9.イリーナはその攻撃を驚きを持って受け止めていた-大丈夫か?-
全48話予定です
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イリーナはその攻撃を驚きを持って受け止めていた。
機械化部隊はここからずっと向こうで戦っている、し、戦っているはずである。それが遠距離で砲撃して来たのだ。
そんなに固定観念にとらわれる手合いの人間ではないイリーナをしても[レイドライバーの相手はレイドライバーでしかありえない]と考えていたのだ。それが、届くかどうかの遠距離から砲弾が飛んで来た。おそらく自走砲の類なのだろうが、この際そんなのはどうでもいい。問題はその攻撃につられて一体、遮蔽から飛び出てしまったという事実だ。ミラーナの機体である。その辺りは新人、というのが関係しているともいえる。いわゆる[ビビッて]しまったのだ。
そこに[待ってました]とばかりにマシンガンの一斉射が襲ってきた。すかさず退避して遮蔽に隠れはしたが、前面に多数の被弾をしてしまっている。ただ一つの幸いなのは、今回はリアクティブアーマーを装備しているところだろう。その分動きは鈍くなるが、なにそれは織り込み済みだ。それにいざとなればリアクティブアーマーは脱着が可能な装備だ、外して一気に突撃、なんて方法も取れる。
「大丈夫か?」
イリーナが無線を入れると、
「隊長、申し訳ありませんでした」
そこそこ元気のいい返事が返って来る。
――それだけ元気なら、コックピットは無事か。すると問題は、
「どの程度被弾した?」
と返すと、
「上半身のリアクティブアーマーはほぼ使い切った感じです」
それはそうだ、相手はあの同盟連合である。彼らの射撃管制システムは帝国にはない技術なのだろうというのは何度か戦って肌で感じている。まんべんなく攻撃を受けたであろうのは相手に聞かなくとも大体が想像がつく。
「ミラーナ准尉の機体はこれで無茶が出来なくなった。そうすると残りは私、シュエメイ准尉とヴィクトーリヤ准尉のリアクティブアーマー組だな」
誰に言うでもなくそう話す。正直、攻めあぐねているという面もある。しかしながらただやみくもに突撃したのでは、相手の陣地に到達する前に撃破されてしまうのは目に見えている。だが、このまま膠着状態で睨み合い、というのもどうかとも思う。
――何か策は。このまま睨み合っていても時間だけが過ぎていく。それは敵にとっては好都合なのかも知れない。
イリーナはふと援軍の事を考えていた。自分たちがここで足止めされ続けていれば、いずれは同盟連合だって援軍を送る、そんなオプションを取る事もあろう。つまりは[あまり長い時間かけていられない]となるのである。
――ならば。
「各員、そこから前方に幾つかの遮蔽物がある。今からスモークグレネードを使用するので、各員はタイミングを見て前進して距離を詰めよう。もしも敵が顔を出したらそれはそれで応戦を。そんなプランでどうだろうか」
と提案してみる。部隊員からは[妥当だと思います]や[命令には従います]等の声が上がる。
「ただし、相手は実戦経験がある個体だと考えていい。もしかしたら直ぐに昼間用のサーマルで識別されないとも限らない。合図したら一斉に、前方の遮蔽物まで進むんだ」
と語るが、
――撃破される……心配はないよね?
少しだけ二十二歳のギリギリ少女と呼べる素が出る。そうも、彼女たちはほとんどがまだ十代、最年長のイリーナをしても二十二歳なのだ。
「よし、スモークグレネード装備、いくぞ」
そして帝国軍から一手が打たれたのだ。
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