6:廻る命
『希望のリットリオ【6:廻る命】』
ーー神校:ガルツハーツ(校庭)ーー
今日も校庭のベンチに座る。
あの日以降、学校は静かになった。
張り詰めた空気に、皆が縛られている。
授業中も休み時間にも、誰も座らない席。
何時も、あの日の赤い夕焼けが頭をよぎる。
(マドリネシア)「つれないね。」
わざわざ外に来る物好きは、そう多くない。
芝生を眺めていた頭を上げると、目線が合う。
相変わらず、落胆している顔。
そのマイペースさには、感心する。
(リットリオ)「しょうがないだろ。当事者なんだ。あの日見たものを、忘れることは出来ない。」
触れられただけで、目の前で倒れた神人。
人も棚も機械ではないが、砂嵐状に変化するという、理解できない現象。
考えれば考えるだけ、謎という砂に引きずられるようで。
(グンルゥーニ)「お前の心中は察するぜ。でも俺達だけで、何かを得られる時期は終わったんだ。日々を利口に生きなきゃ、死んでいった奴らが報われないぞ。」
日々思考を巡らせてもただ頭が痛くなり、時間だけが過ぎていく現実。
少し苛つくが、言っていることは正しい。
(ブルレーナ)「"ガルツハーツ学生、ジャウルインの逃亡。本名レイシャ。正体人間。触れた対象を無力化する力をもっており、既に二名の学生を殺害。更に被害学生と街の住民を候補とすると、十ニ名を殺害。この者を、全世界指名手配とする"。見ていますよね?」
そう言い、手配書を差し出してきた。
似顔絵が大きく書かれ、警告たる赤字で、レイシャについて書かれている。
似顔絵を見ると、本能的に鼓動が強まった。
やはりあの姿を、忘れることは出来ない。
(リットリオ)「あぁ。情報は何度も追ってる。あの後レイシャは街を襲い、それ以降見つかっていない。奴の気迫に圧倒されていなければ、誰も死なずにすんだ。」
自分のせいで死んだ命。助けられた命を、何一つ忘れたことはない。
それは一街のヒーローであった時から、世界の英雄になっても変わらないこと。
リットリオに取り巻く、動力源でもある。
(エルロット)「君一人で抱え込むな。我々はもう、一人でいる命ではないのだ。」
隣に座ってきた。
エルロットからは鉄の匂いがするが、嫌いじゃない。
黄金の匂いだからだ。
(ブルレーナ)「そういうことなので、明日の休日。息抜きをしませんか?」
(マドリネシア)「グンルゥーニの提案だよ。」
(グンルゥーニ)「余計なことは言わなくていいんだよ。」
三人も、ベンチに座ってきた。
五人で同じベンチに座ると、流石にぎゅうぎゅう詰めできつい。
でも不思議と、口角が上がってしまう。
(リットリオ)「何をするんだ?」
そう話す声は、少し上ずっていたはずだ。
気持ちを隠すことはよそう。
喜怒哀楽を、友人には。
(ブルレーナ)「"朱鳥の回帰"で発生する火は、心体を癒やすと言われています。それを見に行きましょう。みんなで。」
エルロットも周りに人がいても、孤独に戦っていたのだろう。
でも互いに、今は違う。
誰かに頼れて、頼られる。思われ、思う。
そんな輪の中に、自分達は入れたのだと感じる。
それと同時に思う。
レイシャはきっと、そんな輪を破壊されたのだと。
彼の立場を、蔑むことは出来ない。
自分もそうなるだろうと、思えるから。
だからこそ、あの目を思ってしまう。
ーー赫耀赤山ーー
赫耀赤山に着くと、自然が目に留まった。
敷き詰まる赤土。乾燥した草木。
足跡をつけ、灼熱たる気流に乗り、真っ赤な溶岩の川を泳ぐ、多様な神獣達。
(リットリオ)「暑苦しい場所だな。」
気流越しに見る空間は揺れており、流れの強い川や滝は、
ポコポコと音色を奏でている。
過度な温度以外は害にならない神人ですら、溶かせるほどの地。
夏にヒーロースーツを着る感覚と似ている。
(ブルレーナ)「山の頂に、朱鳥の巣があります。流石に人が多いですね。」
赫耀赤山を訪れる神人が、多く見られる。
それほど朱鳥の回帰は、効力のあるものなのだろうか。
人の流れを見ていると、期待が膨らむ。
少し無理をしても、いいと思えるくらいには。
(グンルゥーニ)「よし!!!一番乗りが最強な!!!」
周りを気にせずグンルゥーニが、突然走り出した。
神人達を次々と抜かし、頂上に向かっている。
このまま誘いに乗らなければ、グンルゥーニを哀れな存在に出来る。
ただ今は、楽しみたい気分だ。
(リットリオ)「じゃあ、最下位はなんだ?」
足を動かし、グンルゥーニの背中にそう言う。
(グンルゥーニ)「最下位は山登り弱者だ!!!嫌なら走るんだな!!!」
突如始まった戦い。
勝者と敗者には、称号が授けられる。
(マドリネシア)「嫌だから先に行こ。」
からかわれるより、からかいたい。
静かに走り出し、優勝を狙う。
相手をイジる、正当性のために。
(エルロット)「めちゃくちゃだな。どうする?もう行ってしまったが。」
ブルレーナは目を閉じ、真顔で立っている。
呆れて、考えを放棄しているのだろうか。
ーパン!!!!!ー
目を大きく開き、手のひらを打ち付けたブルレーナ。
山に音が浸透した。
すると先に行ったはずのグンルゥーニ達が、何故か目の前にいる。
(グンルゥーニ&リットリオ&マドリネシア)「なっ…!!!」
混乱した様子の三人は、仲良く頭を打って倒れ込んだ。
初めて見た、ブルレーナの権能。
(???:ブルレーナ)「勝ち負けに何かをもたせたのなら、それは勝負になります。全員が"同じ条件下"で、限りなく差がないようにすべきです。いいですか?グンルゥーニ。」
ブルレーナの目が、グンルゥーニに向く。
暑苦しい空気を凍えさせるほどの、冷たい目。
グンルゥーニは歯を鳴らし、手足を揺らす子鹿になってしまった。
(ブルレーナ)「では、状況を整理します。ここを開始位置として、頂上が終了地点。合図で動き、頂上まで行きます。権能は私の力で使えないとして、その他は何をしても構いません。勝者と敗者に、称号が与えられる勝負ですね。」
ブルレーナは真面目だ。
遊びでも規律を整え、何事にも手を抜かない。
厳しい所だが、助かる時が多い。
(リットリオ)「合図は何にする?」
早速構えるリットリオ。走る気満々だ。
(エルロット)「黄金を垂らそう。全員の順番が整った後、三滴落ちたら始めとする。切り替えは出来るか?」
(ブルレーナ)「えぇ。特に遅れなく出来ます。」
黄金の水滴時計を創り、木の枝に巻き付けた。
全員横一列に構え、水滴音に集中する。
ーボタ…。ボタ…。ー
一滴。ニ滴。
緊張が湧き始め、真剣勝負の楽しさが溢れてきた。
こういったヒリつきが、思い出になるのだろう。
ーボタ…!!!ー
三滴。
全員一斉に走り出す。
称号を賭けた、本気の勝負。
ーーーーー
空間を揺らす息が、勝手に出てくる。
頂上の涼しい風を堪能して、整っていよう。
それが勝者の特権。
(リットリオ)「あれが朱鳥。」
空の光が煌々と輝き、頂点たる神獣を照らす。
隕石跡ほど巨大な巣の上に、朱鳥が丸まっている。
(エルロット)「思ったより薄いな。」
朱と呼ばれているため、真っ赤な姿を想像していた。
だが体毛が薄い。
白に近しい、薄い赤と言ったところ。
とは言っても、十分美しい姿をしている。
(ブルレーナ)「彼はもう、老いています。」
少し吐息混じりに、話すブルレーナ。
以外にもかなり体力があり、エルロットは抜かされそうだったらしい。
(ブルレーナ)「朱鳥の回帰とは、彼の生まれ変わり。古い体を捨て去り、新たな肉体に移る。ですからあの巨体に、新たな体が入っているのですよ。」
既に大勢の神人が息を殺して、その時を待っている。
どれほどの火が上がり、癒やしを降らすのだろう。
待っている時間すら、楽しいと思える。
(マドリネシア)「もう無理…。帰りは運んで…。」
頂上に着いた早々、うつ伏せで倒れてしまった。
敗者にならなかった、安堵もあるのだろう。
(グンルゥーニ)「…!…!…!」
地を這うようにして着いた、グンルゥーニ。
言葉が出せないようで、真剣な眼差しを向けてくる。
察してほしいようだ。
(リットリオ)「立てるか?山登り弱者。」
仕方なく手を差し出し、引き上げた。
引っ張られるほど重く、手を離したくなるほど熱が溜まっている。
(マドリネシア)「権能頼りだから負けるんだよ…。山登り君…。」
マドリネシアにも手を差し出そうと思ったが、自力で立っている。
面倒くさがりな所があるが、やる時はやる。
(リットリオ)「なるほど。熱で体を、促進させてただけなのか。」
言い出しっぺかつ、敗者となったグンルゥーニ。
疲れて言葉も出せず、勝者達の言葉を聞く他なかった。
ついでに体力の無さがバレるという、罰が付属した。
(ブルレーナ)「懲りたら今後、突然言うのはなしにしてください。さて、そろそろです。」
吹いていた風が、弱まった。
朱鳥の体毛が、徐々に火を纏っている。
七色に輝く光の欠片が、火と共に踊る。
高揚感の湧く心は静まり、その時を待つ。
ーブオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!ー
体毛全てが火となり、一帯を赤く染めるほど燃え上がる。
朱鳥の回帰が始まった。
(朱鳥:???)「ギャオオオオオオオオオオオオ!!!」
燃え盛る火の中から、朱鳥の声が聞こえる。
踏ん張っているような、力強い声。
ーバサアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!ー
熱を運ぶ、強風が吹いた。
咄嗟に腕で目を守りながら、閉じている。
(マドリネシア)「見て…。リットリオ…。」
一気に腕を戻し、目を開いた。
心が楽しみを待ち切れない。
(朱鳥:シナズノトリ)「キュアアアアア!!!」
半分ほどの大きさになった朱鳥は、今まで見た何よりも赤い体毛を生やしている。
これまでかというほどに、染めたような明るさ。
朱鳥を眺めていると、小さな火が肩に乗った。
心を癒やす、温かな熱。
風で飛ばされた古い体毛が、消えゆく火となり宙に舞っている。
それは目を奪われる、美しい雨だった。
ークチャ…。クチャ…。ー
以前の肉体を、美味しそうに頬張る朱鳥。
子供や眷属をつくる気持ちを、リットリオ達は知った。
とても愛らしく、見えるのだ。
(ブルレーナ)「少し早いかもしれませんが、下山しましょうか。空に舞う火は、地上まで落ちてくると言います。帰りはゆっくり眺めて、帰りましょう。」
朱鳥の回帰。
確かに心が癒やされた。
晴天に彩られる芝生に身を預け、眠るような。
久しぶりに今日を満足して、終われそうだ。
(マドリネシア)「待って。なんか降ってきてるよ。」
振り返ると、マドリネシアが空を指していた。
舞う火が多く、全く見えない。
(リットリオ)「何も見えないぞ?まだ見たいなら残っていいが、疲れているならエルロットにでも…」
最初は嘘を言って、止めているのだと思った。
だがそうではないと、思える行動がある。
朱鳥も静かに、空を見上げている。
ーゴク!!!ー
一瞬だったが、何か見えた。
その見えた何かを、朱鳥が呑み込んでしまった。
心配だが、空には小さな神獣が飛んでいる。
それが落ちてきたのだと思う。
(エルロット)「変だぞ。何か不味いものでも、呑み込んだのか?」
美しさに見惚れていた神人達に、不気味な緊張が走る。
不用意に首を曲げ、翼を激しくバタつかせる、明らかに多動な動き。
(シナズノトリ)「ッグウ…!グオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
耳を裂く咆哮が、緊張を割った。
ーグググ!!!バキバキ!!!ー
朱鳥の体が、異常な角度に曲がっていく。
密度の濃い骨が剥き出しになり、目は取れそうなほどに見開き。
下顎は外れ、垂れる唾液が地面を溶かす。
そして恐怖が生まれた。
ーワアアアアアアアアアア!!!!!ー
大勢いる神人が我先にと、下山していく。
骨が剥き出し、巨大な手となった翼を地面に押し当てる。
朱鳥が何をするのか、簡単に想像出来てしまう。
(リットリオ)「食う気だ!!!」
リットリオの声が合図となり、逃げた神人達の前へと立つ。
正面から見た朱鳥から、美しさなど感じず。
今感じられるのは、圧倒的不気味さ。
(???)「下がれ!!!」
目の前にガッシリとした、木の壁が現れた。
ードンドン!!!ドンドン!!!ー
何度も頭を打ち付ける、狂気の音が聞こえる。
へこみが深くなり、木くずが舞い、限界が近そうだ。
(シナズノトリ)「グアアアアアアア!!!!!」
木々を破壊した朱鳥は速度を落とさず、大量の木片と共に向かってくる。
(???)「動きを止める!!!」
ぶつかるギリギリだった。
巨大な口が目の前で止まり、地を溶かす唾液が、足元に垂れてくる。
(ブルレーナ)「助かりました!!!あれ、先生…!?」
急いで下がったリットリオ達。
親しくはないが、見たことのある顔だ。
(力木ノ神:ジルベスト)「ガルツハーツの学生か。」
朱鳥は全身を激しく動かし、極太の木々を削っている。
もう少し話していたかったが、そんな配慮をしてくれる様子はない。
(グンルゥーニ)「俺達もやります!!!」
やる気に満ちた目でジルベストを見るが、あまり肯定的な表情ではなかった。
(ジルベスト)「分かった…。動きを完全に止める。殺害を考えて動け。生存での拘束は二の次だ。」
学生を思った、渋々の判断だろう。
冷徹で合理的な判断を下す、噂通りの厳格な先生だ。
(ジルベスト)「構えろ!!!隙をつくる!!!そこを叩け!!!」
木々を削った朱鳥が、飛び出してきた。
片翼が揺れるだけで、骨がない。
(エルロット)「翼骨を剣としている…!」
抜け出しすぐに、剥き出していた骨を引き抜いたのだ。
骨を剣として使う変化に驚いたが、集中しなくては。
美しさを感じた朱鳥が、命を刈り取る気迫を放っている。
ーーーーー
腰を下ろし、地面に手をつくジルベスト。
地を揺らし、石を吹き飛ばし、土が盛り上がる。
鋭利に尖る木々を、朱鳥に向かわせる。
ーザン!!!ー
朱鳥は一振りで、木々を二つに斬った。
頭上を掠めるほど、長く巨大な翼骨剣。
身を低くしなければ、頭を斬られていた。
(エルロット)「止まらない!!!だが次は来る!!!」
事前の作戦は崩壊した。
左右散り散りに分かれ、朱鳥の背後へと移動する。
正しい選択を選ばなければ、頭を斬られる。
(エルロット)「もう一度木を出してください!!!黄金を纏わせます!!!」
(ジルベスト)「了解した!!!」
今度は二人で腰を下ろし、地面に手をつく。
地中を黄金で浸らせ、木々に纏わせる。
斬撃を防ぐ鎧となれば、隙ができる。
ーギン!!!ー
黄金を纏った木々は、翼骨剣を弾き返した。
だが骨は頑丈で折れていない。
ただ朱鳥を拘束できれば、関係のないことだ。
(エルロット)「巻き付いた!!!今だ!!!」
獲物を捉えたように、木々は強く巻き付く。
絶対に離さないと、ありったけで。
(グンルゥーニ)「…!?下がれリットリオ!!!」
リットリオとグンルゥーニは、朱鳥へと飛び出した。
悶える朱鳥へと攻撃を当てられる確信が、二人にはあった。
だが瀬戸際で確信が、グンルゥーニの中で疑惑に変わった。
ーブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!ー
回帰で見た、天まで届くほどの火。
攻撃を当てられる寸前に、朱鳥は火を纏った。
何よりも明るい赤い体毛が、更なる赤を求め、赫へと変わる。
(リットリオ)「助かった…。」
身を焼く暑さに耐えつつ、火の着いた手を地面に擦り付ける。
気味悪く立つ朱鳥を中心とし、一帯が赤く染まる。
離れていても、身が溶けるほどの暑さ。
神人を殺す、温度をもっている。
(マドリネシア)「黄金と木は溶ける…。」
(ブルレーナ)「多少の隙があったので試したのですが、私の力もマドリネシアの祝福も、効果はないようです。何ならその試しが、今の状況をつくってしまった可能性も…。」
考えれば考えるほど、足場が崩れていく感覚に襲われる。
正直、特攻か逃亡以外、もう何も浮かばない。
(グンルゥーニ)「いや。この状況をつくったのなら、好都合だ。」
いつもと違うグンルゥーニの横顔が、赤に照らされる。
ふざけた表情ではない、真剣な顔。
勝利を見据えている目。
(グンルゥーニ)「"俺があの火を貰う"。骨が溶けていなくても、もう関係ない。あとは託すぞ。」
グンルゥーニが静かに、宙へと向かっていく。
リットリオ達がその姿を追うように、朱鳥も追う。
(グンルゥーニ)「上からだと、お前の火がたんまり見えるぜ。」
見定めるように見てくる朱鳥へと、両手を向ける。
感じる。
自身の力になる、大量の火を。
(グンルゥーニ)「じゃあな焼き鳥野郎!!!お前はどれくらい燃え上がれる!?俺はな!始炎神の火を得たいと渇望したんだ!!!憧れの火を得られるまで、俺は燃え上がるぜ!!!それ以外は全部ぬるい!!!」
朱鳥を中心として、辺りは赤く染まっていた。
だがその中心は、今やグンルゥーニ。
(戦火の神:グンルゥーニ・グランスト)「火を使うのなら覚えておけ!!!これが"戦火"!!!"戦火を操る"俺の力だ!!!」
赫い火がグンルゥーニへと移り、赤い体毛へと朱鳥が戻っていく。
身が溶けるほどの暑さが、消え失せた。
(ジルベスト)「剣も火もないのなら、拘束は容易い!!!」
地面から生える無数の木々が、困惑する朱鳥を縛り、包んでいく。
更に黄金を垂らし、これでもかというくらいに固めた。
緊張や恐怖は消え失せ、安堵の波が押し寄せる。
流石に出てくることはないだろう。
(ブルレーナ)「先生。助かりました。ありがとうございます。」
(ジルベスト)「あぁ。学生を助けるのが、教師の役目だからな…。」
まだ視界は赤く見辛かったが、ジルベストは少し悲しそうな顔をしていた。
冷徹で合理的な判断を下す、厳格な先生というのは本当だ。
だが全貌は見えていないのだろう。
それでもジルベストが、学生思いの教師であることは、リットリオ達の目に確かに映った。
(リットリオ)「グンルゥーニ!!!赤く光ってないで降りてこい!!!」
赤が消えた後もしばらくは、世界が赤く見えそうだ。
それくらい、赤を過剰に見すぎた。
(グンルゥーニ)「待てよ!!!量が多くて吸収しにくいんだ!!!」
(マドリネシア)「吸収し終わるまで、黄金で包んじゃおう。」
(ブルレーナ)「いい案ですね。」
(エルロット)「なら早速、創るとしよう。」
仲のいい五人の学生であることが、ジルベストの目に映る。
(ジルベスト)「(やはり手を、引かなくては…。私が君を見つける…。二度が起こらぬように…。)」
誰にも聞こえない声は、赤く染まる山に消えていった。
ーーーーー
地上の木々から、赫耀赤山を見る。
赤く染まる空でも照らせないほど、葉が覆い被さっている場所。
(レイシャ)「(あれほどの戦いを見るに、成功していそうだな。これで"二回目"…。」
頭に雑音が鳴り始めた。
雑音混ざりのあの声が、聞こえてくる。
(禁忌:ウルスペラ)「"封印の弱まりを感じた。また力を授ける。引き続き目的を達成しろ。そして互いの目標を果たすのだ"。」
声が止まった後も、耳鳴りが酷い。
(レイシャ)「(力の譲渡は一括でいい。十分すぎるほど、布石を散りばめた。神獣達は喰らうだろう。"形が変わっても、あれは肉だ"。さぁ。神を喰らい、眠る者を呼び覚ませ。)」
誰にも気付かれず、レイシャはその場を去った。
譲渡の反動を凌ぐため、静かな場所へと向かう。
焦りはない。
あるのはただ、嵐の前の静寂である。
ーーー《成績表:グンルゥーニ・グランスト》ーーー
ーー「評価観点」ーー
【創造性】創造性は、新たな存在や概念を生み出す力そのものではなく、創造に向き合う姿勢と、その結果に対する責任を含めて評価する。
・創造への関心・意欲:3
・創造の独自性・発想力・構築力:4
・創造物への責任意識:3
【神威性】神威性は、権能の強さだけでなく、その力を自覚し、制御できているかを含めて評価する。
・権能への自覚・態度:4
・権能の強さ:4
【精神性】精神性は、内面の成熟度を評価する。
・精神の安定:4
・欲望・感情の制御:2
・他者への尊重:5
【知性】知性は、知識量だけでなく、過去を知り、現在を理解し、未来を思考できるかで評価する。
・知識獲得への意欲:3
・歴史や勉学の理解力:2
・未来の想像力:4
【信頼性】信頼性は、教師だけでなく、学生間による相互評価で評価する。
・他者との協調性:5
・信用の貯蓄度:4
ーー「総評」ーー
強い欲望を原動力とする、極めて明るい性格。
その熱量は確かに、周囲を動かす力となっている。
ただ未熟さが各所に見られ、突発的に動く傾向がある。
周囲を巻き込む可能性が高く、改善したい箇所である。
しかし勝負においては、素早く勝機に気付ける思考力をもつ。
総合点は、四の可能性をもつ三。
短所を長所へと変えることで薪が増え、更に燃え上がることだろう。




