騎士様は生足が忘れられない
その日もクリストファーは夢を見た。
膝まで捲れ上がった黒いスカートの裾から覗く白くてハリのあるふくらはぎにきゅっとしまった足首、柔らかな踵に滑らかな足の甲と折れてしまいそうな繊細な足の指貝殻のようなピンクの爪。
両の手でその足先を宝物のようにそっと包み込むとヒンヤリしていた。己の体温を伝えるようにそっと握り込み足裏をもみほぐし、足の指を開かすように手の指を絡めて擦るようにそっと動かす。
反対の手は足首を通ってふくらはぎを這い上がりなで上げる。弾力のある白に頬を寄せて滑らかなその脚を堪能しおもむろに唇を開く。白い肌に赤い花が咲くことへの高揚と少しの背徳感に胸が高鳴る。いっそ歯を立ててしまえばどんな反応が……。
「ッハ!……おれはまた見てしまったのか。」
王都でも王城警備を担当する花形部署に配属されてはや数年。これまでこんなことで悩まされることなどなかった。
同僚からは堅物が服を着ているとまで揶揄される始末。女性から声をかけられてもそれは誰か別の騎士に向けられたものだろうと相手にもしなかった。虚しいから。
そんなクリストファーは先日職場である王城の奥まった小さな庭で出会ったそれを忘れられずにいた。
青年は足フェチだった。
思いもかけず昼寝起きに見てしまったあのしゃぶりつきたくなるような生足が忘れられない。顔は覚えていないのに。
一体どれほど自分はあの足に執着しているのだろうと頭を抱えたくなった。ここ連日見る夢はどれも同じだった。
悲しいかな雄の性。
あの日目に焼き付いた足が忘れられず、クリストファーは毎晩その夢ばかり見ている。しかも決まっていよいよしゃぶりつく!という段階で見が覚めてホッとするやらがっかりするやら……。
初対面の女性の足を毎晩夢に見るなんて重症だ。変態に成り下がってしまったと落胆する。
しかしあれほど完璧で理想通りの足は、脚色されているであろう秘蔵の桃色絵画よりも美しかったのだ。顔はあんまり覚えてないけど……。
実際に触れられたらどれほど良いだろうか。
そこまで考えて頭を揺らす。
「違う。俺は変態じゃない。淑女に対してその様に……!!」
夢の中では白い足に一等美しく映える赤い花を咲かせようとしていたクリストファーであるが、今は自身の顔……否、自身の鼻を抑えシーツに赤い花を咲かせている。
悲しいかな、堅物と言われようとも彼もまた適齢期の青年なのであった。
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こちらは短編・愛の伝道師シリーズ三作品目です。足…もとい、少女との出会いは一つ目にありますのでぜひそちらもご覧ください。
通常連載作→隠密王子は嫁しか愛せない
完結作品目→獣人さまと一緒
こちらもご覧いただけるとありがたいです。
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