第14話 休息の1週間(2日目中編)
今回ほんの少し少なめです。
盗賊の向けてきたナイフは俺たちに当たることはなかった。
「なぜこんなガキどもに当たらないんだ…!?」
「こっちも当たらねぇ、こいつらただのガキじゃないっすよ旦那!」
襲ってきた盗賊たちはあのショッピングモールでの戦闘での敵よりも一回りも、二回りも弱く感じた。
「お前らで相手にならないなんてそりゃ御強いんだなぁ?」
盗賊のリーダーらしき男が立ち上がるとオーラのような気迫が俺たち三人を襲った。息が詰まるほどの迫力があり、昔の自分だったらこれだけで死んでしまったかもしれないと思うほどだった。そう思った次の瞬間俺たちに襲い掛かってきた二人はボスのもとへ退却していった。
「あいつらなかなかやるようです。ボスも気を付けてくださいませ。」
「お前俺に今なんていいやがった?俺が負けるとでも言いたいのか?」
そう言った迫力に押され盗賊の一人はしりもちをつき次の瞬間には首から上がなくなっていた。ボスの蹴りによって頭がはるか先へ飛んで行ったのが分かった。
「こいつらがそこまで言うんだ。俺は強い奴には名乗っておく主義でな。俺の名前は如月ナツメ、この盗賊団のリーダーを一様やっている。まぁ名乗ったところで毎回俺の名前を憶えている奴なんてこの世にいなくなっちまうんだがな。」
如月の迫力に押されながらもなんとか俺は声を出した。
「ほかの二人はそうでもないのにあなたみたいな強そうな人がこんな盗賊なんてやっているんだ?」
「話したところで何にもならんが暇つぶしに話してやるか、俺はもともともちろんこんな盗賊なんてやっていなかった。俺は昔からここまでではないにしろ強かった。その腕を買いたいとプロレス・柔道・ボクシングいろんなスポーツの関係者から勧誘も受けた。だが俺にはないもあっていなかった。そんなとき俺の相談に乗ってくれたある男がいたんだ。俺はそいつに会社の重役を任された。ある条件の下でな。それがこれだ、時が来たらここに来る奴を待ち受けてくれってな。だから俺はこんな場所にいる。そしてお前たちを潰さなきゃなんねえ。これは俺の恩返しだ。」
「男…。それはだれかなんて聞いて教えてくれるわけはないよな…。じゃあなんで今お前の部下を殺す必要があった。恩返しならわざわざ殺す必要はなかっただろう!」
「確かにそうかもしれない。だが俺は誰かに負けるのは死んでも許さねぇ。俺が負けを認めるのは死ぬときだけだ。はなから負けを考えてるやつに用はない。だから殺した。どうせお前たちに倒されるような雑魚だ。」
「なるほどね…。まあまとめると俺たちはあなたを倒さないといけないわけだ。」
「まぁそういうこった。3人まとめてかかってこい!」
「3人まとめてだってよ、なめられてんな俺たち。」
そう発言したのは竜也だった。確かに俺たちをなめるほどの強さは持っている。それは如月の発する気迫によって証明されているようなものだった。
「3人で言っていいって言われてるんだから3人で言って倒しちゃおう!ね?優ちゃん。」
「まあ3人でかかったほうが勝率は上がると思うが…。じゃあ二人とも気は抜くなよ!行くぞ!」
そう言って戦いの火ぶたが切られた。
初めの一撃を入れたのは竜也だった。一人で突っ込んで行き一発炎をまとったパンチを放った。しかし如月はきちんとガードの姿勢をとり竜也の一撃を受け止めていた。袖が少し焦げていたが肉体へのダメージはほとんど入っていないだろう。
「なんだなんだ、そんなものか?拍子抜けだぜ?もっとできるだろ!さっさと次の攻撃をしてこい!それを全て受け切ってから俺は攻撃を始めてやる。」
「くそっ、結構思いっきり行ったと思ったんだけど…。やっぱり防御されるとダメージはそんなに入らないかぁ。にしてもあいつなめやがって。何がすべて受け切ってから攻撃するだよ。嘗めてるにもほどがある。」
「まぁ実際に強いのだからしょうがない。馬鹿正直に待っていると言ってくれているんだ存分にその機会を使わせてもらおうよ。じゃあ次恵果お願いできるか?なるべく隙を突くような一撃を。どれだけダメージが入るのかを知りたい。」
「わかった出来る限りやってみるよ。」
そして恵果は詠唱を始める。恵果が得意としているのは回復だがもちろん戦闘用の魔法も鍛えてはいる。無詠唱で魔道具を使い技を繰り出す。次の瞬間如月の口から血が噴き出した。
「何をした、、、何も見えなかったが…。なるほどな、これが変身による恩恵か…。だがまだまだ甘い、俺は立っているぞ!最後はお前だ。かかってこい。」
どうすればいいのかすぐには考えつかなかったが、相手を逆上させるわけにもいかず俺はとりあえず。最大火力の三分の一程度の威力、通常の倍の量の弾数で魔法を放った。
(《ファイアアロー術式起動。ディスチャージ!》)
無詠唱で行ったその魔法に如月は反応をしてきた。しかし魔法の威力と弾数は如月の防御力を超えているようだった。この攻撃を受けて如月の体には数か所の火傷ができていた。
「量で押せばいけるぞ!二人とも三人で押すぞ!」
そう叫ぶと如月は俺たちのほうを睨みながら言った。
「俺の番だと言っているだろうが。一発で終わらせてやる。まずはお前だ。」
そう言って指をさしたのは俺のほうだった。
「いいよ。全力で来なよ。全部受けきってあげるよ。」
「威勢がいいようだが、きちんと実力差をわかってから言ったほうがいいぞガキ。」
「それはおじさんのほうなんじゃない?」
「なんだと?俺はお前のようなガキに負ける気はない。変身してない状態で防がれるような攻撃をするへっぽこならなおさらだ。」
よく見てみると確かに如月は変身道具らしきものは太もものあたりに装着していたがそれを起動している様子は一切なかった。如月は己の肉体の頑丈さだけで三人の攻撃を防いでいたのだ。ましてや竜也の攻撃に関しては全力ではなかったにしても傷一つできていない。奴のポテンシャルは普通の人では考えられない肉体的強さを持っていた。
「行くぞガキ!」
そう叫んだ如月は変身道具に手を添えると静かに唱えた。
『変身』
そういうと変身道具から黒い霧のようなものが如月を覆った。
「変身をした俺はお前らには止められない。力の差を思い知るがいい。」
霧が晴れると黒い道着をまとった如月が姿を現した。如月から発せられるオーラは先ほどとは比べ物にならないほど濃く、殺気の籠った不気味なものだった。
「なんなんだよあのオーラ、あんなの人間じゃねーよ…。」
そう竜也がおびえたような言葉を発するが俺はその言葉は間違いだと感じた。
「確かにあいつは規格外かもしれないが俺たちが恐れるほどじゃない。俺たちはサファイアのもとで修業したんだ。勝てるさ、いや勝つんだ!」
「最後までほざいてるんじゃねぇ!お前たちはここで終わるんだ。せいぜい最後まで俺を楽しませてくれよ?さぁ最後の時間だ。」
そういうと如月のオーラがより一層濃くなったのが肌に感じられた。
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