1の4 ゴブリンの森(1)
4、更新しました。
今回は少し長くなります。
道中、熱い熱の籠る馬車の中では重い鎧を外させることで涼ませながら馬車に揺られていた。
「カイトさんはどうして僕達にここまでしてくれるんだい?」
馬車の道中は暇なのか、退屈紛れに弟のゲイツが聞いてきた。
「あの場所には僕達より強い冒険者は沢山いた、それなのに僕達を選び、食事だけでなく装具や輸送のお金まで工面してくれた」
ゲイツはカイトの親切さに不安を覚えているようだ、カイトは正直に答えた。
「わたしは戦闘が見たいんです」
「は?…ああ…えっ??」
答えになっていないカイトの返答にゲイツはキョトンとしている。そんな2人の会話にゲイルが割って入ってくる。
「私たちが、亜人と戦っている姿が見たい…それだけの理由ですか?」
カイトは実ににこやかに、ただ素直に頷いた。その反応に2人には不安を与えてしまったようで、納得していない様子をみせる。
「それだけならわざわざ身銭をきってまで物資や輸送の工面は必要ないと思い…」
「何を言っているんですか!あなたたちはこれから戦うんですよ?」
カイトは大声で食い気味に反論し、ゲイツは首をかしげる。尚もカイトは続ける。
「これは自論ですが、これから戦う戦士に最高の準備を用意するのは当たり前だとわたしは思っているんです、戦いは準備から始まっているんですから!」
「で…」
「先にもいいましたが、わたしは亜人との実戦が見たいんです。それは、わたしにとって身銭を切る価値のある、最上の報酬なのです!」
カイトの勢いと、その内に渦巻く狂気的な熱意にゲイツは震えた、この人は狂っている。彼はそう感じ、黙ってしまった。実際、カイトは今、興奮していたのだ。もうまもなく、生前見られなかった実際の人の戦闘を見られる、しかも相手はRPGや映画でしか存在しないあのゴブリンなのだ、その現実だけでも射精しそうな程に興奮していたのだった。
「お客さん、目的地だぜ!」
ふいに馬車の騎手が声をかけて来た、カイトは地理が分からないのでそうなのかと素直に出ようとするが、ゲイルがカイトを止める。
「まて、目的地の村にはまだ距離があるだろ?ぼったくる気か?」
ゲイルが凄みのある声音で脅すようにいうと、騎手は怯えた様子を見せる。
「冗談じゃない、あれを見ろ」
騎手に言われるまま指差した何かを見る、それは木と獣の骨で作られたもの。
「あれはゴブリンの縄張りを意味する標だ、あいつら最近馬車は手当たり次第に襲うんだ、銀貨10枚じゃ割合わないんだよ!だから俺が行けるのはここまで、早く降りてくれ!」
ゴブリンが馬車を襲う、そう聞いてカイトは不安が過ぎるが。仕方なく下車し、ここから徒歩の行軍となった。自らを最底辺と卑下していたボルドー兄弟は実に手早くそれでいて手慣れたように重装の鎧を身に付け、槍をもつと荷物も背負い前を進む。その際、地理のないカイトは現在地や周辺の地理をゲイルから教わりながら目的地を目指すこととなった。
「この辺りのはずだ」
歩く事数刻、ゲイルが依頼書に書かれたゴブリンの目撃地点で足を止めたので地図を広げたカイトは現地と地図を見比べながら思考を巡らせる。
「右手に深い森、左手には見晴らしのいい草原その奥に小規模な村…」
ぶつぶつと呟きながら左手の草原を進む。
「カイトさん?ゴブリンが目撃されたのはそっちの森ですよ?」
「そっちはダメです」
キッパリとゲイツの提案を否定すると、特に理由を語ることもなくゲイルをみる。
「この近くに川はありますか?」
「ある、あるが右手の森の奥だ」
「水の確保は不可能か…」
軍の侵攻に水のある無しは死活問題、カイト達が持参した水筒にはまだ余裕はあるが、身体を洗えない不衛生な環境が続くのは良くない。
「村ならある程度の水がもらえるんじゃないかな?」
ゲイツの発言に、カイトは首を横に振る。
「村人が好意的なら良いですが、そうでなかった場合の水の確保は考えておきたいですね」
地図に目を向ける。地図には村の先に川や水場が事は書かれてはいない。
「…村に賭けるしかない…か」
「了解!」
ゲイツは前にでて、再び先頭を歩き出した。ボルドー兄弟は重装備に固めてはいるものの、装備の重みや徒歩移動による疲労を見せない。
「みなさん、疲れてはいませんか?」
カイトの問いにボルドー兄弟は自慢げな表情をする。
「カイトさんは我々冒険者との行動は初めてですか?心配はいりません我々は頑丈です、装具の重さ程度では疲弊したりしません」
そんな凄い人種がいるのか?古代の行軍でも重装備が原因で士気を下げ、それが致命的な敗北に繋がる戦場はいくつか存在する。カイトが呆気に取られていると、ゲイルはドンと胸板をたたき、自信を露にする。
「むしろ僕達からしたらカイトさんの体力のほうが心配かな…その、カイトさんは小さいし」
ゲイツは前を歩きながら聞いてくる、カイトは今更自分の体力を思い出してハッとする。興奮で一切考慮にいれていなかった。
「まだ大丈夫そうです、疲労を忘れていました」
「ぶ、なんですかそれはっ」
ボルドー兄弟はそんなカイトの反応に吹き出し笑った、その時、遠目に右手の森から緑色の肌に黄金の目玉の小人の集団が現れるのを目視する。
「ゴブリンだ!」
ゲイツが叫び指を差す。突然の接敵に一気に空気がピリつく。しかし、ゴブリンの集団はまだこちらに気づいてはおらず、何やら忙しく奥の村へと向かっていた。
「あいつら、村を襲うつもりか…」
ゲイルは槍をしっかりと握り閉める。
「兄さん、でも相手は10匹以上いるよ??」
ゲイツはおどおどとしながら槍を持った。カイトはゴブリン集団の背中とその様子をしばらく眺め、そして手にしていた図鑑を一瞥してから閉じる。
「いえ、やりましょう」
カイトの言葉にゲイルは耳を疑う。
「ただし、ここでは仕掛けません、ついていきましょう」
カイトはゴブリン達を追いかける、亜人でも小さなゴブリン達の歩幅は小さく、普通に走ればカイトたちは簡単に追いつけてしまう。その為、カイトは敢えて速度を緩めゴブリン達に気取られないよう絶妙な距離感を保った。しばらく進むと、ゴブリンの集団は脚を止める。その眼の先には村の入り口がある。村は無防備で、監視のために立てられた櫓も無人のまま虚しく佇んでいる。まるで襲ってくれとでも言いたげだ。ゴブリンたちは魔物の言葉でなにやら指示をしている。
「お二人、お願いします…ゆっくり、背後から、しかし激烈に…」
カイトがそんな指示を出すと、2人は槍を構えじりじりとゴブリンたちに背後から歩み寄る、ある程度進むと指示をしていたゴブリンが太陽の反射で輝く2人の姿を目視した。
「突撃!!」
刹那、カイトの叫びが響き、同時にボルドー兄弟が獣のような雄叫びをあげながらゴブリンの集団の中へ飛び込んだ。完全に不意を突かれたゴブリン達は硬直している、その僅かな硬直の間に2人の槍が2匹のゴブリンの身体を刺し貫いた。
「ああああああ!!!」
長身のゲイツが叫びながら長槍を振り回し、目につくゴブリンたちを次々と叩きつけ、刺し貫き、長身を生かしたリーチの長さと威圧感で小柄のゴブリンたちを怯ませ圧倒する。
「でりゃあああ!」
ゲイルも割腹の良い身体でずっしりと構え、その精密で鋭い突きは暴れ回るゲイツの槍から運良く逃れたゴブリンを的確に貫き、次々と殺害してゆく。数十はいたゴブリンの集団は、ボルドー兄弟の猛攻の前にあっけなく全滅した。
「すごい、すごいよ!!コボルトにすら勝てなかった僕達がずっと格上だったゴブリンをたおせちゃったよ!?」
ゲイツが喜びの声を上げ、ゲイルも信じられないといった様子でいる。しかし、カイトにはその理由は明白だった。勝てた理由は二つある。一つ目は奇襲であったこと、人間であっても意識の外からの攻撃には動揺をするだろう、突然の襲撃には対応しきれない。そして二つ目は体格である。ゴブリンは体格からして集団で獲物を嬲り殺す戦法を取るのは明白、つまりは自分達の得意なフィールドに相手を誘い込む必要がある。故に集団で村を襲うのではなく、不用心に村の外へ単体で出てくる一人を狙って伏せていたのだろうと推測される。
そんなところに体格に優れ、しかもフルプレートで隙間なく固めた重装備のボルドー兄弟の突撃を受けたのだからたまったものではない、その勢いを止められる訳もなく、意図も容易く全滅する事になった。
「いや!お見事でしたよ、かっこよかった!」
カイトは小規模で一方的とは言え、戦闘が見れた事で恍惚としながら拍手していた。
「え!?そうかい!?」
ゲイツは調子良く声を張り、ゲイルはその脇を小突いた。
「調子に乗るな、俺がフォローしたからうまく立ち回れたんだ。」
「ええ…そんなあ…」
仲のいい兄弟のやりとり、その最中、カイトは地面に倒れたゴブリン達の亡骸の一体一体を確認し、細く削った木炭で図鑑にそのまま書き殴って行く。それだけにとどまらず、腰のダガーを抜き放ち、ゴブリンの亡骸の腹を裂いてその中を確認する。
「か、カイトさん?」
唐突にゴブリンを解剖しはじめたカイトにゲイルが声をかける。
「少し、気になりまして…」
カイトは図鑑を地面に広げ、ゴブリンの亡骸を捌きつつ情報を書き殴っていく。
「あれー?ボルドー兄弟じゃんっ!!」
不意に活発な声が響いた、ボルドー兄弟が声の方に目をやると、小柄な少女が立っている。栗色のショートボブに翡翠色の大きな瞳の少女。軽装な革の鎧で身を包み、その背中には小柄な身長に不釣り合いな程長く大きく装飾の一切ない無骨な大剣を背負っている。
「ま、マール殿?…」
知り合いなのか、兄のゲイルが引き気味につぶやいた。そんな兄弟にマールは素早く間合いを詰めてきて興味深々といった感じでまとわりついてくる。
「なになに?最底辺のZランク冒険者の2人がこんなところまで来て大丈夫なの?危ないよ?」
正式なギルド所属の人間にはランクという階級制度があるようだ。ただマールは彼らをバカにしているわけではなく、純粋にこの辺りの危険性を親切心から注意喚起してくれているようだ。
「ギルドの依頼でゴブリンの討伐に来まして」
「ゴブリン!?Zランクの2人が??!マジで!?」
距離感が非常に近いマールは、小動物のようにゲイツとゲイルの前で騒ぎ立てた。彼女は純粋な好奇心と無邪気でこれをしてくるのだからよりタチが悪い。そしてマールは地面に散らばるゴブリン達の亡骸を見る。
「これ、全部2人でやったの!?」
マールは大袈裟なジェスチャーで驚いて見せケタケタと笑顔を絶やさない。
「すっげー!!2人ともやるじゃーんっ!!」
ナイスっと親指を立てて見せ、2人を大袈裟に褒め讃えた。2人は照れくさそうに顔をそらすと、マールの興味は1匹のゴブリンを解剖しながら図鑑に文字を書き足すカイトへと移る。
「なにしてんの?」
その声にカイトは我にかえり、声の方に顔を向けると目と鼻の先にマールの整った顔があり、解剖されたゴブリンを覗き込んでいた。
「うわあああ!?」
生前、カイトは異性とそこまで接近した事などあるわけもなく、心臓が口から出そうなほど驚き、大声を上げながら飛び退いてボルドー兄弟を見る。2人はそんなカイトに吹き出していた。
「だ!!だれ!?だれ!?」
動揺から挙動不審に繰り返すカイトにマールは歩み寄り手を差し出す。
「僕はマール、マール・ロマていうんだ!よろしくね」
自己紹介を受け、落ち着きを取り戻したカイトは、マールの手をとり握手を交わした。マールはその細腕では信じられない程の力で腰砕になっていたカイトを引き起こす。
「カ、カイトです、よろしくお願いします」
マールは再び地面のゴブリンに目を向ける。
「で、カイトは何をしていたの?」
「ゴブリンの構造を調べるため、恒常解剖をしていました。図鑑にはかなり間違いが多いので」
マールの問いにカイトは素直に答え、マールはふーん?とわからないながらも理解を示す。
「手、洗いなよ?ばっちいから」
マールはゴブリンの血だらけなカイトの手を指差した、カイトはハッとし、自分の手を見る。散々衛生面や水に気を遣っていたのに興味に勝てなかった自分を恥じた。するとマールは自分の腰に下げた水筒を差し出してくる。
「ほい、水」
「あ、ありがとうございます」
カイトは水筒を受け取り、手についた水を洗い流す。流石にゴブリンの血液も人間のと変わらず、ただの流水では洗い流せない、しないよりはマシだが。
「マール殿はここで何をしているんです?確か最前線に配置されていた筈では?」
ゲイルの問いにマールは形のいい顎に指を這わせてうーんと唸る。
「最前線に王様から手紙が届いたの、なんかオークの襲撃があったんでしょ?で、最前線でランクの低い冒険者達を順に戻してベルラート防衛に回すんだってー」
すると村の方から誰かがマールを呼び、マールはその声に振り返る。
「2人とも出てきていいよ!」
マールの呼びかけに、村の入り口に2人の女性が顔を出し、身体を晒す。1人は白髪のベリーショートの褐色でいかにも盗賊というようなシンプルで汚れの目立たない色の軽装をしている。もう1人は紺色の修道服に身を包む聖職者である、頭にはベールを付けており顔の輪郭くらいしかわからないが、その端から鮮やかな金色の髪が見える。2人はすぐにマールのそばへやってくると素直に頭をさげた。
「紹介するね、褐色の方がゼオラで、修道女っぽいのがハイデね」
マールに紹介されたゼオラとハイデは今一度会釈してくる。
「で、ベルラートへの帰路の途中でこの村に寄ったらさ、ゴブリンの襲撃で困っているらしいから助けていたの」
「たく、金にならねえのにようやるわ」
「お金にガメツイとシワが増えるよ?」
ゼオラは悪態をつくマールの首を絞め、そのとなりではハイデが祈りを捧げる。
「マールさんの善行はきっと我らの神にもとどいておりますよ」
後光ににた輝きのある笑顔は男性陣には眩過ぎた、女性に疎いカイトですら、ハイデの神々しさに膝を付きたくなる程だった。そこでゲイルがハッとする。
「では、我々は皆さんの獲物を横取りしてしまったわけですか?」
ゲイルが呟き、ゲイツは顔を真っ青にする、しかし聞いたマールは首を横に振る。
「僕たちは正式な依頼でここにいる訳じゃないから、寧ろ僕たちが君達の仕事を奪っちゃった形になるのかな?」
マールはそう言ってゼオラに目を向けると、ゼオラは腕を組みつつマールを睨んだ。
「だから慈善活動は良くないといつも言ってるんだ、このせいでいろんなパーティと散々揉めてきたのをもう忘れたのか?」
「でも彼らはゴブリンの集団を一掃出来たのだから一応ギルドに報告はできるでしょ?いーじゃん」
マールは幼さの残る顔を膨らませて不服を露にし、そんなマールの言い草に腹を立てたゼオラが掴み掛かり見事なヘッドロックを決める。
「こらこら、お二人、見られていますよ」
このやりとりはいつものことなのか、ハイデが2人を穏やかに諫めた。
「ごめんなさい」
少し不服そうにマールがゼオラに頭を掴まれて下げさせられる。カイトはボルドー兄弟に目を向けるとボルドー兄弟はただ苦笑していた。
「マール殿達が謝る事はないかと…」
「そ、そうだよ!マールさん達はランクも上だし、僕達はしっかりゴブリンを仕留める事が出来たし!」
ランク?聞き慣れない言葉が耳に入った気がする。
「ランクとは?」
カイトは聞き慣れない言葉を反復しつつゲイツに目を向ける。ゲイツはその視線に気づくと、カイトの疑問を教えてくれた。
「僕達冒険者にはランクと呼ばれる位付けがあるんです。僕たち兄弟が最底辺のZランクで、マールさん達は…」
「最前線での功績で二つ上がって今はUランクだよ!」
マールは元気に手を上げながら自己申告した、話を聞けば冒険者達にはその貢献度や実力に応じてAからZまでのランクが存在しており、そのランクに応じて受けられる依頼や報酬が増えていくのだという。
「ひとまず、立ち話もなんですから村で話しませんか?」
ハイデの提案に、マールはそうだね!っと吠えると踵を返しさっさと走って行く。
「おら、あまりはしゃぐと転ぶぞ」
ゼオラがやれやれとマールの後を追いかけた。どこか小型犬と飼い主のような印象をうける。
「どうぞ、こちらへ」
ハイデはゆったりと3人を案内しようとした。
「ちょっと待って下さい」
カイトはゴブリンの亡骸を一まとめにし、獣の肝から作られた油をかけ、火打石を擦って火を焚べた。
ゴブリンの亡骸は直ぐにも燃え上がり、黒い煙を上げつつ肉の焦げる嫌な臭いが周囲に漂いだした。
「死体を焼く必要なんてありますか?」
ゲイルは不思議そうにカイトの行動の動機を尋ねて来たので大袈裟にうなづいた。
「勿論です、この地域にいるゴブリン達へ警告を示す必要はありますから。図鑑の通りならこれでしばらくゴブリン達は村に近付かなくなるようですから」
無論、そんな訳がない。カイトは先ほどの戦闘の中でゴブリン達が仲間を庇い合うような動きややられた仲間を見て動揺するなどの仲間意識をはっきり見ていた。故にこんな事をすれば村に怒り狂ったゴブリン達が押し寄せる可能性も考えていた。
しかしながら、図鑑通りなこともある。ゴブリンの糞尿には毒があるという項目だった。先ほどの解剖で事実である事をカイトは理解したのだ。しかも非常に致死性の高い猛毒である事も記されている。故にゴブリンの亡骸をそのままにしていたら重篤な疫病が蔓延する可能性がある為、高価な油を使ってでも焼く、という考えに至った。
「では参りましょうか」
ある程度燃えたのを見届けたハイデは、ゆったり歩き出した。カイト達はハイデに連れられ村に入ると、村人の営みや村の中には目もくれず、村外れに設けられ廃墟となった教会へと案内される。教会の脇には井戸がありベルラートのように新鮮で綺麗な水場が整備され、手は入っているのか整備された花壇や小さな農園もある。もっとも農園は雑草だらけではあるが…。
教会の中は様々な物が拡げられており生活感が出ていた。マールは中に入るなりその小柄な身体には不釣り合いに長く大きな大剣を雑になげ捨て、床に敷かれたボロ布に身を投げた。
「はしたないぞ、マール」
ゼオラも装具を外して荷物を集積している場所になげ、マールをやんわりと叱りながらその場に座り込むみそのまま中央に積み上げられた薪へ小さな綿を放り、手慣れた手つきで火打石を擦って火を付けた。
「今日は遅いので、ここで一晩を過ごしていって下さい」
ハイデもそこまでいうと自らのスペースへ向かい、ゆったりとしゃがみ込むと頭のベールを取る、薄暗い室内でも良く目立つ金髪が露になった。
「え、あの…!」
カイトは同じスペースで男女が過ごす事に気まずさを覚えるが、マールは寝転がりながら顔をこちらに向けた。
「どしたのカイト?あ、もしかして僕たちを意識していたりする?」
マールの問いにカイトは頷く。
「一応男女ですし、棲み分けは必要かなと…」
カイトがそういうと、後ろではボルドー兄弟が揃って頷いている。2人は着付けに大変な筈の装具を手早く外しており、既に寛ぎモードである。
「べつに僕は気にしないよ!!」
初対面から距離感を気にしていないのは直ぐに理解している。マールは実に穏やかにいいながら再び寝そべった。
「お前はもう少し気にしろ、手を出されたらどうするんだ」
ゼオラは悪態をつきながら焚き火を管理している。
「彼らは手を出したりしないと思いますよ?そうですよね?」
ハイデはそう言いながら目を向けてくる、穏やかで優しげな彼女の視線に何故か背筋が凍る、ゲイツとゲイルは素早く相槌。
「は…はあ…」
カイトは自分を納得させ装具を降ろすと鎖帷子を外してまとめて集積すると、焚き火のそばの瓦礫を払い退けて座り込み、地図を広げた。
「お、そりゃ地図か?」
ゼオラが興味の視線をカイトに向けてくる、ゲイツとゲイルがカイトの隣に雑に座った。
「カイトさんは僕らのリーダーなんですよ、彼の指示のおかげで、ゴブリン達も倒せました」
いつのまにかリーダーになっていた、気弱なゲイツが持ち上げてくれ、ゲイルもうんうんと頷いた。
「そ、そんな事ありませんよ。戦果を上げたのはお二人なのですから」
カイトは照れ臭くなり地図で顔を隠した。ゼオラは眉間に皺を寄せてカイトを凝視してから不思議そうな顔をする。
「冒険者でもないのにおかしなやつだな」
何故、ゼオラはカイトが冒険者じゃないとわかったのだろうか?カイトがそう思っていると、ゼオラは卑しい顔で側に来て座る。
「なら、私の持っている地理情報欲しいか?」
ゼオラは青少年を挑発するように色っぽく迫ってきていたが、カイトはまたとない情報に食いつき素早く顔を上げた。
「是非!!」
ち、つまんね。とゼオラは不服そうな顔をした、カイトは理解できずに首を傾げていると、床に広げられた地図の横に自分の地図も広げると、それに描かれた標をカイトの地図に書き足し始める。
「ゼオラは故郷がこの周辺だから、近隣に詳しいんだよ」
凄いだろっとマールはまるで自分の事のように得意げに言う。
「ま、私の育った村はとうの昔に滅んで、今は亜人共の勢力圏だがね、あとお前の手柄じゃない」
ゼオラはそう苦笑しながら全てを書き足し終えたのか自分の地図を畳み、しまう。
「ゴブリンの…巣?」
ゼオラに書き足された地図、深い森の中に聳える大きな岩山の膨らみをまるで囲ってあるその文字を見たカイトは真っ先に目についた情報を口に出した。
「ん?ああ、予想だが、今この村に出没するゴブリンの集団はここの巣からきている。」
「僕達の目標はそのゴブリン達の巣を潰す事だからねー」
マールは寝転がりながら口を挟む。ゼオラは腕を組み頷く。
「あくまでもこの位置はわたしの予想だがな、この村にゴブリンが現れだしたのがここ最近であること、そしてゴブリン共は岩山に大きな穴を掘って巣を作る習性がある、そしてゴブリンは体格的にも長い距離を進む体力はないんだ」
カイトは直ぐに図鑑を開き、ゼオラからの習性や細かな情報を追記していく。
「つまり、この岩山の場所に巣を作っていて、そこから来ている可能性が高い…と?」
カイトの問いにゼオラは深く頷いた、すると今まで聞くに徹していたゲイツが息を呑んだ。
「そ、そんな。じゃあ、あの集団は根本的な解決にならないって事?」
「森中ゴブリンだらけでな、巣の位置を目視で確認出来てない。だが、まあ…そうだろうな。」
ゼオラの言葉にゲイツは絶望顔をしており、ゲイルも同じように渋い顔をしている。
「ここのゴブリン達が来たばかりだという根拠は他にもありますか?」
カイトの疑問にはハイデが答える。
「村を襲撃するゴブリンの先遣隊が少ないからですね、もしもゴブリンが完全に定着しており、充分な孕み袋を所有しているのなら、村に来るゴブリンの集団があの程度の規模はあり得ません」
「孕み袋とは?」
聞き慣れないハイデの言葉にカイトは疑問を投げた、その疑問にはマールがニイといやらしく笑わせながら答えた。
「ゴブリン達はメスがいないんだっ、だから人型の女性を捕まえてきて孕ませる必要があるわけ、それが孕み袋だよ」
カイトは想像して吐き気を覚え口を塞ぐ、それを見たマールは満足そうに続ける。
「今は孕み袋がないか、少ないのかもね、だから散発的に村に少数の先遣隊を送って孕み袋を探しているんじゃないかな?」
先ほど殲滅した集団がそんな目的だったと知り、カイトは渋い顔をする。
「マール殿達はいつからこの村に?」
ゲイルの言葉にマールはゆっくり3本指を立てた。
「一昨日かな?毎日朝と昼に2回、一日で大体100匹くらい来てたっけ?」
「50弱だ、数くらい数えろバカ」
ゼオラに厳しい言葉で釘をさされ、マールはうへへと笑っている。
「ひ…被害は?」
ゲイツの言葉にはハイデがゆったりとした口調で答える。
「幸い、女性の行方不明者はまだでていないようですね、男性の村人と家畜がいくらか犠牲にはなったようですが」
ハイデは祈りを捧げるように手を合わせて握りながら続ける。
「ゴブリンは1人の孕み袋から一日で数十も増えると聞きます、私達が早期にここへ辿り着いたのは運が良かったですね」
そこで、ゲイルが冷静に疑問を投げかけた。
「マール殿の武勇はベルラートでも有名です、皆さんならゴブリン程度の下級亜人なら1日の内に殲滅出来たはずでは?」
すると3人は顔を見合わせる。
「敵の状況もわからないうちから敵地の奥深くへ踏み込むのは愚策も愚策ですよ、ゲイルさん」
カイトは図鑑に何かを書き続けながら告げた。
「カイトさん?」
「つまり、皆さんは近日中に殲滅戦を行うって事ですよね!」
カイトは目をキラキラさせながら顔をあげたので、そんなカイトに三人の女子達は面くらう。
「う…うん??まあ、明日?位にやるつもりだったけど…」
マールからそんな声が出た。
「その殲滅戦!!是非私も連れて行って下さい!!」
カイトの身勝手な提案にその場の全員が口を開けて呆然とし、しばらくの静寂があたりを支配する、静寂を破ったのはゲイルの咳払いだった。
「あの…カイトさん?我々の依頼はもう終わっておりますこれ以上身を危険に晒す必要は…」
ゲイルはやんわりとカイトを止めようとするが、カイトは好奇な視線を2人に向けてきた、その目の輝きには2人は出かけた言葉を飲み込み、黙るしかなかった。そんな男性陣の反応を見てゼオラも不思議そうにカイトを見つめていたが、すぐにマールへ指示を仰ぐように顔を向けた。
「ん??僕はいいよ?」
マールはいつもこうだ、わざわざ大袈裟に手で丸を作るジェスチャーをしてくる。
「マールがいいなら構いませんよ、数は力ですし」
ハイデはマールが賛成する事をめったに否定しない、内心反対だったがゼオラだが、大きなため息を吐きながら指で丸を作って見せた、そんな女性陣の反応にゲイツとゲイルはグッと拳を握る。
「カイトさんが行くのなら、わたしたちに拒否権はありませんな!」
「兄さん程役には立ちませんが…がんばります!」
「いよし!!決まった!!よろし…くあー…」
元気印の極みだったマールはそこまで言いかけては大欠伸をして瞼を擦る、どうやら電池切れらしい。
「全く…おら、明日行くゴブリンの情報をわたしてやるよ」
ゼオラはやけになり、カイトにゴブリンの情報や村から観た森の状態など詳しい情報を教え作戦を詰め始める、それから長い時間、ゼオラとカイトの声と焚き火の音だけが響いた。
「ほらマール、眠る前に身体の手入れと食事を済ませなければ」
静寂の中、今にも眠りそうだったマールの肩をハイデが揺すって起こす。
「うう、わかった…」
マールは気だるそうに立ち上がるとぐーっと背伸びした。そして床に転がった自身の大剣を軽々と拾い上げると教会の奥へ向かう。カイトはそこで初めてそれの存在に気づいた。教会の奥には暗闇で見えなかったが巨大な猪型の何かが吊るされていたのだ。毛皮は綺麗に剥かれ、首を深く斬りつけられており、そこから流れ落ちる血が下たり血溜まりを作っている。腑は既に抜かれている。おそらく一昨日からあるのだろう、所々肉が削ぎ落とされて食べたようなあとがある。にも関わらず、肉は腐敗も虫が付いている気配もない。本来なら鼻をつく程の死臭があるはずだが、今の今までそれを感じない程度のものだった。
「イノブタ君はめちゃくちゃ強いくせして腐ったり虫がつかないほど不味いんだー!」
不味すぎて腐りも虫すら寄りつかない、そんな非科学的で都合の良い獣が存在するのだろうか?カイトは愕然としながら観ていると、マールはそんな風に歌いながらも雑に大きな前脚を剣で骨ごとそぎ落とし、バカデカい肉の塊を二個、三個と手に抱えると。焚き火のそばへ戻って来て焚き火へポイポイと雑に投げてくる。だがゼオラが焚き火に落ちる前に素早くキャッチし、ハイデがどこからか大きな鉄板を焚き火の上に被せると、ゼオラは腰に下げたナイフを抜き、肉の塊を丁寧に切り分けて鉄板に並べていく。
「僕は丸焼きがよかったです」
「嫌なら食うな」
ゼオラは実に慣れた口調でマールの提案を却下しつつ切り分けた肉に塩を振る。イノブタなる摩訶不思議な巨大生物の肉は、焼いているというのに脂の焼けるいい香は一切ない、驚くほど無臭なのだ。
「あの…これを」
カイトは携行してきた食糧袋から野菜を取り出すとゼオラに差し出す。
「お!野菜じゃん、これはありがたい!」
ゼオラはカイトから野菜を受け取ると手慣れた手付きで刻み、焼けた肉から出た溶けた脂の上に野菜をばら撒いた。
「俺たちの野菜も使ってくれ」
ゲイツたちも袋から野菜を差し出そうとするが、ゼオラは止める。
「今日はこれだけでいい、ゴブリンの巣は殲滅に何日かかるかわからんからな、この村で食糧の確保は期待できない、新鮮な野菜は貴重だ」
村人からの食糧の支給は期待できないのはわかっている、カイトは昨日ギルドでのダットの話を思い出した。この世界における一般の人々と冒険者達の間には分厚い隔たりがるようだ。そんな事を考えているとマールが自慢げな顔をした。
「…ちなみに、僕は野菜が嫌いです」
「壊血症になったら容赦なく捨ててくから好きにしろ」
この異世界にもそういった病気もあるのか。カイトはマールの事は思考の傍に起き、そう考えていると。何処から取り出したのか木のお盆に山盛りの肉と野菜の炒めものが盛られた。流石に焚き火の火では弱すぎたからか、半生である。
「い、いただきます…」
カイトはそう言ってサイコロ状のイノブタなる謎生物の肉を口に運。硬い、繊維の一本一本が針金を思わせる程硬く、弾力のある肉質はゴムを噛んでいるかのようだった。ただ、塩だけの味にしては決して悪くなく、食べられなくはなかった。
「明日以降はスープにして下さいな…」
流石に硬すぎたのか、ハイデが口を抑えながら提案する。
「う…わるかったな!だいたい、マールがイノブタなんかとってくるのが悪いんだろ!」
ゼオラはそう叫んでマールを見る、マールはフォークもナイフも使えない様子で、ゴムのように硬い肉を素手でぶちぶちと千切ながら問題なく食っている。
「いいじゃん、腐らないし、虫もつかないし、ちゃんと食べれるんだから。味なんて二の次、お腹に入ればなんでもいいんだから!」
「ほう、そうか、味は二の次なんだな?よくわかった」
次の瞬間には丁寧に避けられた野菜の山をゼオラの手によって無理やり口に詰め込まれた。
「ははは、我々にはコレぐらいの硬さがちょうどいいですな。」
「だね!兄さん」
ボルドー兄弟は硬くて不味い肉も気にせずもりもり食べている、意地を張っている訳ではなく普通に食べられているようだ。どことなくテンションが高く盛り上がっている。
一通りの食事を終え、井戸からついできた桶の水で食器や鉄板を洗う。その後にカイトは日課の冷水で体を清めるべく井戸から水を汲んでくると、マールも一緒になって脱ごうとし、ゼオラとハイデに抱えられて連れていかれた。女性は女性、男性は男性で別れ身体を拭く。夜も更け、いざ寝るべくカイトたちは街で購入した1人用のテントを廃墟の中に設営してゆく。
「なにそれー!」
マールが興味を示し、キラキラとした瞳でテントを見てくる。テントは人数分しかない、女性陣の羨ましそうな視線にカイトは勝てなかった。
「えと…使います?」
「いいの!?」
マールは大喜びを身体であらわして感謝した。するとゲイツとゲイルもテントを譲ろうとする。
「では、我々のテントも…」
「いや、ゲイルさんとゲイツさんはちゃんと使ってください」
カイトは2テントを差し出そうとするボルドー兄弟をキッパリと止める、すると弟のゲイツがカイトに心配そうな表情を向ける。
「お二人はこの中で唯一の重装兵です、野営では疲労を残さないようにしなければなりません、それは最優先事項です」
「カイトさん…わかりました」
カイトの言葉に2人は渋々と従い、女性陣にも目を向ける。
「本来は1人用のテントですが、皆さんの体型なら詰めれば少し窮屈ですが3人で使えるとおもいます、床で雑魚寝するよりはずっとましです、どうぞ使ってください。」
カイトは饒舌に言うと、亜人の図鑑と地図を片手に焚き火のそばに座った。
「お前はどうするんだ?」
気を使いゼオラが聞いてきた、マールも少し気不味そうにしている、ただカイトは気にしてはいない。
「明日の殲滅作戦で一番役に立たないのはおそらく僕ですから、明日戦う戦士達に疲労を残さないのも作戦のうちですよ」
「皆さん、カイト殿は一度言いだしたら聞きませんよ?諦めて使った方がよいです」
「では、ありがたく使わせていただきますね」
女性陣たちは口々にカイトに礼を言うとテントに入っていった、彼女達は3人とも小柄な方だったため、カイトのテントには丁度よく収まっている。数秒もせず、マールの煩いイビキが聞こえてきた。カイトはそんなイビキに吹き出しそうになりながら図鑑に目を落とす。
「かっこいいところあるじゃん?」
深夜、生前の世界ではありえないほど静かな夜に、ゼオラがテントから出てきてカイトに寄り添うように隣に座った。
「?、良く分かりませんが、明日を考えてこそですから」
カイトは実際無理をしている、ゼオラはそれをしっかりと焚き火のわずかな灯りの中で確認した。
「そっか…」
そうしているとゼオラは立ち上がり、乱雑に広がった自分達の荷物から革の袋を引き寄せ、中から銀色のカップを2つと小さなヤカンを取り出した。
「そんなカイトには特別な茶をいれてやろう、2人には内緒だぞ?うるさいからな」
そう言って立ち上がり、外の井戸から水をヤカンに汲んできて焚き火の上に吊るし炙りはじめた。そして小さな包みから取り出した茶葉の袋を銀のカップへ少量ずつ中へと放り込み待つこと数十分、焚き火の火でゆったり沸いたお湯をカップに注ぐ。途端に甘い茶葉のいい匂いが漂いはじめる。
「ほら、出来たぞ」
金属のカップをカイトに手渡した、特段寒くは無いが夜の暖かい飲み物は気分が落ち着くものだ。
「ありがとうございます」
カイトはお礼をいいつつカップの茶を口に運ぶ、ほのかな甘味が口に広がり苦味を警戒していたカイトには驚く程いい味の茶だった。
「美味しいです」
カイトの素直な感想にゼオラはニシシと独特な笑いを見せた。しかし、一口飲み込み香りを嗅ぐたびに瞼がズシンと重たくなり、そのままカイトの意識が暗転した。
「ニシシ、一つ、良いことを教えてやろう。知り合って間もない冒険者が出すものは信用しないことだよ坊や、特に飲み物はね」
微睡の中でそんなゼオラの声が響いた、カイトは盛大にカップをひっくり返して崩れ。ゼオラはカイトの就寝を確認してから立ち上がり、カイトの小さく軽い体を片手一本で持ち上げると、同じくらい小さなマールに向かって放り投げる。
「グエッ」
眠ったカイトに潰され、マールから潰れたカエルのような声が響く、しかしマールは起きる事なく自分の上に落ちてきたカイトにマールの細い手脚が巻きつけていく。
「ニシシ、あたし以外は熟睡しちまう特性毒茶だ。バテてる癖にあたしらの前で格好をつけた罪で断罪、熟睡の刑だ、ニシシ」
ゼオラは自分のカップの茶を飲み干すと、盛大にぶちまけた茶をマールが敷いていた布で丁寧に拭き取る、そこでカイトが後生大事に抱えていた亜人の図鑑が目についた。図鑑には黒炭がびっしりと付いており、抱えたまま寝たのかよだれの跡などがきっちり付いてする。ゼオラは静かに吹き出しながらページを開いた。
「ん?」
開かれたゴブリンのページには、炭でびっしりと何かが書かれている、その図鑑とは思えない文章量にゼオラは驚く。それは全て、ゴブリンの詳細な生態情報だった。図鑑に元から書かれている習性などに線を引き、訂正もなされている。
ゴブリン
小さく力が弱い、訂正 小さく力が弱いわけではなく集団で大きな獲物を仕留める程度の力を持ち合わせている。
知性低い、訂正 非常に高い知性を持っており、集団戦に長け自らが得意な地形に誘い込むなどの戦術を得意としている、非常に狡猾である油断禁物。
仲間意識がない、訂正 仲間意識は強く武器を持つ仲間が倒れると怒りを露にする傾向がある。
武器は骨や石など非常に粗悪、訂正 骨や石を投擲用に鋭く鋭利に加工されているため手先が器用な個体が存在する可能性がある。追伸 武器には糞尿から作られた猛毒が塗られており自分達より大きな対象をする程に強力である可能性がある。
「…」
執拗で細かい考察、ゼオラは雑魚であるゴブリン相手にそこまで警戒した事はなかったが、こうして見ると警戒するに越した事はないだろう。
ゼオラは図鑑をそっと閉じるとテントの方を見た、そこでは小さな少年と少女が眠る一見微笑ましくも見える図が広がっている。ただ、実際はゴムの様な肉を素手で千切るほどの怪力を持ったマールの手脚に巻きつかれ、寝ながら苦悶の表情を浮かべているカイトがいる。
「ふーむ…一応、報告しておくかなぁ…」
ゼオラはそう意味深に呟き、硬い地面に横になると目を閉じた。
次回更新は遅め、極力早くしあげようと思います。
文章の不備や表現のミスがありましたら教えていただけると助かります。