第9話 試練
※CAUTION※
今日と明日はヒロインが汚される描写があります。
寝取られ描写に対する耐性が弱い方は
11話へ跳んでください。
巨匠は相変わらず上機嫌だった。
「前は脱がさない約束を守ったろ? 今日は、まず全部脱いでくれ。楽しみにしていたよ」
庭に咲いた花を見せてくれといった感じの口調。まるで、それが当然であるかのような雰囲気でいることに唖然とする。
覚悟はしてきたつもりだ。しかし、心に何もないわけではない。
その上、わかっていたとは言え、ここは病室なのだ。
『こんなに明るいし、病室で、こんなことをしちゃうなんて』
いざとなると「明るい病室で」ということに、異常なまでの背徳感が涌き起こる。
つかの間、ためらった。
「さっさとしろ!」
途端に尖った声が飛んできた。
「急げよ。こっちはずっと待ってたんだ。焦らされても、ぜんぜん楽しくないぞ、早く脱げよ、グズ!」
さっきまで上機嫌だったはずが、いきなりの罵声だ。決して焦らすつもりではない。しかし、巨匠からすれば、そんな風に見えるのかもしれない。
さっきまで、何度も強く叱られ続けて、そのたびに自分の至らなさを教え込まれているせいだろうか。
記憶が静香の心を縛っている。
「すみません!」
謝ったときには、黒いカーディガンのボタンを外していた。
「脱いだ服は、この椅子の上にでも置いておけ」
ベッドのすぐ脇にある小さな椅子をあごで示してきた。
脱いでから、一々置きに行くのは不自然。つまりは脱ぐ場所を指定されたに等しい。
手を伸ばせば届く距離で脱げということだ。
そんな行為は女としての本能レベルで拒絶したいこと。だが、巨匠の不機嫌そうな顔を見れば、一秒たりともためらってる猶予がないのは明白だ。
奥歯をグッと噛みしめて『覚悟して来たはずよ! 何を今さら!』と自分を叱り飛ばしてカーディガンをそっと脱ぐ。
イスに置く動作の続きで黒いロングのアシメ巻きスカートの止めボタンを外した。
ファサリと小さな音を立てて床に落ちたスカートから一歩出る。同時に、シンプルな冬用の白いシャツブラウスのボタンを外していく。
袖の止めボタンまで一気だった。
はだけたシャツからブラが覗いている。
意志の力で、前を押さえるのを堪えた。
『ここで隠しても仕方ないもの』
諦めてしまった方が楽になれる。
抵抗することを考えてしまった瞬間、すべてが終わるという声が頭に響いていたのだ。
心を殺して自動人形になるのだ。
どこかで止まれば、きっと動けなくなってしまうだろう。
脱いだシャツブラウスと拾い上げたスカートを椅子の上に軽く畳んで置いた。
薄いピンクの上下セット。
昨日、学校の帰りに買ってきたものだ。ギリギリまで迷ったけれども、祐太に見せている下着を見られるのは、どうしてもイヤだった。自分の部屋にしか置かないつもりだ。
大人っぽくもあり、そこまで大人びてもいない、フルサポートのシンプルなブラ。
ためらいを押さえ込むためにも手を動かし続けるしかない。
ジッと注がれる視線を無視して、後ろに回した手はホックを外した。それでも肩紐を落とす瞬間に後ろを向いたのは無意識の動きだ。
「ダメだ。どっちを向いてる!」
「すみません」
ブラから現れた胸を隠す気力を、その叱責が奪ったのは事実だ。
そのままショーツを脱ぎ降ろした。
しっかり洗ってきたはずだった。けれども、ホンの微かだけれども数時間の間に生じてしまった「オンナ」のニオイを自覚してしまうのが辛かった。
前を見られない。顔を背けている間も、無遠慮な視線によって、すみずみまで犯されているのを実感してしまう。
「ほぉ~ 思った通りスタイルも良い。大きさもカタチも満点だな。ヨーロッパの連中はデカい女も多いが、このハリとカタチ、それに肌の質感がどうしても日本人とは違う。その点で、君のオッパイは最高だね」
褒められているはずなのに、少しも嬉しくない。むしろ、恥辱ばかりが刺激されてしまう。
「よし。じゃ、コイツを頼む」
「はい」
身体が重い。
のろのろとしか動かぬ身体を懸命に動かした。溶けた鉛の中を動いているみたいだ。
視線の命令にしたがって、裸のまま、軽い上掛けをそっと引き剥がす。
胸の揺れにジッと視線が注がれるのに耐える。
『あっ!』
病衣を着けていたのは上半身だけだったとは!
それが何と呼ばれるものなのかは知らないが、パンツに当たる場所が、不織布のようなもので覆われているだけだった。
「マジックテープになってるんだ。外してくれ」
一種のオムツのようなものらしい。しかし、外した途端に、黒い怪物がクワッと鎌首を持ち上げた。
「ひっ!」
とっさに「ギプスに触らないように」と思うだけで精一杯だ。
見たことがあるとは言え、いきなりニョキッと顔を出せば、そこにあるのは怖さと嫌悪だ。
男のニオイを強烈に放っていた。
「ほら、目一杯だろ? コイツをなんとかするのが、君の役目だよ」
巨匠の声は期待に満ちて、上機嫌。
そこだけが隆とした勢いで不気味な生命力を見せつけているようだ。
巨匠は静香の目にさらすのが嬉しいらしい。
「ほら、ビックリするのはわかるけど、彼氏のはいっつも見てるんだろ? どうだい?」
言葉の裏側にあるのは、男特有の「どっちがデカい」という意味だ。巨匠は自信があるのだろう。
『やっぱり、大っきい?』
恋人と比較しちゃだめ、と辛うじて意志の力を振るった。
祐太のものは最初こそ恥ずかしくて見られなかったが、今では、すっかり愛おしくなっている。
あれとは、全くの別のものだった。
自分を取って喰う怪物に見えた。
「あの、どうしたら……」
「君は男を知ってるんだろ?」
今さら嘘を吐いても仕方ない。
コクンと頷いた。
「じゃあ、さ、ホントはサッサとこいつを味わってもらうのが一番なんだけどね、実は、まだ禁止されてるんだ」
「え?」
「前にノエルに乗ってもらったらさ~ やっぱり体重がかかっちゃったんだろうな。いやぁ、あれは痛かったなぁ」
ということは、どうやらあれはしなくて良いの?
ホッとはしたが、もちろん「脱ぐだけで終わり」になるはずがない。
「とりあえず、ちょっと、こっちにね」
静香は自ら動いて乳房を与えなければならないのだと理解した。
タプタプと感触を楽しませ、先端の蕾をちょうど良い位置に差し出す。
怪我に触れないようにするため窮屈な体勢だ。
それ以上に苦しんだのは、思ってもみない快感が身体を貫いたこと。
予想しておくべきだった。
服の上からですら自分はああなってしまったのだから。
もう遅い。
直接的な愛撫が差し出された先端へと執拗に加えられる。少しでも逃げようとすれば、瞬時に叱られてしまう。
望まれた通りに差し出すしかなかった。
ほんの数分と経たず、静香はソプラノの激しい声を上げてしまうことになった。
ガクンと突っ伏した静香に、巨匠は上機嫌で言った。
「まあ、入れるのはしばらく先でもいいや。手のギプスも年明けには外れるから。その頃かなぁ。それまでは、別のやり方で楽しんでもらうから」
巨匠は、なんでもないことのように「さ、ボクの上に乗って。あ、足下がこっち。逆さまだね。ボクのテクを味わえば、きっと次回が楽しみになるからね!」
部屋には煌々と灯りがついている。
こんな明るい場所で、そんな格好を?
しかし、心を折られてしまった静香に、もはや拒否などできるはずがない。
静香は黙って背中を向けると、ギプスに触れぬようにとだけ考えながら、そっとベッドに乗ったのだ。
そこから二時間。
静香は、数え切れぬほど、ソプラノの声を響かせてしまった。