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リオン -剣術使い-  作者: 笹沢 莉瑠
第六章 『葬式の儀』に哀愁を
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【第6章7】語る者

 「そして・・・・・・」

「そしてどうなったんだ?」

「結局、その作戦は成功した。一人の死によって」

リオンは明かりの点いた部屋の扉の前で凍りついた。その前では部屋の中で話していることが薄々聞こえる。その最後の言葉と共に苦い記憶が鮮やかに蘇えった。それをさえぎるようにリオンは扉を開いた。


「あ、ビル・・・」

ジアスが気まずそうにリオンを見上げた。部屋に居る者は皆座っていたのだ。

「この部屋、微妙に音が漏れてるぞ」

「それなら部屋を変えようか?」

シェイが立ち上がって言った。それにつられて皆も立った。


「あれ? トワンも来ていたのか」

「ああ。我もあのマクシアンに呼ばれてな」

話しながら見回すと、ヒアに呼ばれていたのは、ジアスとシェイ、トワン、リブシアやリコールだ。


リオンは立ち止まった。それにぶつかってリブシアが声をあげた。

「わっ! ちょ、ビル急にどうしたんだ」

「みんな聞いてくれ。頼みがあるんだ」

みんなの視線がリオンに集まる。

「情報源は聞かないでほしいんだが・・・帝国で大きな騒ぎが起きる。それを食い止めに城へ行かなきゃならない。それについてきてほしいんだ」


すると一斉に三人が口を開いた。

「「「俺は(僕は)ついていく!」」」

口を開いたのは、ジアスとシェイとリブシアだ。

リコールはワンテンポ遅れて言った。

「公務を手放す気にはならないのでね」


トワンがためらいがちに口を開いた。

「我は・・・・・・どうすればいい?」

リオンは遠慮がちに微笑んだ。

「ヒーディオンの北東、ネイロの国境付近でいい。そこまで魔法で送ってくれないか? できるだろ?」

「それなら、かまわぬ」

トワンもにっこりと笑った。

そのうち防音が期待できそうな扉のある部屋に着いた。


扉を開くと中にヒアが座っていた。

「あれ?」

「隊長殿、こちらにおいででしたか」

ヒアは明々と燃えるランプを前に床に座っていた。

「お? 遅いぞ。お前ら」


皆がランプを中心に座ると小さな円が出来た。ランプの中の灯がゆらゆらと揺らめく。

ヒアが天井を見上げるように口を開いた。

「お前ら、旅に出るんだろ? ほらっ」

そして袋を二つそれぞれ、リオンとジアスに投げた。空中で硬貨が音を立てて、すっぽりと二人の手の中に収まった。

袋の中にはずっしりとした銅貨や銀貨が入っていた。

「これは?」

ジアスが問い返した。


「兵役の退職金だ。旅に必要になるだろうと思ってな」

「ありがとうございます。隊長、でも俺らを呼んだのはこれを渡すだけじゃないんだろ?」

「そうだ。リラックスして聞いてくれ・・・・・・長い話になる」

ヒアは首を下げた。目線をランプへと移した。


                               *

 (どうしよっかなぁ・・・)

レベッカは街の大きな地図の張られた案内板の前で立ち尽くしていた。

彼女が居るのはアーリア公国の隣、ネイロ王国の南にあるオメガ王国の港町。


オメガ王国は賭け、つまりカジノで栄えた王国だ。カジノで大量の富を手に入れたものは貿易に手を出し、一部のみが商才を開花させる。逆に大損をして運をつかめなかった者は上に仕える者に成り下がる。はっきりとした格差社会があるにもかかわらず、誰にだってチャンスがある。そのチャンスを生かせなかった者は盗人に堕ちていく。


彼女がなりわいとする仕事は・・・

(目的地、つまりヒーディオンは数週間はかけないと辿り着けない。それだと今まで貯めてきた分でも、足りない。しかたない、盗むしかないか)

ご察しの通り盗人。

レベッカは左腕に巻かれた黒いバンダナを結びなおした。手の中には小さなペンダントの残骸がまだある。どうしてもそれは捨てる事ができなかった。

(これ、誰からもらったんだっけ・・・? わすれちゃったね)

指で感触を感じながら、頭の中で計画を音を立てて積み上げると、次に地図を暗記する。


忘れ物が無いか、見慣れた部屋を確認した。この部屋も返さなければならない。

肩に掛けたバックの中に、壊れたペンダントが入った小さな袋を入れた。

(さよなら――――、オメガ・・・・・・そして)

レベッカは振り返りもせず部屋を出た。そして日が照らす水面が見える港へと駆けていった。


                               *



 それは、俺が19歳の時だ・・・。

俺はその頃、町に住んでいた。この村から1時間ほどの所にあったんだが、今はもうない。

俺は町でバカをやっていたんだが――――なにをやったか? って聞くなよ。

それほど強い存在ではなかった。剣も喧嘩も普通より強いってぐらいだったさ。


あるとき突然傭兵ギルドの連中が町にやってきた。予告も予兆も何もなしに。

ギルドというものは拠点となる町と互いに有益になるよう契約を交わすもんだ。例えば、町側がギルド側にある程度の食料と基地アジトとなる建物を提供し、ギルド側は町側にある程度の安全を確保し、稼業で得た報酬の何割かを町側に渡す、とかいった形でやることが多い。

そのほうがどちらも安全安心だからな。


だが、奴らはそうしなかった。ただ町を下見するが如く横切って、はずれにある廃墟を陣取った。

その翌日くらいに、町は大騒ぎになった。この町にいるなかで最も強い奴が、バラバラに解体された死体となって、町の広場のど真ん中に置かれていたのだ。


文字通り、皆が震え上がったさ――――――。


 奴らは手始めに町のお偉いさん方を牛耳った。正式的な互いに利益を出し合う契約ではなく、一方的なギルド側しか利益にならない契約を承諾させた。そしてギルドの許可なしに町を出る事が許されなくなった。


ギルドに媚びる奴しかまともに生きられなかった。


あいつらはいつも卑怯だった。


あいつらが、そう元々とはいえ悪いんだ。


どんな手を使っても心は、一欠けらすら痛まねえクズだった。


俺は――――――悪くない。


もし、あいつらが俺の町に来なければ・・・


そのときの俺がもっと強ければ・・・あんなことにはならなかった




・・・はずだ。



 ――悪い。自分の世界に浸っていた。

ああ、ちゃんと話す。終わるまで。


俺の親友がな、ジョウっていうんだが、ある夜に町を密かに脱出した。

ジョウは前もって俺にそれを話しておいてくれていた。


『ヒア、俺はもう我慢できない』

『それは町中の皆とも共通しているはずだ』

『ああ、そうだよな。だから俺は命懸けで、知り合いに助けを呼ぶ』

『は?』

俺はそのとき勢いのあまり大声を出していた。話していたのは常に監視のある酒場。

『おい! 声を潜めろ。実行にも移していない計画だろ? 計画の状態で捕まるのはごめんだぞ』

ジョウが含み笑いをしながら、俺の肩を叩いた。


だがそれは俺達だけの話にならなかった。

酒場でのことが、ギルドの連中にも知れ渡っていたようで、ジョウの脱出は成功とはいかなかった。

確かにジョウは町を脱出できた。しかしジョウにはギルド員がつけられていた。つまり後を追われていたのだ。


ジョウは知り合いとやらの所へたどり着く前に、ギルド員に襲われた。ギルド員は複数だった。ジョウがどんな強い使い手だろうと、集団戦法にかなうわけない。ジョウは命からがら、瀕死状態でその知り合いの所へ着いたらしい。目的は、そうジョウが俺達の思いは叶えてくれた。だが、ジョウは・・・・・・。




死んでしまったんだ――――。





その知り合いはちゃんと、ジョウの思いを汲み取ってくれたわけだ。心強い仲間を連れて、町にやってきてくれた。


そいつらは町から一時間程の所にある村からやってきた。

そう、来たのはかの有名なリオン・フェブリーヤ。それに数人の仲間が一緒に町を訪問した。



今回も短いです。

投稿前にガイドラインを読んだのですが、これはR15に入るのでしょうか?

一応、残酷表現の表示は入っているのですが・・・


自分でこの話を読み直しますと、結構な数の間違いがありました。誤字脱字、または表現のおかしい・意味が分からない点をご指摘願えますと私も嬉しく思います。

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