16.カズの言う隠し玉-もしも[子供]を置かなかったら?-
全48話予定です
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カズの言う隠し玉、それは完全無人の機体にある。このレイドライバーには誰も、サブプロセッサーすら乗っていないのだ。
どういう事か。
以前にサブプロセッサーも無線で、というのは[子供]が配置されているから無線の帯域がそこまで無いので無理、という話だった。だから本当であればサブプロセッサーも遠隔で、と行きたいところなのだが、それは不可能という現実があるのだ。
それに拿捕の可能性がある場合、自爆処理をしなければならないのもある。
レイドライバーはボディーの各所に[子供]を配置している。その[子供]との信号のやり取りも無線で、となると帯域が全然足りないからなのだが、ここでひとつの可能性を考える。もしも[子供]を置かなかったら?
「でも、それじゃあ今までの研究はどうなるんだ?」
まだ千歳が手術を受けて間もない頃に、彼女とカズの二人だけで話した時の記憶がよみがえる。
カズが言う懸念。
それでは[独特の間]が消せないではないか、それを心配しているのである。だが、その懸念というのはあくまで同盟連合が追ってきた[独特の間]の解消、この一点に尽きる。
そう、千歳は少しタイムラグが出てもいいポジションだったら[子供]も不要の、サブプロセッサーすらも不要の、完全無人機が出来ないか、そう考えていたのだ。
では、もしも撃破されて行動不能になったらどうするのか。自爆信号が送れればいいが、それも不可能だったとしたら? そもそも衛星通信は地下などの空間には無力だ。レイドライバーの上部に何かの遮蔽が存在した時点で電波は届かなくなる。
一見するとこれは致命的な欠点とも言えるだろう。しかしながら衛星を使用するというシステムから行けばどうしてもこの欠点は消せない。レイドライバーが衛星から[見えて]いないといけないのだ。
それだったら、衛星からの電波が届き、無線帯域もそんなに使用しない遠隔操縦を行える環境での運用を考えればいいだけなのではないか、千歳はそう言っているのだ。
ここはアルカテイル基地の、それも防衛線を敷いている[地上]だ。
衛星というのは偵察衛星などの特殊なものを除き、一般的に通信を担っている衛星は、世界中どこにいても何個かのそれと常に通信が可能だ。そこに暗号化した電波で操縦信号を送る。その電波が常に受信可能な戦場にならこんな、本当に[無人]の機体を置く事だって可能なのだ。
以前、イリーナを捕縛して尋問した際に聞いた話から推察するに、帝国は生体コンピューターとパイロットとのリンクというものを追わなかったと推測される。ならば、同盟連合だって[独特の間]を無視できるシステムを追ってみてもいいのではないか。
「どうかな?」
千歳は自分が考えていた内容をカズに伝えた。
研究の先の、そこまでのフェーズを考えていたのだ。
「じゃあ、もしも行動不能に陥ったら?」
というカズの問いに、
「味方陣地であれば機体の回収は可能だと思う。その為の無人システムだから」
つまりは完全無人という話である。
「待てよ、もしも[子供]なしでサブプロセッサーを乗せたら、それは地下や密林みたいな電波の届かないところでの戦闘も可能?」
カズがそう考えを伝えれば、
「そう、問題視しているのは[独特の間]だけ。操縦自体は何ら問題はないと思う。もちろんこれを実行に移すかはきみ次第だけど、可能性の一つとして考えてみてもいいんじゃあないかな」
千歳はそうカズに告げたのだ。
「きみは、そこまで考えていたんだね。そうか[子供]を置かない方法か。それも研究の対象にしてみるよ。部品点数が減ればそれだけ増産のスピードもあがる。そうすれば」
「そう、同盟連合はレイドライバーという分野で優位に立ち続けられると思うの」
そんな話をした記憶がカズの脳裏によみがえる。
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