7:変幻自在の翻弄者
『希望のリットリオ【7:変幻自在の翻弄者】』
ーー赫耀赤山ーー
肌寒い風が吹き始め、しばらく経った。
黄金で創られたかまくらの中、風をしのぎながら管理局を待つ。
暇を解消すべく、上に穴を開けた。
開けた穴から見る空は、眩しすぎるほど輝いている。
飽きることのない美しさだが、ずっと見ている時間はない。
全てが終わった後、ただ星を眺めるのもいいだろう。
(ジルベスト)「まだ暴れている可能性がある。」
声が聞こえないほど木々で縛り付け、黄金を垂らして固定した。
中身の状態は、本人達にも分からない。
(冷徹な管理局局員)「隙間を開けて確認する。」
相変わらず言葉をかけてこない、仕事特化の態度。
悪態をついてくるわけではないため、疑問が分かればいいのだが。
(冷徹な管理局局員)「暴れているな。鎮静化させろ。」
かまくらから外に出て、管理局の作業を見守る。
改めてみると、過剰な大きさだ。
だがそのくらい、朱鳥の狂気は強かった。
(マドリネシア)「何か変な臭いする。」
鼻を押さえ、籠もった声で話す。
確かに変な臭いがする。
甘党でも拒否するほどの、過剰な甘さ。
いや、それは甘さと言うより腐敗に近い。
ネオ・ランドの路地裏では、よくこういった臭いがした。
(ジルベスト)「耳を塞げ。」
両耳を塞ぎ、鼻を押さえることは不可能。
渋々耳を塞ぐ。
三本腕なら、全てを押さえられたのに。
(美声な管理局局員)「ハアアア!!!」
耳から手を離しても、しばらくその声は響いていた。
塞ぐことなく声を聞きたかったが、そうはいかないようで。
(ブルレーナ)「なるほど。"腐敗"に"歌声"でしょうか。歌声に関しては、色々なことが出来そうですね。」
腐敗によって黄金は消え、頂上を圧迫するほどの木々は、すっかり枯れ果てた。
(冷徹な管理局局員)「始めるぞ。」
朱鳥に巻き付く数本の木々だけを残し、検査が始まった。
狂気に呑まれていた朱鳥は、頭部と舌を垂らして寝ている。
この姿を見た者にあの戦いを話しても、信じてくれないだろう。
(???)「遅れてすまない。」
若い見た目の神人。
だが、老いを感じる静けさがある。
同時に老いを感じさせない、押し寄せる威厳も感じる。
(美声な管理局局員)「こちらに来ていただけますか?"例の物"が見つかりました。」
ゆったりとした、体の全てに透き通る声。
夜なのも相まって、眠くなりそうだ。
(美声な管理局局員)「凶暴化の原因だと思われます。」
砂嵐のかかった四角物体。
胃液や熱で溶けたのだろう。
変形しており、握って持てる。
(???)「レイシャが行動を始めたか。」
聞かれぬように、小声で話す。
だがリットリオとジルベストが、その名を聞き逃すことはない。
風にかき消されてしまう声でも、聞こえる。
(リットリオ)「レイシャが動いただと?何を見つけた?」
相手に聞こえるように、強調した声で話す。
レイシャの情報は、何よりも気になる。
威厳のある者と、目が合う。
考え込んでいる様子だが、負けてはいけない。
相手に話す価値があると、思わせなくては。
話せと心で唱えながら、瞬きもせず鋭い目で見続ける。
(均衡を継いだ神人)「初めまして。私は"均衡"を継いだ者。管理局代表として、勇敢な行動に敬意を。」
ある程度の距離まで近付き、深々と頭を下げてきた。
自身が下となり、相手を持ち上げる。
だが相手が下だとは、到底思えない。
(ジルベスト)「情報を教えてくれ。私は彼の教師だ。」
変形しているが覚えている。
レイシャが逃げた時、手に持っていた物。
だが砂嵐のかかった神人が消えていたことから、"者"と言う方が正しいだろう。
同じ音なのに、こうも気持ち悪くなるとは。
(均衡を継いだ神人)「四角物体だった者が、腹部に入ってた。落下してきたという者。これで間違いないと思われる。あなた達も気をつけたまえ。レイシャが殺害した神人をこれらに変え、ばら撒いたのなら…。多くの神獣が、凶暴化するかもしれないのだから。」
先生が残り、詳しい手続きをやるということで、管理局の検査が終わった。
空に舞っていた火はすっかり消えており、下を向いて静かに帰る。
(マドリネシア)「上見て。火は見えないけど、星なら見えるでしょ。」
確かに火と同等の光が、空に輝いている。
火を見ながら帰ることは出来なかったが、星を眺めて帰ることは出来る。
家に着くまでは未来を考えず、この美しさを堪能していよう。
かけがえのない思い出へと、出来るように。
ーー蒼の竜ーー
数日後。
いつも通りの、学校での日々。
だが以前より一層、張り詰めた空気が広まっている。
あまりにも重く、押し潰されるほどに苦しい。
(エルロット)「昼休憩だが、今日は外に行かないのか?」
廊下で窓を見ても、ずっと曇り。
あの日以降、星を見れていない。
(リットリオ)「あぁ。外に出る気がない。陽も星も、見えなくなって気付く。光の力は凄いな。」
あの日均衡を継いだ管理局の代表が、言った言葉。
案の定各地で、神獣が凶暴化した。
それと同時に、暗雲の空となった。
境界を消す、灰色の空。
心は雨の日のような静けさとなり、日々を過ごしている。
(エルロット)「凶暴化した神獣達は、いつ鎮まると思う?管理局が対処すると言っているが、手こずっているようだしな。」
外は論外であり、窓から見る景色は暗く。
教室に戻り、雑談を始める。
半数ほどの同組学生達が教室内にいるが、みんな静かだ。
よく声が響く。
(リットリオ)「すぐ収まるに越したことはない。だがそうだな、凶暴化神獣の発見報告は、全土に出たと聞いた。一ヶ月は、覚悟した方がいいかもしれないな。」
それほどの緊急事態でも、ガルツハーツでの日々は続く。
安全確保を兼ねているのだろう。
実際一人で家にいるより、学内の方が安全だ。
少し不謹慎だが、こういった非日常感も悪くないと思ってしまう。
いや、そう思うことでしか耐えられない。
ーウワアアアアアアアアアア!!!!!ー
静かな校舎に突然、悲鳴が響いた。
咄嗟に体が跳ね上がり、脚を机の下に思いっきりぶつけてしまった。
きょとんとした表情で教室内を見ると、あまりにも突然かつ大音量だったためか、次々と目が合う。
(リットリオ)「行くぞ!!!」
椅子から飛び上がり、廊下に飛び出る。
一瞬横目で見えたが、敏感なのだろう。
全員、また体を跳ねさせていた。
(エルロット)「待て!!!」
二人も悲鳴に驚いたが、周りの顔を見て気付いた。
自分達がやるべきことを。
人々の前に立つ、光でなくてはいけない。
他者の心配を煽る、存在ではいけいない。
ヒーローたる英雄になるため、正義に駆られる。
ーーーーー
先生に怒られることなど考えず走り、階段から身を乗り出して、一瞬で降りていく。
(リットリオ)「声は下から聞こえた!!!多分一階だ!!!」
一階に足が着く。
左右を確認すると、同じように移動しているのだろうか。
ブルレーナが見えた。
(エルロット)「ブルレーナか。状況は?」
左に進んで更に左を向いた渡り廊下に、ブルレーナがいる。
背中で重なっており先がよく見えないが、嫌な予感がする。
(ブルレーナ)「これなのですが…。」
少し前に嗅いだ、鉄の臭い。
時間が経っても似た臭いを嗅げば、こうも簡単に思い出してしまうとは。
(リットリオ)「ッグ…。遅かったか…。」
土に染み込んだ赤ではなく。
新鮮で光沢のある真っ赤な池。
その明るさに、既視感しかない。
つい数日前のことだ。
(グンルゥーニ)「まじか…。」
グンルゥーニとマドリネシアの二人が、遅れて到着した。
五人で同じ光景を見ているが、こういった思い出は必要ない。
他者を犠牲に得る思い出は、不必要だ。
(マドリネシア)「誰にやられたんだろう…。神獣…?でもいたら分かるよね…。じゃあ、レイシャ…?そうなら、ここまでやるくらいの殺意…。」
筋としては、レイシャが濃厚。
だが砂嵐が見当たらない。
能力を使う必要さえ、なくなったのだろうか。
(ブルレーナ)「犯人ですが、神獣かもしれません…。大人しい神獣の中で珍しい、元々凶暴な神獣…。"白人狼:シファ"…。"喰らった存在に化け、その者となる…"。そうなったあと何をするのかは…。」
赤い池が、目の前に広がっている。
掃除をしても、跡として残るほどの濃さ。
そうすることで、効率よく餌を得られる生態。
不意打ちになるため、無駄な体力消費もない。
(リットリオ)「待て…。俺とエルロットは、二人で来た…。グンルゥーニ…。お前達は…。」
頭の中で、考えたくない最悪の考えを思いついてしまった。
(グンルゥーニ)「マドリネシアと二人で…。」
察しの悪いほうが、幸せだろうか。
今はひたすらに、そうでないことを祈るばかり。
(マドリネシア)「は…?それって、"ブルレーナが死んだってことになるけど…"。」
心臓が勝手に鳴る。
いつものように、静かでいてほしい。
(ブルレーナ)「一人で来ました…。」
"喰らった存在に化け、その者となる"。
それを聞いた時、思ってしまった。
もしかしたらブルレーナは殺され、シファなる神獣が化けているのではと。
(エルロット)「ブルレーナではあると、証明出来る物は…。」
赤い池を懸命に探すも、何もない。
肉片も服の一糸さえも、全て喰われている。
(グンルゥーニ)「権能は!?権能を使ってみろ!!!」
確かに、本人にしかないもの。
それなら変幻を見破れそうだ。
(ブルレーナ)「権能ですか?私としては当たり前ですが、"シファは化けた者の能力を使える"と聞いたことがあります…。ですから権能は、意味がない…。」
苦しそうに知識を話し、権能を発動したブルレーナ。
確かに力を出せず、本人と思ってしまえる。
だが話した内容を本当だとすると、本人を決める確証とはならない。
(グンルゥーニ)「じゃあどうする…?どうやって確かめる…?仮にブルレーナが喰われてないとして、犯人をどう探す…?」
少なくともこの場で、ブルレーナが潔白だと証明することは出来ない。
(ブルレーナ)「ひとまず私を、黄金の手錠で縛ってください。それでしか私は、信用を掴めません。」
黄金の手錠を創ったエルロット。
手錠を見つめ、握り締めている。
無理もない。
相手を疑うこの状況。
それに頭に溜まる、情報の塊。
すぐに終わらせたい。
(ブルレーナ)「投げていいですよ。自分でつけます。」
宙を飛んだ手錠。
それをつけるブルレーナ。
見ている時間で、もどかしさに溺れそうだった。
もし本人ならば、あまりに申し訳ない。
(ブルレーナ)「私が先頭に行きます。学校内にいるであろう、シファを探しましょう。できればある先生達と、会えると良いのですが…。」
相手の"内情を知るか"、"条件を試すか"。
色々とやりようはあるが、一歩一歩が未知数だ。
いつ喰われても、不思議じゃない。
今の学校は、霞に覆われたようで。
日々を過ごした場所が状況一つで、こうも変わってしまうとは。
(リットリオ)「ブルレーナ。お前が嫌いなわけじゃない。」
ちゃんと本心は、伝えておきたい。
正直偽物だとは、到底思えない。
(ブルレーナ)「構いませんよ。皆さんが他人の命を思う、優しい人だと知っているので。では行きましょう。全方向に注意かつ、全てに警戒をもってくださいね。」
教室から飛び出した勢いは思うだけにし、慎重に行動しよう。
消して喰われることの、ないように。
ーーーーー
一歩一歩慎重に、階段を上がっていく。
(リットリオ)「誰もいないな。」
階段を上がっていくも、誰とも会わない。
悲鳴に驚き、教室から出ていないのだろうか。
ーワヤワヤ!!!ガヤガヤ!!!ー
階段半ばで止まっていた時、賑やかな声が聞こえてきた。
休み時間に聞こえる環境音。それは廊下に響く声。
リットリオ達は思う。
その状況が、恐怖であることに。
(ブルレーナ)「走ります!!!」
ブルレーナは階段を駆け上がった。
自分が転ぶかもしれないことを、考えていない。
(グンルゥーニ)「ブルレーナ!!!」
リットリオ達は釣られるように、ブルレーナを追う。
仮にブルレーナの姿をしているシファなら、それはまずい。
(ブルレーナ)「これは…。」
教室の扉と窓から、中を見る。
普段なら気にすることのない日常。
だが今は、鳥肌が立ってしまう。
悲鳴の影響だろう。
教室にいなかった神人達が、戻っている。
(エルロット)「蒼の竜だけでなく、全組がこの状況なら…。」
落ち着きを取り戻そうと、いつもより近い距離で雑談している。
容易にシファのことを話して、暴れられても困る。
(リットリオ)「もし蒼の竜にシファがいるなら、見た目で判断は出来ないな。全員見知った顔だ…。」
少なくともどこかの組で、誰かに化けている。
リットリオとエルロットにとって、蒼の竜にいる神人達は、いつもの顔ぶれだ。
(ブルレーナ)「心を見通し、支配できるお二方の力…。」
(???)「あなた達。」
背後から、可愛らしい声がした。
振り返ってもいない。
と思ったが、下を見るといた。
(マドリネシア)「先生!今…!!!」
マドリネシアがしゃがみ込み、懸命に話そうとする。
焦る姿は、初めて見た。
(支配神:ロリータ)「"落ち着いて"。私は知ってるわ。」
その声を聞いた瞬間、リットリオ達からは緊張が消え失せた。
焦っていた過去の自分が、馬鹿らしくなる。
(グンルゥーニ)「先生。ブルレーナの潔白を、確かめてほしいんだ。」
人形くらい小さな先生が今は、どんなに屈強な戦士よりたくましく見える。
(ロリータ)「そうね。じゃあ、"左を向け"。」
自分でも驚くほどの速さで、体が動いた。
相手の指示を自分が、理解するよりも早く。
思考を超えた速度で、体が従う。
彼女の前ではあらゆる存在が、統率の取れた軍隊となる。
(ロリータ)「速度は問題ないわね。次で判断するわ。」
先生が両手を、後ろに回した。
(ロリータ)「"私が左手を握ったら、左腕を出して"。」
説明ではない。
既に命令が出ている。
全員同じ時間に、左腕を出した。
見えない動きに反応して。
(マドリネシア)「ブルレーナ!!!」
マドリネシアが黄金の手錠を握り潰し、ブルレーナの両手を握って確かめた。
いつもと同じ、柔らかい手。
(ブルレーナ)「ロリータ教授…。教授の力で、確かめてほしいです…。全ての学生は、先生の可愛さに虜…。あらゆる好意に反応する支配の力は、シファを見破れる…。記憶で知っていても、虚偽の好意はすぐに分かるでしょう…。」
ブルレーナは手を握られ、少しもどかしそうな声で作戦を話した。
(ロリータ)「えぇ。そのつもりで来たわ。他の三組は既に確認済み。だから蒼の竜に、いる可能性が高い。一応他の先生達が見回りをしているけれど、確定と言っていいわね。」
ロリータ教授が教室に入る。
その可愛さは学生達を釘付けにし、話を途切れさせた。
(ロリータ)「"立て"。」
座っていた全ての神人が、一斉に立つ。
今のところ、遅れは見られない。
(ロリータ)「"座れ"。」
整った動きというのは揃って見える。
その中に紛れる遅れというのは、とても目立ち際立つ。
(ロリータ)「"私が右手を握ったら、左腕を出して"。」
一秒くらいだろう。
明確な遅れが見えた。
遅れから、錆びた臭いがする。
臭いを隠しているが、その奥では溜まっているのだ。
(白人狼:シファ)「ガアアアアアアアアアア!!!!!」
悲鳴の次は、シファの怒号。
神人の姿が溶けるように消え、細長くも筋肉質の姿が現れる。
本来の白き体毛に付く、赤い色。
ーダン!!!ー
教室の床がへこんだ。
窓や扉が、突風で揺れる。
(ロリータ)「逃げる気よ!!!」
(グンルゥーニ)「逃がすか!!!」
正体が分かれば、こちらのもの。
今までのもどかしさをバネとし、シファを追う。
ーー行事館ーー
数百人の神人が入っても、広く感じる場所。
明かりのない行事館は暗く。
窓から漏れる少量の光が、中心にいる獣を照らす。
(シファ)「グウウウ…!!!」
口や鼻から、息を煙のように放つ。
腰を丸め二足で歩き、獲物を見定め、短くも強靭な爪を構える。
追い詰められても、狩人でいるようだ。
(マドリネシア)「先生、ついてこなくても良かったのに。」
(ロリータ)「ダメよ。それに私は、案外すばしっこいのよ。」
支配が効かないため、やれることは多くない。
それでもロリータ教授は来た。
ポハル先生もジルベスト先生も、こういった場面に来てくれた。
(ロリータ)「さぁ。狼に報いを受けさせるわよ。」
(シファ)「グオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
広い行事館に、唸る声がよく響く。
足から伝わり、全身を震わせる振動。
本来なら感じるのだろうが、今は感じない。
やる気に満ちた肉体を武器に、対抗しよう。
ーーーーー
バネで体が俊敏に動き、シファに一瞬で近付けるリットリオ達。
(グンルゥーニ)「遅いぞこいつ!!!不意打ちしか出来ないのか!!!」
だがバネは、相手も持っている。
(リットリオ)「速い…!!!」
シファを翻弄すべく、背後を取り続ける二人。
残像さえ見えない腕で、距離を開けるしかなかった。
距離を開けても鋭い腕が、無数の乱撃として襲いかかる。
ーザシュ!ザシュ!ー
頬と肩に、熱を感じる。
熱を纏うグンルゥーニは、脚に感じているのだろうか。
擦り傷だが、十分痛みとして感じた。
一瞬でも遅れた今、立場が逆転する。
血管の浮き出る腕が、目の前に迫る。
擦り傷では済まない。
ーダン!!!ー
空間を震わせる衝撃が、発生した。
体のどこにも、新たな傷がない。
(エルロット)「下がれ!!!」
黄金鎧を纏うエルロットが騎士として、間に現れた。
肩の装甲がへこむほどの一撃。
当たっていたら、抉られている。
それでもエルロットは、微動だにしない。
剣を腹部に押し当て、力を込める。
剣がしなり、思いっきり吹き飛ぶ。
だがシファは空中で体勢を整え、綺麗に着地した。
腹部から血が滲んでおり、床に垂れる。
あと一撃で、仕留められる。
(エルロット)「私がやる。あの攻撃は耐えられる。速度に関しては、試してみる。」
目標はある。
自分が理想とする、なりたい姿達。
今、それらを模倣する。
(黄金神:エルロット・ドラード)「我が背後は、貴様の領域ではない。動ける範囲を、狭めていくぞ。」
黄金鎧のエルロットが、一歩踏み出す。
鎧の擦れ合う音が鳴り、マントがなびく。
暗い行事館に明かりがついたと、錯覚するほどの明かりを放つ。
エルロットが、黄金の光を発する。
ーダン!!!ー
床の抉れと残像だけを残し、シファが移動した。
(エルロット)「遅い。」
左側に、落雷のような光が見えた。
視線が引かれ、光が消えたすぐ、正面にまた光が。
いつの間にかシファが、元の位置に吹き飛ばされている。
血を流して悶える狼に、エルロットは更に近付く。
(シファ)「グガアアアアアアアア!!!!!」
それでもシファは退かない。
相手を怯ませるべく咆哮を放ち、全力で体を発射した。
残像すら残さない、床が抉れたという結果だけを残して。
ーザン!!!!!ー
軌道上に、剣を静かに置いた。
ただ当たった瞬間に、引いただけ。
(エルロット)「空腹が辛いのなら、黄金で詰めてやろう。永遠に味わい続けられる、極上の逸品を。」
片手を構え、大岩のような黄金を、シファめがけ発射した。
空腹に飢える、狼への贈り物。
(ロリータ)「まるで…。」
エルロットの黄金たる美しさに、見惚れていた。
シファを倒した状況に、安堵する。
ーゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!ー
勝利に浸れるはずだった。
耳を塞いでも聞こえる、隕石のような轟音。
消えるのを待つが、中々消えない。
体を貫く振動が、ガルツハーツ一帯を揺らす。
(ブルレーナ)「何でしょう…!!!この音…!!!」
ーゴゴゴゴゴ!!!ガンガン!!!ー
吠えた声だけで止まらない。
空を割るような飛行音が。
鉄同士がぶつかるような音が。
行事館を揺らす暴風を巻き起こし、近付いて来ている。
ーーー《成績表:エルロット・ドラード》ーーー
ーー「評価観点」ーー
【創造性】創造性は、新たな存在や概念を生み出す力そのものではなく、創造に向き合う姿勢と、その結果に対する責任を含めて評価する。
・創造への関心・意欲:4
・創造の独自性・発想力・構築力:3
・創造物への責任意識:5
【神威性】神威性は、権能の強さだけでなく、その力を自覚し、制御できているかを含めて評価する。
・権能への自覚・態度:5
・権能の強さ:4
【精神性】精神性は、内面の成熟度を評価する。
・精神の安定:4
・欲望・感情の制御:3
・他者への尊重:5
【知性】知性は、知識量だけでなく、過去を知り、現在を理解し、未来を思考できるかで評価する。
・知識獲得への意欲:5
・歴史や勉学の理解力:3
・未来の想像力:3
【信頼性】信頼性は、教師だけでなく、学生間による相互評価で評価する。
・他者との協調性:4
・信用の貯蓄度:4
なお、本評価は絶対的な優劣を示すものではなく、時代・世界状況・観測者によって変動する場合がある。それを踏まえ、 評価段階を以下に記載する。
ーー「評価段階」ーー
5:[原初の神]原初の神々と並ぶと判断した場合にのみ記される特別な値。
4:[四大神]狭間の壁は厚く、超えられた者は四大神へと近付く。
3:[狭間]狭間を超えるには、他との差が必要。
2:[眷属級]眷属級を超えられなければ、創造物を生み出すことは困難。
1:[神獣級]神獣と遭遇しないよう注力するか、自身を鍛えよ。
ーー「総評」ーー
強大な力に至る可能性と、それに見合う責任感をもつ。
明確な理想を掲げ、それを体現しようとする姿勢に優れている。
更に困難に直面しながらも、立ち向かい続ける在り方は、強さの証である。
一方で不完全な部分も見られ、揺らぎに苦悩する様子が見受けられる。
だがその揺らぎこそ糧であり、自身の軸とした時、黄金は更なる光を放つだろう。
総合点は、五の可能性をもつ四。
その輝きが曇ることのないよう、歩み続けてほしい。




