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第18話 休息の1週間(3日目恵果編)

今回は恵果編になります。

 竜也と優斗と別れて私は途方に暮れていた。それは私が変身することによってどのような方向で戦闘に参加できるのかが定まっていないからだ。竜也は完全に攻撃専門、優斗はオールラウンダーではあるものの主に攻撃を主体にしている。


「やっぱり援護系を目指したほうがいいのかなぁ…。」


戦闘では攻撃や防御主体の前衛と援護が主体の後衛に分かれたほうが効率が良くチームとして完成してくことが多い。特に今の三人は竜也が攻撃しかできないため竜也が前衛、攻撃とカバーの両方を優斗が担う形で中衛に、そして私は頼りないながらも後衛から遠距離攻撃をしている。しかし回復もバフ掛けもすべて優斗に頼り切っちゃってる…。やっぱり後衛の私が回復と援護はできないといけないよね…。


「でもどうしたら支援なんて強くなれるのかな。」


心の声が口から洩れていた。町を一人でとぼとぼ歩いていると目の前に大きな建物が見えた。その大きな建物にはこれまた大きな赤十字が描かれていた。


「病院?こんな大きな病院この町にあったんだ。」


私は吸い込まれるようにその病院に入っていた。



 中へ入るとそこは普通の病院と変わらない風景が流れていた。そこそこきれいな院内では看護師さんらしき人が診察待ちの人に声をかけていたり放送で呼び出しをされていたりした。しかしその中でひと際誰も近寄らず、だれも出入りをしていない部屋があった。その部屋は病室のようだったが、光は一切なく名からは物音ひとつ感じなかった。部屋に入るとそこには筋肉も衰え寝たきりになっているだろう青年の姿があった。腕には無数の管が繋がれており、管がなければ今にも死にそうなほど衰弱しているように見えた。


「あなたはなぜここにいるの?」


そんなセリフが突然私の口から出ていた。すると青年は静かに口を動かし語り掛けてきたように見えた。しかし実際には動いてもおらず、言葉も発していなかった。


(答えてくれるわけもないよね…。何してるんだろ私。こんなことしてる場合じゃないのに。)


そう思った時だった。


(僕はなぜここにいるのかわからない。なぜこんな状態なのか、僕が誰なのかも。わかるのは体が動かないということだけ。)


頭の中に直で語り掛けてくる声が聞こえてきた。しかし確かに目の前の青年は一ミリたりとも先ほどから動いていないし口元も微動だにしていなかった。


「誰かわからないって記憶喪失ってこと?この病室にはだれも来ていないようだけどここは一体何なの?」


(ここは周りから近くされていない部屋。特別な力を持っていないと見つけられない部屋。君にもきっとその力が宿っているんだろうね。)


「その力っていうのは何の力なの?」


(精霊を見る力。そして精霊を使役し力を発現する力。それがここを見つけられる最低条件。君は精霊を見ることができる。その力を持っている。)


その青年が言うことには彼の体は精霊との親和率が高いが病弱であることから他の目に触れないよう精霊がこの部屋を守っているらしい。この部屋に入れるのは同じ精霊を使役できるもの、そして信頼した医者だけらしい。以前の記憶がないのにここまで状況を把握しているのも精霊との会話によるものらしい。


「精霊を使うとどんなことができるの?」


(精霊は属性や性質によってできることが異なるんだ。火の精霊を使役すれば火系統の技が強くなるだろうし、穏やかな性格の精霊を使役すればサポートに適した効果が得られるはずだよ。君の変身の魔道具には風属性の精霊なんかが適しているかもしれないね。)


「私、後衛で前の二人をサポートしたいんです!私はあんまり強い攻撃もできないし、竜也は攻撃だけで危なっかしいから、回復とバフ掛け?をやりたいんです!!どうすれば精霊が見えるようになりますか!?」


(精霊を見る方法は二つ方法がある。一つ目は毎日精霊を信仰して信頼をしてもらって向こうから出てきてもらうのを待つ方法。そして二つ目は自分の持っているエネルギーを使って強制的に精霊を具現化させる方法だ。一つ目の方法は時間がかかる代わりに使役できる可能性が高い。逆に二つ目の方法は短期間で使役できる可能性があるが精霊の信頼を得にくいから使役がしにくいんだ。精霊との関係はお互いの信頼関係によって成り立つからね。)


「私は早く強くならなきゃいけないんだ。私に精霊の具現化の仕方を教えてくれませんか。」


(いいんだね?それはとてもつらい道かもしれないよ?)


「それでもやらなきゃいけないんです。三人の目標のためには。」


その言葉を聞くとさっきまで微動だにしていなかったからだから布団がはがされ、彼の体が宙へと浮かんだ。そして彼の周りに力の波の様なものが浮かび上がり部屋全体を覆った。すると部屋のあちこちに赤・青・緑などの光の粒が浮かび上がった。


(この光の粒たち一つ一つが精霊だよ。今ここに浮かび上がっているのは僕の使役している精霊たちだよ。使役していない精霊を呼び出すには更なるエネルギーが必要になる。やり方を説明すると、自分に内在するエネルギーをイメージし、それを周りに波のように放出するんだ。その波に共鳴した精霊が具現化されてこんな風に光となって現れるんだ。)


彼はそう語り掛けてくると再び布団の中へ戻っていった。そして動かなくなってしまった。

私は早速自分の中にあるエネルギーをイメージしてみようとした。しかし、もともとエネルギーと言われたところでそれが何かわからないままでは一向にエネルギーを感じることはできなかった。数十分ほど一人で格闘していたが一向にできる気がしなかった。


(いつも君が楚の魔道具を使って技を使うときの力が自分のどんな力を使っているのかをイメージするんだ。君の技の源は何だい?どこからその力はやってくるんだい?それを感じるんだ。)


そういわれ私は体を流れるエネルギーの流れをイメージすることができた。そしてそのエネルギーを今度は放出をしないといけないのだがこれもまたなかなか上手くいかないものである。巡っているものをそのまま放出しようとしても全体がまばらになってしまい、波のように放出することができなかった。


(巡るものを放出するためには一度どこかにまとめないといけない。一番エネルギーの集まりやすい場所はどこだい?)


その言葉を受けてエネルギーを集めるイメージを何度も試した。すると自分の心臓のあたりが高ぶっているのが分かった。そのエネルギーを波のように放出するイメージ…。一度放出してみると。それは何ともいびつな波の形になってしまった。その後、数時間エネルギーの放出を練習していた。



 日も暮れてきたころ。練習を始めてからかれこれ5時間以上たっているだろうか。それなりにエネルギーの放出が様になってきた。そろそろ出力を上げてみようと放出した時だった。私の目の前に一つの緑色の光の玉が現れた。その玉はとても荒れており、一か所にとどまることを知らないようだった。


「精霊さん私に力を貸して。あなたたちの力が必要なの。」


そう精霊に話しかけると。その光は何事もなかったかのように消え去ってしまった。


(どうやら今回は精霊の使役に失敗してしまったみたいだね。さっきの精霊はきしょうが荒くて、急に呼び出されたのが気に食わなかったのかな。またチャレンジしてみよう。でも今日は日も暮れてきたし帰ったほうがよさそうだね。)


「またここに来てもいいですか?精霊についてまた教えてください。」


(いいよ、来たいときに来るといい。当分僕はここにいると思うからね。)


「今日はありがとうございました。」


そういって病室を出たがやはり誰一人としてその部屋の存在に気付いている人はいなかった。精霊を使役してはやく二人に追いつかなきゃ。そう決意して私は家に戻っていった。

投稿不定期ですがこれからも読んでいただけると幸いです。

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