5:烈日を待つ
『希望のリットリオ【5:烈日を待つ】』
ーー蒼の竜ーー
舌が肥えてから、数日が経った。
ポハル先生の真剣な表情もまた、染み込んだ。
軽率な行動は辞めるべきだと思い、日々を過ごしている。
(リットリオ)「(よし…。そろそろ帰るか。)」
教室に残り、自主勉強をしていたリットリオ。
差し込む光が赤に変わったことで、帰路につく。
ーー広場ーー
ガルツハーツの出入り口。
赤色の斜陽が入り込む広場は、いつもより広く感じた。
(ジャウルイン)「すまないな。こんな時間まで、教えてくれて。」
(馴れ馴れしい神人)「気にするなよ!休んでた分は、いつでも教えるからさ。こいつをどうにかしてほしいんだよ!!!」
肩を掴み、頭を固定して、問題児を突き出す。
(物忘れの激しい神人)「いや、俺は覚えてる。だからもういいって。」
(馴れ馴れしい神人)「ジャウルイン!何でもいいから言ってみろ!こいつ絶対覚えてないからよ!」
三人組の会話が、広場によく響いている。
(ジャウルイン)「そうだな…。」
ジャウルインは考えた。目的達成の条件を。
まず、登校は必須だ。
生贄を探しつつ、力や神獣についての、能力を手に入れられる。
だが問題なのが、不必要な友情。
苛立ちを抑えつつ、道化でなくてはいけないのが、苛立ちを強める。
かといって消すわけにはいかない。
ならば日々の苛立ちを、少なくする必要がある。
(馴れ馴れしい神人)「ジャウルイン。大丈夫か?怖い顔してたぞ…。」
心配そうに、ゴミ共が見てくる。
すぐにでも目を潰したいが、抑えなくては。
(ジャウルイン)「そうか?真剣に考えてたんだ。じゃあ、三人の権能は?」
ジャウルインへの無知が、苛立ちを強める。
知りたくもない知識を、得なくてはいけないから。
(物忘れの激しい神人)「えっと…。俺が"忘却"で…。お前らが、何だっけ…?」
それぞれが、答える必要はないだろう。
どうせ奴が触れる。
(馴れ馴れしい神人)「お前は勉学以前に!友達の能力も覚えてないのか!」
ツッコみながら、頭の固定を強めている。
リットリオは気付いた。
帰るはずだったが、装飾棚の裏に隠れて、会話を盗み聞きしていることに。
(リットリオ)「(驚いた…。ヒーローとしての動きが、染み込んでいるのか…。)」
不思議と帰る気が、全く湧かない。
無性に三人組が気になる。
(馴れ馴れしい神人)「俺が"感情"で、ジャウルインが"夜"だろ!」
(物忘れの激しい神人)「あぁ!そうだったな!」
腕から抜けた、神人が走る。
押さえていた神人が、それを追う。
(ジャウルイン)「ハハッ。そうだな。」
(リットリオ)「(あの三人、どこかで見たな…。特にあいつは…。)」
笑っているが全く笑っていない顔に、神経が向く。
(物忘れの激しい神人)「あんた、そこで何を…。」
集中しすぎるあまり、頭から抜けていた。
装飾棚を回る軌道に、二人はいたのだ。
(リットリオ)「すまない。"楽しそうだと"、思ってな。すぐ去る。」
リットリオは強調して、言葉を発した。
足を運びながら、横目で確認する。
よく知っている、光を拒む漆黒の目。
変な奴認定をされても、動じない。
大人しく去るが、帰るとは言っていないのだ。
(リットリオ)「(軽率な行動はしない。約束するさ。先生。)」
リットリオはここ数日を経て、この瞬間。
正義を諦めることができないと確信した。
(馴れ馴れしい神人)「おい!!!待て!!!」
かなり必死な声で、呼び止められた。
覚悟を整えた後、渋々振り返ったが、何かが変だ。
話す距離ではない、殴る距離でもない。顔が重なった。
(馴れ馴れしい神人)「静かに頼む…。"あんたも、気付いてるか…?"」
予想外のことで、声を出そうとしてしまった。
見たものは、じゃれ合いではない。
天秤の傾けだった。
(リットリオ)「何か知ってるのか?あれは悪意の目をしているが…。」
耳打ちで話す神人の、揺れる髪越しからだが、"あれ"は変わらぬ目をしている。
(馴れ馴れしい神人)「権能の話をしてただろ?"嘘を話した"。感情でも、夜でもない。でもあれは"そうだな"って、言ったよな…。俺とジャウルインは、昔からの仲なんだ…。でもあれは、ジャウルインじゃない…。似ている誰かだ…。」
星座のように、輝いた考え。点が光を増し、更に伸びていく。
熱の出る神人がいるという。だが神人は、熱など出ない。
昔から仲の良かった、ジャウルインという神人。
だがあれは、嘘をそうだと言った。
(リットリオ)「じゃああれは、誰なんだ…?」
(馴れ馴れしい神人)「それを確かめる…。」
何もなかったように体勢を戻し、リットリオ達はジャウルインを見る。
そして互いが、芝居を始める。
(馴れ馴れしい神人)「ジャウルイン。お前は、誰だ…。」
なるべく震えないように言ったが、全然ダメだった。
いつもより静かな広場に、緊張感が広がる。
誰も喋ることなく、緊迫したまま過ぎていく。
まるで時が、止まったように。
(繝ャ繧、繧キ繝」)「その勘が、お前達を短命にする。」
それが腰を低くし、構えた。
対話の道など最初から、考えていない早さ。
ービイイイイイ!!!ー
ネオ・ランドでたまに聞こえていた、映像パネルの不具合。
砂嵐のような重低音が、それの手から流れる。
(リットリオ)「(この無機物さ、どこかで…。)」
驚愕の連続で、忘れていた。
だがあれが、最初の驚愕だった。
始業式前に聞こえた、頭の中で流れた音。あの時目の合った顔。
全て同じだ。
(リットリオ)「下がれ!!!」
不気味さに気付くと、体が勝手に動いていた。
その事実に余計、不気味さを感じる。
(繝ャ繧、繧キ繝」)「いや。神人という命が、お前達を短命にするのだな。」
その者が、手を払った。
頭がおかしくなったと思い、瞬きを加速させたが、何も変わっていない。
装飾棚の形をした、砂嵐の何か。
二人の顔も砂嵐と化し、無気力に倒れている。
どんな顔だったか、これでは思い出せない。
瞬きも後悔も、している暇がないと思わされた。
(繝ャ繧、繧キ繝」)「速いな。だが…。」
砂嵐を纏った指で差された。
怒りのような、強い予感がする。
(リットリオ)「こいつ…!!!」
恐る恐る確認すると、神衣の一部が砂嵐と化していた。
一瞬でも遅れていたらと思うと、鼓動が跳ね上がる。
ービイイイイイ!!!ー
あの攻撃が来る。
だが緊張のせいで、思ったように動けない。
(リットリオ)「死ぬわけにはいかない…!!!」
帰る場所がある。交わした約束もある。
日々を過ごし、戻らなくては。
見様見真似でやってみよう。グンルゥーニが、やっていたように。
(繝ャ繧、繧キ繝」)「ッチ…!!!」
(リットリオ)「これで歩けるとはな…!!!」
自分の視野すら、奪うほどの光。
感心しつつ下がり、息を整え、心で数字を刻む。
(リットリオ)「なに…?誰もいない…。」
砂嵐と化した、神人がいない。肝心の本人もいない。
ータッ…!タッ…!ー
外を急いで走る音と、姿が見えた。
(リットリオ)「何か持っている…!まさかだが…!止まれ!!!」
四角上の何かを片手に持ち、森林へと入った、謎の存在。
リットリオは迷いなく、追う選択を選んだ。
緊張を優に超える、正義感に駆られて。
ーーユグドラシル森林ーー
学校の真隣にある、巨木の群生地。
(繝ャ繧、繧キ繝」)「鬱陶しい!!!」
謎の存在はまたしても、手を払い、巨木の根本を砂嵐に変えた。
ーゴゴゴゴゴ!!!ー
倒れてくる巨木は、正に巨人の足。
視界を塞ぐ闇が、次々と現れていく。
だが、怯んでいる暇などない。
僅かで潜り抜け、光となり瞬間的に移動し、後を追う。
(リットリオ)「進み慣れてるな!お前も何回か、森林に来てるんだろ!!!人を殺すためか!?答えろ!!!」
挑発に乗ってきたら得なため、揚げ足を取るような言い方を、よく使っていた。
罠にかかる獲物のように、釣れることは実際あった。
(繝ャ繧、繧キ繝」)「そうだ!!!蒼竜への生贄も、ガルツハーツに通っていたのも全て!貴様ら神人を殺すためだ!!!汚物のような友情もな!!!もう道化を演じる必要はない!!!」
全ての怒りを放出するような怒号で、その存在は吠えた。
蒼竜:アイズや黒蛸:タルタ・オクトより、執念を感じた咆哮。
まるで一人ではないように思えてしまい、足が止まった。
見上げると、倒れた巨木の頂きに、立っている。
(繝ャ繧、繧キ繝」)「伝えろ!!!貴様らが生んだ、"人々の執念"を!!!私は復讐者であり、代弁者!!!」
激しく両手を広げた者を照らす、沈みかけの陽。
神人に殺された人々の怨念として、赤い光が心に映る。
リットリオは思えてしまった。あれは自分が救えたはずの、魂でもあると。
そして陽を浴びる者も、ヒーローであると。
(復讐の代弁者:レイシャ)「私は人として!この星に災いを振り落とす!!!覚えておけ。"復讐の代弁者:レイシャ"を。」
言葉を発する隙も、動く暇もなかった。
語り去っていく姿を、聞き入ってしまうことしか。
ーーーーー
森林を走り抜けた"レイシャ"。
四角になった者を手で転がし、未来を想像した。
心は以前より澄んでおり、目的は単純になった。
(レイシャ)「生贄はまだ必要だろう。この力があれば、手に入れられる。
そして日を、待つとしよう。"朱鳥が燃え、再誕する日を"。」
レイシャは沈んでいく日を見て、決意した。
来る日、烈日を待つ。
ーーー「復讐の代弁者:レイシャ」ーーー
別星から神の星へと、訪れた人間。
神人への異常な執念をもち、禁忌:ウルスペラから授かった、消滅の力を振るう。
目的は、全神人の殺害。
神殺しである。




