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リオン -剣術使い-  作者: 笹沢 莉瑠
第六章 『葬式の儀』に哀愁を
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【第6章11】隊長と先生 4

 「遅いなあ・・・」

呟くジュディアは剣を杖代わりに、地面に突き刺してもたれている。

「ジュディア、今回は『剣術の習い』生徒で成り立つ精鋭部隊じゃない。時間が掛かってもしかたがない」

「でもさあー、前の盗賊の生け捕りは、この戦法で直ぐに終わっちゃったじゃん」

「それはジュディアが、先に潰してたからだろ。それに、ここは町だから魔剣とかは使えない」

ドラントは冷静にジュディアの相手をする。ジュディアはぷくぅっと頬を膨らませた


ドラントには肉眼で見えないほど離れていたが、喧騒の音が聞こえていた。

(あいつらは、着実に倒しているようだ・・・。だが、この子はどうするか)

ジュディアはごくごくたまに、イラついていたりムカついていると、誰が相手だろうと怪力で押し倒し剣でざっくんざっくんと、切り刻んでしまう。


今回が野獣モンスター狩りならよかったものの、町に居座る傭兵を首尾よく立ち退かせるか、町のほうに被害が出ない程度に殲滅するかだ。

場所的には町のはずれとあって人気ひとけが少ないが、一応ここも町の区内。ジュディアが暴走して、残酷グロテクスなものを残していってはまずい。


対処法を考えるうち喧騒が収まり、段々と大きくなる走ってくる足音。

「ジュディア、もう直ぐ来るぞ」

「これくらいなら私にだって聞こえるよー。地面にすごく響いてるからね」

目を爛々と輝かせるジュディアをみると、ドラントはため息をつきたくなる。


「やりすぎは禁物だ。ジュディア?」

「もっちろん。わかってるよ」

(一番わかってなさそうだけどな)

とドラントは心の中で言うしかないのだった。


                          *


 心地のよい風がふわっと顔に吹き付ける。それと一緒に何かくすぐったい物が顔にへばりついた。

ニィラはその何かを確かめた。それを握ると同時にブチッとちぎれる音がした。

「あれ? ただの芝だったの」

声に出してみると、声が少しおかしいような気がした。


「ニィラ、起きたのか」

覗き込む男の顔を見てニィラは顔を笑顔を見せた。

「おじさん!」

グレイはニィラの笑顔を見るたび、なぜか胸がうずいた。


(わしの消えた記憶――――か? ・・・だが消えたものに興味はない)


もう完全に空は夜の装いだ。だが吹く風はそれほど冷たくはない。気持ちよく感じるほどだ。

星や月が手に触れそうなほど、空が近いような気がする。だけどそれらが放つ温かな光は、とてもはかないようで手が触れただけで消え入りそうだった。


「ニィラ、今夜は野宿になる。移動するぞ」

グレイが荷物などをもって立ち上がると、慌ててニィラがグレイから荷物をもぎ取った。

「あたしが持つ! おじさんは怪我してるんだから」

「病み上がりが何をいう。足元がぐらついておるぞ」


「む! おじさん何処で、のじゅくとかやるのか決まってるの?!」

「お主を放って、探しに行けるのか。というより、行ってよかったのか?」

「おじさんのイジワルー!」

「意地悪などしておらん」


                        *


 俺達がゆっくりと歩いていくと、二人もかすり傷ひとつなしで無事だった。

「あっ! ヒアだー」

ジュディーが倒れている男共を飛び越えて俺に飛びついてきた。跳躍力すげえな、もうすぐ十三歳のくせに。

「誰も死んでないか?」

「飛び道具が跳ね返って傷ついてる奴もいるけど、自業自得だよ。とりあえず残っていたのは引っ張ってきたよ」

後ろに連れてきた男たちを、モデランは見せながら言った。その男らを引っ張ってきたのは俺なんだけど。


「で、頭は誰だ?」

「あそこにいる、ひげもじゃ。ていうか、そいつに何か用でもあんの?」

「なぜここへ来、正式な契約を交わさなかったのか、問いただす。俺達の依頼は町を元のようにすること、つまりギルドを潰すだけでは終わらない。今後役に立つだろうから、覚えとけ」

いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやっ!


さっきモデランも同じようなことを言ってましたけど、今後一切あんたらと付き合う気はないんですけど!!!

なぜ俺は敬語? ああ、もう普通の生活に戻りたい!!

・・・・・・そういえば、ジョウは大丈夫か? 今更ながらに思い出す俺って、すげえ薄情だな。

快復してくれるといいんだけど。


まあ、今どうこういったってジョウがよくなるわけじゃないしな。


うるうると瞳を潤ませて、ジュディーが俺の顔を見上げながら言う。手は離してくれなかったけど。

「ねえ、ヒア。さっき凄い傷つくことを考えてなかった? 私、ヒアにもう会えないなんてイヤだからね?」

ぎくっ! ジュディーは十三歳未満にして、女の武器を手に入れてやがる! これに勝つ方法はほぼない(俺にとっての、だけど)。


「・・・なんで俺、なんだよ?」

俺は、ジュディーに向けて言ったつもりが三人同時にお答えを頂戴した。

「「「鍛えがいがあるから」」」

「鍛えられたくないわあッ!!」



 「あの、問いただすなら早くしてもらえませんかね?」

あんまり聞きなれてないがさつな声がしたので、俺の突っ込みはもろに虚空に消え去った。

えーと、しゃべったのは、あのヒゲボウボウの頭。


「あーそうか、悪いな。私事を交えて忘れていたか」

ドラントが全く反省したようすが感じられない表情で、片手を自分の額に当てた。

問いただしは、ドラントが全面的に担当しているようで。あと、残りの二人は日常茶飯事みたいなかおしていて、何をやるのか想像ができない俺なんだけど。


「じゃーまず、早速聞くけどあんたらは南から来たんだよな?」

「なんで、確認、みたいな聞き方なんだ?」

俺は湧いた疑問を口に出した。俺はほぼ無知だからなー。だって巻き込まれたの今回が初めてだし。


「こいつらが使っていた武器は? だいたいでいい」

「ええーと、まず剣持ってる奴はだいたいサーベルだったな。あと飛び道具は、ブーメランみたいな形の小さい金属っぽいものだったっけ」

俺が思い出しながら言うと、ドラントや頭もウンウンというように頷いている。

てか、なんで頭もちゃっかり頷いてんだよ。


「それらの武器はほとんど、オメガで作られたものだろう。あそこは決闘みたいなカジノもあるし、治安がまず悪いから、特殊な武器が流通している。まあ、あくまで国内での話だが」

「あんたの言うとおりさ。まあ、あそこの女の振りをした奴みたく騙せなかったけどよお」


・・・今更だけど、ほんとにモデランの振りは完璧だったのか?

まあ黙ってりゃ、そう見えるけど声は思いっきり男声だろ。


「じゃあ、なぜここに流れてきた? 南の方が稼ぎがいいだろ」

「・・・事実上潰れたんだよ」

頭は切々に(?)語り出した。ちょっと目に涙を溜まらせながら、鼻水をじゅるじゅると垂らしながら。

いや、やるなよ!!


 彼らは南でギルドで普通に活動をしていたそうだ。

あるとき、近所の大規模ギルドと協定みたいなのを結んだんだが、事実上それは自分らが手下になります的な意味だそうで。

しばらくはそれでもなんとかやっていけたそうだけど、やっぱり反乱的なものは起こるもので。

そうなると、少数の彼らが全滅寸前まで追いやられて(なんか動物みたいなことを言っているなー)必死に此処まで逃げてきたそうで。


そのときに前の頭がやられて、統率力も壊れる寸前だったそうで。

なんとか現頭が纏め上げたんだが、前の状態にするのは難しく。

そこでメンバーの一人が「何処かの町をのっとる事が出来れば、それも早くできるだろう」といったのがわざわいのもとだそうで。

それにのせられて、今回にことを起こしたそうで。



 「あー、結論を言うと彼らはやっぱり人間だった、でいいのか?」

俺がいうことに同意の意味で頷く三人。

三人は(というよりドラントが)、ギルドによる町の独裁を解き、ギルドが今後しばらくの間無償で町に奉仕するということで一件落着したそうで。


え? なんで人から聞いたみたいな文章かって?

まあ、俺も当事者に入るんだろうけど後始末は三人が、俺が寝ている間にやった。


んまあ、そういうことなんだけど。

「何であんたらまだいるの?」

言った途端、すごーーーーーーーーーーーーーーく嫌な予感がした。


「えーだって・・・」

ジュディーが言いよどんだと思った途端

「「「連れて行かなきゃいけないから!!!」」」

三匹の悪魔が耳元で怒鳴りつける。


「あんたらなんかに、連れ去られてたまるかああああッ!!!!!!」



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