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カインドラ  作者: 深緑蒼水
神々のファンファーレ:開幕篇

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33:希望のラルゴ

『神々のファンファーレ【33:希望のラルゴ】』


神々の戦いは、光によって終演を迎えた。

古くからの重なりが潰え、今日もまた、新たな日がやってくる。

終わることのない始まり。混沌の時代の、始まり。


ーー風葉亭ーー

戦いが終わったあとの空は、晴天を見せてくれた。

けれど上を見上げると感じる、世界の静けさ。

風葉亭では、早朝の少し肌寒い風が吹き、戦火の後始末が、黙々と進んでいる。


(面倒見のいい使用人)「あまり動かないでください。秘薬を使ったとしても、傷は深いです。」


秘薬。

とても貴重な代わりに、あらゆる傷、病を治す、絶大な回復力をもつ薬である。

だが風花の傷は、その秘薬を飲んでしても、数日程度で消えるものではなかった。


(嵐咲風花)「彼を倒すには、ああするしかありませんでした…。」


包帯ぐるぐる巻き状態で、布団に身を入れている風花。

指示を出すのみで、動く事が出来ない。


(風花)「彼が私と、戦う気がなければ、もっと多くの人が、亡くなっていたでしょうね…。」


風花は寝返りを打てない体で、横目を使い、外の景色を見ようとした。

高さが到底足りず、見えはしないが、外の感じは分かる。

王である風花にとって、非日常的な日常の日々が、やって来ているのだから。


(風花)「私が動けるようになったとしても、傷跡が残るように、あの日々は、帰ってこないのです…。」


遠い昔のように感じる、当たり前だった日々。

その日々にあったものが、戻ることはない。

風葉亭は、魔物や使徒。無数の剣の影響により、城周辺だけを残し、半壊した。

国民は多く生き残ったが、決して犠牲者が少ないわけではない。

地盤が大きく盛り下がりをしたことで、山々の崩壊も観測されている。

これからの日々を、生き残った生命達は、この大地で生きていく。


ーー雷の国:ネオ・ランド・シティーー

表大陸で最も、被害の大きい場所。

辺りには多くの瓦礫が散乱し、電力は消滅した。

ネメシスもあの日からずっと、浮かんでいない。


(天空騎士見習い)「"マンティーエル王子"。」


白く光る木に、手を合わせる者。消えたはずの王子は、帰還した。


(王子:マンティーエル)「どうだい…?」


万全ではない表情で、見習い騎士を見る。


(天空騎士見習い)「見習いではありますが、被害状況がまとまったため、読み上げさせていただきます…。」


見習い騎士もまた、万全ではない。

ネオランドを生き残った者達は、万全では到底いられない。


(天空騎士見習い)「まずは我々、天空騎士団…。見習い騎士を残し、全滅です…。」


悪の使徒、銀星:ルッタ撃墜のため、精鋭達は皆、出動していた。

そんな精鋭たる彼らですら、クラマドの斬撃によって掃討された。


(天空騎士見習い)「ただ見習い騎士も、私含め、数えられる程度しか…。」

(マンティーエル)「次を…。」


嫌いなものを、無理矢理食べるような表情で、マンティーエルは言う。

嫌なものだが、しっかりと飲み込む。


(天空騎士見習い)「はい…。続いては…。」


見習い騎士は、詰まった言葉を、必死に出そうとしている。

マンティーエルは急かすことなく、言葉を待つ。


(天空騎士見習い)「"雷の化身:ネメシス"、"ラキエル王"…。"死亡"です…。」


父と母が死に、リットリオを生んだ、マンティーエル。

多くを救ったが、身近な者達を、守ることだけは出来なかった。


(天空騎士見習い)「ネメシスは、腹部の断面を確認…。心臓の鼓動が、止まっております…。ラキエル様は、ご遺体を発見しました…。状態を報告するのは、控えさせていただきます…。」


浮かぶことのない友。もう見ることのない、尊敬の背中。


(マンティーエル)「…。すまない…。」


マンティーエルはまたしても、泣きそうになった。両親が死んだ時と、似ている。

死んだ人との思い出を思い浮かべ、ずっと泣き続けるか、泣きそうになってしまう。


(マンティーエル)「これではずっと泣いていると、姉様にからかわれてしまう…。続けてくれ…。」


まだ終わりではない。見ない振りは出来ない、起きた事実。


(天空騎士見習い)「はい…。最後の一つになります…。建物は全壊、死者数は現時点で、上げることは出来ませんが、国家崩壊級になると、予想されます…。」


化身の死。王の死。実質的、国家戦力の死。都市の死。数日では数えられない程の、国民の死。

ネオには、死が降り注いだ。


(天空騎士見習い)「ッグ…。申し訳、ありません…。」


彼にも必ず、思い出がある。死者となった、生者達との思い出が。


(マンティーエル)「ありがとう…。君も、辛いだろうに…。」


見習い騎士は崩れ落ち、堪えていた涙を流した。

マンティーエルは止めることなく、優しく語りかける。


(マンティーエル)「実はタイダル王から、誘いの連絡があって。ネオの生存者を、タイダル・オーシャンに迎え入れると。とてもありがたい申し出だったけど、断ったよ...。僕は約束をしたんだ。だからこの国に、帰ってきた。姉様の意志を継いで、僕がこの国を、動かしていく。」


見習い騎士の喉はまだ震えていた。

けれどその目の水は乾きつつあり、今は輝きを目にしている。


(雷帝の騎士見習い:マンティーエル)「僕は自分が強くなることから逃げた。だからもう、逃げはしない。彼らが背中を、押してくれるから…。」


白く光る木に手を当て、目を閉じる。

意志はしっかりと、胸にある。


(マンティーエル)「国の名前を変えよう。これからの始まりとして。けれど過去の、思いを継ぎ。」


あらゆるものが死に、静寂が広がったネオランド。

眠ることのない街は眠ってしまったが、その種は、消えていない。

ネメシスの死体を中心として辺りには、楽園のように鮮やかな花々が、咲き誇っている。

"雷帝の花園:ネメシス"。


過去は忘れず、前へ進む。それが雷の名を冠した者の、選択。


(マンティーエル)「だから見ていてほしい。国と妹達を守る、僕の姿を。」

(天空騎士見習い)「我々、天空騎士見習いも、あなたと共に、歩んで行きます…。」


花園を守護する騎士達。

そこに王と民の隔たりは、今は無く。

横一列で、騎士道を進んで行く。


ーー雷帝の花園:ネメシスーー

名を変え、新たな国家として生まれた地。

早くも幼いその国に、遠方からの来訪者が。


(マンティーエル)「ここが、旧ネメシス頭上。今は、"ロゼッタ"がいる場所だよ。」


クラマドと戦ったあの日より、ロゼッタは大きくなっている。

一般的な木より、既に大きい。


(ソニア)「いつかは何よりもでかい、木になるのかな。」


そっとロゼッタへと触れ、そう呟く。

ロゼッタが喋る事はないが、死んだわけではない。

確かにこの木となり生きていると、ソニアは感じた。

木を巡る熱と意志が、手に伝わってくるからだ。


(マンティーエル)「君の旅は、終わりそうかい?」


マンティーエルの旅は、始まったばかり。

ソニアの旅はあの日から、始まりを繰り返し、延長線上に続いてきた。


(ソニア)「俺は魔人を、ありのままで救いたい。輪廻転生をして記憶を引き継ぎ、新たな肉体として生まれるには、死が伴う。きっと魔人もロゼッタも、そんな事は望んでない。」


輪廻転生を考えたドッキーノと、夢を実現させたロゼッタ。

二人にある共通点は、望まぬ運命を歩んだ者への、救済。

最悪たる記憶を消し、新たな存在となり、当たり前の生へと送ること。

それに至るには痛みが必要だと、強要したい訳ではない。


ー"だからこそ、君の力を使うんだ。彼らを救うのは、君の力。

かつてガラハハが、やったように。僕ら生命は、その背中を押すよ。

だから行っておいで。君の長い旅を、終わらせるために。"ー


声は聞こえなかった。けれど確かに、そう言われたような気がした。

ロゼッタへ触れている手を離し、何回も握り締めて確かめる。

生命とは、不完全な生を、正しい死へと導く力。


(マンティーエル)「どうしたの?」

(ソニア)「悪い!今すぐに確かめたい!!!お前と話せて良かったよ!!!マンティーエル!!!」


ソニアがつくった風が、肌に当たる。どこか温かさをもった、心地の良い風。


(???)「友達か?」


上から微かに聞こえる声。

陽の光が眩しくよく見えないが、その背景が似合う者は、知っている。


(マンティーエル)「そうだよ。"僕ら"のね。」


ソニア達、六人の旅。

ソニア、ポゼ、ヤチェリー、風花、リットリオ。そして、マンティーエル。

彼もまた、あの旅の日々を見ていた、立派な友達だ。


(希望の神:リットリオ)「言っておこうと思ってな。ソニアにはまあ、時間がありそうなら言うとしよう。今は一秒の時間が、とても貴重だからな。」


リットリオはそう喋りながら、降りてきた。

ずっと一緒にいた存在なのに、いざ目の前にすると、変な感じがする。

それはリットリオも、思っていることだろう。


(マンティーエル)「言っておくって?君もまた、旅を始めるの?」

(リットリオ)「あぁ。エルロットから言われてな。"神の星に行き、力をつけるべきだと"。実際クラマドより強い者が出た時、今のままなら星は滅ぶ。本来、世界を守らなくちゃいけないのは、神人だ。それに、救えなかったものが多すぎる…。結局クラマドの手も、引いてやれなかった。言葉だけ達者で、手を出せないなんてのは、ヒーローではない。だからこそ、この星を離れる。宇宙外の知識をつけ、力を手に入れる。星に生きる生命から、信頼と情を、勝ち取るために。」


理想を語るリットリオは、情熱の目をしていた。

リットリオは今や、友ではない。


(マンティーエル)「リットリオ。僕も強くなる。雷帝の騎士として、姉様の夢を叶える。」


彼らはライバルになった。

リットリオが強くなると言うのなら、マンティーエルも、強くなると言う。

一心同体たる関係。それがより彼らを、高みへと導くのだろう。


(リットリオ)「ならその日が楽しみだな。素質があり、お前が望むというのなら、眷属というものを、創ってみてもいいかもしれない。」

(マンティーエル)「なら僕は自力で、眷属級に上り詰めてみせるよ。その時初めて、君の騎士になろう。」


かつての友と、目線を合わせ。お互いの顔を見て。声を聞いて。手を握り。

ライバルと、約束をした。


(リットリオ)「じゃあ、そろそろ…」


リットリオの言葉が、止まった。

視線は、マンティーエルの後ろ。その下を見ている。


(ブリエル)「お兄様。"ミュカエル"が、お姉様の杖を見たというの。」

(ミュカエル)「嘘じゃないよ…。本当だもん…。…。お兄様、その人は、誰…?」


まだ小さい、双子の妹。

リットリオとマンティーエルの、半分くらい。

双子故に顔が似ているが、性格は、真反対と言えるほど違う。

ブリエルは強く、ミュカエルは大人しい。


(マンティーエル)「リットリオ。"君達の、兄だよ"。」


マンティーエルは、ソニア達の旅に同行していた、紛れもない友。

であればリットリオは、紛れもない、雷鳴たる家系の、家族だ。


(ミュカエル)「お兄様と、お兄様…?」


ミュカエルは不思議そうに、二人の兄を見比べる。


(ブリエル)「初めてお会いしましたわ。」


ブリエルはリットリオを見て、警戒している。


(マンティーエル)「それでも確かに、君達の兄さ。」

(リットリオ)「一つだけ、言い忘れていた。」


旅立つ前にするもの。言うことは、ありきたり。でもそれで構わない。


(リットリオ)「マンティーエル。ミュカエル、ブリエル。俺はお前達、家族のためにも、行って来る。じゃあな三人共。大きくなれよ。」


リットリオは家族へと別れを告げ、花園を後にした。


ーー星見の丘ーー

あれからまた、日が進んだ。

クラマドの戦いから、また時間が進んでいく。


(ソニア)「そうか。行くんだな。」


ソニアは丘から、故郷である村だった場所を、眺めている。


(リットリオ)「マンティーエルとお前達には、話しておきたくてな。」

(冥火竜:ポゼ・グランク)「風花には言ったのかい?」


ソニアとリットリオ達だけならば、丘は広く感じる。

だがポゼがいると、丘は窮屈で。

もはや大抵の場所は、窮屈に感じるのだろう。


(黄金神:エルロット・ドラード)「クラマドとの戦いで、力の無さを痛感した。私もリットリオのように、高みを目指すつもりだ。今回は本当に助かった。ありがとう。"波王:ソニア"。」


エルロットは一度丁寧に、頭を下げた。

金色鎧に身を包む姿には似つかないが、それは彼の誠意なのだ。受け取っておこう。


(リットリオ)「ところで、何を見てるんだ?」


リットリオ達は、ソニア達が見ている場所を凝視した。

それはソニアの歩んだ、証そのものであった。


ーガッ!ダン!ー

地を整え、木材を打ち付ける音。

神人のように、速攻建築する事が出来ないのが、人の強い所。

そうやって地道に、日々を歩めるのが、人たる生命。


(フェイリッタ)「ここに置いておくぞ。」


整えられた木材を、近くに置いてくれた。

以前より多くは持てないが、弱くなったとは微塵も思わない。


(オニキス)「ありがとう。」


魔人と言われた彼らは、密かに霧深い森の奥で、生活していた。

故に陽の光を浴び、広大な土地を見るのは、生まれて初めてのこと。


(アルトラ)「張り切っているな。」


嬉しさをアルトラは、微かに感じている。

きっと微かな喜びを感じて生きていくのが、人と言うものなのだろうと、早速思えた。


(ニト)「みんなが生き生きしているね。」

(リル)「あぁ。陽を浴びて、声を発していられる。これに勝る幸福が、溢れているのなら、世界というのは、とてつもなく広い。」


彼らは、それぞれの幸せを噛み締め、今日を生きている。

何にも怯えること無く、朝を迎えていく。

魔人の力は消え、凡人と成り下がった。けれど彼らは、より強くなっていくだろう。


(波王:ソニア)「俺の旅は、これで終わりだ。生命の後押しが、魔人達への鍵だった。」


これが"波王に至った者の、旅の答え"。"ソニアの旅の、終わり"。


(リットリオ)「じゃあ、俺達も行く。それぞれの日々を、進めていこう。」


リットリオとエルロットが、宇宙へと登っていく。

眩い光となって、遠い場所へと向かう。

目的地は、"神の星"。

"リットリオとエルロットの、旅の始まり"。


ーー裏大陸ーー

かつてソニア達と別れた、魔女の屋敷近くの丘に、グラントはいる。

静かに腰を下ろし、海を見る。


(アリス・グラント)「(人と魔物の共存は、早くも訪れた。君の達の旅は半ばで終わったが、私は旅を完遂したよ。)」


ーワヤワヤ…!!!ー

大音量ではない、若干の気まずさの中、互いに歩み寄っている者達の声が、聞こえる。


(細身の人)「ッグ…。重いな…。」


グラントのいる丘から、少し離れた森の中。

裏大陸全土で、復興が行われている。けれどそこまでの復興は、必要としていない。

その理由は、魔女のおかげ。無数の剣を、大陸全体の障壁によって防ぎきった。

そして地上を駆けた、屈強の戦士達。地に蔓延る悪達を、蹂躙した。


(細身の人)「…!?」


木材を運んでいたが、重く、体勢が崩れてしまった。

時間が止まったかのように感じる、木に潰されるまでの一瞬。


ーバッ!!!ー

木が落ちる音が聞こえた。重さは感じず、何なら立ったままだ。


(魔物)「ッグウウウ…。」


人より何倍も大きい魔物が、包みこんでいた手を離す。


(細身の人)「ありがとう…。助かった。」


しばしの沈黙の中、散らかった木材を見て、お互いに視線を戻す。

魔物がそっと、散らかった木材に指を指した。


(細身の人)「ッフ…。そうだな。一緒に、拾ってくれ。」


小さい手と大きな手で、木を拾っていく。

これこそ二人の目指した、"人と魔物の共存"。

"グラントとセレスティアの、旅の終わり"。


ーー空中庭園:スカイアワーー

自然豊かな、右大陸。その天空に位置する都市。

都市内には薄暗く静かな、鋼鉄の区間がある。


(狩人狩り:ダライン)「凄まじい轟雷だったな。それで、何をしに来た?お前が来るとは珍しい。」


鋼鉄の檻の中。鋼鉄の壁で、鋼鉄の拘束具に包まれている者達。


(右大陸管理組織代表:ミラーデイン)「"自然維持に、協力する気はあるか?"」


かつて狩人を殺した者達に、その問いを投げかける。


(狩人狩り:グレイン)「俺達が協力すると、本気で思ってるのか?」


ミラーデインは俯くことなく、狩人狩り達の目を、それぞれ見た。


(ミラーデイン)「あぁ。君達は紛れもない、危険因子。だが使い方次第で、安全に利用できる。」

(狩人狩り:スレイン)「まるで僕らが、物みたいに言うんだね。」

(ミラーデイン)「否定はしない。明確な意志を感じられなければ、物として見られることは、君達も分かるだろう?だからこそ、その意志があるのならば、解放する。ある監視をつけてだが。」


狩人狩り達は俯くことなく、他の目を見ることなく、ミラーデインの目を、それぞれが見た。


(ダライン)「なら教えろ。何かがあるから、来たんだろう?」


右大陸だけではないもの。クラマドがもたらした、大きすぎる影響。


(ミラーデイン)「"急激な環境変化が、右大陸のみならず、全世界で起こっている"。」


大地は盛り下がりをし、住む場所を変えてしまった。

海は荒れ、海面上昇が起こり、大陸外の小島のいくつかが、完全に沈没するほどに。

空は吹き続け、植物を吹き飛ばし、気温の低下が顕著に。


(ミラーデイン)「その影響を特に受けるのは、自然を糧として発展を遂げた、ここ右大陸だ。獣達はより激しい自然に適用するため活性化し、進化を進むだろう。」


狩人狩り達は、それぞれの心を確かめる。

今でも変わらない、自分達の性根。

それは常に二つの道に、偏りがちだ。


(狩人:スレイン)「一般的じゃない道は、僕だけの人生だと思わせてくれる。いいよ。それをくれるんなら、指示通り動くよ。」


(狩人:グレイン)「獣は飽きた。人ととの駆け引きは面白かったな。今でも思う。だが、いつかはそれも、飽きに変わるかもしれん。いいだろう。俺も出てやる。獣とその自然とやらが、俺に楽しさをくれるといいな。」


(狩人:ダライン)「危険な道こそ、糧の塊。私に相応しい道だ。」


三人は、狩人としての道を見出した。

鋼鉄の檻が開き、鋼鉄の壁を超える道へと、進んでいく。


(ダライン)「ミラーデイン。監視というのは?」


ミラーデインは監視をつけて、解放すると言った。


(ミラーデイン)「"バハムート"。伝説たる"ディポラティア"が、お前達の監視だ。」


眩しい空の光。天空が故に、より眩しく感じる。

鋼鉄の拘束具が外れ、重さが無くなった。

飛べばそのまま、宇宙に行けそうなくらい体が軽い。


(ミラーデイン)「ディポラティアの提案だ。共に自然を守れ。君達が私欲のため、自然を守護しても構わない。結果としては、自然を守っているわけだからな。」


狩人狩り三人が、解放された。今彼らを縛る者は、いない。


(グレイン)「ッフ…。今にでも獣化して、奴を殺しに行くか。」

(側近の狩人)「貴様ら!!!」


ミラーデインの側近たる狩人達が、戦闘態勢に入る。


(スレイン)「ハハッ!!!それもいいかもしれないね!手始めに、彼を蹴ってみたい!」


それぞれの妄想が、膨れていく。


(???)「誰に何をすると?」


歴戦の装備を揺らし、歩いてくる者。


(スレイン)「いやぁー、何でもないよ。」


苦し紛れの言い訳をするが、どう考えても聞こえていただろう。


(狩人:ディポラティア)「蹴りたいのなら蹴ってみろ。獣の前に放り投げてやる。」


ディポラティアが三人を連れ、小さくなっていく。


(側近の狩人)「良かったのですか?奴らを解放して…。」


最もな意見だ。


(ミラーデイン)「君の言いたいことは、よく分かる。だが自然を不用意に傷付ける狩人達がいるのも、また事実。彼らは曲がった正義を歩んでしまったと、私は思う。だからこそ、一度見たい。彼らの選択する道が、何に向かうのかを。」


ディポラティアの元、狩人狩りだった三人は、狩人として進んでいく。

それが牙となり、ディポラティアを襲うのか。

あるいは自然を守護するべく、爪を立たせるのか。

何を結果付けるのかは分からないが、これだけは言える。


(ミラーデイン)「彼を信じよう。伝説たる狩人であり、最強の獣である、ディポラティアを。どうか自然を守護する存在へと、至ってくれ。四人の狩人達。」


ーー神域跡地ーー

舞い戻った、神域跡地。


(レダリオン)「神域は直さない。これでいいな?」


跡地にて集合した、まだ居場所のない者達。


(ドナドナ)「あぁ。それぞれの、道を行こう。」

(フォルンナ)「エルロット達が戻ってきたら、新しく創ろう。名前も形を変えた、新しい家を。」


今の神域は、あまりにも狭くなってしまった。

依然より小さく。唯一立っていられるこの場所の、崩壊が近い。


(ラノ&ラノ)「みんなはどこに行く?」


しばしの別れ。それぞれの、行く道へ。


(フォルンナ)「私はオーシャンにいるよ。チャリオットと住むつもり。波動の行く先を、見ていたい。」


(ドナドナ)「"ネメシスを見に行こうと思う。あれらが何をしていくのか。国の出来上がりを、見ていく"。」


(ラノ&ラノ)「"私達は、下大陸に行こうか迷ってるよ。でも死にに行きたいわけじゃないからさ。時が来るまでは、オーシャンかな"。」


(レダリオン)「"私は裏大陸へと向かう。魔法の探求に、専念するつもりだ。意外な出会いも、あるかもしれない"。」


善たる子達の、短い旅路。

彼らにとっては短い時間だろうが、貴重な体験であることは変わらない。


(レダリオン)「では…。」


それぞれの旅路を祈って、解散とする。


(皆)「いつの日か成長した心で、また会おう!!!」


満場一致の思いで、残ったその場所を破壊した。

いつの日か、また。


ーータイダル・オーシャンーー

クラマドがもたらしたあの日々は、災厄と呼ばれる。

"あの災厄の日々から、二年"。

未だ癒えない傷。変化した地形。そんな日でも、今日を生きる。

いつも通り支度をし、扉に手をかける。


(ソフィア)「パパ。」


その前に、言葉を交わす。騎士を送る日常。


(ヤチェリー)「気をつけて。」

(シフォン)「帰りを待っています。」

(ミルル)「あっ!ソフィア!!!」


ヤチェリーとシフォンの後ろで、二人は駆け回っている。

誰に似たのか、あの小ささで、ソフィアはすばしっこい。


(ソニア)「行ってくるよ。」


あの小さい存在達が、"いつかは同じ目線になることを祈って"。


ーーーーー


今日も城の扉を開ける。


ーギン!!!ガン!!!ー

朝から響く、鉄の音。


(ソニア)「朝からか?」


壁に体を預ける、チェックマンに話しかける。


(チェックマン)「神域ではあれが日常だ。地上に来ても、変わりはしない。」


朝から元気のいい、チャリオットとオーヴァスを横目に、仕事に入る。


(ソニア)「おはよう。」


準備を整える、三人に言う。


(コール)「早速行ってくるぜ。」

(ラペット)「まだまだ、あの日のままだからね。」


二年が経ち、オーシャンは復興した。

けれど全てが、そう上手く行くとは限らない。


(メレキノス)「波動の騎士団員として、今日も一日を過ごしていく。君の背中を追ってな。」


メレキノスとチャリオット達は、正式に騎士団へと加入した。

レダリオン達の話は、フォルンナとラノラノから聞いているそうだが、それでも騎士団に居続けると言った。

実際天空に家が出来ても、行き帰りの手段が、己にある二人だ。


(ソニア)「帰りを待ってる。たくさん人を、助けてこい。さて…。」


誰かが処理をしなければいけない、膨大な紙の山。

それは災厄の、事実そのもの。


(ソニア)「(戦いには勝ったが、失ったものが多すぎる。二年経った今でも消えていないのが、それを物語っているんだ。脅威的な、使徒達の影響。クラマドがもたらした、絶大な力。魔物の軍勢に、無数の剣。この痛みだけは、忘れてはいけないな…。)」


時が経ち、まとまった被害状況。特に目を惹くのが、人口の減少。

"世界人口の四割が死んだと、言われている"。


          ーー『神々のファンファーレ【Fin】』ーー


ーー???ーー

暗く冷たい場所。

温かな場所が、いくつも消えた。それらは何を思い、生きていくのか。

一人残った家で、今日を迎える。または滅んだ場所を、毎日見続ける日々。

彼らは家を失い、全てを失った。だからこそ、新たな場所を作った。

一人が若き王として君臨し、民に命じる。

これからの時代が、何を掲げるべきなのかを。


(???)「剣を掲げよ。"偉大なる神殺し"を、始めるために。」


無数の武器が、王の目に広がる。

神を討たんとする、復讐に満ちた、憎悪の塊が。


ーグオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!ー

それらはおぞましい咆哮で、王へと敬意を見せる。


(国王:ロイ)「行こう。我々の力で、明日をつくるために。"反逆帝国:二カトラ"設立を、ここに宣言する!!!」


希望が見えなかった者達の、選択。

混沌の時代の、幕開けである。


          ーーつづく…。ーー

こんばんは、深緑です。

神々のファンファーレ、これにて完結です。

まだまだ書きたいことがあるので、続けていきます。

反逆帝国の話をやる前に、リットリオ達の話を、悪魔の呼び声より少し長いくらいの、短編として書きます。

今後も見てくれると嬉しいです。

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