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第6話 魔道士英太

 真守は、コトネと共にいつもの会議室にいた。

 コトネは真守にぴったりと張り付いていて、教官は目を細めながらも何も言わなかった。


「今度の魔女捕獲には君島と行ってもらう」

「君島英太ですか」


 君島英太は、真守と同じ年である魔道士のルームメイトだ。感情が乏しいか、マイナスの方向に性格が歪む魔道士が多い中でも英太は明るい性格だった。厳しい訓練の中でも人を思いやる少年だった。しかし、その性格は魔道士として優秀ではないという評価であったが。

 英太も魔女の管理を任されているのだろうから今度は魔女と魔道士の合わせて4人パーティでの捕獲となるだろう。


「失礼します!」


 会議室に入ってきた少年は、君島英太だった。


「英太」

「まもちゃん、元気そうで良かった」


 真守を見て、英太は笑いながら手を振った。コトネは怪訝そうに英太をみていたが、その背後を見て目を見開いた。

 英太の傍らに居る少女は紛れもなく魔女キハナだった。


「「あ」」


 英太以外の三人が声を揃えると、アオナが英太の後ろに隠れて真守に向かって指さした。


「わたし、この人キライ!」

「本当に子供みたいなことしか言えないのね」


 コトネが敵意をむき出しにしてアオナを睨むと、アオナは英太に引っ付いて、英太はアオナを撫でて宥めていた。 


「指令は送っておいた。確認しておけ」


 教官は、そういう状況になることはわかっていたのかいつもと変わらない口調で言い、会議室を出て行った。


「まもちゃん、アオナちゃんとは知り合い?」

「知り合いというより、前俺たちが捕獲した魔女だよ」

「そっかぁ。どうりで…」

「アオナ、いぢわるされたんだよ!」

「そっかぁ、アオナちゃん、嫌かもしんないけど頼むな?帰ったらアイスでも食べよう」

「やったー!」


 英太はそう言うとアオナが飛び跳ねて喜んでいた。英太はアオナに気に入られているようで、兄妹のように見えるほど仲睦まじかった。

 コトネは肩をすくめる。


「そして真守、指令って?」

「ええっと、どうやら魔女は姉妹で…ああ、場所が女子高校周辺だから4人チームなのか」


 二人相手に一人で相手をするのは荷が重いのと、女子寮には、男である魔道士が入れないので管理役の魔道士が近くに寄れないから魔女同士の監視もあって4人でチームを組むことになったのだろう。


「高校の休みが明日らしいから、明日決行だ。明日に高校の校門前待ち合わせでいいかな」

「オッケー、まもちゃん」


 予定をすり合わせ、明日に捕獲作戦を行うこととした。


「まもちゃんの顔、久々に見れて嬉しいよ。明日はよろしくな」


 英太はにっと歯を覗かせた。

 英太と出会ったのは、真守が機関に連れてこられて部屋に案内された日だった。真守より先に機関に発見され、機関の用意した部屋で暮らしていたのが英太だった。


『村上真守、よろしく』

『俺は君島英太。英太でいいよ、よろしくまもちゃん』


 訓練は武道から勉学、一般教養、魔法、魔女と魔界の知識と多岐に渡った。成績の悪い魔道士や教官に逆らう魔道士はキツい折檻を受ける厳しさだった。

 魔道士が心を読めるという性質上全員の飲み込みは早かったが、訓練は睡眠時間もほとんどないほど入れられる。

 真守は魔道士のなかで飛び抜けて成績が高く、精神感応についても真守は魔道士の心すら読み取れるようになっていた。一方で、英太は不器用らしかったがこの状況にあっても笑顔を絶やさなかった。

 ある日、誤って教官の心を読んだことがバレてしまったとき、真守は教官室に閉じ込められて意識を失うほどの暴力を受けたことがあった。

 気を失ったあと、気が付けば真守は部屋に居て傍らには英太が心配そうに真守を覗き込んでいた。


『まもちゃん…大丈夫か』

『英太…?俺、』


 殴られていた時は痛んだ肋骨が息を吸っても痛くなく、腕や足を見ても痣はなかった。


『まもちゃん、ここはどんなに怪我をしても何かしらの手段で治すんだ。何度も痛い思いをすることが訓練、らしい』

『そんな、』

『18歳になれば訓練は終わる。それまでは我慢するしかない』


 英太の言っていたとおり、魔女の攻撃に耐えうる為としての訓練が始まった。

 拷問と言い表せられないほどの苦痛が魔道士達に与えられ、悲鳴を出すことも、弱音を吐くことも許されなかった。死ぬ寸前の拷問でも、体の怪我はすぐさま治され、拷問は何度も再開する。英太は真守よりも訓練を辛そうにしていたが、真守よりもずっと明るかった。


『まもちゃん。苦しいかもしれないけど慣れれば大丈夫になるはず。大丈夫』

『英太、ありがとう、大丈夫、きっと』


 真守と英太は自然と同じ障害を越える魔道士として中を深めていた。

 訓練も終盤に近づき、魔道士試験を何度もパスし、訓練内容は体力、心理学と広範囲に及ぶ。

 訓練も大まか修了に近づいてきたある日、真守達は18歳となる年には機関を出て、個々の部屋が与えられるために部屋を出ることとなっていた。

 私生活の全ては、魔女を管理するために捧げなければならない。

 管理する魔女によっては、魔道士は命を失うことも、廃人になることもある。

 英太とは、これが本当の別れになるかもしれなかった。


『英太、俺の担当が決まったらしい』


 真守の魔女が終焉の魔女コトネが決定した時だった。

 数多くの魔道士がコトネによって犠牲となっており、現在機関で最も力の強い魔道士である真守が選ばれたのだった。


『おめでとうすごいなあ、まもちゃんは』

『そんなこと、ないさ』


 たまたまだ。苦しい訓練を受けているのは魔道士みな同じなのだから。


『俺はまもちゃんとまた会えるって信じてるよ』

『英太も、元気で』


 英太は悲しまなかった。

 また会えるという言葉が、真守にとって大きな言葉になった。

 真守と英太は魔道士試験に合格し、教官の指示に従って管理を命令された魔女の元へ向かった。

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