表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リオン -剣術使い-  作者: 笹沢 莉瑠
第四章 何が隠れる、陰の底
24/65

【第4章10】魔法講座 下

 (思い出したこと・・・・・・ですか?)

<はい。これから言う事は、魔術師ウィザード魔法使マジシャンの職に就いたものでも、軽々しく口にする事ではありません。それを2代目の母上は剣士であるべき2代目に、後代のためとして教えて下さいました>

バロシオンがそれを引き継ぐ。

<2代目はそれを僕たちにもお話くださり、あなたのような方に教えよといいました。よく、お聞きください。一度で全て覚えてしまってください。そして滅多の事で口外しないように・・・>


 昔の追憶が意識の中心部から遠ざかり、ソーンの声が耳に入った。

「――――これが、自分にどんな魔法があうのか確かめる方法だ」

言い終わるとソーンは片手をふっと振り、リオンにかけた魔法を解除した。それを感じるとリオンは口を開いた。

「そういうことは、軽々しく口にだしてはいけないのではないのか?」

「っ!?どうしてそんな・・・・・・」

ソーンはひどく狼狽した。

「だってお前、言ったじゃないか。メファド ピラ 復元再生」

リオンは魔法をかけて、ソーンが説明する前に言った事を再生させた。

『魔法のキホンは本には載らない。全て口で伝えられる。お前のその様子じゃ師匠なんてのはいないんだろう?俺が教えてやるよ』

「って言っただろ。ってことは師匠の弟子じゃないと、それほど親密な仲じゃないと、そういうことは教えたりしない。けどお前は、親密どころか敵も同然な俺にそういうことを言った。おかしいだろ?その裏にある考えはひとつしかない」

「・・・・・・」

「だが、お前はやり方が下手だ。俺を黙らせて考える時間を与えたんだからな。だから、こんな風に下っ端の仕事に振り回されてるんだよ。まあ、お陰で向こうの考えのいっぱしは分かったんだから感謝しないとな」


 そこへリオンの頭の中で聞きなれた声が響く。

『ビル、話せる状態か?』

リオンはちらりとソーンは見たが、ソーンは行動のひとつも動かさない様子なので答えた。

『ジアス?なにかあったのか』

『ああ・・・・・・。お前に言われて協会に向かってたんだ。けど、そこにパロネ・バクネスっていう騎士の人がいたんだ』

(パロネ――――――!?2人共聞いた?)

<はい。でも、違うかもしれません・・・>

『なんだかんだでその人と決闘する事になって・・・・・・その人が強くて何がなんだか分からなくなって――――気づくとその人の胸に剣を鎧を突き通して刺していたんだ。すると、すごい低くて不気味で暗い声が聞こえて、その人に止めを刺せって執拗にはっぱをかけるんだ。ヤバイ――――って思った時に、バクネスさんが命を削ってでも、お前に伝えろって言ったんだ』

『・・・・・・』

『バクネスさんは本当はパロネ・フェブリーヤで、2代目だった』

リオンと2人の精霊に戦慄が奔った。

『それに魔法が使えるから、魔術師ウィザードが何百年も続く呪いをかけたんだ。それで、最悪の状態にはならなかったんだけど、帝国のスパイにならざるをえなかったそうだ。帝国は裏で、年明けと共に戦争を仕掛けるつもりだ。戦争に向けてそれぞれの専門家を呼び寄せて準備をさせている。その専門家・・・の中に俺達の名前が入っているそうだ。そして俺達はむやみに戦って命を捨ててはいけないんだそうだ。二人月ツィンガーだから――――』

『・・・ありがとう。ジアス、王様を早めに広場に案内してくれ。葬式はもうすぐできる』

『礼には及ばないさ。絆で結ばれた友達だろ?』

『もちろんさ!』

通信が切れた。


                      *

 ジアスはパロネから頼まれた通りにリオンに伝えると、息を吐いた。

(俺は、あのときどうなっていたんだろうか・・・・・・。そしてあの嫌な声は一体――――?)


『俺はお前だ。そしてお前は俺だ。ただ違うのは死へのイメージだ』


ぞっとした。その声が自分に誘いかける。


『殺せ・・・殺せ・・・・・・』


(嫌だ!嫌だ。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。誰も殺さない。殺さないんだっ!)


『嫌でも殺す時がくるさ・・・。フフフハハハハハハッ!』


「おい、そこの人!」

声は消えた。誰かが声を掛けてきた。

「聞こえてるのかー?」

「あっはい?」

振り向くと沢山の侍女や下僕、護衛の兵士を連れたマルスとキャランが歩いてきた。声を掛けてきたのは下僕の一人だった。

「君が、十五代目からの使者?」

「はい、そうです。これから広場にご案内します。陛下たちは何でご移動をされますんですか?」

「馬車だ。陛下方がお乗りになるまでしばし待たれよ」

下僕ではなく、兵士というより騎士という気品のある男が答えた。

ヤコブ神父の屋敷の横に置かれたとても豪華な装飾が施された馬車は2台あり、1台ずつにマルス、キャランとそれぞれにつく侍女や下僕が馬車に乗り込んだ。ジアスはそのあいだ、さきほど受け答えた男に話しかけられた。

「あなたは村人か?」

「あっはいそうですけど・・・?」

「そこにある、あれ(・・)はあなたがやったものだろう?」

『あれ』と、いいながらパロネの体を見た。

(ぎくっ!しかし、・・・・・・なぜそんなことを知っているんだろう?)

「そっそんなことどうしておっしゃるんですか?」

「あなたが戦っているところを見た」

「――――っ!?」

みたということはきっとジアスがフェブリーヤだということを耳にしているに違いない。

「どうしてそんなことを聞いたんですか?」

「どんな相手にも本名を名乗るか試してみただけだ」

「・・・・・・」

「必要にせまられぬ限り、容易な事で本名は明かさないという事がわかった。なぜフェブリーヤの名を明かさないのかはしらぬが、興味が有る」

そういって暗い笑みを浮かべた。

(この男、きっとていうかかなりの確立で帝国のスパイだ。どれだけリスベス帝国の裏は深いんだ?)


 マルスとキャランそのたもろもろが馬車に乗り込むとゆっくりと動き始めた。ジアスは先頭で案内をしなければならないので駆けていった。さっき、ジアスに声をかけた男はエゴーシスだった(詳細は【第4章3】環で)。彼はマルスやジアスが気づいたとおり、帝国の一味だった。エゴーシスはジアスのことを考えていた。

(あの少年、リオンジアス・フェブリーヤといったな。村に住んでいるはずなのだが、軍の剣を持っていたのはなぜだ?あのリストにこそは載っていないが裏の国家機密リストに載っていた彼奴きゃつと名前が似ていないか?容姿もどことなく・・・。本人にあったことはほとんどなきに等しいから確信をもって言えないが――――。だが、あのパロネを倒したとき人格が変わった・・・。もしかしてあれが―――――――――)

                      *

 <ありえないです。信じられません・・・>

(2人共、今は耐えてくれ。ソーンが動き出しそうだ)

伝えると共にホールの扉が開いた。

「ソーン、なんで坊や一人捕まえるのに手間取るのかしら?」

「お前は無駄話が多すぎる。だから、なかなか大きな仕事を任されないのだ」

2人の人影がこちらに向かってくる。2人共魔術師ウィザードだ。

1人、女の魔術師ウィザードがリオンのほうに歩み寄り、リオンの肩に手を置いた。

「あたしはマフ。よろしくねぇ、坊や」

「俺は坊やじゃない。それに記憶を引っ掻き回すのはやめてもらいたい」

リオンは冷たくその手を振り払った。親しい者にみせる声色とはとても離れている低いトーン。

「フンッ。後悔したってあたしは知らないから」

マフは鼻を鳴らした。

「一応魔法は使えるようだな。俺はファズ。気づいているようだが俺達は魔術師ウィザードだ」

ファズは床にブーツの足音を響かせながら近づいてきた。

「まあ、俺はソーンみたく無駄話や嘘を並べた美辞麗句は嫌いなんで単刀直入に言うが、冷静沈着に聞けよ。帝国におとなしく入れ」

「無理な話だ。そうすればあいつ・・・を裏切る事になる。裏切れば俺は腐って死ぬぜ?」

「「「――――――何!?」」」

3人の魔術師ウィザードに衝撃が奔った。

実は『魔鈴ますずきずな』はかなりの希少価値のあるルーンアイテムで限られたルーンマスターしか作れないものである。そんなものをなぜジアスの家にあったのか不思議だが、それは後で聞いてみようと、リオンは思った。

「お前!そんな価値あるものをっ!?」

3人が詰め寄ってきたが、リオンはそれを手でさえぎった。

「もの?俺はそんなもの持ってないぜ?腐って死ぬっていうのは、あいつに腐らされて殺されるっていうそのまんまの意味なんだけど・・・」

「そんなはずはない!」

ファズはリオンの手を掴んで見た。そっちの手は紐の痕が付いている方だ。

「ほら、これを見ろよ・・・・・・。間違いないだろう」

リオンはそのままにさせておいた。手のほうに注目がいくようにしておき、自分はなにやら呟いた。

すると2振りの剣が鞘からひとりでに浮いたが、3人は気づきもしない。それからはわざと大きな声で詠唱を唱え始めた。

「我リオンの名を継ぎ、御名を継いだ2代目より受け継ぎし剣を所有する者。2人の精霊の聖なる宝剣を今此処に1つに合わせん。真理をたっとし、信頼を手にした、アポシオン、バロシオンよ、我の力よりいでし魔に飲み込まれんことを。合成せよ、『ことわりと絆の紫剣』エヴァーシオソード。発動せよ、刀身を包む紫の光よ。ボルシス グレス 合成し創造せよ!」

「剣と・・・魔法が・・・・・・交わったコラボだって!?」

”武と魔が交わる事なきに等しい”

全ての魔法書にそれは必ず書かれた決まり文句である。それのため誰も武に魔法を取り入れなかった。戦うときは武か魔かどちらか一線で戦った。しかし、”なきに等しい”可能性からリオンは武と魔を『合成』させた。

浮いていた2振りの剣は一つになり、まばゆい光で包まれた。そして長いロングソードへと『合成』された。宝石は2つの色が混じりあう部分だけ淡く紫色へ変化し、様々な金属で出来た刃は紫の光のヴェールのようなもので包まれた。リオンがそれを握ると、剣全体を包んでいたまばゆい光が辺りにはじけ、その姿を畏怖さえ感じる姿へ変えた。エヴァーシオは古代語で『紫の光沢』という意味だ。まさに『紫の光沢エヴァーシオ』のソード。                  続

第5章はリオンたちのもとを離れて新しい(?いや、前に名前だけ登場した)キャラのほうを書きます。話の時は4章終了よりも数日前のことなのであしからず。

ここまでよんで頂き有り難う御座いました!続きも(待っていてくださる方がいるなら)ぜひ楽しみにしていただけたらなと思います。

・・・いや、そんな高尚な方いらっしゃいます?誤字脱字、見つけ次第ご報告ください。喜んでなおさせていただきます(^-^;)>

では。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ