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第9話 冒険者ギルド

「アレフお兄様! 私も街へ連れて行ってもらえませんか?」


 朝食を食べ終え、出かける前に部屋で休んでいたらエリスちゃんがやってきた。


「エリス! アレフ様にご迷惑でしょ!」

「えーっ、だってお姉様はアレフお兄様と一緒に旅をしてきたのでしょう。羨ましいです!」


 追い掛けてきたアリサも加わって、部屋はとても賑やかになった。


「アハハハ、いいよエリスちゃん。今日は危ない所に行くから無理だけど、今度連れて行ってあげるよ」

「ありがとうございます、お兄様!」

「すみません、エリスがワガママを言いまして」

「別にこれぐらいなら全然平気だよ」


 エリスちゃんにおねだりされると、何とかしてあげたくなるなぁ。

 アイン姉も子供の頃の俺にそう思ってたのかな。


「むっ、お兄様。今誰か別の女の子の事を考えませんでしたか?」

「あー、うん、ちょっとアイン姉の事を考えてた」


 正直に答えると、エリスちゃんは頬を膨らませた。


「ダメですよ、女の子といる時に他の女の子の事を考えては」

「そうなんだ」

「そうなんです。……今日は危ない所に行くって一体どこに行くのですか?」

「冒険者ギルドだよ。いかつい冒険者達が大勢居るから、エリスちゃんみたいな可愛い子には危ないよ」

「えへへ、じゃあ私はお留守番していますね。街に連れて行ってくれる日を楽しみにしてます」

「あの、わた……いえ、お気を付けてくださいね」


 上機嫌になったエリスちゃんと、どこか不満げなアリサが見送ってくれた。


 執事さんに馬車を用意しますかと言われたが遠慮した。屋敷から冒険者ギルドまで歩いて行こう。


◇ ◇ ◇ ◇


 大通りを進むにつれて冒険者ギルドが大きくなってきた。

 冒険者ギルドの建物は3階まであるから目立つよな。


 しばらく歩き続けた後、俺は冒険者ギルドの前に立っていた。

 完全装備の冒険者達が出入りする事もあってか、他の建物とは違う雰囲気に包まれている。


「よし、行こう」


 顔を叩いて気合を入れると、冒険者ギルドの入口へ足を進める。

 硬い木製の扉を押し開ける。

 低く音を立てて扉が開く。隙間から中の騒がしさが伝わってきた。


「イスカまでのキャラバン護衛任務。必要レベル15の戦士を8人求める? 今朝聞いた噂だと、あの毒蜥蜴がこっちに移動してきたんだろう。こんな報酬じゃ受けてられるか」

「おい、北の住宅街で引っ越し作業10名だ! 二人足りないから誰か参加する奴は居ないか!」

「東の大草原で猪5匹か。報酬もそこそこ良いな。よし! 今日はこれを受けようぜ!」

「おう!」

 

 中に入ると壁には掲示板があり、貼り出された依頼を見て冒険者達が話している。

 どの依頼を受けるのか仲間と相談する者、依頼の条件を満たそうと臨時のパーティーを組もうとする者達が入り乱れていて、活気が凄い。


 どうやら今日の依頼が貼り出された直後みたいだな。

 貼り出された依頼が気になるけど登録が先だ。

 混雑を抜けて奥へと進む。


 奥には2つのカウンターがあった。

 酒瓶の並ぶ棚のあるバーカウンターには、日中から酒を飲んでいる冒険者の姿があった。

 もう一方のカウンターがギルドの受付だ。

 空いているカウンターで声を掛ける。


「すいません」

「あら、初めて見る顔ね。依頼を頼みに来たのかしら?」


 カウンターに座ると20歳位のお姉さんが話しかけてきた。

 どうやら俺を依頼者だと思ったみたいだ。


「いえ、冒険者の登録をお願いしたいのですが」

「依頼じゃなくて登録ね。測定は今すぐ出来るけど大丈夫?」

「測定ですか」

「称号やスキル等を調べる能力測定よ……たまに居るのよね、大ぼら吹いて登録しようとする人が」


 そう言ってお姉さんは苦笑いをしていた。


「結構大変なんですね」

「そうよ。大変なのよ。キミはそんな冒険者になっちゃダメだからね。じゃあこの紙に必要事項を書いてね。文字が書けない場合は代わりに書くけど?」

「大丈夫です」


 紙を渡されたので、備え付けの羽ペンを取る。

 何々……必要事項は名前と年齢と特技だけでいいのか。誕生日知らないから年齢は大体で良いかな?

 冒険者は稼ぎ次第で宿を変えるからか、住所は任意で記入になっていた。


 名前:アレフ・ツヴァイ

 年齢:14歳

 特技:生活魔術


 こんなもんで良いか。


「書きました」

「ありがとう。じゃあちょっと待っててね」


 受付のお姉さんは奥に下がると、ボーリング球程の水晶玉を持ってきた。


「これが測定する魔道具よ。昔発見された魔道具を元に魔道具ギルドが作ったレプリカなの。性能はオリジナルには劣るけど、今まで見誤った事は一回も無いのよ。じゃあ早速測りましょう」

「どうすれば良いんですか?」

「両手で触れるだけよ。結果が水晶玉に浮かぶから」


 言われるままに水晶玉に触れると、ピリっとした感覚があった。

 すると水晶玉の中に滲み出るように模様が現れる。

 模様はやがて文字に変わった。称号、所有スキル、レベル……ん?

 模様は止まったけど、文字に変わらない部分が多いぞ。


 称 号:魔■に■■■■■者

     異■混■■

     ■■愛■る者

 スキル:魔■造、■詠唱、■■詠唱、魔術

 レベル:1


 うーん、意味が判らない。


「あのー、これはどういうことでしょうか?」

「あはは、お姉さんもこんなの初めて見るわ。故障かしらね。それより悪いんだけど……」


 お姉さんは壁に掛かっていた一枚のボードを指差した。

 冒険者ギルド登録条件と書いてある。


 一、13歳以上の健康な人

 一、冒険者ギルドの要請に応じる人

 一、レベルが5以上の人


 …………俺のレベルは、1だ。


「ゴメンね、子供や弱い人を怪我させないように定められた冒険者ギルドのルールなの。冒険者に憧れて目指す人は多いからね。大丈夫。レベル1ならちょっと戦ったり、体を使えばすぐ上がるわよ」


 お姉さんはそう言って慰めてくれる。

 でも俺は野盗やエビルエルクを倒したんだけどね。

 それでも1つもレベルが上がらなかったということは、レベル上げはかなり難しいんじゃないだろうか。


「……ありがとうございました」


 がっくりと肩を落として席を立つ。

 カウンターから離れようとしたらお姉さんが励ましてくれた。


「気落ちしないでレベルアップ頑張ってね」


 俺は依頼で盛り上がっている冒険者達を横目に冒険者ギルドを後にした。

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