大丈夫ですか?」

(ソニア)「ハハッ…。少し、左腕が痛いだけだ…。」

「音が聞こえたため、やって来ました。」

(リットリオ)「ポゼ。立て。まだ、終わってはいないようだ。」

(ポゼ)「ッ…。うん…。」

「ッグ…!ハァ…。ルボトスの…。増えたか…。」

「サンドラ…!やれる…?」

「安心するのだ、ミア。やれないことはない。だが離れていなさい。

 君を背負い、戦うことが出来ない相手だ。」


ーーーーー


―ブォォォォォォ!!!―


広場には何度も、高火力の火が踊るように広がっている。

―バチバチ…!ピッ…!ピッ…!―


(オメガ)「ッ…!これ以上の高温下ではグァンザがもたない…。」

「この暑さ…。集中出来ん…。」


―ジュウウウウ…!!!―


「鎧の形が変わるとは。」

「その程度か?」

(ブラックソード)「目的は絶対だ…。」

「宣言しよう。俺はトスの力を使わずとも、お前達に勝つぞ。トス…!!!飛べ、あの大狼が逃げた先へ!!!」


―ボオオオオオオオ!!!―


トスは大剣から身を出し、ソニア達がいる方へと向かった。

「さぁ、始めるぞ。これで何にも気を取られず、お前達と全力で戦える。」


―ザン!!!―


ハザキは水を含んだ斬撃で火を消した。火が足さなければこの場に、火が広がることはない。

(ブラックソード)「倒し追うだけだ。火がなくなれば勝てる相手。」

「…ッフ。俺の経験値を見せてやる。」


ーーーーー


「ハァ…。」


ソニア達はサンドラの行動を見る。


「グオオオオオ!!!!!」


サンドラはより肉体に力を入れた。


(ハルドピサラ)「気をつけろ。手負いの獣は強くなる。」


―ッグ…!!!ダン!!!―

サンドラは四足の反発で、瞬時に目の前に来た。


手を上げることなく、素早い攻撃でソニア達を狙う。

―シュン!!!ダン…!!!―


全員が一斉に避け、サンドラへと向かう。

―ザッ…!―


―ドン!!!―

(ヤチェリー)「硬い…!」


ヤチェリーは顔は狙わず、体制を崩すため足を狙った。だが、筋肉はより硬くなり、打撃など全く通さなかった。ガントレットから伝わる手の痺れに一瞬身を止めたヤチェリーは、サンドラの足で飛ばされた。


―スッ…!!!ザン!!!―

風花とソニア、カリデュピスは同じ考えで足を狙った。斬撃は通ったが、剣が抜けない。その迷いをサンドラは逃がさず、剣ごと二人を飛ばした。


(ハルドピサラ)「大丈夫か?」

(カリデュピス)「はい。片腕が取れましたが、まだやれます。筋肉が弱まるタイミングがほしいです。」

「彼らは…。」

「大丈夫。全員生きています。」


カリデュピスはナイフが通らないと知り、食い込ませることはせず、瞬時に身を引き攻撃を交わしていた。


「ヒーロー。やってみるぞ。竜よ、君もだ。」

「何をする?」

「君の感覚でやれ。私が迎え撃つ。」


ハルドは崩れた家の石壁を破壊し、自身に纏わせた。それを何度も何度も。大きく強固に。


「ッグウウウウ…。ゴーレムか。そんなことが出来るとは。」


―ドン!!!―

ハルドは躊躇なくサンドラの顔を狙った。


「ッグ…」

サンドラは怯んだが、また足を強く踏み耐える。

互いは怯まない。


―ドン!ドン!ドン!ドン!―

殴り合いだ。


「…よし。行くぞ!!!」


リットリオはサンドラの後ろへと飛び、溜めた闇を浴びせる。


ードオオオオオ!!!!!ー

身を蝕む程の力で…。


ーパシュ…!!!ー

勇気を出し、ポゼも攻撃する。


―ドン!ドン!ドン!―


(リットリオ)「…止まらないのか!」

「ッグオオオオオ!!!!!」


ハルドが纏う岩石との殴り合いで、手には血が流れている。だがそれにより、サンドラは思考を止めた。完全なる獣に、自身を変化させた。


「グオオオオオ!!!」


サンドラは後ろにいるリットリオを掴み、ハルドの拳へと向けた。


(ハルドピサラ)「…こいつ。」


―バゴン!!!―


ハルドは拳を止めた。サンドラはリットリオをそのまま叩きつけ、ハルドが纏う岩鎧を破壊した。


―ボロ…。―


「ヒビが…。」


サンドラのパワーは、ハルド本体まで影響した。


「ハァ…。終わりだ。もう、何も出来はしないだろう。」

「(…私が重要。何をする…?ただ一回…。)」


―ッグググ!!!―


サンドラは拳を強く握り、残った二人を狙い…。


―“カリデュピス”。あなたの名前。―

―ボオオオオ!!!―


(カリデュピス)「…!!!」


カリデュピスは聞こえた。自身に流れる冥火の声が。そして、迫る火の音が。


―カリデュピス。“可能性はどれだ?”―


―ダン!!!―


カリデュピスはポゼを掴み、迫り来る火の方向に投げた。


「竜よ!!!君を信じる…!」

(ポゼ)「…!待ってよ!!!」


―ブォン!!!―


ポゼの叫びは虚しくも響いただけで、彼女は手を止めなかった。


―ダン!!!―

サンドラの拳が、カリデュピスの背中に強く当たった。


―ガラン…!!!バラン…!!!―


糸や木の破片。あらゆる物が宙に舞う…。


(ハルドピサラ)「カリデュピス…!」


―フォォォ…!!!―


「ッぐわぁぁぁあ!!!」


ポゼの勢いは止まることなく進む。


(火の化身:トス)「…!!!」

「!?火の化身…。」


―ブォォォォォォ!!!!!―


トスとポゼはぶつかった。トスはポゼの身体へと入り、

ポゼの身体に火が巡る…。


(ミア)「サンドラ…!」


ードスン…!!!ー


「ッグ…。」

「退こう…!三人がやってくれるよ…!このままじゃ死んじゃうから…。」


―ドスン!!!ドスン!!!―


(???)「ッググ…。ハァ…。」

(ソニア)「ッ…。ポゼ…???」

(ハルドピサラ)「この足音…」


強く踏みしめる音が聞こえる。もう悩むことも、止まることもない。


「ミア。今すぐに離れろ…!!!」


―ブゴォォォォォォォォォ!!!!!―


豪火。サンドラは石壁を使い、受け止める。だがそのような壁…。

もはや壁ではない。


―ジュウウウウ…!!!―


石壁は容易く溶けていく…。


「…!!!」


サンドラは背を向け、ミアを掴み軽く投げた。


「ウオオオオオンンン!!!」


巨狼の咆哮に従い、サドラがミアの元集まる。


「サンドラ…!!!」


サンドラは、残りの力を振り絞り…。


―グシャ…!!!ブオン!!!―


自身の背中を軽くエグり、それも投げた。


「グオオオオオオオオオオ!!!」


巨狼の掠れた咆哮。それはサドラ達に聞こえ、主が投げたその肉片を群れで運び、国の外へと走って行く。


「冥火のエネルギーだ…。少量だが、抽質できるだろう…」


―バタン…!!!―


巨狼は倒れ…。


―ドスン…。ッグ!―


爪を乗せた者は叫んだ。


(冥火竜:ポゼ)「ッグオオオオオオオオオオ!!!!!!」


勝利の咆哮である。


ーーーーー


―ッグオオオオオオオオオオ!!!!!―


(ゼノ)「ハァ…。ッフ…。聞こえるぞ。お前の声が。」


―バチ…!カラン…。―


焦げた広場の中、ゼノは一人立っている。


「歳をとったな…。まぁ、お前達が生きているのなら、それに勝ることはない…。」


火花を散らせるグァンザと、黒い鎧の一部がそこにはあった。

ゼノはオメガ、ハザキ、未知のブラックソードを相手にこの戦績を収めた。

冥火祭の夜。亡き者へと届く、戦いがおきた。

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