2/45

２．今までも、今も、あ、ありがとうですの－こちらこそ、生きていてくれて、ありがとう－

全４８話予定です

私は挿絵は描けませんが曲ならなんとか作れたりします

という訳で、現在連載しているこの小説に曲を付けてみました

曲名は小説と同名の「レイドライバー」です

もしよろしければ一度聴いてみてください

▼Youtubeのリンクはこちら▼

https://youtu.be/N4ueViHp3SM

▼声が入っていないほうが良い方はこちら(インストになります)▼

https://piapro.jp/t/RBLl

ちなみに他にもオリジナル曲をアップしています。もしもご興味がありましたら、ゼヒ聴いてみてください

▼以下が私のYoutubeチャンネルになります▼

https://youtube.com/@JohnD_72

曜日に関係なく毎日１話ずつ１８：００にアップします（例外あり）

※特に告知していなければ毎日投稿です

　その頃、ゼロフォーたちも会敵していた。前回とは違い、今回の主戦場は遮蔽物がある、いわゆる市街地戦である。

　それは意図して行われたものである。あらかじめ指定の区画には避難勧告が出ていた。それを差し引いてもある程度都市部から離れた、比較的荒廃した地域を舞台に選んだのだが。その辺りは織り込み済みだったというべきだろう。流石に遮蔽なしでの戦闘はもうこりごりと言ったところか。ここなら岩場もあるから、いざとなればそちらに移動というのも考えられる。

「援軍が来るまでは持たせます。スリーワン、スリーツー共に出来る限り遮蔽に隠れて」

　指示を出しているのは、実はマリアーナではない。ゼロフォーが直接指示を出しているのである。

　今回の作戦でカズは、

［スリーワンとスリーツーやその他のレイドライバーの作戦指揮はゼロフォー、きみが行うようにして］

　と言われていたのだ。そして、きたる援軍に対しても具体的な指示を出すようにゼロフォーには伝えてあったし、その援軍であるゼロツーにも、

［という訳で、今回の作戦指示はゼロフォーに頼んであるから］

　と言っておいたのだ。

　上空では三五ＦＤＩが支援攻撃をする予定であったが、流石にその辺りは情報が渡っていたのだろう、敵も戦闘機を出して来ていた。

「これは、航空支援はしばらくアテには出来そうにないですね。それでは何とか持ちこたえましょう。持久戦ですから弾薬は絞ってください」

　ゼロフォーは空を見上げながらそう宣言する。

　事実、戦場は持久戦の様相を呈して来た。敵もむやみに突っ込んでは来ない。その辺りを見るに、

　――これは、少なくとも指揮者は戦闘経験がある個体と見ていいですね。

　ゼロフォーはそう思いながら、

「マリア、くれぐれも油断しないで。おそらく何度か戦闘をくぐった人間がいるのは間違いなさそうですから」

　とマリアーナに伝える。

「了解ですの。わたくしだって少しは成長しましたのよ」

　そんな言葉が帰って来る。そんな言葉に、

　――マリアが無事で本当に良かった。

　とゼロフォーは真の底から思うのである。

「あの、こんな時になんですが、ゼロフォー？」

　マリアーナがゼロフォーを指定して話をしてくる。

「どうされました？」

　と質せば、

「スリーツーと少しだけ、ほんの少しだけで良いですからお話がしたいのですが」

　と丁寧な口調で言われる。昔であれば事情の分からないゼロフォーなら、まさに［お好きにどうぞ］である。だが、今のゼロフォーは少しだけ違っていた。

「どうして？」

　と尋ねたのである。だが、その問いにマリアーナは上手い返し方を出来なかった。黙ってしまったのだ。

　そんな様子を見て、

「分かりました、私が聞いても困らせてしまうようですから」

　と返し、

「スリーツー、パイロットのマリアーナが通信をしたいと言っています。現在は戦闘中です、手短に」

　とだけ告げてから回線をつなぐ。

「あ、あの、スリーツー。今までも、今も、あ、ありがとうですの」

　マリアーナはゼロフォーと子宮のリンクをしている。だからゼロフォーには、パイロットであるマリアーナの動揺が痛いほどよく伝わって来る。文字数で言えば数文字の［ありがとう］という、たかがそれだけを通信するのに痛いほどの動揺をしているのだ。

　――これは、聞かない方が良い類の話ですね。

　そう思いながら相手の出方を見る。

　すると一言だけ、

「こちらこそ、生きていてくれて、ありがとう」

　と返して来た。そこで回線は切れて通常回線、つまりゼロフォーとの回線に切り替わったのである。