15.ゼロフォーは次の指示を考えていた-マリア、マリア、聞こえますか?-
全48話予定です
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ゼロフォーは次の指示を考えていた。
現在、手持ちのコマは自分を含めて二体。上空からの航空支援は未だ叶わない状態だ。どうやら敵も最新鋭機を投入しているようで苦戦している、という情報が降りて来ていた。
――確かにスリーツーの喪失は痛いものだ。おそらくマリアと何か関係があるのだろう。だが、それを聞くのは得策ではない。ないのだが……。
ゼロフォーの心配事、それはマリアーナがこのまま戦闘を続行出来のかどうか、という点にある。前回はマスターの用意した装置があったから自立行動がとれた。だから自分一人でレイドライバーを操縦も出来た。
もちろん、マリアーナというパイロットがいてもそれは出来る。だが、なまじか子宮リンクというシステムで[縛られて]いる為に、パイロットの感情をもろに受けるのだ。そして各部に配置されている[子供]とのやり取りはパイロットの子宮を使用している。
――手を汚すのなら私がやればいい。出来ないと言うなら私がやってもいい。だが、それが果たしてマリアの為になるのか。
状況からスリーツーのサブプロセッサーとマリアーナが、何か特別な関係だったというのは容易に想像がつく。そんな存在が、今さっきまでいた存在が突然失われたのだ、特別な関係であればあるほどダメージが深いのは、何もゼロフォーでなくとも分かる話だ。
しかし現在、ゼロフォーたちは帝国軍のレイドライバーと交戦中である。
「マリア、マリア、聞こえますか? 私たちは現在交戦中です。機体のコントロールは出来ますか?」
音声でインカムに呼びかけるが、泣き声しか聞こえない。こちらの応答にとてもではないが答えられそうにないのは良く分かった。
確かに良く分かりはしたのだが。
――これは、ちょっとマズいかも知れない。
子宮リンクで接続されているゼロフォーの感情も不安定になりつつあるのだ。具体的には、冷静な判断ができにくくなってる。明らかにパイロットの感情に引っ張られているのだ。
だが、状況は一秒たりとも待ってはくれない。
「こちらゼロフォー、ゼロツー、応答願います」
ゼロフォーは救援のゼロツーに連絡を取った。
「こちらゼロツー、もう少しよ。もう少しすればHALO降下(高高度降下低高度開傘)で降りられそうだけど、まだあと十……二十分は持たせてちょうだい」
という答えが返って来る。
――この状況で二十分、だとしたら持久戦以外選択肢が無い。しかし、それって。
ゼロフォーの懸念、それは持久戦に持ち込めそうにないという現況を意味している。つい先ほど、敵のいる方角から爆発音が聞こえた。と同時に独特の機械音と振動が検知されたのだ。それはつまるところ、敵レイドライバーが距離を詰めて来ている、というのを意味している。出来ればこちらは距離をとりたいが、ブロックで言えば三ブロック目辺り、距離で言えば五十メートルあるかどうかのところまで来ている。それを許したのは、スリーツーの起爆を待ったからである。
――私に執れる選択肢は、もう一つだけしかない。
ゼロフォーは覚悟を決めて、
「マリア、貴方が戦えないのは分かっています。だから、しっかり掴まっていて。私が全コントロールを掌握します」
返事は、なかった。その代わり、コックピットに行っている情報はモニタリングのみに切り替えられた。
ゼロフォーが今の躰を制御しているのだ。それも、子宮リンク無しで純粋にレイドライバーという兵器を操っているのだ。子宮リンクシステムを使用していないというのはつまり[子供]からのフィードバックをも受けてないというのを意味している。
マシンガンを握っていない手を少し動かして感覚を確かめる。
――ほんの少しの感覚のずれが感じられる。だけど、これなら修正範囲内だ。行ける、これならば行ける。私は、決してマリアまで失ったりはしない。
ゼロフォーはそう決意すると、
「スリーワン、一ブロック移動します。おそらく移動中に攻撃があるでしょう、それを切り抜けながら場合によっては反撃を」
そう告げたのだ。
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