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リオン -剣術使い-  作者: 笹沢 莉瑠
第六章 『葬式の儀』に哀愁を
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【第6章1】衝撃と真実と

 村中に衝撃が奔った。魔法が使える者はもちろん、魔法などからっきし信じていない者もそれは感じられずにはいられなかった。

「これがあいつの・・・!」

「どうして――――?!こんな膨大な量の魔力が生み出せるの・・・」

広場にいた人々は現場の次に強い衝撃を受けた。シェイは衝撃が奔ると同時に地面にばたりと倒れた。

それに気づくと、ヒアはあわててシェイを抱き起こした。

「くそっ・・・、今のは強すぎるぞ」

シェイはかすれ声で呟いた。

「ジアスから聞いていたが信じてなかった。だが、本物だ・・・」


 広場に向かう馬車とそれに付き添う者達は移動の途中で衝撃を受けた。強力な衝撃で一頭の馬は手綱が切れて暴れ出し、足をもつれさせて転び地面に横に倒れた。馬車は止まり、付き添いの者は衝撃のせいで頭がくらくらして動けず、止まざるをえなかった。

「なっ!?何なんだ・・・?地震か?」

「おいっ、動ける奴は陛下ご一家を馬車の外にお連れしろ!」

下僕があわてて動き始めた。ジアスは片手を額にあてながら呆然としていた。

(俺が知っているときよりも・・・、いや魔法が使えると悟られないように力を抑えていたときよりも・・・、全然次元が違う。どこまでいく?お前は、何処まで行ってしまう――――?)

エゴーシスは青い顔でジアスを遠目から観察していた。


                         *


 燦爛さんらんと輝く紫の光は、とても神秘的で息をするのさえためらわれるほどだった。

「なんて・・・・・・美しいの」

マフが近寄ろうとしたので『ことわりと絆の紫剣』を振るい、近づけさせなかった。おびえたように顔をリオンに向けたマフは顔を青ざめさせた。リオンの両目が綺麗な紫色に染まっていたのだ。それは渦巻き、瞳の中で環をつくっていた。リオンはかすかに微笑んで見せた。マフは畏怖にちかい感情であとずさりした。

「おい・・・どうしたんだよ」

ファズはマフに聞いてみたが、マフは答えずただ震える腕でリオンを指差しただけだった。ファズは視線をマフからリオンへと変えた途端、目を大きく見開いた。

「どっ・・・・・・どういうことだ?武と魔の交わりコラボはできないはずだ!」

リオンはふっと顔を緩ませた。

「やっぱりそうか。俺は信頼できるある人(?)達から教えてもらったときから(リオンはそういいながら2人の精霊に会釈をして見せた)、不思議に思ってたんだ。魔力は基本的に増やす為には体を鍛える必要がある。その時点で魔と武には決定的に関連するということになる。だが、どの魔法書も頑なに『その可能性はなきに等しい』と否定するばかりで、かすかな事柄をほのめかすような記述も見当たらなかった。そこで俺は考えた」

リオンはそこで一息つき、色合いが常に変わる紫の瞳をまたたいた。

「・・・魔法界には暗黙の了解である掟があるに違いないとな」

魔術師ウィザード一同は、はっとそれぞれに様々なところへ視線を漂わせた。リオンはその様子に納得でもしたように鼻をならすと話を続けた。

「だが、魔法界のほとんどの奴らは幼少期に魔力の度合いが濃いということが判明するが、俺は最近魔力が体外に出たばかりでな。しかも俺は小さい頃から剣を習っていた。つまり、俺は例のない存在なわけだ。魔術師ウィザードは人身に対して精神を狂わせたり、魔力を自由に動かす事のできる物質に変えて攻撃する事はあっても、自ら剣を持って片手でモノを召還させながら戦わない。物理的攻撃はしたとしてもだらだらと流血させるほどではない。きっと人に血を流させればその分以上に魔力が減るんだろうなあ~。そのことを魔法使マジシャンは知ってるのかなあ~。きっとそういうことを知らない若者を魔法使マジシャンさせる・・・んだろうけど、タチ悪いぜ?」

リオンは睨むように魔術師ウィザード達ひとりひとりの顔を見た。

「だから俺はお前らを憎む。そいでその元凶を憎む。お前らの中には不本意な奴もいるだろうが・・・俺は世界を平和にしなくちゃならない身でね。悪く思うなよっ!」

最後の言葉を言い終わる前にリオンはダッと駆け出し剣を振りかざした。


                       *

 「えっ・・・!どういうことですか、オゥン様!?」

「なぜか理由はわかっておらん。しかし、それは真実じゃ」

「だから・・・・・・魔術師ウィザードは、魔法王国ネイロは、戦わないんですね」

「そうすれば魔力を失わないからの。だが、お前は違う」

「え?」

オゥンは寂しい表情でテントの天井を見上げた。

「正確には精霊魔術師フェアラウィズは、ということだが。精霊魔術師フェアラウィズは精霊を呼び出すことができる魔術師ウィザードの総称だ。精霊が人を傷つけることで、呼び出した精霊魔術師フェアラウィズの魔力が減る事はない。そのため、お前は・・・・・・」

オゥンもルテーナもふっと目を伏せた。

「このリーディアに居る限り、戦争に巻き込まれるのは間違いないと――――?」

「そうじゃ・・・。年明けと共にリスベス帝国は戦火の火蓋を切って落とす。きっと他国はそのことを予想しておらず、対応が遅れるじゃろう。そうなる前にお前は、ここを出ねばならん。ポルディノと共に」

「兄様と!?じゃあ旅の支度って・・・?」

「ポルディノと共に脱団し、旅人と共に行くのじゃ」

「そんな・・・。兄様には知らせないのですか?戦争の事を」

「もう知っておる。そして、お前が巻き込まれる事も」


                          *


 「陛下、“引き込み”の報告にウォリスが参っております」

「わかった。ここに連れてきて、お前は下がれ」

「仰せのままに」

下僕は部屋からフードを深く被った男を連れてくると、そそくさと部屋から出て行った。

男はレギオスの前で一礼するとフードをとった。

「臨時報告に参りました、ウォリス・エンドラーでございます」

「・・・やはり前の偽名の方がお前らしい気がするが?」

「・・・まだ名前を気になさいますか?本名はウォリス・エンドラーです。偽名はフラン・ローシャでしたが、前の古い名前と印象が似ていましてね」

「その古い名前は何という?」

「お答えするべきなのでしょうが、先に報告をしてもよろしいですか?」

レギオスはウォリスの考えを推し量るようにして見たのち、言った。

「俺の私室でも話せないか、話したくないか・・・まあいい。先に報告だ」

「有り難う御座います。皇帝陛下、では始めさせていただきます」

元フラン、ウォリスはレギオスに雇われてから、“引き込み”計画のトップとなり度々報告に来ていた。

「残りリスト8人のうち、2人をわが国領地内で発見・引き込みに成功いたしました。腕の良い鍛冶屋と弓使いです。それと、リオンという少年――――――」

そのときウォリスは一瞬顔を緩めた。ふっと笑ったのだ。それにレギオスはつけいるかのように口を挟んだ。

「ちょっと待て。お前、そいつに何か思い入れがあるのか?」

「えっ?笑ってました?気にしないで下さいよ。笑ったのは内容のせいですから」

「?」

「彼には陛下が日を決める前、またはそれとほぼ同じ時、から一味がついています。そこから連絡が入ったのですが、不運ですね。彼は。魔法が使えるそうですよ」

「そうか・・・。調節者コントローラーの力以外に魔法もか」

「きっと彼は早死にしますね。こんな風に恵まれ過ぎれば・・・・

「面白い。さて、そろそろ教えてやるかリオン自身に」

レギオスは机に肘を突いて手を組むと、黙祷するかのように目をつぶった。


                            *


 「はあっはあっ・・・」

荒い息がホール中に響く。

(やっぱり慣れても気持ちわるさはかわらねぇな・・・。無抵抗の相手に剣先を向けるのもはばかられるし。本当に・・・これで、俺なんかでリーディアに平和をもたらす事はできるのか?)

<十五代目・・・・・・>

(剣士がいる時点でその時勢はいつか揺らぐということだろう。武器が全て、人を無差別に傷つけようとする者が全て、自分の思い通りにしようとする愚か者が全て、なくならない限り――――)

2人の精霊が口を開こうとしたとき、リオンの視界が真っ白に塗りつぶされた。


 『っ!?これは・・・ジアスと・・・・・・?でもあのときはあたりは闇だった』

『ようこそ、我らが調節者コントローラームーンよ。我が世界へ』

リオンの背後から気配もなく声がした。振り返ろうとしたが体は動かない。

『ジアスじゃない・・・。誰だ?俺の事をなぜそう呼ぶ?』

『事実だからだ。だが我らがムーンはまだほかの名を持っていたな。そう確か・・・』

声の主は一瞬でリオンのすぐ後ろに現れ、囁いた。

『リオン・フェブリーヤ、十五代目』

リオンにひどい悪寒が奔った。なんとか首だけ動かして声の主の正体を見ようとしてみたが、近すぎてよく見えない。

『お前は・・・・・・誰だ?俺になんの用だ』

『俺か?俺は・・・そうだなこの世界の支配者だ』

『は?どの世界の?この真っ白な世界か、それともリーディアか?』

『どちらもだ』

『っ!?お前は――――――リスベス帝国の皇帝レギオスかっ!!』

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