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紅華四季恋浪漫譚 蛍夏の章  作者: 浅葱ハル
第三章 艶やかに蠢くもの
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14・そして、眠りにつく

 雨音の帳の下、世界はふたりきりになる。



「玲」



 はじめて彼の名前を呼んだ。

 ほんの一瞬だけ、彼の歩みと、呼吸が止まった気がした。



「ありがとう」



 玲の香り、優しい振動、石畳を叩く雨の音色。

 なにより、背中から伝わる温もり。

 それらすべてに、心の底からじんわりと満たされていく。


 火花は玲の背中を掴む手に、気付かれないよう、少しだけ力を込めた。





「ねえ」

「ん?」

「つかれたなあ」

「ああ」

「すごく、ねむい」

「……ああ。寝ろ」

「うん」


 火花には、玲の表情が見えない。


「ねていい?」

「いいよ」

「はなしていたいな」

「帰ったらな」

「うん」


 玲の声は、静かに、優しく、雨の音に溶けていった。


「寝ろ」

「……うん」



 火花は瞼を閉じて、微笑んだ。


 雨音が、遠くなっていく。



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