26.三対二か、これなら勝てる-この人も色々あるんだろうな-
全48話予定です
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――三対二か、これなら勝てる。だが、相手は打って出てくるのだろうか? それともこのまま引き揚げるのだろうか。
ゼロフォーはゼロツーと合流し、指揮権が自分にある事を確認して射撃管制下に置いた。
そう、今回は指揮官がゼロフォーなのだ。人であり、中尉というそれなりの階級を有しているトリシャが指揮権を持たないのは何故か。それは言うまでもなく[無人機]であるスリーワンが部隊内にいるからである。そしてスリーツーという存在は失われたが、まだスリーワンは健在だ、とくれは思考伝達の出来るサブプロセッサーであるゼロフォーが仕切ってもおかしくはない。
それに。
「わ、私は貴方の指揮下で動けと言われたわ。どうすればいい?」
少し声色の上ずったトリシャが声をかけてくる。
「私が指揮権を持っている事がおかしいでしょうか?」
と、ゼロフォーはあくまで純粋な疑問として聞き返したのだが、
「い、いえ、とんでもありません。ご、ご主人様からは[貴方に従え]と言われたので」
明らかに動揺が見られる声で返してくる。
――この人も色々あるんだろうな。
ゼロフォーは自分というもの、つまり自我が薄いと言われてきている。それはカレルヴォ大尉と何度か一緒に行動を共にしたおかげか、だいぶ心に彩がつき始めた、と思う。少なくとも自分の中で何かが変わって、その結果として今はペアを組んでいないカレルヴォの安否が気になる、それくらいの感情は持ち始めている。
実際にカレルヴォと離れるのが少し寂しい、とも感じていた。それは恋に落ちた人間のそれとよく似ている。もちろん、当の本人であるゼロフォーもそれは理解している。何と言ってもネット経由で色々な情報を得られるからだ。恋愛、というものがどんなものかくらいは知識としては知っているつもりだ。
しかしながら、知っているのと体験するのとでは全然違う。第一、情報量が段違いなのだ。よく[百聞は一見に如かず]というが、まさにそれである。
それを置いて、他の人となるとどうしても[あっ、どうも]くらいにしか思わないし、思えないのである。それが例えトリシャという、昔からレイドライバーのパイロットとして戦線を戦ってきた相手だとしても、それが例えマスターから[皆がマスターと呼ぶか、オレに隷属しているんだよ]と聞かされていても[あぁ、この人にも色々な事情がおありで]くらいにしか思えないのである。
そういう意味ではカズの対人関係に少しだけ似ていると言えなくもない。自分のテリトリーである心を[侵食]したカレルヴォという存在は、やはり他の人よりも一段上に位置しているのだ。そして、その最上位にはカズという存在がいる。アルカテイルやエルミダス基地の司令もそうだ、もっと言えば今は亡きクリスチャン・ガルシアという人物も、それに代わって指定されたアイザック・ウォーカーという人物も、である。
だが、その中でもカズはやはり特別なマスターと言える。口にこそ出さないものの、一緒に働いている者同士、指揮されている者としてはやはり部隊長であるカズという存在が大きいのだ。
それにカズは自分に対して彩を与えてくれた。消耗品である自分たちにここまでしてくれるのは、こんな人物はカズ以外にいない。
そのゼロフォーだから、明らかに動揺、場合によってはそれ以上の[何か]を抱えているトリシャにクリアに向かい合えるのである。
「トリシャ現中尉、それでは我々は自軍の拠点まで移動したいと思います。前述の通り、リアクティブアーマーが品切れ状態、弾数も絞っていたものの、もうひと戦闘あれば果たして持つかどうか。なので、ひとまず体勢を立て直します」
と告げた。そんなトリシャが、
「て、敵はどうするの、です?」
と依然として動揺したような声で問いかけても、
「私に敬語は不要です。私はサブプロセッサー、貴方はパイロット。立場は上です。ただ、たまたま今回私がマスターのご意向で指揮権を持っているにすぎませんから」
とあくまで冷静な声で対処するのである。
――さて、こればかりは冷静に、とはいかないのでしょうね。
ゼロフォーは周辺警戒をしながら腹の中にいる相方の心配をしていた。
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