7.まず、先行している機体を狙います-これは少しばかり試してもよさそうですね-
全48話予定です
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「まず、先行している機体を狙います」
ゼロフォーが宣言する。各レイドライバーには視野情報にオーバーライドする形で敵の目標が示される。
スリーワンとスリーツーはサブプロセッサーしか乗っていない。それはつまり、サブプロセッサー同士で会話が成立すればいいという話になる。当然、パイロットがいない分だけ情報伝達が早く出来る。先ほどのように相手と視覚情報を共有してターゲッティングしたり、言葉という会話なしで、直接脳に働きかける通信をしたりと様々である。
…………
この辺りはカズたち研究所は当然知っている。
何故ならそのように出来るように通信手段や視覚、感覚情報の共有などをフォーマッティングしたのは、研究所の研究成果だからである。カズは当然ながらその辺りも分かっているのだろう。だから今回のスリーワンとスリーツーという[無人機]の遠征にゼロフォーを指揮官機として派兵したのだから。
そしてゼロフォーは他のサブプロセッサーよりもひいき目抜きに見ても頭の回転が一段上回る。当然、射撃管制などの指揮をしながら、自機の警戒や攻撃といったサブプロセッサー本来の仕事もこなすのだって出来るはずである。
…………
ゼロフォーはある意味で別格とも言えるだろう。だから、マリアーナが重傷を負った旧エストニア戦の際のゼロフォーは、本当に[彼女らしくなかった]のである。子宮リンクのシステムがあるとはいえ、マリアーナの意識に持って行かれ、自らも警戒を怠ったのだから。
ゼロフォーが指示を出し終わると、スリーワンとスリーツーが同時に建物を遮蔽にしながら撃ち始める。当然、向こうも撃って来るがどちらも遮蔽がしっかりと取れているのでそう簡単には当たらない。
必然、小競り合いのような戦闘になる。少しばかり離れたところには両軍の機械化部隊がやりあっている。
ゼロフォーはふと、
――これは少しばかり試してもよさそうですね。
と考えながらある相手に無線通信を行う。
「何だ、誰なんだ?」
殺気立っている相手が無線に出ると、
「友軍の人型です。そこから敵陣の人型が望遠で見えると思います。長距離弾で何発か撃って頂けませんか?」
そう尋ねたのだ。
この頃には、同盟連合や帝国の人型というのは広く一般に知れ渡っていた。何と言っても日本奪還作戦という華々しいお披露目があったからだ。
だから、
「あんたが人型? 女性か? まぁいい、上からは[連携が取れるようならするように]と言われてる。だが、あんたたちのいる場所はここから相当遠い。修正弾を撃てれば当てられるかもしれないが、初弾ではほぼ無理だ。それに人型相手に通常弾は……」
とまで出た言葉に、
「至近弾が欲しいのです。命中弾は必要としていません」
と被せるように返す。
相手は、
「……分かった、至近弾でいい、という訳だな?」
と再度問うてくるので、
「相手がそう認識してくれればいいのです」
と返したのである。
――そう[当てる]必要はない、ただ動揺を。隙を作れれば。
そう考えるのである。
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