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第17話 いきなりリフォーム

 魔法樹を視察に行くローレンスさんと一緒に玄関ホールにやってくると、そこにはエリスちゃんが待ち構えていた。

 傍にはアリサとセリカも居る。


「お父様、これからどちらへ行くのですか?」

「ちょっと街の外へ視察に行ってくるだけだよ」

「アレフお兄様も一緒にですか?」

「俺が作り出した大きな木が騒ぎになったみたいだからね。危険は無いけど一応確認だよ」

「危険が無いのなら私達も見に行きたいです。ねっ、お姉様」

「……そ、そうね。お兄様。私も見てみたいですわ」


 エリスちゃんが袖を引くけどアリサの反応は少し鈍い。

 その視線はモニカさんに集中している。


「うーん、一応領主としての仕事なんだがな。まぁ非公式だし構わないか。ただし、無茶はしないこと。良いね?」

「はい!」

「はい」

「という訳で私の妹と娘も同行させてもらうよ。そちらの娘さんと年も近いようだし、仲良くしてくれると嬉しい」


 ローレンスさんがアリサとエリスちゃんをモニカさん達に紹介する。

 後で聞いたけどモニカさんは俺とアリサより1歳年上で、セシリアちゃんとカレンちゃんはエリスちゃんを同い年だった。


◇ ◇ ◇ ◇


「これはまた大きいな」

「……アレフ様らしいですわね」


 馬車から降りるなり領主兄妹は揃って魔法樹を見上げている。


「ふわぁ〜、これをアレフお兄様が作ったのですか」

「そう。こう、にょきにょきっと」


 エリスちゃんに何故かカレンちゃんが答えている。

 カレンちゃんはあの時居なかったと思うんだけど。


「カレンさんは見たのですか。羨ましいです」

「見たと言っても部屋の窓から。間近で見たのはモニカ姉さん。中を作る時も一緒」

「モニカさん!」

「は、はいっ!」


 エリスちゃんに迫られ、背筋を伸ばすモニカさん。

 というか初対面なのにエリスちゃんは物怖じしないね。


「負けませんからね!」

「何をでしょうか?」

「エリス様、モニカ殿を困らせてはいけません」


 エリスちゃんは見かねたセリカに引き離されていった。


「兄ちゃん、早く泉作ろうぜ」

「今度は作る所を見たいしな」


 ダレン達が急かしてくるので、魔法樹の根元に向かった。

 どんな泉にしようか、屈み込んで様子を調べる。

 すると背中に軽い衝撃があった。


「私も近くで見たいです!」


 誰かがが飛び付いたと思ったら、犯人はエリスちゃんだった。


「あ、エリス様! アレフ、危険は無いのか?」

「危なくは無いけど……エリスちゃん、そんなに背中にくっつかなくても見えるよ」

「エリス! アレフ様の邪魔をしてはダメよ」

「えー、でも近くで見たいです。お姉様も一緒に見ましょうよ」

「そ、それってアレフ様の背中で?」

「いや背中じゃなくて隣で良いよね」


 女の子2人がくっつける程広い背中じゃないよ。


「はぁ〜い」

「……分かりましたわ」


 ダレン達も近くで見たいかなと思って振り向くと、ラルクさんとセシリアちゃんに止められていた。

 アリサさん達に遠慮しているのだろうね。

 カレンちゃんは気にもせずに俺の近くに居るんだけど。


「ダレン達もこっちにおいでよ」

「アレフ君の言う通りだ。うちの子に遠慮する必要は無いよ」


 ローレンスさんの言葉があったせいか、ダレン達だけじゃなく皆揃ってこちらにやって来る。


「じゃあ始めるよ」


 良く見えるように皆から少し離れて魔改造する事にした。

 魔力(マナ)を魔法樹に送り込んで、根元近くの幹を凸凹に変化させる。

 そして幹を隆起させて作った窪みに、水がこんこんと湧き出て溢れていく。

 根が地下水脈から水を汲み上げるポンプの働きをするよう魔改造したんだ。


「水が湧いたー!」

「兄ちゃんスゲー!」


 興奮冷めやらぬといった様子で、ダレン達が泉の周囲を走り回っている。


「綺麗ですね。飲めるのですか?」

「地下から汲み上げた水だからね。飲んでも平気だよ」

「ホント? 冷たくて美味しい!」


 アリサとエリスちゃんも湧き水に喜んでくれた。

 ローレンスさんはというと、何か考え込んでいるように見える。


「こんな感じの泉で良いですか?」

「あぁ、予想以上だよ。アリサやセリカの話を疑っていた訳では無いのだが、想像以上で驚いた」

「お兄様、アレフ様の凄さを理解して頂けましたか?」

「あぁ。どう凄いのかお前に聞いても、「アレフ様は凄いのです」とだけ繰り返していた意味が分かったよ」


 得意げなアリサに、ローレンスさんはからかい半分に返している。


「しかしこれなら確実に新たな聖地になるだろうな。街から少々離れていても巡礼者は訪れるだろうし、これだけの物なら見物人も来るだろう」

「あの……ここが聖地になるのなら、私達は住んでいても良いんでしょうか?」


 恐る恐るラルクさんが聞いてきた。

 他の家族は泉に手を浸したり、魔法樹の幹を調べたりしている。


「むしろ貴方達の安全の為に住み続けて欲しい。聖地の警備に配置する兵は貴方達の警護も兼ねる事が出来るからね」

「わかりました」

「人の往来が激しくなるから、今までのような静かな暮らしは難しいと思う。耐えられなかったら代わりの土地を用意するよ」

「ご配慮ありがとうございます」


 ラルクさんが深々と頭を下げる。


「さて、泉は問題ないから次はこの中にあるというアレフ君の家だな」

「お兄様の家見てみたいです!!」


 ローレンスさんの言葉に反応して、アリサと水遊びをしていたエリスちゃんが駆け寄ってきた。

 そんなに気になるのか。


「フフフ……凄いよ?」

「むぅ」


 だからなんでカレンちゃんが言うんだろう?


◇ ◇ ◇ ◇


 ぞろぞろと魔法樹の裏に移動してドアの前に立つ。

 泉の反対側にあるので裏口みたいだ。


「これはダメだな。聖地が安っぽく見える」

「やっぱり」


 仕方がないね。

 泉が神聖な雰囲気な分ギャップが酷い。

 仕方がないので魔改造で見た目を木の肌に変化させた。

 ノブは木の瘤っぽく仕上げてある。

 近くまで寄って見てもドアだとは見えなくなったな。


「これならドアとは見えないが、開け閉めを見られたらどうするんだ」

「ここは非常口にします。普段の出入りは地下に作る入口からしますよ。さぁどうぞ」


 ローレンスさん達を中へと招き入れる。

 モニカさん達はもう中を見ているので家に戻っている。


「樹の中のお部屋とは素敵ですね」

「私もこんな部屋に住みたいです」


 アリサとエリスちゃんが感嘆の声を上げた。

 そのまま2人仲良く家の中を見て回っていく。


「この設備をファノスにも作れないか?」


 ローレンスさんは水回りや天井の明かりといった機能面が気になったみたいだ。


「難しいね。死の森の木が必要だし、大きな木を植えるスペースも用意しないといけないし」

魔法袋(マジックバッグ)に入れて運べば良いのではないか?」


 俺の魔法袋を知っているセリカが聞いてくる。


「魔法袋は生物は入れられないんだ」

「そうなのか」


 魔法袋は長期保存出来る反面生きている物は死んでしまうんだ。

 多分中に入れた物を停止させるという事なんだろう。


「アレフお兄様、地下の入口はどうするんですか?」

「玄関の脇に階段を作って、そこから横に進めるつもりだよ」

「今日は作らないんですか?」

「ラルクさんの許可も貰わないといけないからね。また明日かな」


 窓が無いから分からないけど、もうそろそろ夕方のはずだ。


「じゃあ今日はここに泊まりたいです」

「それはダメだ。ほら家に帰るぞ」


 ローレンスさんがエリスちゃんに帰宅を促しているうちに、アリサとセリカがこちらへやって来た。


「今日は色々と楽しかったですわ」

「あんまり面白い事もなかったから、そう言ってもらえると助かるよ」


 あんまり派手な事もしてないし、精々魔法樹の中を見て回っただけだからね。


「うふふ、そんな事はありませんわ。アルフ様は御自分を低く評価され過ぎですよ」


 そう言うとアリサは玄関の方へ歩いていった。

 低すぎるかなぁ?

 レベル1だから妥当な線だと思うけど。


「全く……お前のする事はいつも常識を何処かに置き忘れているな」

「自分ではそんなつもりは無いんだけどね」

「だから困るんだ。まぁお前らしいといえばお前らしいか」


 言われてみればセリカには迷惑掛けてるよな。

 今度何か感謝の気持ちを伝えないと。


「アリサは玄関か。今日はこの木の事で驚かされたが、ブレンナー家の人と話す事が出来て良かったよ。新しい聖地が出来てファノスも活気付くだろうしね。明日からもよろしく頼むよ」

「アレフお兄様、今日はありがとうございました。また遊びに来ても良いですか? 今度はお泊りしたいです!」

「遊びに来るのは良いけど、お泊りはローレンスさんの許可が降りたらね」


 ローレンスさんとエリスちゃんも馬車に乗り込むと、ファノスに向けて進んでいくのだった。

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