27.やっと出会えた希望でしたのに-マリア、今大丈夫ですか?-
全48話予定です
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――何故ですの!? 何故わたくしたちがこんな目に遭わなければならないんですの? やっと出会えた希望でしたのに……何故、何故!!
真に絶望した人間というのは、場合によってはこんな怒りにも似た感情を悲しみの中に抱くのかも知れない。
マリアーナの心は絶望と悲しみと怒りで満ちていた。そう、絶望と悲しみと、どこにぶつけていいか分からない怒りと、ほんの少しだけの恍惚感と。それらすべてがごちゃ混ぜになっていて、彼女の心はぐしゃぐしゃである。
絶望はいい、悲しみだって理解出来る。怒りもまぁいいとして、何故恍惚感を覚えているのか、それが不思議と感じる前に自分に腹を立てているのである。
――確かに罰して欲しいと感じた時もありましたわ。でも、でもこの仕打ちって、ない。
自分の身を呪いたい、とも思う。だが、オイヴィに、姉に託された命。下の妹の名前もペトラと分かった。
レイドライバーというのは、この世の兵器では比較的安全な部類に入る乗り物だ。
それこそ戦車の車両に乗っていたのでは、歩兵こそ蹂躙できるものの、同等かそれ以上の兵器と対峙した場合は的がデカいだけにいくら装甲が厚いとはいえ死亡の確率が高まる。
レイドライバー、そのパイロットとなればそんな直ぐに死地に赴く結果になる、というのは考えにくい。もちろん相手は同じレイドライバーだ。だが、少なくともゼロフォーと組んでいる限りは不幸な事故さえなければ生存確率は比較的高い、と思う。
このままパイロットを続けていたら、もしかしたら妹のペトラに出逢える可能性もゼロではないはずだ。
確かに希望は低い。どのくらいかと言えばカズが[きみの妹、つまり一番下の娘については人売りに出されたところまでしか分からない。複数人が関与しているところまでは掴めているが、そのあとの情報が途絶えているんだ。引き続きの捜索はしてるんだけどね]と言っていたくらいだ。カズは、マスターは少なくとも嘘は言わない、と思う。マリアーナにはそれが分かるのだ。
だからだろう、ペトラに会いたい、そう願ってしまうのである。それは姉妹を失った者としては当然の欲求であろう。
しかし。
――わたくしは何て恥さらしですの!? 実の姉をその手に掛けたというのに、ここに来てペトラに会いたい、なんて……。
人知れずコックピットで泣く。ゼロフォーはリンクカットしたと言っていた。おそらく感覚や感情といったものはすべてカットされているはず。つまりこのコックピットはいわば、ただの孤独の部屋という事になる。ゼロフォーがコックピット内を確認するのは不可能だ。何故ならそういった室内をモニターする機具の類は[敢えて]置かれていないのだ。
そんな中でマリアーナは自分に嫌悪感を抱いていた。起爆スイッチを起動するときは手が震えた。なかなか押せなかった。だが、押してみて、姉の無機質な声のカウントを聞きながらその心では少しだけ恍惚としていたのだ。
そしてマリアーナはその感覚が気に入らないのだ。
――だって、お姉さまが逝かれてしまうその間際にわたくしはなんという事を……。
戦闘中、コックピットという閉鎖空間の中でずっとそんな事ばかり考えていた。こんな恥知らずで、あまつさえ人の死に恍惚としてしまい、いざ失われたらもう片割れである妹を欲するというこんな自分に嫌悪していたのだ。
だがどんなに望んだとしても自死は許されないし、許されていない。それは、レイドライバーのパイロットになった時点で人権が剥奪され、その心身ともに扱いは同盟連合の所有となるからだ。それに、孤児院での刷り込みは絶大である。現に、こんなに自分を罰しようとしているにもかかわらず、何一つとして、常日頃から腰に携えているオートマチック拳銃一つ取り出せないのだから。
それは、孤児院にいる時代からそう[調律]されているのだ。
だからだろう、今のマリアーナには心を乱すくらいしか抵抗できるすべがないのだ。
そんなマリアーナに、
「マリア、今大丈夫ですか?」
そう語り掛けるのはゼロフォーである。
全48話予定です




