1:転機の地
こんばんは、深緑です。
"希望のリットリオ"を投稿していきます。
長さとしては、悪魔の呼び声より長く、本筋の作品よりは短い、十話ほどを予定しています。
『希望のリットリオ【1:転機の地】』
光速を超え宇宙を進む、リットリオとエルロット。
星が煌めき、火の星たる太陽の光が、宇宙に均等の明かりを灯している。
(希望の神:リットリオ)「明るいな。これが、宇宙という世界…。」
マンティーエルの別人格だったリットリオには、彼の記憶がある。
マンティーエルが幼い時。両親に聞いた、宇宙の物語。
リットリオにとって宇宙とは、未知なる場所だった。
(黄金神:エルロット・ドラード)「空に見えた無数の星を、私達は見ているんだ。」
ここに来るまで、多くの星を見た。
両手を広げても到底掴めそうにない、大きい星々を。
どの星々でも数多の生命が、今を生きているのだろう。
ーフォォォ…。ー
そんなことを考えていると、いつの間にか。
舞台効果のような煙が、目先に広がっている。
熱や匂いはなく、ただの演出のよう。濃厚な煙の先に、眩い光が見える。
こちらに来いと、言っている気がする。
ービカァァァ!!!ー
煙を抜けた瞬間。
温かく心地の良い光が、リットリオ達を照らした。
太陽も星もない時から、この地を照らし続けている明かり。
神話たる世界に、踏み入れた。至る所が、仰天の場所。
(エルロット)「これが、神の星…!」
リットリオ達は無性に、心が騒ぎ始めた。
桁違いの世界を見て。
ーー神校:ガルツハーツ(裏丘)ーー
しばし時が戻り、リットリオ達が、神の星へと訪れる前。
神の学校である"ガルツハーツ"では裏丘にて、式が行われていた。
かつてガラハハ達が卒業を迎えたように、今でもこの場所で執り行っている。
(全知神:ルモンドー・オルベル)「ではこれにて、今代の卒業式を終了とする。皆が良い旅路を、送れることを祈って。」
いつ見ても、変わることのない景色。
桃色の花びらが、空一面に広がる。
(冷静な神人)「ねぇ、あれは?」
焦ることのない声と仕草で、空を指した。
一面の桃色に紛れる、黒く立体的なもの。
(博識な神人)「いや、"者"だ…。」
ードゴオオオオオオオオン!!!!!ー
勢いよく空から、"者"が落下した。
冷静な者ですら、少しは動揺してしまう。
(熱い神人)「校舎の近くに落ちたぞ!!!」
落下の威力は凄まじく、発火したかのような砂埃が、立ち込めている。
(ルモンドー)「皆、落ち着きたまえ。指示があるまで、ここで待機を。私が見に行く。」
裏丘から飛び降り、落下した場所へ向かう。
砂埃が晴れ、その姿が現れた。
その時ルモンドーですら、動揺した。
(クラマド)「 」
"悪の神:クラマド"。
数多の星々を破壊し、生命を蹂躙した悪。
時にそれを"魔王"と、呼ぶ者もいる。
クラマドが確かに、目の前にいる。
しかも目を閉じ、息をしていない。
死んでいるのだ。
(ルモンドー)「確実に、クラマドの死体…。何者かが、クラマドを殺した…。終末の、一柱を…。」
ガラハハとクラマドの戦いで、悪は沈黙した。
そこから悪の侵略がピタリと止まり、あらゆる憶測が飛び交う時期。
だが、今。
クラマドの死が、確定した。
(ルモンドー)「クラマド。君の体は、丁重に扱う。だが世界は、君の死を求めている。神速で、君の死が伝わるだろう。」
死に続くその号令は、全宇宙に広がった。
"終末の神々"。その一柱、悪の死が。
ーー神校:ガルツハーツーー
(リットリオ)「これが、ガルツハーツ…。」
神々しく立ち並ぶ、神の学校。
どうやって創ったのか分からなほどの、造形美。正しく、物語のよう。
(エルロット)「ひとまず入ってみよう。ガルツハーツへの入学方法を、私達は知らない。」
入口を入ると、大きな広場があった。
そこから枝分かれするように、様々な道で分かれている。
なお入ったはいいものの、ガルツハーツはとても静かで、一人も見当たらない。
それもそのはず。学生は皆、卒業しているのだ。次の月まで、学生はいない。
(???)「あなた達は…。」
その一つの道から、誰かが歩いて来る。見た所、教師のようだ。
(リットリオ)「ガルツハーツに入りたいんだ。外界から来てな。」
神の星へと、来た存在。
それはかつての、事件を想起させる。
(エリザ)「構いませんよ。ただし、校長の判断によります。」
リットリオ達はエリザの後を追い、ガルツハーツ校長へと会いに行く。
ここで、追い出されるわけにはいかない。
ーーーーー
ートントン。ー
質のいい木造の扉を、エリザが叩いた。
(ルモンドー)「入りたまえ。」
入る前の挙動で要件の重さが、どれだけのものかは想像がつく。
今回は中程度。緊急時に関しては、扉を直接開けるのだから。
(エリザ)「失礼します。外界より訪れた、二名の神人です。ガルツハーツへと、入学したいそうで。」
ルモンドーはまたしても、驚愕した。
強さはそこまででも確かに、その者を知っているから。
(ルモンドー)「ガラハハという神人を、知っているか…?」
しばらくの沈黙。リットリオとエルロットは、横目で互いを見る。
(エルロット)「私はエルロット。ガラハハの、神子になります。」
黄金たる光が、ルモンドーとエリザに映る。
(ルモンドー)「こういった出会いも、あるということか…。ならば君は?」
エルロットの力が、ガラハハに似ているのなら、リットリオの風格は、ガラハハに似ている。
ルモンドーは食い気味に、リットリオに語りかけた。
(リットリオ)「俺はリットリオ。話すと色々あるんだが、ガラハハの星で生まれた、神人だ。」
ガラハハの意思が時を超え、今目の前にいる。
(ルモンドー)「君達が、ガラハハの意思を継いでいるのなら、是非とも迎え入れよう。ただ一つ、聞いてもいいかな?」
何故だか少し、空気が凍りついた。
ルモンドーの風格が一瞬にして、厳格な形態へと変わったのだ。
(ルモンドー)「"クラマド"という神が最近、ガルツハーツ周辺に落下してきてね。確認する必要もなく、死んでいたんだ。ガラハハ達とクラマドは、仲が良かったから。君達に、何か関係はあるかい?」
クラマドを殺したと言ったら、どうなるのだろう。
過剰な暴力で拘束されるか、英雄として讃えられるのだろうか。
だがどれも気持ちのいいものではないと、リットリオ達は思った。
ただルモンドーには言うべきだとも、同時に思った。
(リットリオ)「クラマドを殺したのは、俺だ。」
ルモンドーは目を閉じ、少し俯いた。
二人は急かさず、言葉を待つ。
(ルモンドー)「ガラハハは、生きているかい?」
これもまた、言うべきだと思った。
言わなくては、いけないことだと。
(エルロット)「死んでいます…。昔の戦いで、クラマドを止める際に…。」
凍り付いていた、空気が消えた。
ルモンドーは何かに、浸っているような顔をしている。
(ルモンドー)「そうか…。クラマドを止めてくれて、ありがとう…。私には出来ないことを、君達がやってくれた…。約束しよう。ガルツハーツは君達に、強さを与えると。」
正式にガルツハーツへの入学が決まった、リットリオ達。
ーーーーー
かつてガラハハが、住んでいた場所が残っているといい、そこに向かう二人。
どの場所も澄んでおり、星の豊かさを感じる。
(エルロット)「まさかクラマドが、こんな所まで飛んでいたとは。」
時間を測っていないため正確には分からないが、リットリオ達は着くまでに数日はかかった。
(リットリオ)「奴の帰る場所は、ここだったんだろう。」
クラマドを押した希望の光は、クラマドを家まで送り届けた。
(エルロット)「見えた。あれが、かつての家。」
時が経ち今もある、ガラハハの家と黄金の家。
自然豊かな環境に似合う木造の家と、輝きは今なお衰えていない。
この家で住み、ガルツハーツの日々を過ごしていく。
(エルロット)「リットリオ?」
家の扉まで来てもリットリオは階段も登らず、何か考えているようだった。
(リットリオ)「ん?あぁ。今行く。」
ルモンドーが見せた表情。
あれは死者を哀しむものであると同時に、希望を求めるものでもあった。
希望を求めるものは、一星だけではない。
全宇宙に、それを待ち望むものがいる。
(リットリオ)「エルロット。"俺は、希望になる。宇宙に蔓延する、希望にな"。」
ここから始まる日々で、その強さを手に入れる。
リットリオもエルロットも、何かを守るために。
ーーユグドラシル森林ーー
リットリオ達が神の星にやってきた、初日の夜。
星が煌めく、そんな夜。
(ジャウルイン)「お前は、誰だ…。何のために、こんなことを…。」
意識が朦朧とし、呼吸が乱れる。
体から血が溢れ出し、いくら自分が神人であろうと、これは助からないと思った。
加えて夜の、静かな森の中。
(???)「"お前達が、こうしたからだ"。」
神人に突き刺した、剣を引き抜く。
(???)「私は復讐者。"人々の意志"を継ぎ、やってきた。」
黒いローブで全貌が見えない、正体不明の男。
彼はその神人が、完全に死んだ後も。何度も何度も、剣を突き刺した。
朝日が登り神人だった者が、液体になるまで何度も何度も。
(復讐者:???)「安心しろ。"その名"は、人々に讃えられることになる。」
その日"ジャウルイン"という神人が、誰にも知られずに消えた。
復讐者を名乗る者の名も、同じように。
"そして復讐者:ジャウルインが、生まれた"。
(復讐者:ジャウルイン)「"お前に変わって、神の学校へと"…。」
こうして新たな日々が、ガルツハーツにやってくる。




