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リオン -剣術使い-  作者: 笹沢 莉瑠
第六章 『葬式の儀』に哀愁を
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【第6章9】隊長と先生 2

 えっと・・・はい?

いまいち、状況が空気中に漂ってて分からないんですけど。


え、比喩が分からんって? 気にしな~い。一応コレ一人称だろ?

てか、なに説明してんだか俺。


「なんだその間抜け顔」

グサッ!

KY(空気読めない)奴ってまだいたんだ。時代遅れもいいとこだよ」

グサッ! グサグサッ!

「一応、まだ十代だよね?」

グハッ!

くそぉ・・・。むなくそ悪ぃ。


「つまりは、強制的に・・・・ギルドを潰すのを手伝って貰うということだ」

ドラントが簡潔にまとめてくれた。まあ、ドラントが俺に最初の一撃を食らわせたんだが。

「はぁ、強制的に。ねえ」

「ヒアには拒否権ないからね」


「いや、ただの足を引っ張る役になるんじゃ?」

「目がいいんだ。身体能力だっていいはずさ! たぶんジョウ君が言ってた事は、彼なりに見た君のすごい評価。つまり、心からの賞賛だよ!」

モデランが少年のように目を輝かせて、言ってきた。やっぱりこの人、若い!

それにこんな顔されると、何か言い出せなくなる・・・。



「やったぁー!! ボクの勝ちぃぃい!」

突然、モデランが近所迷惑も程ほどな声を上げた。

「ああー! ちょっとずる~い! モデラン、今の無しだよ!」

一方、ジュディーが悔しそうにした。


「いや近所迷惑だから! あんたら追い出してもいい?」

俺はそれらをさえぎるように、言っていた。

「おーいいぞ。あいつら、腕は確かだけどうるさいから」

ドラントから許可が下りたので、二人を引っ張って扉の向こうに放り投げた。


ポイっ。


と、上手い事、運ぶはずがなく。


二人のじたばた抵抗により、追い出しは中止になった。

さすがというべきなのか、二人は力が強く、俺一人で引っ張り出すのは無理難題だった。



「簡潔に聞くけど、二人は何の賭けをしていたんだ?」

俺がおとなしく(?)椅子に座ってる二人に聞いた。すると、ジュディーがよくぞ聞いてくれましたとばかりに立ち上がった。

「ヒアはぁ、なにかと色々突っ込むでしょ? だから、その突っ込みを言わせなかったら勝ちなの!」

「いや意味わからんし。突っ込み癖はジョウのせいだと思うがな。それで、勝つとどうなるんだ?」

「行動班の構成を考えられるの! う゛~悔しい」


行動班? ・・・・・・つまりは俺がお客人・・・と一緒にギルドを壊滅させるのは、お出かけの前から決まっていたようで。

そうなると、その賭けに要らん入れ知恵をほどこしたのはジョウか。確信犯め・・・


                           *


 俺は何度目か分からないため息をついた。

「壊滅させるっていっても・・・ほかにやりようがあったでしょうがあっ!!!」

「しーっ! 今、夜なんだから静かにしなきゃ」

モデランが口の前に指を一本立てた。

俺とモデランがいるのは例のギルドがねぐらとして使っている所の前。一応は廃墟なんだけど、整備して人が住めるようにすれば、問題なく住める場所だ。



俺達(もう俺が入っているんだが、そこは突っ込まないでくれ)は三人が来た夜、俺の家に泊まった。翌朝、俺が起きると既に三人は起きていて、もうギルドを潰す準備ができたそうだ。

朝飯は? と俺が聞くと、既に食ったとのことだった。俺は急いで朝食を作って平らげ、身支度を整えて準備を終えた。


「それでどうするの?」

俺が完全武装した三人を見比べながら尋ねてみた。

「よそ者の俺達が出て行くわけにはいかないから」

「ヒア君がこの紙をぜ~んぶ町中に貼り付けてきて」

三人とも怖いほど揃った笑顔だった。

「ヒア、よろしくね~」


 なんで俺が。

やっぱり俺、一方的に利用されてねぇ?

俺に渡された紙は尋常じゃない量。それに内容は笑えるほど幼稚な文章。


ょう! げん気かい

おれ達は げん気だぜえ! あんたらがとってもうるさいので

粒しにいくんだにょ~~ 本きょ血でまってろ”


プラスめっちゃ下手糞な絵。たぶん、かいてる奴がギルドをつぶしている絵だ。うん、きっと。

これは神経逆撫でするようなものだ。早く全部貼りきらないと、俺がボコられる!


俺が常に神経を張り詰めながら、貼っていると皆耳が早い。行く先々でみんながひそひそと、このチラシを『ねえ、あれ本気かしら』、『あらやだ! あんな幼稚な文に絵。ただの悪戯でしょ』、『グフフッ、なんだあれ! おもしれえ紙』、『おい、早く笑うのやめろよ。・・・俺までわらけてくるじゃないか』云々、ぬかしていた。


 俺にとって最も危険な地域テリトリーが目の前に来る。それは酒場だ!

酒場は男たちのたむろっている場。いつもなら(ギルドの奴らが来る前は)昼間から開いていないが、最近は昼間でも酒場は開いている。そのぶん、傭兵やら酒好きやらが集まっている。危険度MAXだ!


人目につかないように、目立ちにくそうな所に貼っていく。

目立つ所に貼れ、とはいわれてないもんね~。

「おい兄ちゃん」

ひゅげっ! 誰だ、俺に声をかけてきた奴は。

俺が振り向くと、そこにはもっさい中年がいた。うへっ! 口から酒のにおいがする。

真昼間から飲んでんじゃねえよッ!


「にいちゃん、おめえも飲まへん?」

「酒は嫌いですから!」

俺はその中年を一蹴すると、少し離れた物陰に隠れた。ここにも一枚貼って、と。


「ねえねえ、そこの座ってるおにーさん?」

「えと、俺?」

ふざけたチラシを片手に振り返ると、指の関節をポキポキ言わせているおにぃさん方がいる。

「なぁ~にをやっているのかなあ?」

「いや・・・あの、すいませんッ! すいませんでしたぁぁあっ!!」

俺は無我夢中でチラシをばら撒きながら、逃走した。


いやだって、真正面からいってこてんぱんにされるのがオチじゃね?

俺だって人間だよ? 自己中心的なのが人間ですよねー。



 はあっはあっ、撒けた・・・のか?

俺は自分の家にたどり着いていた。いや~危機一髪だったね。

俺が扉を開いた途端、三人がやらかした状態が目に入る。

「ただいま・・・て、オイッ!」

俺の声に気づいた三人が俺に視線を向ける。妙に揃ってて怖いぞ?


「あ、おかえりー」

「おかえりー、じゃねえよっ!」

「どうしたんだ、落ち着け」

「落ち着いていられるかよーッ! 自分の家が荒らされてんだぞ!?」

俺の家は強盗に入られたとでもいわれてもおかしくないほど、ぐちゃぐちゃだった。


「おまいら、何やってくれとんねん!」

「なぜに訛ってるの? それにボクらは、ここを荒らしてなんかないよ?」

「へい?」

「訓練っていうか、練習してたのー!」

「荒らしたも同然じゃねえかあっ!! なぜ家の中でやる? 器物破損で罰金だぞ?!」


「キブツハソン? 何それ」

「罰金? 俺達、金なんかもってきてないぞ」

「ボク知らな~い」

くっそぉお。あとで百倍返しにしてやる。とりあえずこの状況は置いといて。


 「とりあえず、それは置いておこう・・・。あのふざけた紙は全部貼ってきたぞ?」

俺はため息まじりにいった。と、言ったもののお客人・・・達の反応は薄かった。

「ふ~ん、ご苦労」とかいう、めっちゃタルそうな反応がすげぇバラバラに返ってきた。


すげえ、後悔するんだけど――。俺がやったの本当に価値あったのか? ただ利用されただけじゃね?

その確立が高すぎて怖いんだけど・・・


「あ、じゃあ暇?」

ジュディーが思い出したように声をかけてきた。

思い出したように、って何だよッ!? 俺そんなに影薄いかぁ!???

「・・・イチヨウ暇だけど」

「あっじゃあ、剣出してー」

「ハイィ??」


最近、剣を使ってないので俺の寝室の隅に剣があった。(実をいうと俺はなくし物をしやすい。簡単に探しものが見つかるなんて奇跡だ!)

一番広いリビングで俺達は集まっていた。因みに散らかりようが、一番マシ(?)な部屋でもある。

「剣を鞘から抜いて構えればいいんだな?」

「うん!」

ジュディーが上機嫌で頷いた。だけど、俺は剣を抜いて構えるだけじゃ足りない気がした。それだけなら、見よう見まねで誰にだって出来る気がする。


「考えられる状況は?」

自然と低い声が、自らの口から出ていた。あれ? こんな声なんて出るんだ。

年長の二人が顔を見合わせて頷いた、らしい(後にジュディーが語ってくれた)。俺に感心していたらしい。

「敵は前方に四人、そのうち中央の二人が手前に出てきている。装備はごくありふれた物でいい。味方は一人、信頼できる仲間。戦闘場所は・・・開けた広場で、地面はタイル敷き。障害物はほとんど無し」

ジュディーが淡々と、想定された状況を語る。俺は目を閉じ、言われた状況を心の中に描く。


(仲間・・・・・・)

そういわれて思い浮かぶのは言うまでも無く、ジョウ。

想像の中で、右から二番目の敵がこちらへとにじり寄ってくる。奴の相手は俺だ! 右から三番目の奴もこちらへ来るが、そっちはジョウがやってくれる。

奴が自分の剣の柄に手を伸ばす。俺もためらうことなく、剣の柄を握り、鞘から引き抜いた。敵も静かに刃を鈍く光らせて、こちらに駆けて迫ってきた――――。


「やめっ!」


俺はハッと現実に引き戻される。

「ッ!? あれ、今のドラント?」

「・・・そうだ。自分の世界にはまりすぎだ、ヒア。だが」

ドラントの言葉を、当然のようにモデランがつなぐ。

「さすが、だね。ボクらが村の出身じゃなかったら、感銘うけてたかも」

いやそれつまり、自分が上ですよ宣言でしょ・・・


褒めてんのか、見下しているのか分からない。だけど、俺は――――――

ヒアによる一人称はまだまだ続きそうです。

そういえばこのリオン、総文字数が10万文字を超えていまして、あらすじにも書きましたように、ユニークは5000人PVは2万ヒットを超えさせていただきました。更に、本作も長いことかかりましたが、残り一話分で三十話を超えます。

以上は全て、このようにつたないものでも読んでくださった方のお陰です。有り難う御座います。それをお礼というか、記念と致しまして6章が終わった時点で番外編なるものを追加いたしたいと思います。本作が進まないことにお詫びを申しますが、番外編も読んでくださると嬉しい限りです。

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