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リオン -剣術使い-  作者: 笹沢 莉瑠
第四章 何が隠れる、陰の底
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【第4章1】未来は自分で変えられる

 「せっかく来た味方は行ってしまったようだが、いいのか?」

「いい。俺には俺なりの考えがある。お前には関係ない。」

リオンは冷たくアルファスに言い放つと、リブシアに手を差し出した。優しい微笑みを浮かべて。

リブシアは戸惑いの色でリオンを見つめた。

「お前は悪くない。全て俺のせいだ。あとで煮るなり焼くなり、好きにしてくれ。だが、今は協力して欲しい。先生が今ここにいたらなんというか、わかるだろ?」


それはまだ、彼らが『剣の習い』に入ったばかりの頃の事――――。



「せんせぇい、今日も『こうぎ』ですかぁ?」

「そうよ。入ってから半年くらいは講義ばっかりよ。」

「えぇ〜」

幼い生徒達は不満の声をあげる。しかも全員。

「・・・・・・もう、じゃあ次回は講義じゃなくて剣を使う練習にするわ」

「えぇー、今日はぜぇったい『こうぎ』なんですかぁ?」

14代目はにこやかに微笑む。生徒達はあらかさまにがっかりする。この光景はなかなか微笑ましい。和やかだ。


『剣の習い』に入って半年間は剣士としての礼儀やマナー、常識などを講義で教わるのだ。講義は特に重要だったりする。

「じゃあ、みんなー。この木陰にいらっしゃいっ!」

生徒達は明らかに渋々移動を始めた。この頃は特に暑い季節なのだ。木陰に居た方が涼しいに決まっている。

「みんな、空を見てごらん。何が見える?」

「たいよぉーっ!」

「くーもーっ!」

口々に叫ぶ。

「じゃあ、見えたものの形とだいたいの場所を覚えて。できたら地面に座ってほかの皆を待っていてね。」

数分もすると生徒達は次々に座っていく。だが、リアンビルだけぽつんと立っていた。

「どうしたの、ビル?」

「おれぇ、覚えらんなぁい」

「――――え?」

「だってぇ、たいよおも、くもも、おんなじとこにずっといないんだもん。」

「ビル、それって太陽も雲もいつも動いてて場所が覚えられないの?」

「うんっ」

14代目は少し驚きに満ちながらリアンビルを座らせた。

(こんな10歳やそこらでそんな事に気づくなんて少し意外!でも、口調がやっぱり治らないかな〜)


「じゃあ、講義を始めるよ。今日は剣士に限らず、全ての人にまつわるテーマよ。」

そういって、皆を見渡す。視線が集まるのを感じながら話し始める。

「皆はこのヒーディオンを、それだけでなくリーディア全土を一国に統一しようとするリスベス帝国の行動をどう思うかしら」

「かってだと思いまーす」

「ぼくのお父さんはリスベスてーこくのしんりゃくを止めるためにはたらいてます。だからそれはぼくらにとって悪いです」

リブシアはリアンビルよりもしっかりした口調で喋った。

「そうね、こっちとしてはあんまりいい事じゃないわね。でも、もし帝国の人が来て、『私たちは皇帝の政治についていけなくなりました。おかげで私たちは悲惨な目にあいました。もう帝国にいるのはうんざりです。私たちは帝国に抵抗するヒーディオン国で帝国に歯向かいたいのです。これを認めてくれますか?』と言ったら?」

生徒達の間に沈黙が広がった―――――。


「そうよね。どうしたらいいかわからないわよね。もしかして自分の身内で侵略を止めに行った人を殺した人かもしれない。

それでも、敵対する理由が表面的に無くなる。これは私たちが生まれる前から、多くの人を悩ませてきた難題。

この問題に本当の正解なんてないわ。結局は自分がどうしたいか、団体が決めた事にしたがうのか・・・・・・。自分がだした答えに自分の未来は変わってくる。

 行動する時は計画する事も大事だけど、予想外や想定外の出来事があったときはその先のことなんて考えずに、

自分を信じるのよ。未来は自分で変えられる。なら、あとで自分の好きなようにかえればいい。未来の変え方は人間に元々備わっている一種の能力。それは意識しなくても使えるわ。全て自分の未来は自分にかかっているのよ。」

幼い彼らにはよく意味がわからなかっただろう。だが、一語一句全て不思議と覚えていた。




「――――――自分を信じるのよ。未来は自分で変えられる。」

「そうだ。お前が決めるんだ。お前の未来は。好きなようにするんだ。あいつにこき使われるだけのお前じゃない。

リブシア、お前は強い。剣でも心でも強い。お前なら自分の望むような未来にできるはずだ。今はしたいことをしろ。」

リブシアは自分の手のひらを見つめた。手のひらには無数のまめの跡がある。


「僕は・・・・・・自分の運命を、未来を切り開いてみせる。自分の手で未来を掴み取るんだ。」

リブシアはギュッと拳を握り締め、リオンの手を借り立ち上がった。

ジッと父親を見つめた。

「もういう通りにはしないよ。僕は親元を離れ、独り立ちする。父さん、いやアルファス・メーギスト、僕は今日からあなたの息子ではなく、リブシア・アークメモリアとして生きていく。今まで心の中で支えてくれて有り難う。そして、偽りの憎しみと誤解があなたのもとへ戻りますように。」

アルファスの顔が真っ赤になって屈辱を浴びせられた表情をしている。怒りと興奮のあまり、剣を握る腕が震え始めた。

「リブシア、もういけっ!そしてジアスを探せっ!きっと神父様の家に居る。」

「ビルっ!ありがとうっ!!」

そういい残すとリオンの脇を抜けて駆けて行く。

(・・・・・・これですくわれたのならいいのだが。)

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