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2の3 エピローグ

ここからはその後のことを追記しておく事にする。


今回の騒動により奇跡的な若返りを果たした鉄心は、死んだものとして魔法少女保護対策課へ合流し、以後は彼女達の武器や防具の調整班となるだろう。


次に、山根組および与していた京都府警の汚職警官達は篠崎の手回しにより、より重い刑罰が科されるとの事だ、裁判はまだ先だし長引く事にはなるだろうが、組長や大山のような外道が世間に出てくることは二度と無いだろう。


次に山根組に追われていた安元圭介とその家族だが、孫娘の安元紫苑が冒険者体質に変異した事により、彼らの身柄の保護は予定通りに魔法少女保護対策課が請け負う事となるのだという。幸い魔法少女達の宿舎には人手が足りていないのもあり住み込みの家族が増える位は問題ないのだと本田は言っていた。


次に新しい魔法少女、黒崎綾奈と白石霧香の二人は魔法少女保護対策課に合流。元々孤児であり戸籍を持たない彼女達を篠崎は養子として迎え入れる事で戸籍を与え、当たり前に学業や一般社会へ溶け込めるようリハビリをしていくのだという。


その為、手続きの関係で一足先に魔法少女保護対策課へ合流すべく戻ってしまった。カイトとしては霧香に話を聞きたかったのだが、マールの負荷を一身に請け負った霧香は目覚める事は無かった…話は、彼女が目覚めてからでいいだろう。


『カイト、対象の掃討は完了しました』


そんなカイトの耳に青葉の声が響き、カイトは目を向ける。


カイト達は現在、当初の目的の通りに冒険者殺しの苗床の破壊をすべく残された集落へやって来ていた。しかし、とある誤算から、その編成は大幅な変更を余儀なくされていた。


「ふいー…あはっ!」


栗色のショートボブに、翡翠色の美しい瞳の少女マールは満足げに額の汗を拭って笑う。彼女の足元には夥しい数の冒険者殺しの亡骸が横たわっていた。10や20などという生やさしい数字ではない、数百という地面が見えなくなるほどの冒険殺し達の亡骸が、彼女の足元から地平線の彼方にまで及んでいた。


『気がすみましたか?』


そんなマールのイヤホンからカイトの声が響くとマールは首を横に振ると、手にしていた道路標識を肩に担ぐ


「ぜんっぜん!!物足りない!!!こいつら弱すぎだよ!!こんなんじゃ準備運動にもなんない!」


テンション高く透き通るようなマールの声が帰ってくる。


「は…ははは…はあ…」


何故、こんな事になっているのか?と聞かれると、答えは… 昨日蘇生させた回復術師の神託をもつ霧香が、マールを蝕んでいた負荷を全て吸い取ったのだ。

どうやら回復術師の神託を持たない人間が扱う蘇生には大きなリスクがあったようで、3回の蘇生を行ったマールはしっかり3回分の負荷を背負っていたのである。彼女曰く体が普段より少し重い程度の感覚だったのだというのだからマールという小さな勇者の化け物具合が伺える。しかし、さすがのマールでも4回目の負荷には耐えきれず、危うく本当に死ぬところだったようだ。


「カイト!!あっちからたくさん気配を感じる!行っていい!?いや!行くね!!」


そう叫んだマールは満面の笑みで遥か地平線の彼方まで走って行くと、地平線の向こう側から爆弾の炸裂のような爆発音が響き渡り、巨大な土埃が数十メートルも舞い上がる。


「……もう、好きにやってくれ…」


こうなっては最早策もクソも無い、圧倒的な個による一方的すぎるワンサイドゲームを見せられたカイトはそんな光景を呆然とながめていたが、遂にはその場に倒れ込んだ。


「か…かいと?」


唐突に倒れたカイトを心配した青葉が声をかけて来る。カイトは寝転がったまま今まで後生大事に手にしていた作戦シナリオが表示されたスマートタブレットをポイっと投げ捨てた。


「あとはマールが全部やってくれるようなので、我々は帰っていいですね、はい」


「え…えええ!!??」


青葉も、回収班の皆さんも。他の魔法少女達も困惑にそんな声をあげる。


当たり前だ…今まで枷となっていた身体を蘇生負荷がなくなり、ホテルの美味しいバイキング料理を思う存分食べ、清潔でフカフカな環境でしっかりと寝たマールは今、かつて無いほどの絶好調なのだ。こうなったマールはカイトの指示に従うことは無い、疲れを感じるか、腹が減るまで思う存分に動き続けるだろう。


以前、カイト達の世界にある最前線で…レイとマールが現れた地点は非番になるという噂が囁かれていたが…それは恐らくこういう事なのだろう、とカイトは舞い上がる土埃達を見ながら考えた。


「……作戦終了はいいけどよ…」


茜はそう言いながらも頭をかきながら後ろに並ぶ資材満載のトラックに目を向ける。


「これ…どうするよ?」


マール暴走により拠点構築は最早不要だろう、今更返品もできないし、何よりも決死隊として参加してくれた自衛官達にも申し訳がたたない。そう考えたカイトは身を起こす。


「集落の安全はマールが確保してくれていますので、少し編成を訂正して作戦を始めます」


カイトはそう言って投げ出したタブレットを拾いあげると首のインカムに触れる。


「マール、これからそっちにわたしと回収班が向かい拠点を構築します。引き続き冒険者殺しの掃討をお願いできますか?」


「いつでもいいよー!!」


イヤホンにでは無く、地平線の向こう側からマールの良く通る大声が立ち上がる土埃と共に帰ってくる…うん、元気いっぱいだ。


「で、では…いきましょうか?」


この後、冒険者殺し達は絶好調のマールにより殺し尽くされ、彼らの苗床もプロミネンスで念入りに焼き払われた、さらにはまだ気配がすると持ち前の野生の勘と鼻で残党の冒険者殺し達も虱潰しに残さず殺され尽くし、この地に根付いた冒険者殺しは1匹たりとも残す事なく根絶されたのだった。

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