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13.時間はそんなに待ってはくれない-さようなら、マリア。元気でね-

全48話予定です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です


 自分の置かれている状況に反してスリーツーは冷静に物事を考えられていた。


 これ以上、自分の為に時間をとらせるわけにはいかない。それだけは良く分かる話だ。


 ではこれからどうすべきなのか。


 ――他人に殺されるくらいなら、いっそ貴方の手で殺してほしい。


 そう思うスリーツーは欲張りだろうか? それとも傲慢だろうか? 些細な幸せすら灰燼に帰そうとしているこの状況で、最愛の相手にそれを望むのは酷なのだろうか。


「でも! でも!!」


 時間はそんなに待ってはくれない。向こうだって被弾した機体の処理を済ませれば[これ幸い]とばかりに攻め込んでくるだろう。


 その前に決断、実行をしないといけないのだ。


「やれないようなら私が代わりに実行しますが」


 ゼロフォーの声は少しだけ冷たい。それは火照っているマリアーナを冷ますように、それでいて突き放さないようにしている表れなのだろう。


 マリアーナの立場に立てば、起爆ボタンを押すというのはあまりに残酷な話である。表面上は[見ず知らず]の相手。だが、実は二人とも事情が分かっている。そんな二人に、実の姉妹である姉に対してとどめをさせ、と言っているのだから。


 ――どのみち、もう私は助からない。それならいっそ。


「お願い、出来ません、か?」


 再度尋ねる。


 さしものマリアーナも、


「分かりました。わたくしが実行します」


 ついにはそう宣言したのだ。起爆シーケンスに入ると起爆される相手側にはカウントダウンが生体コンピューターからの指示で音声として発音される。それは三五FDIでもそうなっている。向こうは自我のない、生体コンピューターが読み上げるのだが、こちらは脳に取り付けられた生体コンピューターに司令が直接届き、脳に直接働きかけて自身の声で読み上げられるのだ。


 つまりは自分でカウントダウンしながら死んでいくのである。


「スリーツー、マリア、いま二体の回線をバイパスしました、これで貴方とマリアしか聞こえない会話が出来ます。長くは出来ませんが、私は[耳を塞いで]いますので」


 ゼロフォーがそう宣言すると、


「わたくしは孤児院で受けた調律の為、お姉さまの名前が分からないですの。せめてお名前を教えて貰えませんか? その名前は胸に仕舞って絶対に外には出しません。ですから、最後にお名前、だけ、でも」


 ――マリア、泣かないで。私は一足先に逝っているだけだから。貴方は役目を終えるその日まで生きてね。


「私の名前は、オイヴィ。オイヴィ・ハリラというの。下の妹の名前はペトラ・ハリラ。貴方のお姉さんでいられて本当に良かったと、心から思ってる。私は一足先に逝ってるから、出来るだけゆっくりこちらに来てね。いつまでも大好きよ、マリア。さようなら、元気でね」


 文字数で言えば決して多くないこの会話はきっとマリアーナの心に深く、深く刻まれる事だろう。そして[ゆっくりと来い]の言葉通り、彼女なら、ゼロフォーと一緒の彼女なら幾度となく死線を潜り抜けられるであろう事も。


「さぁ」


 その言葉に背中を押されたのだろう、マリアーナが起爆を指示する。すると、スリーツー自身の無機質な声で[自爆シーケンスに入ります。この操作は取り消しが出来ません。十、九、八……]とカウントが始まる。


 ――さようなら、マリア。元気でね。


 そう思考が終わるころにはスリーツーの機体は内側から爆破していた。証拠を残さないための自爆である。内側の機器を効果的に破壊、解析不能に持ち込むのだ。


 スリーツーには最期に何か言葉が聞こえた気がしたが、それはあちらの世界で反芻すればいい話だ。時間なら無限に存在している、はず。


 そうして同盟連合は、一体のレイドライバーを失ったのだ。


全48話予定です


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