38.私にとってマスターというのは絶対的な存在です-まぁ、いいです-
全48話予定です
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その頃、ゼロフォーは拠点と呼べるところまで移動していた。こちらはレイドライバーが三体である。
「向こうは二体。さて、これでパワーバランスはこちらに傾いたんだけど」
トリシャが無線でそう言う。
「確かにパワーバランスはこちらに傾きましたが、相手は手練れが残りました。流石に正面突破はして来ないでしょうが、しばらくは様子見ですかね」
とゼロフォーが言う。
「そう言えばそっちの機体は……」
とまで出た言葉をトリシャは飲み込んだ。
「スリーワンは無人機構想の試験機です。パイロットはいませんよ」
ゼロフォーがそう付け足す。ゼロフォーはあらかじめ[その辺りは話してもいい]と、そう言われているのだ。これがもしもトリシャが以前のままだったら、カズはもしかしたら手の内を明かさなかったかもしれない。
[今のトリシャなら何を話してもいいよ。何ならきみのプライベートなんかも話してもいいかも知れない]
カズは出撃前にゼロフォーにそう言って聞かせていた。ゼロフォーは[どうしてですか?]とは尋ねなかった。何故ならそこまでトリシャという人物に興味が無かったからだ。ゼロフォーの中でウエイトのある人物と言えばカズを筆頭にアルカテイル基地司令、エルミダス基地司令、アイザック、それからマリアーナにカレルヴォである。その範疇にトリシャという人物は入っていないのだ。
だからだろう、
「マスターとはどんな関係を?」
少しだけ心に彩がつき始めたゼロフォーはトリシャにそう聞いたのだ。
「そ、それは」
トリシャは明らかに動揺している。
――聞かなくてもいい話、というものなのだろう。だけど。
他でもない、マスターがそう聞いてみると良い、そう言っていたのだ。ゼロフォーにはその意味は図りかねた。マスターはとても優しいが、同時にとても冷静だ。そして少しだけ悪ガキっぽいところがある。もしかしたらそんな悪ガキの部分が彼にそう言わせたのかも知れない。そして、ゼロフォーは命令には忠実だ。それは心がどうのとかいう以前にサブプロセッサーとしてそう仕上げられているからである。
「わ、私にとってカズ様はご主人様なの」
この会話はゼロフォーだけではない。マリアーナも聞いている。何ならゼロツーやスリーワンも聞いているのだ。そんな無線チャネルの中で[貴方とマスターの関係は?]と敢えて尋ねたのだ。それはマスターの、カズの意志に合致していると考えての行動である。
「ご主人様というのは、マスターとは違うのですか?」
その一言でトリシャは黙ってしまった。無線から聞こえる息遣いが荒い。それは冷静に判断すれば[興奮している]と捉えるのが妥当だろう。
――ならば。
「私にとってマスターというのは絶対的な存在です。その命令には従わなければならない。それが例え家族に銃口を向ける事になっても。私たちはその命令から逃れられないのです。貴方はどうなのでしょう?」
ゼロフォーはそう尋ねた。それに対して、
「わ、私は、カズ様の……その……」
息遣いが荒い。ここでトリシャが一言言ってしまったら楽になるのだろうが、
「まぁ、いいです。これ以上パイロットを困らせても仕方ありませんから」
――それに、もう貴方は答えたも同然ですから。
ゼロフォーはそう話を区切って今後の展開について話しを始めた。
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