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リオン -剣術使い-  作者: 笹沢 莉瑠
第四章 何が隠れる、陰の底
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【第4章2】操り人形の糸

 その頃―――、広場に向かうシェイ達は。


「この道を抜ければ広場です。」

「おう、すまんな。・・・・・・それにしても某王国の養子姫ウェナはあれからどうなってる?」

「あー。ジアスの魔法に圧倒されて放心状態でなんとかここまで運んでこれましたが、正気を取り戻しつつあるようで」

シェイは広場に向かう一行の後方をみた。そこにはウェナとその他護衛がいる。よぼよぼと老人のようだが自分で歩いている。


「彼女の魔法、このそういう感覚には鈍い体でも感じた威圧感はすさまじかったが、ジアスはそれを防いだ――――」

「防いだ本人はめちゃくちゃ不思議がってましたけど、危機一髪でした。しかし、彼の話によればビルも魔法が使える・・・」

「それも強力な魔法を。剣と魔法の才能とは・・・・・・なんていう天才だろうか。しかしそのせいで早死するかもしれん」

「・・・暗い話をしてもしかたありません。ところで、さっきは有り難う御座いました。そのたもろもろの大勢いることが取り得の雑魚を蹴散らしてくれて。あっ、あなたの名は?そういえば聞いていませんでしたね。」

「ああ、そうだな。俺はヒア・マクシアン。軍内であの2人の知り合い。所属は治安回復が主な特攻部隊さ。」

「改めて。俺はシェイ・グランデ。フェブリーヤの家系には一切関係ない村人だ。」

「そうか、お互い宜しくなっ」

「はい」

2人は共に握手しあった。

「ところで、なぜこの村にきたのですか?最近は治安が悪いようで特攻部隊が忙しい時期なのでは?」

「ははっ、時期的にはな。だが今日は依頼がない。」

「依頼がない?それはありえません。事前に入る依頼もありますが、危険が来てから依頼が来る場合もあります。だから、軍内で常に待機するのが普通ではありませんか?」

「!鋭い質問だな。だが、依頼が事前に入ってきていても今日この日にこの村に来ただろう。なにしろ、依頼遂行中だからな。」

「この村に今日来ることが依頼?まさか帝国のっ?」

「・・・なんで帝国の依頼を受けなきゃならないのか、わからんな。違う、国民だ。いや正確には”だった”だ。」

「!!先生の依頼?」

「そうだ―――」


                        *


春の風に乗って甘い果実は香りで彼を呼び寄せる

彼は無性に甘酸っぱい果実が食べたくなった

風にのって運ばれてくる香りをかぎながら本を閉じて

目をつぶりながら椅子から立ち上がって御覧なさい

まぶたの裏に広がるは果実園

鼻の奥を通り抜けるは甘きにほい

口の中に味わえられるは無の触感と無の魅惑のみ


春に誘われて夢の果実 口にした者

永久とこしえに無の魅惑から抜け出せん

甘い果実は穴を用意しそこに彼を落としてあげよう

抜け出せない迷宮と這い登れない大穴と

彼はどちらを選ぶでしょう


自由と憎しみと偽りを混ぜて出来た夢の果実

希望と怒りと哀しみでできた無の魅惑

騙された者が悪いんだろう

騙した者が悪いんだろう

いやただの傍観者が悪いんだろう


永遠と一時を秤にかけて

彼はどちらが重要かはかるんでしょう

きっとそれは誰にだって分かるはずなのに

彼は誘惑に負けて永遠を手放してしまう

彼が悪いのか秤にかけさせるのが悪いのかはたまた

ただ彼を見つめ行くだけなのが悪いのか

答えはきっと誰だって知らない


秤を作った神様だって秤にかけさせた人だって

本当の答えなんていうのはもっていない

だって―――――――

すべて偽りかもしれないから―――――――――――


マルス王は詩集を閉じると立ち上がった。その目には温厚な彼の面影すら見えなかった。

「彼が来る。わしに影響を及ぼす奴が・・・」

                       *

ジアスは走っていた。今にも心臓を筋骨隆々な手に掴まれている感覚を感じながらも体力の続く限り走る。

(まったく・・・・・・村長もアレだよっ。やけくそになってやがる。きっと時間稼ぎがしたいんだろうな。村の中心地より最も遠くて結構な邸宅といったら神父さんの家しかない。お陰で疲れる―――。

まてよ。なんで時間稼ぎとかしたいんだ?この村にはよく王様とか使節にくる。なぜ?ってそもそもなんでビルは屋敷に行ったんだろう・・・・・・。)


                       *

「それってどういうことですか」

シェイは大声を上げそうになったが、ヒアに口の前で人差し指を立てられて小声で喋った。

「一部に俺の隊員でも知らない事が含まれているから、注目を集めたくない。あとで話そう。・・・・・・そうだな、一段落ついてから関係者全てに話そう。」

「・・・・・・そうですね。そのほうが面倒じゃないですもんね。」

「悪いな―――」

居心地の悪い沈黙。シェイは自然にビルが行ってから助けに来るまでのことを思い出していた。


「さて、お仲間さんを放っておいていいのかしら?」

「この人数じゃあなたを倒せないと・・・?」

「お前達手伝いなさい。」

ウェナは背後の護衛に声をかけた。すると護衛はどこから取り出したのか6ポア(約3m)くらいのどでかいローブをウェナにかぶせた。

突然―――――――――――――バッとローブがはがされるとなんら変わった様子のないウェナ。

「何にも変わらないと、思うのは早いわよ。」

ウェナはダッと駆け出し、一人の隊員の間合いに入った。

恐ろしい速さ。まるでドレスなど着ていないかのような無駄の無い動き。

そして一人の隊員の脳天に拳を突きつけた。その隊員はその場に崩れ落ちた。

ウェナはその手にグローブをはめていた。先ほどの装飾品の手袋と似た色だったが、それ以外に目立った特徴は無い。

それに気づいたヒアは声を上げた。

「そのグローブ・・・・・・!」

「あら、お気づきです事?さすがですわね。ヒア・マクシアン隊長?」

「なぜ、お前が『暗黒のBGブラックグローブ)』を持っているんだ・・・・・・?」

「『暗黒のBG』だって!?」

「血塗られた過去のグローブじゃないか」

「このグローブの色は元々純白だったそうよ。でも、グローブの持つ力のせいでこんな血色になってしまいましたわ。このグローブ、触った相手を操る事が出来るんですわよ?」

その言葉に答えるかのように隊員がありえない起き上がり方で立ち上がった。

足が地につき、手は大地から起き、腰が足の上に落ち着いた。最後に頭が起きてきた。


「――――――ありえん。そんなことあっりえるはずがないっ!」

「どうしてそういえますこと?」

「俺が『暗黒のBG』を破壊したからだ。この手で引きちぎって剣でずたずたに切りさいたんだ。それにBGの力は洗脳ではない」

「・・・・・・フフフッ、情報集めが十分でなかったのかしら。あんな子供にセキュリティをかいくぐられたり、向こうの情報が十分でないなんて。帝国も少し頭に乗っていたようだわ。」

ウェナは仕方なさそうにグローブを外した。

「こんなところで使わなきゃならないなんて、思いもしませんでしたわ。なるべく情報は漏らしたくないから皆逝ってもらうしかないわね・・・。死人に口なしってね。」


「ま、冥土の土産として聞かせてあげるわ。今のニセ『暗黒のBG』の効力は魔法で行ったのよ。オリジナルのね。名づけて『操り人形のベクトールグローブ』。わたくしが自分で作ったルーンアイテムよ。面白いでしょ?」

「魔法も使えるのかっ・・・・・・!」

「ウフ、じゃあ、種明かしも終わった事でやらせてあげる。時間いっぱいまでこの世を楽しむことね!」

そして詠唱を始める。

「我、の精霊の故郷ふるさとに生まれ育つ力を得なり。彼の精霊との血の契約により、ここに発動したまえ。眼前でも見えぬ速さを持つ光の熱よ、我のかたきをその力によってこの世から消えさせたまえ。偉大なる精霊ナズスよっ!我が敵に死によっての制裁をっ!クラクトル ドーシェ、いかずちよ舞え!」

いかにも勝ち誇った様子で天に指を突きつける。そのとき、叫び声と共にジアスが現れた。

「テクト オブ、守りの結界っ!」

雲ひとつ無い天から雷が一直線に落ちる。そして寸秒の差でシェイたちの周りに半透明の結界が張られる。

ゴロゴロ・・・・・・ズギョーンッ!  バシッバシッ

結界によって雷がはじかれた―――。



(この世界はどうしてありえないことばかり起こるのだろうか・・・?そもそも俺達が生きることがありえないのかもしれない)


シェイの陰険な顔に気づいた副隊長が声をかけた。

「どうしたんですな?」

「ありえないことばかり・・・・・・えっ?なんですか?」

「それを聞いているのはこちらだ。その顔はどうした?」

「いや・・・この世界にはありえないことばっかりだなーって・・・。ところであなたお名前は?」

「リコール・サージュ」

単純解明に答えた。あまりにもそっけない・・・。

「俺はシェイ・グランデです。よろしくです。」

「こちらこそ」

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