【第6章8】隊長と先生 1
※一人称です。今までの文の調子が違うかもしれませんが、作者は同一人物です。
一人称はほとんど書いた事がなかったのですが、自信は有りません。
最後まで読んで頂ければと思います。
夜だった。ジョウは秘密裏にこの町を抜け出しているはず。ただ、何の音沙汰もない。
突然、かすかだが俺の家の扉を叩く音がした。今はあの忌々しいギルドの奴らによって決められた、外出禁止時間帯だ。
俺は用心深く扉のすぐそばに身を寄せた。小さな呟き(?)というのか、それくらい小さな声が聞こえた。
『私たちはギルドの者じゃありません。あなたの知り合いの、ジョウさんから頼まれたんです』
俺がその扉を開くと、目の前を瞬時に風が通り過ぎた。風とともに残像が横切る。
「はやく閉めて!」
少女の高い声。ぽかんとしていた俺は、扉をあわてて閉めた。
ん? 少女だって?
振り返ればそこには、さっきまでいなかった三人の男女が立っていた。三人のうち、一人は……俺よりも年上で長身の男。
残りの二人は女……かな?
一人はさっき叱声を飛ばしたと思われる小さな少女と、男よりも少し背の低いべっぴんさん。
「えーと、ジョウに頼まれたっていう?」
俺がためらいがちに口を開くと、少女が一歩前に進み出て口を開いた。
「私はジュディア・フェブリーヤ。ジョウさんから頼まれて来ました」
ふぇ、フェブリーヤだって!?
俺には堂々としたこの少女が、大戦争を止めたという剣士の末裔だとは信じられない。
「こっちの背の高い方はドラント・ロクシー、でこっちの女顔の方はモデラン・グランデ」
少女……改めジュディアは、俺の驚きを軽く無視して、連れの紹介を済ませる。
「女顔ってちょっとひどいと思わない?」
モデランがジュディアに突っかかる。
「ねえ、ドラント。ぴったりだと思わない?」
ジュディアはそ知らぬ顔でドラントに切り返す。ドラントはモデランの顔など見ずに真顔で頷いた。
「ぴったりだ。一応男なのに女の面してやがるから、そういう名前に改名したらどうだ?」
「一応、のトコロを強調しないでくれる? ボクは正真正銘の男です! あと、改名なんかしないし」
さっきのは一体なんだったんだ――――?
こいつらが・・・本当に、目にも留まらぬ速さで動いてたのか!?
ってモデランは男だったのかッ!!!
てっきりおんなだと・・・
ジュディアがじっと俺をガン見してくるのに気づいた俺は、彼女達が俺の名前を知らないことに思い当たった。
「あっ、俺はヒア・マクシアンです。よろしく・・・」
「そうじゃあ、ヒアは私の事ジュディーって呼んでね!」
ジュディア・・・あ、ゴメン。ジュディーはキャッピキャピの笑顔で笑いかけた。
なんか、男の二人の視線が・・・痛い。いや、大袈裟じゃないぞ?
もし、視線だけで致命傷(一応、殺せない程度の)を受けさせることができると、俺はすでに虫の息だ。
俺は突然、ドラントに腕を回されて引き寄せられた。
「ジュディア、悪いが男同士の話をしたいんでな、席を外してくれ」
「うん、いいよー」
ジュディアは何の疑問も持たず、出て行ってしまう。
まってくれぇぇぇ! 俺が殺されるぅぅぅ!!!
俺にはまだ、生きる価値が・・・あるはずなんだぁぁぁ!
ジュディアが扉を閉めると、二人の口調は突然変わった。
「さて、ボクらが君に話したかったのは、くだらない話じゃない」
「あの子にはまだ・・・いや一生知って欲しくないんだが」
「お前はジュディアの親じゃないでしょ」
「ちょい、まて。いや、待ってください。貴方達はおいくつなんですか」
俺はふと湧いた疑問を口にした。
彼らはきょとんとした様子で答えてくれた。
「二十五歳で妻子共にあり。子供は四歳で名はブラン」
「同じくボクも二十五歳で妻子共にいて、子供は四歳。名前はシェイだけど?」
「いや、年を尋ねただけなんですけど・・・。あの、ジュディーは?」
「あの子はもうすぐ十三歳だよ」
ってことは十二歳違いか。というかこの二人、若ッ!!
いや、二十代後半に見えないだろ!
「で、話とは?」
「そうそう。えと、ヒア君だっけ? 話ずらさないでね」
おっと、これは失礼。以後気をつけまーす。
「君の友達、ジョウはこの町を秘密裏に出た」
ドラントが淡々と語る。
「その行動は、悪知恵が働くギルドの連中に見られていたようで、俺達の住む村に行く途中に集団で襲われた」
ドラントのそのまなざしがとても温かかった。
モデランはそれを引き継ぐ。
「彼は死ななかったものの、怪我がひどいまま、ボクらの村にたどり着いた。彼は運び込まれるや否や、意識を失った」
モデランのそのまなざしがとても冷ややかだった。
「ジョウが意識を取り戻したのは昨夜の夜中だ。そのとき俺がついていたんだが、ジョウはひたすらに『町を助けてくれ』、『俺の親友が味方なんだから、絶対に勝てる』とか、わめいてたぞ」
俺はジョウが今更ながら、心配なった。
俺はジョウに相談(?)をされてから、ほとんど家から出てないけど、ジョウはどうなんだろう?
「君のこと、べた褒めしてたよね。『あいつは自分の良さと、悪い所を取り違えている。それに気づけば、世界最強だあ!』とか」
モデランが優しい笑みを浮かべながら、言った。
寝言でもそんなバカな事を言っていたのか・・・。
酒でぐでんぐでんに酔っ払うと、それに似ていることをほざいていたんだが。
言われてる俺は冗談にしか取れないだろ。
「俺達が村を出る前に覗いたんだが、ジョウは・・・・・・」
「まったく、遅いよ! 私待つの苦手なんだから」
そう。いいところでジュディーによってさえぎられてしまった。
「ごめんごめん。長話が過ぎちゃったね」
「まったく」
なんか、ジュディーが頬を膨らましている? なんか、すげぇ可愛いんだけど!?
(ああ、これを○リコンというんだな)
って今の何!? ○リコンってどういう意味だよ!!!
というか、お前、俺の事見下してねぇ?
ま、どうせ誰も答えてくれないんだろうが。
「ところで、どうして俺の家に来たんです?」
俺は、今まで長~く先延ばしにされてたような、普通に当たり前の疑問をぶつけてみた。
「敬語はやめてくれ。なぜかって聞いたな」
ドラントが妙に含んだ言い方をしたのが気になったが、答えのほうが知りたかった。
なぜか、ジュディーが顔を赤く染めた、乙女っぽい顔つきで答えてくれた。
「だって・・・だって・・・、ヒアに会いたかったんだもぉ~~ん!」
という具合に、俺に飛び込んできながらな。
やっぱり、超かわえぇぇぇえ!!!!
萌えるぅぅぅぅうううう!!!!
(ついに○リコン廃になったか・・・。青春時代よ、おさらばだな・・・)
え、いや。今の取り消しの方向で。
それとお前、あとでぶっ飛ばす! 絶対に!!!
今のは父性本能をくすぐるといった意味だ!
決して不純な心持ではない!
「いや、それだけでここに?」
俺は抱きつくジュディーにされるがままにしておいて、尋ねた。
「まあ、それだけとはいえないんだけど」
モデランが肩をすくめた。
「彼が、君の事をべた褒めするもんだから、会いたくなったていうのと」
「このとおり、ジョウに感化されたジュディアに強制されたのと、この町においての拠点が必要だったからだ」
ドラントが最後にまともな意見を言ってくれた。
だけど、ジョウの言葉を真に受けないでくれよ・・・。
ただの喧嘩があんまり好きじゃない野朗だっつーの。
「あ、ところでヒアは、さっき私達が入ってきた時に見えた?」
ジュディーが小さな腕を放して聞いてきた。
「え、あーそれは、残像が見えただけ・・・だけど? それがなにか」
今、嘘をついても意味がない気がするので、本当の事を言った。
そうすると、お客人の三人が顔を見合わせた。
「すごいねー」
とジュディー。てか、何が? 何に感心してんの?
「俺達の村でも、本気の俺らを見れる奴は、残像だとしてもほぼいない」
ドラントより。って、本気? 俺をおだてても何も出てこないぞ?
「同感。ジョウ君が言ってたのはあながち間違ってなかったみたいだね」
モデランから。いや、あんな戯言を正しいとしてしまってはいかんだろ!?
「決定だね! やったあ~! ヒアも一緒だよ!」
ジュディアがキラッキラの笑顔で飛び回っている。はい、近所迷惑ですよ~。
まあ、可愛いけど。
「・・・・・・何が?」
「ヒア君って無愛想だねぇ。まあ、ドラントより面白いからいいけど」
「いや、受け狙いで俺は生活しているわけではないぞ?」
はいはい。おままごとはいいですから、答えてくださいよ!
「だ・か・ら! 何がどうなんですか?!」
「何がどうって。ヒアは私達と一緒にギルドを懲らしめに行くんだよ?」
「はいぃぃぃい!!???」
有り難う御座いました。(終わりませんけど;;)
一人称語りはまだ続きますので、一人称についてなにかご指摘を被りたいとおもいます。