11.このままではゼロフォーがやられる-あぁ、私はまだ生きているんだな-
全48話予定です
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スリーツーはスリーワンよりもゼロフォー寄りに配置していた。彼女の[移動します]の声に、
――区画を移動しなければ。
と頭で分かっていたものの、公私混同気味になっていたというのがある。気が付けば敵よりもゼロフォーに目が行っていたのだ。
マリアーナが乗るゼロフォーという機体。その中の無線通信では、確かに記憶の中にあるマリアーナの声がした。スリーツーにしてみればそれだけが救いであり、パイロットとして再会したというのが地獄でもあり。
そんな気を取られていたのが、もしかしたら幸いしたというべきなのかも知れない。もちろん敵に意識は向いていた。一度戦闘を経験しているので、自分の脳みそに取り付けられている機械の操作方法は学んだつもりである。だから意識はゼロフォーに、全周警戒はコンピューターに、というような使い方が出来たのである。
そしてゼロフォーは移動時に足を取られた。それはもしも自分の移動だけを考えていたのでは見過ごす点でもある。
まぎれもなくスリーツーはゼロフォーを[見ていた]のである。
だから、
――このままではゼロフォーがやられる。だったら、私が採るべき行動は一つだけ。
考えると同時に行動していた。気が付けばゼロフォーと敵との間に立ち仁王立ちで敵と対峙していた。
直撃弾を何発か喰らうが、相手の一体の全身が出ている状態だ、こんな状況でスリーツーの頭は冴えていた。自分が被弾しているにもかかわらず相手に向かってより良いポイントを照準して弾を返す。
遮蔽なしでの撃ち合い。この戦闘で一つスリーツーに運が味方をしたとすれば、それは全身を晒した相手が先ほどのリアクティブアーマーの機能が失われていた相手だった、というところか。こちらの弾丸は相手の装甲に直接ダメージを与えていたのだ。だが、こちらはリアクティブアーマーを装備していたにも関わらずかなりの被弾をしたのだ。
「スリーツー!!」
マリアーナの悲痛な声が無線越しに聞こえる。
――あぁ、私はまだ生きているんだな。でもこれで動けなくなった。じきに処理されるのだろうな。
気が付けばゼロフォーがスリーツーを引きずって遮蔽物まで逃れてきた。
「私は、どんな、状況、ですか?」
ペインアブソーバーを強くかけておくべきだったと今更ながらに後悔する。それほどにアーマーを着ていたにもかかわらず直撃弾を何発も喰らってしまっていた。相手は全身を晒した個体だけではなかったのだ。遮蔽をとっていた敵の僚機もこの機にとばかりに射撃に加わっていた。
そして一番の致命傷は、レイドライバーのウィークポイントである脚部にも被弾していたという点だ。それも両方、つまりは自力での歩行は困難というのを意味している。
「相当にやられています。戦闘は困難でしょう」
ゼロフォーが冷静にそう告げる。
「なんで、何で庇ったんですの!?」
マリアーナが叫ぶ。その声でかろうじて意識を保っていられた。
――マリアは無事か、良かった。
激しい痛みに耐えながらスリーツーはふとそんな事を考えていた。自分の心配よりマリアーナの心配をするのは、やはり彼女が姉だからだろう。
「貴方の、事が、大切だから、よ、マリア」
途切れ途切れにしか声が出ないのがもどかしい。
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